FP&Aという仕事をご存知でしょうか。日本においては、まだあまり聞きなれない仕事かもれしません。FP&Aの使命は「CEO(最高経営責任者)のビジネスパートナーとして経営の意思決定に有用な情報を提供する」ことです。今回は、そんなFP&Aについて解説していきます。
2021.12.22(最終更新日:2024.08.14)
FP&Aという仕事をご存知でしょうか。日本においては、まだあまり聞きなれない仕事かもれしません。FP&Aの使命は「CEO(最高経営責任者)のビジネスパートナーとして経営の意思決定に有用な情報を提供する」ことです。今回は、そんなFP&Aについて解説していきます。
2021.12.22(最終更新日:2024.08.14)
FP&AはFinancial Planning & Analysis(ファイナンシャルプランニング&アナリシス)の略です。Financial Planningは「財務計画立案」、Analysisは「数的分析」という意味になります。 日本企業における財務・経理の仕事は、一般的に以下のような部署に住み分られます。
このうちFP&Aは財務数値を分析し予算立案から実行/運用フォロー等をする仕事であり、BPに区分されると考えられます。日本企業においては経営企画などがその役割を担うことが多いです。これら日本型組織と海外におけるFP&Aとの大きな違いは、「CEOの経営意思決定に影響を及ぼすか」否かです。
会社がどのように成長していくか、最終判断するのはCEOの仕事です。その判断のためには、財務的・ファイナンス的視点が必要となってきます。
FP&Aは、CFO(財務最高責任者)傘下の組織として投資意思決定に重要な情報を提供し、企業価値向上に貢献します。 つまり、会社経営になくてはならない存在と考えられているのです。
近年FP&Aを導入した日本企業として、資生堂やNECなどが有名です。また、ソフトバンクなども採用を積極的に行っています。
この背景には、日本における企業と利害関係者との関係性があります。 2014年以降、経済産業省によってコーポレートガバナンスコードが制定されました。これにより、企業利害関係者(株主、債権者等)に対する説明責任を、企業側が果たす必要性が明確になりました。 説明責任を十分に果たすには、企業がファイナンス的視点で実績の分析と原因追及、これからの展望を話す必要があります。
そこで、財務とファイナンスのプロフェッショナルであるFP&Aが重用されるようになったのです。
FP&Aの具体的な業務を紹介します。
会社意思決定に重要な影響を与える使命を持つのが、FP&Aです。
財務会計、企業財務、管理会計、経営学など、さまざまなスキルが必要とされます。ここからは、どんな能力や資格が仕事に役立つかを解説します。
「Master of Business Administration」の略で、経営学大学院修士課程を修了すると得られる学位です。経営に必要な技術と知識を、体系的に学べます。人的資源管理、情報・マーケティング、財務会計、経済学、統計学といった科目を中心に構成されています。採用や昇格にあたり、高い評価を得られる学位です。多くのMBA取得者が、ビジネスマネージャーや企業の経営幹部に抜擢され始めています。
米国公認会計士協会が認める、会社経営に不可欠な会計・税務・財務等の能力を持った資格です。アメリカ国内でも著名な会計事務所や監査法人などでは、必ず必要な資格になります。
日本でも、海外とのパートナーシップがある企業やコンサルティング会社、監査法人といった会計専門職などでUSCPAがグローバルに活躍する場面が多くあります。
日本公認会計士協会が認める、会計監査のプロフェッショナルです。日本3大国家資格といわれ、会計分野に携わる資格の中で最高峰に位置します。
仕事内容は独占業務である財務諸表監査、株式公開支援、財務・経理、会計コンサルティングなど多岐にわたります。
会計の分野には、財務会計と管理会計という2つの領域が存在します。FP&Aは、特に管理会計領域と密接に関係しています。ここからは、財務と管理の違いをおさらいします。
投資家や債権者などの企業外部の利害関係者に向けて、企業の財務状況(財政状態と損益状況)を報告するために行う会計です。
経営者の適切なマネジメントに必要な情報を提供するための会計です。予算管理や意思決定管理、原価管理などの領域があります。まさにFP&Aで必要とされるのは、これら管理会計分野です。
FP&Aに求められる役割は、管理会計分野に基づく分析だけで終わりません。
計画と財務分析のスペシャリストとして、経営方針に対する専門的視点からの適切なアドバイスが求められます。
経営を行うにあたって大事な考えの一つに、「ロマンとそろばん」という言葉があります。
ロマンとは大きなビジョンであり、CEOが掲げる「会社がどこに向かって成長していくか」という指針です。そろばんは、財務的視点や数的根拠のことです。数字に落とし込むことでより具体的な戦略を立てられ、目標を達成し続けられます。 ロマンがなければ魅力のない会社になり、従業員のモチベーションに関わります。また、そろばんの考えがなければ収支や資金状況を把握できず、経営は困難なものになるでしょう。
経営にはどちらの考え方も必要であり、まさにFP&Aではロマンを前提としたそろばんの役割が求められるのです。
CEOの想いを汲み取り、過去の分析結果に基づき中長期計画や短期的目標に落とし込んでいけるかが腕の見せどころです。
具体的指標を設定し、会社をより良い方に導いてこそ真のビジネスパートナーといえるでしょう。
会社を経営していくうえでFP&Aは必要不可欠ですが、日本企業においてはまだまだ導入が進んでいないのが実情です。その理由を述べていきます。
日本では、FP&Aの専門部門や職種がある企業は多くありません。財務部や経理部、経営企画部などにおいて、FP&Aに近い業務が行われています。
また、予算担当部署の経営企画部が、社長室の一部であることが多くなっています。一方で財務部・経理部は、基本的に予算編成や経営の意思決定に直接関わることが少ないとされています。 海外企業では経営に直接関わるCFOの下部組織として、公認会計士などの専門的資格者がFP&Aとして活躍できます。
日本企業では古くから、スペシャリストより多様な職務を行えるゼネラリストの育成を優先する傾向があります。この傾向も、FP&Aの導入がされづらい要因の一つといえるでしょう。
会社を成長させ続け海外企業とも渡り合っていくためには、FP&Aを担える人材の確保が必要です。
ゼネラリストではなく専門分野に秀でたスペシャリストを育成するために、投資をすることが考えられます。
FP&Aを経験している企業外部からの優秀な人勢を、リクルーティングすることが考えられます。
人材の確保も重要ですが、より経営意思決定に有用な情報を得られやすくする組織体制の整備が必要です。
人材の確保や育成、組織改編には時間がかかるかもしれませんが、FP&Aは意思決定に有用な情報を与えてくれます。
今後はますます、その重要性が話題になっていくでしょう。