【セミナーレポート】シンガポール拠点の見えないリスクに備える。税務や採用トラブル、効率的な体制づくりまで実践解説

【セミナーレポート】シンガポール拠点の見えないリスクに備える。税務や採用トラブル、効率的な体制づくりまで実践解説

シンガポールは、アジア統括拠点として多くの日系企業が進出していますが、税務の申告漏れ、採用活動におけるトラブル、経理担当者の属人化など、本社から見えないリスクが存在します。そこで、2026年6月5日、シンガポール在住の日系企業経営者やバックオフィス担当者向けのセミナーを開催しました。AGSコンサルティングに加え、パソナシンガポール、シナジックステクノロジーズの専門家が登壇し、リスクに備える実践的ノウハウを解説しました。本記事では、現地シンガポールで開催されたセミナーのハイライトをお届けします。

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登壇者紹介

セミナーに登壇したのは、以下の3名です。

登壇者紹介

第1部:税務・会計の基礎知識と効率的な体制づくり

第1部はAGSの八鍬が登壇し、シンガポール法人運営の基礎となる税務・会計の知識と、効率的なバックオフィス体制の構築について解説しました。

決算日から始まる法定スケジュール

冒頭、シンガポール現地法人の会計スケジュールについて、現行法で以下のように定められていると紹介しました。

  • 株主総会:決算日から6ヵ月以内
  • 年次登記:決算日から7ヵ月以内

このスケジュールに間に合わない場合、法人責任者の責任が問われる可能性があると指摘します。

続けて、主要税目の要点を解説しました。

法人税は、日本とスケジュール感が異なるため注意が必要です。法人税の申告は、以下の2種類が必要だと紹介しました。

  • 見込申告(ECI):決算日から3ヵ月以内
  • 確定申告:決算日の翌年11月30日

納税は賦課決定通知書が発行されてから1ヵ月以内が原則ですが、GIRO(銀行引落)を設定すると6〜10回の分割払いが可能になり、キャッシュフローの改善につながると強調。消費税(GST)に関しても「輸出売上高が多い企業は、任意登録により還付を受けられ有利になるケースがある」と紹介しました。

「自分でやらない」ためのシステム活用とプロの起用

日本本社海外子会社
責任者 経理 現地責任者 ローカル従業員 
・海外事業を統括する管理職 ・子会社の管理や連結決算の対応 

・多言語対応が難しいケースが多い 

・日本からの出向者 

・経理畑ではないケースが多い 

・バックオフィス(経理、総務)担当 

・英語や中国語で対応するケースが多い 

第1部の後半では、現地のバックオフィス体制の強化・効率化に焦点を当てました。海外現地法人では、日本人責任者が総務や経理を兼務し、本来のマネジメントや営業が疎かになるケースが散見されます。八鍬は効率的な体制構築のため、以下の2点が有効だと説明しました。

  • システム面での対応
  • 外部専門家などのプロを雇う

システム面では、ドキュメントや会計システム、インターネットバンキングの3点について、日本本社から直接アクセスできる環境を整備することを提案しました。これにより、現地責任者を介したコミュニケーションの手間を大幅に削減できます。

外部専門家の活用も重要です。会計事務所などの専門家は、日本・シンガポール両国の制度に精通し、日本語と英語の両方で対応できます。八鍬は「監督である現地責任者は全体を俯瞰し、実務はプロに任せる体制こそ、海外拠点運営を成功に導く鍵です」と述べました。

第2部:労務・採用トラブル事例と人材マネジメント

第2部では、パソナシンガポールの森村氏が登壇し、実際にあった採用・労務トラブルを紹介したうえで、現地での人材マネジメントのポイントを解説しました。

求人にNGワードを掲載。知らない間に法令違反するリスク

採用時のトラブル例として、年齢や性別、人種などの「NGワード」を含んだ求人を出してしまうケースがあると紹介しました。「ネイティブレベルの英語力」や「日本人」といった条件を掲載することは、法令違反の可能性があると指摘します。このほかにも実際のトラブル事例として、以下を紹介しました。

  • 本社と現地で求める人材像にズレ
  • 現地ベテラン社員から新任への業務引き継ぎ不全
  • 目標や期待値のすり合わせ不足による、人事評価への不満

マネジメントスタイルに違い。トップダウン型への期待

組織のマネジメントスタイルに関しては、日本とシンガポールに違いがあります。日本では現場の意見を尊重したボトムアップ型のリーダーが好まれる傾向にありますが、シンガポールでは逆にトップダウン型で、明確な方向性や指示を出せるリーダー像が期待されているといいます。

日本 シンガポール
ボトムアップ型 トップダウン型 
・現場の意見や提案を重視 

・合意形成を丁寧に行う 

・調和と納得感を大切にする文化 

・リーダーは明確なビジョンを示す 

・部下は指示を受けて迅速に実行 

・スピードと効率を重視する文化 

日系企業は、現地赴任者やローカル社員が3〜5年で入れ替わり、せっかく蓄積したナレッジもリセットされてしまうケースが多いといいます。トラブル事例やマネジメントのポイントを整理しておくことで、持続可能な組織運営につなげられると話しました。

第3部:属人化が招く経営リスクとERPによる根本解決

第3部では、シナジックステクノロジーズの亀屋氏が登壇し、属人化リスクをシステムで根本から解決する方法を提案しました。

その担当者、来月もいますか?ブラックボックス化のリスク

亀屋氏は「税務や人材マネジメントに関するリスクの根本原因は、情報が人にひもづいているから起きる」と指摘します。

対応が必要な企業によくある状況として、以下の5点を指摘しました。

  • 経理担当者1人が全てを把握している
  • 本社からの数字確認は担当以外即答できない
  • 購買の承認が、口頭かメールで済んでいる
  • 前任者の作ったExcelの内容が他の誰にも分からない
  • 担当者が退職、帰任した後、帳票の作り方が分からなくなった

人材の流動性が高まっている昨今、頼りにしている担当者が退職する可能性は否定できません。「経理担当者への過度な依存や、承認フローのブラックボックス化は、担当者の退職時に多大な混乱をもたらします」と注意喚起しました。

システム化により、徹底した見える化を

対策の方向性として、以下の3点を挙げました。

  • 取引の透明化
  • 承認フローの記録化
  • アクセス権限の適切な管理

亀屋氏は「この3点の見える化がそろって初めて、情報が人から仕組みへと移る」と強調し、根本的な解決策として重要な情報をシステムで一元管理することを提案しました。

例えば、シナジックステクノロジーズが提供するERPサービスを活用すれば、担当者が不在となっても業務が停滞するリスクを減らせるといいます。亀屋氏は「属人化は悪意なく起きるが、仕組みで防ぐことができる」と述べ、セッションを終えました。

まとめ:経営リスクを最小化し、本業に注力できる環境へ

本セミナーを通じて、シンガポール拠点の運営において属人化や業務のブラックボックス化が、税務や労務などあらゆるリスクの根本原因となっていることが浮き彫りになりました。経営リスクをコントロールして本業に注力できる環境を整えるには、日本本社とのシステム連携や外部専門家の活用が不可欠です。

AGSは、これまでに200社以上のシンガポール進出をご支援した実績があります。周辺のASEAN地域においても、税務・会計の専門知識と豊富な支援実績に基づき、お客様の海外進出と安定的な拠点運営を強力にサポートいたします。海外拠点の管理体制や税務リスクに不安を感じている方は、ぜひお気軽にご相談ください。

開催概要

日時2026年6月5日(金)17:00〜19:00(現地時間) 
会場Zero-Ten Park Singapore 
参加人数31名(現地参加のみ) 
共催パソナシンガポール 

シナジックステクノロジーズ 

 

監修者

  • 八鍬 信幸

    株式会社AGSコンサルティング
    ASTHOM事業部長 兼 マレーシア支社長・日本国税理士資格保有者

    八鍬 信幸

    大学卒業後、KPMG税理士法人(国際部)に入社し、外資系企業向けの税務アドバイザリー業務に従事。 2014年 AGSコンサルティングシンガポール社に入社し、日系企業の海外進出コンサルティング業務に従事。

    2017年からAGSマレーシアの立ち上げを担当し、現在はマレーシア支社長として、ASEANを中心にクロスボーダーM&Aも含めた日系企業の海外進出をサポートしている。