IT戦略とはどのようなものか説明しています。言葉の意味や具体的な策定プロセス、成功に導くためのポイントについても紹介します。IT戦略について調べている方は参考にしてください。
目次
- IT戦略とは
- IT戦略が必要な理由
- 市場環境の変化に対応するため
- 企業課題を解決するため
- 自社の強みを最大化するため
- 全社で共通認識を持つため
- IT戦略策定の進め方
- 現状分析
- 経営ビジョン・事業計画の確認
- 課題の抽出
- IT戦略の策定
- IT戦略策定を行う際のポイント・注意点
- システム導入をゴールにしない
- IT部門だけで進めない
- 自社に合った規模で投資を行う
- 必要な人材を確保する
- AGSのシステムコンサルティングとIT戦略の支援事例
- ECサイトを刷新した小売業の事例
- サプライチェーンを再構築した製造業の事例
- まとめ
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IT戦略とは

IT戦略とは、企業の中長期的な経営目標を達成するために、IT(情報技術)をどのように活用するかを示す、3年~5年の中長期的な方針・計画のことです。
IT戦略では、業務の効率化、新規事業の創出、顧客体験の向上といった様々な経営課題を達成するため、必要なシステムの方針を定めます。
例えば、IT戦略には、次のような要素が含まれます。
- 目的:何のためにその施策を行うのか(例:業務効率化、セキュリティ強化)
- 対象:どのIT環境・システムに対して行うのか(例:社内ポータル、基幹システム)
- 期間:いつまでに実施するのか(例:2026年度末まで)
- 予算感:どの程度のコストを見込むのか(例:数千万円規模)
なお、IT戦略の実行にあたっては、新システムの導入が必ずしも必要とは限りません。
自社にとって最適な戦略を検討した結果、既存システムの改修や運用の改善が最も効果的と判断される場合もあります。
新システムの導入はあくまで選択肢の一つであり、「導入ありき」ではないことを意識することが重要です。
IT戦略が必要な理由

2024年12月~2025年1月にかけて行われた、東証上場企業およびそれに準ずる企業4,500社を対象にした調査によれば、中期経営計画にIT戦略を盛り込んでいる企業の割合は、57.5%と過半数を超えました。
単年度の事業計画にIT戦略を盛り込んでいる企業(17.1%)と合わせると、74.6%となり、約4社に3社がIT戦略を策定していることになります。

出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書2025」
企業活動が高度化・多様化し、AIなどのテクノロジーの発展により社会活動のあり方そのものが変容していく中で、IT戦略の策定・実行は必須となっていることがうかがえます。
具体的に、IT戦略が必要な理由としては、以下のような点が挙げられるでしょう。
- 市場環境の変化に対応するため
- 企業課題を解決するため
- 自社の強みを最大化するため
- 全社で共通認識を持つため
それぞれについて、解説します。
市場環境の変化に対応するため
生成AI、IoT、ブロックチェーン技術など、テクノロジーは日進月歩で進化しています。こうした変化に対応できない企業は、市場競争に取り残されるリスクが高まります。
IT戦略は、単なるコスト削減や効率化にとどまらず、新たな技術の活用によって、企業文化やビジネスモデルそのものの変革にまで影響を与える可能性を秘めています。
IT戦略を通じて、テクノロジーの変化に対応する準備を進めることが、未来に向けた「企業の生存戦略」となるのです。
企業課題を解決するため
多くの企業は、以下のような課題を抱えています。
- 業務の効率化
- 属人化の解消
- 情報の一元化
- 人的ミスの防止
- データに基づいた意思決定
これらの課題は、IT技術によって改善することが可能です。
例えば、業務プロセスにRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入することで、定型作業の自動化と人為的ミスの削減が可能になります。
また、適切な業務アプリケーションを活用すれば、部門間の情報共有や進捗管理が容易になり、組織全体の生産性が高まるでしょう。
さらに、データ分析を活用することで、売上低迷や在庫過多といった問題に対して、客観的かつ迅速に対処するための根拠ある意思決定が可能となります。
自社の強みを最大化するため
企業にはそれぞれ、商品力、技術力、営業力といった「強み」があります。
例えば、営業力を生かすために、営業支援システム(SFA)や顧客管理システム(CRM)を導入することで、顧客との関係性を深化させ、受注確度や顧客生涯価値の向上を図れます。
製造業であれば、工場の稼働状況をシステムで可視化し、生産性の最大化を目指す取り組みも一例でしょう。
ITの適切な活用は、自社の強みをさらに伸ばし、競争相手に対して優位を築くうえで有効な手段となります。
全社で共通認識を持つため
IT戦略は、単に技術的な計画を立てるだけでなく、ITが事業にどのように貢献し、企業の競争力をどのように高めていくかという取り組みを示すものです。
この取り組みを全社で共有することで、目的と方向性が統一され、業務の効率化やコミュニケーションの円滑化などが期待できます。
ITを「単なる道具」としてではなく、「企業の成長を支える戦略的な資産」として捉え、その活用方法について組織が一枚岩になることで、ITが企業の成長に効果的に貢献する土台が築かれます。
IT戦略策定の進め方

ここからは、実際にIT戦略を策定するプロセスを、以下の4つのステップで解説します。
- 現状分析
- 経営ビジョン・事業計画の確認
- 課題の抽出
- 戦略の策定
なお、IT戦略の策定は、自社にCIO(Chief Information Officer:最高情報責任者)がいればCIOの主導のもとで行われることが一般的です。
現状分析
現行の業務フローやITインフラの状況を把握し、問題点を洗い出します。
企業が抱える問題としては、以下のようなものが挙げられます。
- データ入力が二重・三重で、ミスが多く作業時間が長い
- アナログ作業が多く、業務スピードが上がらない
- システムが分断されており、情報の一元管理ができていない
こうした問題を正しく捉えるためには、システムをどのように使い、業務が流れているか、統制やセキュリティが考慮されているかなどを把握することです。
そのためには現場の実態を可視化した上で行う業務の分析は欠かせません。
なお、自社の現状を分析するうえでは、必要に応じて「SWOT分析」や「バリューチェーン分析」を活用することも有効です。
経営ビジョン・事業計画の確認
現状分析を行ったら、次に、経営ビジョンや事業計画を把握します。
経営ビジョンや事業計画を把握していないと、IT戦略で何を実現するべきかが定まらず、適切な戦略を描き、実行することができません。
IT活用は、目的ではなく、経営目標を実現するための手段です。
システムありきで議論を始めるのではなく、業務や事業の変革につながるよう、経営ビジョン・事業計画を把握することが重要です。
課題の抽出
現状を分析し、経営ビジョンや事業計画を把握することで、おのずと現状と理想像のギャップが浮かび上がります。
そのギャップこそが、自社が解決すべき課題です。課題が明確化されれば、IT戦略に盛り込むべきポイントも定まってくるでしょう。
IT戦略の策定
自社の課題が整理できたら、それらを解決するためのIT戦略を策定します。
IT戦略では、ステップ1で分析した自社の現状、ステップ2で把握した中長期的なビジョン、そしてそこから抽出された課題を踏まえ、それらをどのように解決・実現していくかを検討します。 例えば、主に以下のような項目を盛り込みます。
- 現状分析の結果
- 経営ビジョンや事業計画
- 抽出された課題
- 基本方針(刷新、改修、統合、分離等)
- IT投資ロードマップ(3年~5年単位)
- 各施策のKPI設定
- 必要なリソースや予算の概算
- 戦略実行後の検証体制
IT戦略の内容は、ある程度の具体性を伴う必要がありますが、細部まで厳密に決めすぎると、後のベンダー選定などの柔軟性を欠いてしまうケースも生じます。
ある程度の「構想」レベルでとどめておき、後々の自由度を確保しておきましょう。
IT戦略策定を行う際のポイント・注意点

IT戦略を成功に導くためには、策定を行う際に注意すべき、以下のようなポイントがあります。
- システム導入をゴールにしない
- IT部門だけで進めない
- 自社に合った規模で投資を行う
- 必要な人材を確保する
それぞれについて、解説します。
システム導入をゴールにしない
IT戦略の失敗要因として最も多いのが、「システムを導入すること自体が目的になってしまう」ケースです。
新しいITツールやシステムを導入するだけで、業務が劇的に改善されるわけではありません。
ITはあくまで手段であり、最終目的は、あくまで事業課題の解決や経営目標の達成にあります。
例えば、ERP(基幹業務システム)を導入しても、現場の業務フローやマスターデータの整備が不十分であれば、期待した効果は望めません。
こうした事態を防ぐには「導入後に何を達成したいのか」を常に意識する必要があります。
また、導入後の定着支援や運用改善に対するリソースの確保も、戦略段階から計画しておくべきです。
システムは「導入したら終わり」ではなく、「使われ続け、成果を出すこと」がゴールであることを認識しましょう。
IT部門だけで進めない
IT戦略を策定・実行する際にありがちな誤りが、情報システム部門や外部のITベンダーだけに任せてしまうケースです。
IT戦略には、経営層や現場部門との密な連携が欠かせません。
IT戦略の策定にあたって、経営層の関与がないと、戦略の方向性があいまいになり、企業全体の意思としての一貫性が失われます。
一方、現場のニーズを無視すると、新たな仕組みを導入したとしても定着率が向上せず、「使われないIT」になりかねません。
業務部門、IT部門、経営層が共通のゴールを持って対話を重ね、組織横断的に戦略を推進する体制が必須です。
自社に合った規模で投資を行う
IT戦略の策定段階で見落としがちなのが、「適正な投資規模」の見極めです。過剰な機能を持つ高額なシステムを導入しても、実際には使いこなせなかったり、費用対効果が見合わなかったりするケースは珍しくありません。
リソースや予算が限られる中での投資判断が求められる状況においては、スモールスタートで導入・検証し、段階的に拡張していく方法もあるかもしれません。
さらに、自社の成長フェーズや業種特性、社員のITリテラシーに応じて、最適なスピード感と規模感で戦略を組み立てることも重要です。
必要な人材を確保する
IT戦略を策定するためには、IT戦略策定に必要なスキルを保有する人材の確保が欠かせません。IT戦略策定に必要なスキルとしては、ITスキルの他、構想力や推進力などがあります。しかし、近年はIT人材の不足が深刻化しており、特に中堅中小企業では人材獲得が難しい状況です。
そのため、外部リソースの活用は選択肢のひとつです。ITコンサルタントやSIer(システムインテグレーター)、業務改善の専門家などをプロジェクト単位で活用することで、限られたリソースで戦略を策定できます。
内部のITリテラシーの向上も並行して進めるべきでしょう。
理想的なのは、社内にIT推進の中核となる「デジタル人材」を育成・配置することです。
技術の知識だけでなく、業務とITを橋渡しできる人材の存在は、IT戦略の成果を左右するキーファクターとなるでしょう。
AGSのシステムコンサルティングとIT戦略の支援事例

AGSのシステムコンサルティングサービスでは、IT戦略の策定、システム企画、導入、運用までを、一気通貫で支援しています。
ベンダーとは独立した第三者的立場であることを生かし、特定の商品やサービスに偏らない視点からシステム選定を支援するほか、システム導入後も、IT顧問として継続的にサポートが可能です。
ここでは、AGSによるIT戦略の支援事例を紹介します。
なお、AGSでは、業務を効率化するための仕組み・システムのご提案も承っております。システム周りに課題を抱えているご担当者様は、お気軽にお問い合わせください。
ECサイトを刷新した小売業の事例

売上高50億円、海外にも拠点を持つ小売業のA社は、経営戦略として、顧客との各接点の統合連携を進めていましたが、具体的なシステム化の道筋を見つけられていませんでした。その理由としては、IT戦略を立案できる人材がいなかったことが挙げられます。
A社では、顧客接点となるECサイト、情報基盤である基幹システムが各国でバラバラで、在庫情報も一元管理できておらず、真の在庫が把握できないため、機会ロスが生じていました。
AGSでは、約3ヵ月にわたり、以下の支援を行いました。
- 主要課題の整理、経営ビジョンの確認等の事前調査
- 改善シナリオの検討
- 定量評価
- システム化構想の立案
- ロードマップの策定
これにより、A社は、経営戦略上の優先度を明らかにし、システム刷新の方向性とあるべき姿を定めることができました。経営の事業戦略と現場層の要望を網羅したうえで、取り組むべき課題を抽出・整理できたことが成功の要因だといえます。
この事例は、どこまでをシステム化するかのスコープ調整が難しいプロジェクトでしたが、AGS担当者が経営層と共に、シナリオ別の投資対効果を議論・共有したことで、投資の意思決定をスムーズに行うことができました。
サプライチェーンを再構築した製造業の事例

売上高50億円、従業員数101~300人の製造業B社では、中期経営計画の重点課題に「サプライチェーンの再構築」を掲げていたものの、数万点にも呼ぶ在庫のロケーション・ステータスをリアルタイムに管理できていませんでした。
また、案件別の採算管理を手作業で行っており、業務に非効率な面がありました。
AGSでは、4ヵ月にわたり、以下の支援を行いました。
- 中期経営計画の重要課題をブレークダウンし、課題を整理
- 課題解決に向けた業務改善計画を策定
- ビジネスプロセスの見直しに伴う、システム化の構想立案
- 定性・定量面を総合的に評価
- ロードマップの策定
これにより、B社は中期経営計画を起点として、現場層の課題認識も網羅し、取り組むべき課題の優先順位を明確化できました。
加えて、経営ビジョンの実現に向けた業務とシステム改善の方向性を社外ステークホルダーと共有できたほか、投資対効果も併せて評価することで、複数の選択肢から自社に最適なシステムを選定できました。
まとめ

IT戦略は、単なるシステム導入計画ではなく、企業の成長と変革を支える「経営戦略の一部」といえます。
実効性の高いIT戦略を策定するには、社内の連携や外部パートナーとの適切な関係構築が不可欠です。
AGSコンサルティングでは、IT戦略の策定を支援しております。システム周りに課題を抱えているご担当者様は、お気軽にお問い合わせください。

