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マレーシアの法人税概要

マレーシアの主な税目
マレーシアにおける主な税目には、所得税(法人税、個人所得税)、SST(売上・サービス税)、不動産所得税、印紙税などがあります。日本のような相続税や住民税は存在しません。
このうち、特にマレーシアに進出する日系企業にとっては、法人税が最も重要な論点となります。なお、近年の税制改正により、新たに特定のキャピタルゲインに対する課税(キャピタルゲインタックス)が導入されるなど、税制のアップデートが行われています。
申告方式と申告期限
| スケジュール | 内容 |
|---|
| 事業年度開始の30日前まで | 見込申告 |
| 6・9・11ヵ月目 | 見込申告の修正申告 |
| 期末後7ヵ月以内(電子申告8ヵ月) | 本申告(見込税額と最終税額の精算) |
マレーシアの法人税は、日本と同じく、納税者が自身の税額を計算し、申告・納付する「申告納税制度」を採用しています。
しかし、申告の手続きは日本と異なり、「見込申告」と「本申告」の2段階で行う必要があります。
見込申告
事業年度開始の30日前までに年間の見込税額を申告し、事業年度の2ヵ月目から毎月分割で納付します。
また、年度途中の6ヵ月目、9ヵ月目、11ヵ月目のタイミングで見込額の修正申告が可能です。
本申告(確定申告)
事業年度終了日から7ヵ月以内に確定申告を行い、見込納付額との差額を精算します。
なお近年は、マレーシア税務当局から特例として、電子申告を利用する場合に限り、1ヵ月間の提出猶予期間が毎年付与されています。
そのため、実質的な期限が8ヵ月以内となるケースが一般的ですが、これはあくまで特例措置であるため、実際の申告にあたっては、当局の最新のアナウンスを確認するようにしてください。
マレーシアと日本の法人税課税の違い

マレーシアと日本の法人税制には、いくつか気をつけるべき大きな違いがあります。進出にあたっては以下のポイントを押さえておきましょう。
- 法人税見込申告の修正とペナルティ
- 全世界所得課税と源泉地国課税の違い
- 欠損金の繰越控除
- グループリリーフ制度
- 電子インボイス(e-Invoice)制度
法人税見込申告の修正とペナルティ
マレーシアでは、本申告に先立って行う「見込申告」の精度が、非常に重要です。なぜなら、マレーシアでの法人税の納付は見込申告に従った「先払い」の制度になっており、会社のキャッシュフローに大きな影響を与えるからです。
最終的な確定税額に対し、見込納付額が30%以上不足していた場合、ペナルティ(罰金)が課されます。
一方で、ペナルティを恐れて多めに見込額を払ってしまった場合、納めすぎた税金の還付を受けることができますが、還付までには、長い期間を要することがあります。
そのため、年度途中に3回ある修正申告(6・9・11ヵ月目)をうまく活用し、最終的にどのくらいに税額が着地するかを正確に見込み、申告することが求められます。
全世界所得課税と源泉地国課税の違い
マレーシアは、原則として自国内で生じた所得にのみ課税する「源泉地国課税」の方式を採用しています。一方、日本では、全世界のどこで生じた所得であっても課税する「全世界所得課税」を採用しています。
ただし、マレーシアにおいても、国外を源泉とする所得のうち、マレーシア国内に送金・受領された場合には、マレーシアでの経済実体を持つなど一定の要件を満たすケースを除き、原則として課税対象となる点に注意が必要です。
欠損金の繰越控除
日本と同様、マレーシアの法人税法においても、税務上の赤字を欠損金として翌年以降に繰り越せます。10年という期限が設けられていることも、日本と変わりません。
一方で、日本と異なる部分として、当年度の事業損失についてはあらゆる所得との相殺が可能ですが、翌年以降に繰り越された欠損金については、事業所得との相殺のみが認められます。
また、マレーシア特有の注意点として、「株主テスト(株式の継続保有要件)」が存在します。これは、赤字が発生した年度からその赤字を繰越控除する年度にかけて、50%超の株式を保有する実質的な株主に変更があった場合、過去の欠損金がすべて切り捨てられ、利用できなくなるというルールです。
そのため、M&Aでマレーシアの現地法人を買収し、過半数の株式を取得するケースでは、この欠損金の引き継ぎと利用可能性が、必ず重要な論点となります。欠損金を引き継げるかどうかは、統合後のタックスプランニングや、バリュエーション(企業価値算定)に極めて大きな影響を与えるため、M&Aの検討段階で、専門家を交えた精査が必要です。
グループリリーフ制度
マレーシアには、欠損金を同グループ内の他の居住会社の所得と相殺できる「グループリリーフ」という制度が存在します。
しかし、払込資本金や会計年度の一致、同グループ内の企業間の株式保有要件など、適用に向けた諸条件が非常に厳しいため、実態としてはあまり利用されていません。
電子インボイス(e-Invoice)制度
マレーシアでは、2024年8月より、すべての商取引の請求書を電子化する「e-Invoice」制度が段階的に開始され、2026年1月に全面スタートしています。
ただ、請求書をPDF等のデータで発行すればOKといった制度ではなく、マレーシアで発行する請求書等について、原則的にマレーシア税務当局に対して認証の申請を行わなければなりません。
マレーシアに進出する日系企業にとっては、対応必須なトピックとして、把握しておく必要があります。
マレーシアの法人税率とグローバルミニマムタックス(GMT)の影響

マレーシアの法人税の基本税率は、「24%」です。日本と同様に、中小法人に対しては、一定以下の所得に対して15~17%の低税率が適用される軽減税率があります。
しかし、近年の改正で外資規制要件が付加され、株主のうち20%以上が外国資本(非居住者など)である場合は、この中小企業向け軽減税率の適用が受けられなくなりました。マレーシアに進出する日系企業の現地法人にとっては負担増となるため、留意が必要です。
さらに、最近では、グローバルミニマムタックス(GMT)の影響も、無視できません。
出典:マレーシア内国歳入庁(LHDN):「TAX TREATMENT FOR MICRO, SMALL AND MEDIUM COMPANIES PUBLIC RULING NO. 8/2025」
グローバルミニマムタックス(GMT)の影響
GMTは、多国籍企業による行き過ぎた法人税の引き下げ競争を防ぐために導入された国際的な課税ルールで、グループの全世界での年間総収入金額7億5,000万ユーロ(約1,400億円)以上の多国籍企業グループに対し、全世界一律で最低15%の法人税率を課す仕組みのことです。
マレーシアでは多くの企業優遇措置が用意されており、適用を受けることで実効税率が大幅に引き下がるケースがあります。しかし昨今、このGMTの導入・影響により、優遇税制によって現地での税率が15%を下回った結果、日本の親会社で差額分が課税されてしまい、実質的にマレーシアの優遇税制の恩恵をフルに受けられなくなってしまう問題が生じています。
現状で該当するのは相当規模の多国籍企業のみとはいえ、今後のマレーシア国内での法整備や各国の対応など、最新の動向を常に注視しておく必要があります。
マレーシアの法人税課税対象と源泉所得

法人税の課税対象
マレーシアの法人税は、主に以下のような所得に対して課されます。
- 商取引、専門職業、事業から生じた利得および利益
- 雇用から生じた利得または利益(給与、報酬など)
- 配当、利子、割引料
- 賃貸料、ロイヤルティー、保険料
- 恩給、年金、またはそれ以外の定期収入
- その他の所得の性質を有する利得または利益
マレーシアは源泉地国課税を採用していますが、国内を源泉とする所得だけでなく、国外からマレーシア国内に送金・受領された所得も、原則として課税されます。
源泉税について
マレーシアでは、非居住者や外国法人に対して特定の支払いを行う際、支払う側が税金を差し引いて納付する源泉徴収の制度があります。
対象となる主な支払いと税率は以下の通りです。
| 対象となる主な支払い | 税率 |
|---|
| 利子 | 原則15%だが租税条約により10%(日本とマレーシアの場合) |
| ロイヤルティー、役務対価や据付手数料 | 10% |
| 工事請負代金のサービス部分 | 13% (法人税10%+従業員の所得税3%) |
なお、2022年1月1日の税制改正以降、原則的にマレーシア居住者またはマレーシア居住法人が国内で受領する国外源泉所得についても、課税対象となりました。
出典:マレーシア内国歳入庁(LHDN):「Withholding Tax」
マレーシアの株式譲渡益(キャピタルゲイン)

以前のマレーシアでは、不動産売却収益(RPGT:不動産譲渡益税)を除き、キャピタルゲインは原則非課税とされていました。 しかし、現在では制度が大きく変わり、2024年3月よりマレーシア法人の非上場株式の売却益に対して、キャピタルゲイン課税が導入されています。
2024年1月1日以降に取得した非上場株式の売却益に対しては、原則10%の税率が課されます。
なお、個人の株式売却益は引き続き課税対象外です。
マレーシアの主な優遇税制

長年、マレーシアの外資誘致の目玉として利用されてきた「パイオニア・ステータス(PS)」や「投資税額控除(ITA)」といった従来の制度に代わり、2026年3月に、「新投資優遇フレームワーク(NIF:New Incentive Framework)」という全く新しい制度への移行が開始されました。製造業はすでに2026年3月1日に適用を開始し、サービス業も2026年第2四半期中を予定し、順次移行が進んでいる状態です。
こうした状況を踏まえ、現在のマレーシアにおける主な優遇税制は、以下のようになっています。
- 新投資優遇フレームワーク(NIF)
- マレーシア・デジタル(MD)
- グローバル・サービス・ハブ
出典:JETRO「新インセンティブ枠組みを発表、戦略的な投資誘致に転換へ(マレーシア)」
1. 新投資優遇フレームワーク(NIF)
NIFは、高付加価値化、高収入雇用の創出、ESG対応、国内サプライチェーン強化といった、国の掲げる強化目標への貢献度を「スコアカード」で厳格に評価し、その点数に応じて優遇の度合いが決まる「成果・階層(Tier)型」の優遇措置です。従来のパイオニア・ステータスなどにみられた、「指定された業種であれば一律で優遇する」という方式から、大きく様変わりしました。
NIFは、「特別税率」と「投資税額控除」の2種類の優遇措置に分かれています。
特別税率(STR)
スコアカードの評価に応じて、0%〜10%(特定開発地域は最大15%、中小企業は3%〜12%)の法人税の特別税率(Special Tax Rate)が、最長15年間適用されます。
投資税額控除(ITA)
設備投資額の60%〜100%を法定所得と相殺できる控除(Investment Tax Allowance)が、最長5年間付与されます。
なお、2026年2月末までにMIDA(マレーシア投資開発庁)に申請・承認済みの既存プロジェクトについては、旧ルールが継続適用されます。
2. マレーシア・デジタル(MD)
IT企業に対する税優遇として利用されていた、従来の「MSCステータス」がアップグレードされ、IT・デジタル・テクノロジー産業向けの強力な優遇措置である「マレーシア・デジタル(MD)」に生まれ変わりました。こちらも、NIFと同様、企業の投資規模や技術レベルに応じた階層型の仕組みとなっています。
優遇措置の例として、知的財産(IP)由来の所得に対する0%の特別税率や、非IP所得に対する5%〜10%の軽減税率(最長10年)、設備投資額の60%〜100%の控除などが付与されます。
出典:JETRO「デジタル経済拡大に向け新戦略「マレーシア・デジタル」立ち上げ(マレーシア)」
3. グローバル・サービス・ハブ
グローバル・サービス・ハブは、マレーシアにグループ内のサプライチェーン管理、データ管理、人事・財務の共有サービスなどの地域拠点を設置した、多国籍企業に対する優遇税制です。
拠点の規模、現地での年間事業支出額、高付加価値人材の雇用要件などをクリアすることで、対象サービス所得に対して、5%〜10%の特別税率が適用されます。
マレーシアの課税所得から税額までの計算方法

法人税額は、会計上の収益や費用に対して、税務上の加算・減算(各種控除)を行って課税所得を算出し、そこに税率を掛けて計算します。
特に、日本と比べて異なるポイントとして、以下の2つが挙げられます。
- キャピタル・ネイチャー(資本性取引)が非課税
- 固定資産の減価償却(Capital Allowance)
キャピタル・ネイチャー(資本性取引)が非課税
| 取引の性質 | 種類 | 主な例(実態によって判断) |
|---|
| キャピタル・ネイチャー (資本的取引) | 収入 | 事業で長年使用した機械や車両の売却益など、事業の基盤となる資産の処分から生じるもの |
| 支出 | 機械設備や車両の購入費用、会社の設立費用、建物の大規模な増改築費用など |
| レベニュー・ネイチャー (収益的取引) | 収入 | 商品の売上、サービスの代金など、日々の事業活動から生じるもの |
| 支出 | 従業員の給与、オフィスの家賃、仕入代金など |
マレーシアの税制では、法人の取引を「キャピタル・ネイチャー(資本的取引)」と「レベニュー・ネイチャー(収益的取引)」に区別します。原則として、日常の事業活動から生じる収益的性質の所得であるレベニュー・ネイチャーのみが課税対象となり、事業とは直接関係のない資産の売却などのキャピタル・ネイチャーは、非課税となります。反対に、支出に関しても、資本的性質の支出は、税務上の損金として認められません。
日本の法人税制では、原則として法人の純資産を増加させるすべての利益を課税対象とするため、この点はマレーシアと日本の大きな違いです。
なお、どちらの取引に該当するか、法律上にすべての品目がリスト化されているわけではありません。ある取引が、キャピタル・ネイチャーとレベニュー・ネイチャーのどちらに該当するかは、企業の事業内容や取引の目的によって、ケースバイケースで判断されます。マレーシア税務当局と見解が対立し、税務調査で争点になりやすいポイントでもあります。
出典:マレーシア内国歳入庁(LHDN):「 Income Tax Act 1967:Act 53」
固定資産の減価償却(Capital Allowance)
日本と大きく考え方が異なるのが、固定資産の減価償却です。
マレーシアでは、会計上の減価償却費は、税額計算の際に全額が損金不算入とされます。その代わりに、税務上で損金算入が認められる一定の適格資産について、「Capital Allowance(資本控除)」という形で損金算入を行います。
Capital Allowanceは以下の2つの要素で構成されます。
- Initial Allowance(IA:初期特別償却): 取得した初年度に一定割合で控除
- Annual Allowance(AA:年次償却): 税法で定められた耐用年数に基づいて毎年償却
まとめ:マレーシア独自の法人税制を正しく理解し、最適なタックスプランニングを

マレーシアの法人税制は、見込申告制度や独自の減価償却ルール(Capital Allowance)、さらには近年相次いでアップデートされた優遇措置などがあり、日本とは異なる複雑な側面を持っています。加えて、キャピタルゲイン課税の導入や、グローバルミニマムタックスによる優遇効果の減少など、日系企業の現地法人に直接影響する重要なルール変更も起きています。
マレーシア進出や現地法人の設立・運営にあたっては、こうした独自の税務ルールを正しく理解し、綿密なタックスプランニングを行うことが不可欠です。少しでも不安や疑問がある場合は、お気軽にお問い合わせください。
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