【セミナーレポート】ジョイントベンチャー(JV)によるインド進出の成否を分けるポイントは?最新状況から技術流出の対応まで徹底解説

【セミナーレポート】ジョイントベンチャー(JV)によるインド進出の成否を分けるポイントは?最新状況から技術流出の対応まで徹底解説

インドは、若い世代が消費を牽引する将来性の高い市場です。日系企業では、市場へ素早くアクセスするため、現地企業との合弁事業であるジョイントベンチャー(JV)での進出に注目が集まっています。一方、進出時は、知財の所有権をめぐる対立や技術流出の懸念など一定のリスクがあります。そこで今回、JVによる進出状況や成否を分けるポイントを体系的に解説するオンラインセミナーを開催しました。本記事では、セミナーのハイライトをお伝えします。

 

なお、JVによるインド進出に関してはコラムでも解説しておりますので、併せて参考にしてください。

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ASTHOM partnersのご紹介「日系企業の最適な選択肢に」

ASTHOM partnersのご紹介。「日系企業の最適な選択肢に」

セミナーに先立ち、AGSコンサルティング(以下、AGS)の八鍬が、日本発のアカウンティングネットワーク「ASTHOM partners(アストムパートナーズ)」について紹介しました。

八鍬は「かつて日系企業が海外に進出する際のパートナーは、かなり規模の大きなグローバルファームか、現地の会計事務所しか選択肢がなかった」と指摘し、AGSとHLSグローバルが中心となって、2022年にアストムパートナーズを設立した経緯を説明しました。以来、日系企業に特化したきめ細やかなサポートを続け、2026年6月時点のカバー範囲は世界17ヵ国・計52拠点に拡大。メンバーファームも6社に増え、累計支援実績は6,300社超に上ります。八鍬は「豊富な知見を活用して、皆さまの最適なパートナーとなれるように努力を続けていきます」とあいさつしました。
→ ASTHOM partnersの詳細はこちら

セミナー登壇者の紹介

セミナーに登壇したのは、以下の3名です。
セミナー登壇者の紹介|AGSコンサルティング李、HLSとインディアジョティククレジャ、HLSインディア江嶋直人

第1部:インドの投資環境と進出形態

第1部では、HLSインディアの江嶋氏より、マクロな視点からインドの投資環境と進出形態について解説いただきました。

豊富なZ世代が消費を牽引。異なる地域特性にも理解を

江嶋氏が強調したのは、インド市場における中間・高所得層の拡大とZ世代を中心とした旺盛な消費欲です。今後の消費の伸びが期待される一方、広大なインドは東西南北の4地域で産業集積や事業環境が大きく異なります。「進出時は地域特性を深く理解し、自社戦略に合致するエリアを見極めることが大切だ」と話しました。

豊富なZ世代が消費を牽引。異なる地域特性にも理解を

北部東部西部南部
ニューデリーコルカタムンバイ、プネベンガルール、チェンナイ
・重工業と軽工業がバランス良く集積

・Fortune500企業の進出が多い

・低コストの労働力と低い土地価格が特徴

・天然資源が豊富

・ITなどの成長産業を抱える

・政府による投資優遇策が手厚い

・ITやアウトソーシング産業が発達

・自動車やエアコンなどの産業も集積

インドでも競争力はあるか?検討すべき4つの観点

インド市場の魅力を把握していても、現地の競合他社や法規制、顧客ニーズについて事前に理解しておく必要があります。日系企業がインド進出時に検討すべき項目として、以下の4点を示しました。

  • インド市場で競争力を発揮できるか
  • 現在のビジネスモデルは通用するか
  • 進出が中長期戦略にどのような価値をもたらすか
  • 最適な進出形態は何か

江嶋氏は「進出ありきではなく、中長期的な目線で財務やサプライチェーンにどのような影響が出るのかを検討すべきだ」と助言しました。

進出形態としては、新会社の設立(グリーンフィールド投資)、M&Aによる現地企業の買収、現地企業とのJVなどがあり、特にJVはインド市場への早期参入を実現する有力な進出手法だといいます。業種別では、PLI(生産連動型優遇制度)を背景とした製造業のほか、再生可能エネルギー、IT、インフラ、製薬などの幅広い分野でJV設立が活発化していると話しました。江嶋氏は、合弁先の選定にはさまざまなリスクや課題を検討する必要があるとして、「HLSやAGSなど豊富な経験を有しているファームと協力してほしい」と締めくくりました。

第2部:日系企業のJV活用実態と交渉時のポイント

第2部では、AGSの李が、日系企業のJV進出時における実務的な留意点と、パートナーとの交渉のポイントについて解説しました。

JVでの進出は約半数に。経営方針の対立や技術流出のリスクも

インドに進出した日系企業がJVを活用する割合は約50%に上るといいます。これは、同じく日系企業の進出が盛んなベトナム(11%)と比較しても高い水準です。李は「インド特有の複雑な雇用慣行やインフラ関連の政府交渉、難易度の高い許認可・税制対応を乗り越えるために、ローカルパートナーが持つ知見や販売網の活用が有効になる」と話しました。

一方、デメリットとして経営方針の対立や技術流出が挙げられます。特に同一業界でのJVでは「相手に主導権を握られたり、競争力のある技術が意図せず流出したりするリスクがある」と述べ、事前の検討が重要だと指摘しました。

JVでの進出は約半数に。経営方針の対立や技術流出のリスクも

交渉の要は、競業避止義務の設定と技術流出への対策

李は「競業避止義務の設定に際しては、パートナーとWin-Winの関係を構築することが基本だ」と強調します。そのうえで、インドローカル顧客への販売でも、無形資産の活用にコミッション(使用料)を付けるなどして、利益分配を柔軟に設計すべきだと話しました。

事業全体の核となる技術の流出防止に向けては、以下を組み合わせた対策が必要だと説明しました。

  • 合弁契約でのブラックボックス化(コア技術の現地開示制限)
  • 厳格なデータ管理
  • 出向者による人的監視

特に合弁解消時は、JVで開発された知的財産(派生IP)の所有権を巡って対立が起こりやすく、「解消を見据えた条件を粘り強く交渉し、契約に盛り込むことが重要だ」と話しました。

質疑応答:JVでの進出は専門家による一気通貫のサポートを

第2部の後には、現地の法制度に詳しいHLSインディアのジョティ・ククレジャ氏も加わり、全体を通じた質疑応答の時間が設けられました。参加者から具体的な以下のような相談が投げかけられました。

  • 日本から管理職クラスを送る予定だが人手は潤沢ではない。JVパートナーとの事前交渉や進出後の日本本社との連携についてどう指示をすればいいか
  • 足元で受注のめどがない。JVパートナーと販売先のターゲット選定から始めるのは現実的か
  • やむを得ず合弁事業を解消する場合の判断軸を教えてほしい

制限時間いっぱいまで活発なコミュニケーションが展開され、セミナーは盛況のうちに幕を閉じました。

将来性の高いインド市場への進出にあたり、JVは非常に有効な進出手段です。一方、成功のためにはJVならではの留意点に加え、現地の商慣習や雇用慣行などを深く理解する必要があります。AGSでは、HLSグローバルなどのメンバーファームと協力しながら、パートナー選定や条件交渉、契約の締結、そして事業運営まで一気通貫でサポートします。JVによるインド進出にご関心のある皆さまは、お気軽にご相談ください。

開催概要

日時2026年6月26日(金)14:30~15:45
会場オンラインのみ
参加人数79名
共催株式会社HLSグローバル

株式会社オービックビジネスコンサルタント

株式会社東京海上日動パートナーズTOKIO

宝印刷株式会社

監修者

  • 李 彰赫

    株式会社AGSコンサルティング
    関西エリア事業推進担当

    李 彰赫

    米国にてMBAを取得後、会計系コンサルティング会社を経て、2018年にAGSグループに入社。クロスボーダーMA、JV、その他海外進出・海外事業撤退支援等、海外事業を推進するコンサルテーションに広く関わる。

    ASEAN各国、南アジア、中国、北米などの進出・撤退案件を多く手掛けており、支援企業数は通算100社を超える。