【セミナーレポート】税務調査で狙われる親子ローン・保証。問われる「守り」の移転価格税制対応と「攻め」の財務管理への転換

【セミナーレポート】税務調査で狙われる親子ローン・保証。問われる「守り」の移転価格税制対応と「攻め」の財務管理への転換

近年の税務調査では、親子ローンや親子保証など、海外子会社との金融取引を巡る「移転価格」が調査対象となる事例が増えています。そのなかで、税務当局から「金利や保証料率の水準が妥当でない」と指摘を受け、修正申告が必要になるケースが散見されます。2022年の事務運営要領の改正以降、移転価格に関する税務調査が厳格化しており、海外で事業展開する日系企業にとって、移転価格対応は急務です。

今回のセミナーは、AGSグループと一般財団法人海外投融資情報財団(JOI)が共催し、直近の調査動向を踏まえた移転価格対応のポイントを財務責任者向けに解説。講師を務めたAGSコンサルティングの丸山裕司は、一歩踏み込んで、グループ全体の「攻めの財務管理体制」が必要だと強調しました。

 

本記事では、計118人が参加したセミナーのハイライトをお届けします。

すべて表示

講師紹介

講師紹介:株式会社AGSコンサルティング 国際事業部 シニアパートナー 丸山 裕司

株式会社AGSコンサルティング 国際事業部 シニアパートナー
丸山 裕司

東京大学法学部卒。監査法人、外資系コンサルティング会社などを経て、2023年に株式会社AGSコンサルティングに入社。長年にわたり移転価格税制への対応を支援してきた。特にグローバルファイナンスに関するコンサルティング分野は実績豊富で、セミナー講師や関連著書の執筆などの経験多数。米国公認会計士試験合格。

厳しさ増す移転価格調査、親子ローンなどの税務リスク

セミナー前半は、2022年6月に公表された改正版の「移転価格事務運営要領」を受け、厳格化した税務調査の実態と、会社が取るべき具体的な対策について解説しました。

丸山は、多くの日本企業が慣例として採用している金利や保証料率の設定方法を説明したうえで、適用金利や適用保証料率が低くなり過ぎる可能性があると指摘しました。実例として、ある卸売業者が過去の金利設定方法を踏襲してベトナム子会社に金利1.0%で融資したところ、税務調査で「子会社の信用格付けに対応する市場金利と比較して、適用金利が不当に低い」と指摘を受けたといいます。丸山が「根拠のない金利設定では、税務調査に太刀打ちできません」と話すと、参加者は引き締まった表情を見せていました。

次に、「何を根拠に適用金利や適用保証料率を決めるべきか」に話題が移ります。重要なのは、海外子会社における客観性のある信用格付けの評価方法だとして、以下の2つの実務的アプローチを紹介しました。

  • Moody’sやS&Pが提供している簡易的な信用格付け評価データベースを使用して、海外子会社ごとに評価
  • S&Pが公表しているグループ格付け手法に則って、海外子会社をグループ分けしたうえで、グループごとに評価

税務調査の対策としては、こうした信用格付けの評価や、適用金利・保証率の設定といった考え方をまとめた「移転価格ポリシー」を整備することを推奨しました。きちんとしたポリシーをグループ全体に適用していれば、万が一、税務調査官への説明が必要になった場合もスムーズに対応できます。

丸山は「調査官は狙いやすいところを狙う。対策が進んでいる本業の移転価格に比べ、金融取引は指摘しやすい」と述べ、参加者に対応を促しました。実際のポリシー策定や信用評価にかかわる業務は、移転価格対応にかけられる費用を勘案しつつ、外部アドバイザーの活用も検討すべきだと説明しました。

「守りの税務対応」から「攻めのグループ財務管理」へ

セミナー後半は、海外子会社との金融取引の見直しを契機とした、グループ全体の「財務管理体制の強化」がテーマでした。適用金利や適用保証料率の見直しは、税務調査への「守り」として必要ですが、今後グローバル企業として競争を勝ち残っていくためには、経営改革につながる「攻め」が不可欠です。

丸山は、日系企業の特徴として「海外子会社の自主性を尊重する観点からか、財務状況を十分に管理できていないケースが多い」と指摘。その結果、重要な投資機会を失ったり、不要な外部借り入れが発生したりする事態につながっているといいます。
具体的な改善策として、以下のような方法を提案しました。

  • 海外子会社が独自に資金運用や資金調達をせず、余剰資金があれば日本の親会社に集約する
  • 集約した資金は、経営目標に照らして効果的に事業投資するか、資産運用に活用する
  • 資金が不足している子会社には親会社から資金提供する

これにより、「親会社がグループ全体を見通して財務管理できるようになり、海外子会社のガバナンス強化と資本効率の向上が見込まれる」と説明します。

「守りの税務対応」から「攻めのグループ財務管理」へ

丸山は、上記のようなグローバルファイナンスに加え、為替リスクをコントロールする体制にも言及しました。親会社が適切に為替リスクを管理できないと、子会社の業績管理が難しくなるほか、ヘッジコストが増大する可能性があります。管理体制を構築する2ステップとして、

  1.  グループ全体に適用する「為替管理ポリシー」を整備
  2.  取引金融機関から金融商品を購入して為替リスクをヘッジ

との手順を示しました。このステップを実践した電子部品製造業者を紹介し、「ポリシーに則って金融商品をうまく活用することで、為替リスクを極小化できた」と強調。参加者はうなずいたり、メモを取ったりして聞き入っていました。

まとめ

移転価格調査では、最大過去7年にさかのぼって課税されます。修正申告の際には、本来の税額に加えて延滞税や加算税が課されます。丸山は、対応が後手に回れば、税務調査が行われた際の課税金額が膨らみかねないため、「早めの対応がカギを握る」と述べてセミナーを締めくくりました。

AGSコンサルティングでは、移転価格税制対応からグローバル財務管理体制の構築まで、日本人専門家がお客様ごとの実情に寄り添ったきめ細やかなサービスを提供しております。課題を感じられている皆さま、ぜひお気軽にご相談ください。

実績豊富な専門家がサポート:AGSへのお問い合わせ

セミナー概要

開催日時2026年3月5日 (木) 15:00~16:30
会場海外投融資情報財団(JOI)大会議室、オンライン同時配信
参加人数118名(会場参加、オンライン参加の合計)

 

監修者

  • 丸山 裕司

    株式会社AGSコンサルティング
    国際事業部シニアパートナー・米国公認会計士試験合格

    丸山 裕司

    大手監査法人、外資系コンサルティング会社等勤務を経て、2023年に株式会社AGSコンサルティングにシニアパートナーとして入所。長年にわたって多国籍企業の移転価格税制対応支援、グローバルファイナンスに関するコンサルティングサービスに従事。

    グローバルファイナンスに関するコンサルティングサービスに関しては、特にサービス提供実績が豊富であり、セミナー、執筆等の経験多数。