登壇者紹介
セミナーに登壇したのは、以下の5名です。

開催あいさつ「前向きな意思決定をサポート」

本セミナーは、AGSコンサルティング(以下AGS)執行役員 国際部門長 大槻のあいさつで幕を開けました。大槻はまず、日本の海外進出支援に関する長年の課題として、「かつて海外進出時の相談先は、欧米系のグローバルネットワークしかなく、日系企業に特化したきめ細やかな対応がされてこなかった」と振り返ります。
その課題を打破するべく2022年12月に設立されたのが、日本発のグローバルアカウンティングネットワーク「ASTHOM partners(アストムパートナーズ)」です。本セミナーに登壇するAGSとI-GLOCALは、共にアストムパートナーズの主要メンバーファームで、国境を越えた強固な連携体制を築いています。
現在、アストムパートナーズはメンバーファーム6社で17ヵ国・計50拠点をカバー。その支援実績は、すでに6,300社を超える規模にまで成長しています。こうしたネットワークを通じて蓄積された最新の知見をもとに、大槻は「参加いただいた皆さまに対して、まずは失敗がないように、そしてよりポジティブな意思決定を後押しできるような時間にしたい」と決意を語りました。
→ ASTHOM partnersの詳細はこちら
2026年のベトナム進出トレンド:非製造業化とM&Aの急増
セミナーの第1部は、AGSのメンバーが、ベトナム進出の最新トレンドや、日本側の税務対応について解説しました。

日系企業の進出数は10年前の1.6倍に。ITや飲食業が盛ん
ベトナム市場の魅力について、多くの日系企業の進出を支援してきた李は、「ASEANトップの経済成長率を維持しながら、豊富で若い労働力を持っている」と話しました。中間所得層の割合が過半数を占め、アジア進出の足がかりとしてだけでなく、巨大な消費市場としても重要になっているといいます。

ベトナムにおける日系企業の拠点数は、2024年に2,500拠点を超え、10年間で約1.6倍に拡大しています。進出形態は、かつての「輸出型・製造業」から「内需獲得型・非製造業」にシフトしており、具体的な業種として、ITや飲食、建築といった例を挙げました。また、大規模なインフラ系の投資では、ローカル企業との共同事業「ジョイントベンチャー(JV)」による進出事例もあり、投資が拡大傾向であることを指摘します。
さらに李は、「ここ数年、ベトナムにおけるM&Aへの関心が、他国と比べて群を抜いて高い」と明らかにしました。進出を検討している会社からも、すでに進出を果たした会社からも、M&A関連の問い合わせが多数あり、「変化の激しい内需市場において、巨大な顧客網を即座に獲得するための選択肢になっているのではないか」と分析し、ベトナム市場におけるM&Aの重要性を伝えました。
ベトナム子会社への貸付、駐在員給与の税務リスク

続いて、AGSの足立が、日系企業が直面しやすい税務リスクについて、次の2点を挙げました。
- グループ間金融取引と移転価格税制
- 駐在員給与の「較差補填」と寄付金リスク
足立は、日本の親会社からベトナム子会社へ貸付を行う場合、親会社が銀行から借りた低い金利をそのまま適用すれば、税務調査で指摘を受けかねないと強調。「親会社がいかに安い金利で銀行から借りられたとしても、それは親会社の信用力によるもので、子会社の信用力ではない。これが昨今の金融取引の移転価格の考え方です」と説明しました。
さらに注意が必要なのは、駐在員給与を日本とベトナムで分割支給する際のルールです。日本側で負担した給与コストをベトナム子会社へ適切に請求しないと、日本の税務当局に寄付金と認定され、損金算入できなくなるリスクがあるといいます。足立は「出向契約書などに算定根拠を明記し、両拠点で経費として認められるような書類の準備が必須だ」と呼びかけました。
ビジネスを成功に導く「徹底した現地化」と「強い流通網」
セミナー第2部は、I-GLOCALの2名が登壇し、現地ビジネスの成功要素や、税務・労務に関する実務上のポイントを語りました。

山中氏は、ベトナム人の国民性やビジネス環境を整理した後、ベトナム進出を成功させるためには、自社のサービスや製品を「BtoB」と「BtoC」に大別し、それぞれ「外資・外国人向け」なのか、「ローカル企業・ベトナム人向け」なのかを分けて考える必要があると指摘します。
具体的には、最近の傾向として、「BtoCでベトナム人向けに内需を狙っていくビジネス」が増えていることを紹介。ベトナム国内の所得向上や経済成長を踏まえた拡大戦略で、シェアを伸ばしている飲食業の事例を参考に、成功のポイントについて次の2点を挙げました。
- 徹底した現地化をすること
- 時間とお金をかけて流通網を構築すること
流通網が自社で完結できない場合は「強みを持っている現地の業者をM&Aしたり、合弁で進出するといった選択肢もある」と述べました。
山中氏は、ローカル企業をターゲットにした BtoBビジネスについても言及し、この領域で現地企業などと伍していくためには、品質、コスト、ブランド力が必要になると強調します。そのうえで、「ベトナムは、人付き合いや連帯感をかなり重視するお国柄。そこを理解して、営業やマーケティング体制を構築していく必要がある」と助言しました。

続けて、鹿島氏が現地の税務や労務について紹介。現地の主要な税金として、以下の6つを挙げました。
- 法人所得税(CIT)
- 付加価値税(VAT)
- 外国契約者税(FCT)
- 個人所得税(PIT)
- 移転価格税制(TP)
- グローバルミニマム課税
特に、移転価格税制については「日本側では文書が不要な規模でも、ベトナム側では文書化義務が生じるケースがある」と述べ、書面文化が根付くベトナムならではの注意点を紹介。さらに、優遇制度や税務調査、資金調達などのテーマを解説した後、日系企業が把握すべきベトナム人労務の基礎知識として、最低賃金や雇用形態、典型的な組織構成なども解説しました。
トークセッション:進出初期は売り上げの多角化を目指せ
最後は、登壇者5名によるトークセッションが行われました。

ベトナム進出時の課題として、山中氏と李は「売り上げの多角化」を挙げました。特定の取引先やサービスに依存するビジネスモデルは、不測の事態が発生した場合の撤退リスクが高くなってしまいます。山中氏は、売り上げを多角化することがリスク回避になると示したうえで、「コスト面で、人件費など各種経費の水準が上がっていくことは避けられない。進出を検討する際には、単価のアップができるビジネスモデルかどうかも考えてください」と、事前の市場調査などを通じた綿密な事業計画の策定をアドバイスしました。
内部統制の構築に関しては、親会社の海外事業部と管理部門が互いに押し付け合う「管理のお見合い」を防ぐため、管理すべき項目を一覧にするなどしてルール化すべきだという意見が出ました。鹿島氏は「現地採用のチーフアカウンタント(会計責任者)による不正が発生したと相談に来るケースも多い。設立時は、現地の専門業者に外注して、組織が安定するまでつなぐことも選択肢だ」と話しました。

また、鹿島氏は現地ならではの特徴として「社員旅行や忘年会なども福利厚生の一環として考えられている」と紹介。「クリスマスパーティーの開催など会社が従業員にどれだけ尽くすのかといった観点も、ベトナム人が重視する会社選びのポイントです」と説明すると、現代の日本とは異なる文化に驚きの声が出ていました。
トークセッションの終盤には、参加者から質問が出るなどして大いに盛り上がりました。最後に、AGSの大槻が「ベトナムは所得水準が上がってきて、日本のサービスや製品を買いやすい環境が整ってきた。日本の会社が現地にマーケットインできるよう、少しでもお手伝いできたらと思います」と締めくくりました。
まとめ:ベトナム特有の課題対応に専門家の活用を
セッションが進むなかで、すでに進出した日系企業の成功要因や、具体的な税務上の注意点などが語られ、ベトナム進出のイメージが湧いた参加者も多かったように見受けられます。全セッション終了後は、参加者が登壇者らと名刺交換する時間が設けられ、自社のビジネス展望について熱意をもって語り合いました。
ベトナム進出にあたっては、現地特有の商習慣や税務上の注意点が多数存在しており、適切な事前準備と専門家の活用が不可欠です。AGSでは、現地法人の設立やベトナム企業へのM&A支援、移転価格対応、国際税務顧問などをワンストップでサポートいたします。ベトナムをはじめ、ASEAN地域への進出を検討されている皆さまは、ぜひお気軽にご相談ください。
開催概要
| 日時 | 2026年3月23日(月)14:00~16:00 |
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| 会場 | 日経カンファレンスルームA |
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| 参加人数 | 43名(現地参加のみ) |
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| 共催 | I-GLOCAL 株式会社東京海上日動パートナーズTOKIO 宝印刷株式会社 株式会社オービックビジネスコンサルタント |
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| 後援 | 一般財団法人海外投融資情報財団 |
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