ペーパーカンパニーとはどのような会社か解説しています。言葉の意味や作り方、節税になるか、違法性、取引先がペーパーカンパニーかどうか調べる方法についても紹介します。ペーパーカンパニーについて調べている方は参考にしてください。
目次
- ペーパーカンパニーとは
- ペーパーカンパニー自体が違法ではない
- ペーパーカンパニーの種類
- ダミー会社
- 休眠会社・ゴースト会社
- 特別目的会社(SPC)
- ペーパーカンパニーの作り方・維持費
- ペーパーカンパニーの設立方法
- ペーパーカンパニーの維持費
- ペーパーカンパニーを設立する目的・メリット
- M&Aや不動産投資
- 税金対策
- 違法行為
- ペーパーカンパニーを設立するリスク・デメリット
- タックスヘイブン対策税制
- ペーパーカンパニーと取引するリスク
- ペーパーカンパニーの調べ方
- ホームページなど公開情報を確認する
- 登記簿を確認する
- 信用調査会社を利用する
- まとめ
ペーパーカンパニーとは

ペーパーカンパニーとは、法人として登記されているものの事業の実態がない、書類(ペーパー)上だけに存在する会社です。ダミー会社やゴースト会社などと呼ばれることもあります。
ペーパーカンパニーは、詐欺や脱税に利用されるような、違法なイメージで語られることが多いですが、すべてのペーパーカンパニーが違法というわけではありません。
ペーパーカンパニー自体が違法ではない
ペーパーカンパニーを設立すること自体は、違法ではありません。M&Aをスムーズに行うために設立するなど、合法的に利用されているケースも多くあります。
にもかかわらず、「違法」「グレーゾーン」などのイメージが付きまとうのは、ペーパーカンパニーは、犯罪の隠れ蓑にしたり脱税を行ったりすることに利用できてしまうためです。
犯罪に利用される際にはペーパーカンパニーと呼ぶ一方で、M&Aなどの正当な理由で利用する場合にはペーパーカンパニーと一般的に呼ばないことも、「ペーパーカンパニーは犯罪に利用されるもの」というイメージを決定づけている理由の一つでしょう。
ペーパーカンパニーの種類

ペーパーカンパニーは、設立目的などによって、主に以下の3種類に分けられます。
- ダミー会社
- 休眠会社・ゴースト会社
- 特別目的会社(SPC)
それぞれについて、説明します。
ダミー会社
ダミー会社とは、背後にいる組織の正体や目的を隠すために、表向きの看板として設立される会社を指します。
悪徳商法や詐欺、脱税などのために設立され、一般的なペーパーカンパニーのイメージに最も近いのが、このダミー会社でしょう。
ダミー会社は、登記上はちゃんとした企業のように見せかけていますが、実態がなく、実質的な経営者や、支配している法人が在籍していないことも多いです。
会社が倒産した際の資産の隠匿先としても利用されます。
休眠会社・ゴースト会社
休眠会社・ゴースト会社とは、登記はされているものの、一時的に事業を休止していたり、事業をやめた後も放置されたままになったりしている会社を指します。
ダミー会社のように犯罪に利用されることもありますが、税務署への届出を忘れているだけの、悪意のないケースもあるのが特徴です。
登記されている会社は、たとえ事業を行っていなくても、決算申告を行わなければなりません。また、会社が存続している限り、毎年、法人住民税などの税負担が発生します。これらの義務を果たしている限り、たとえペーパーカンパニーであっても、違法ではありません。
なお、会社を残したまま事業を停止したい場合は、税務署などに休眠の届出をすることで、税負担を抑えることができます。
特別目的会社(SPC)
特別目的会社は、「SPC(Special Purpose Company)」とも呼ばれ、特定の目的のために設立された会社を指します。親会社などの本体から必要な資産だけを切り離し、特定の事業のために資金調達を行い、運用するのが特徴です。
例えば、M&Aでは、SPCが買い手として資金調達を行い、対象企業の買収を実行します。また、不動産事業が目的の場合には、対象となる不動産を保有し、運用のため投資家から広く出資を募り、運用成績に基づき配当を行います。
直接事業を行わないという点で、SPCもペーパーカンパニーの一種といえますが、M&Aの資金調達など明確な目的を持って設立・運営されているため、一般的にSPCがペーパーカンパニーと呼ばれることはほぼありません。
ペーパーカンパニーの作り方・維持費

ペーパーカンパニーの作り方や、維持費について紹介します。
ただし、ペーパーカンパニーは、設立目的によっては違法性を含みます。
以下の解説についても、設立を推奨するものではなく、ペーパーカンパニーについて理解するための一助としてお読みください。
ペーパーカンパニーの設立方法
日本におけるペーパーカンパニーの設立方法は、一般的な企業と変わりありません。
- 会社名、事業目的、役員構成などの基本情報を決定する
- 代表者印、銀行印、角印などを作成する
- 定款を作成し、認証を受ける
- 出資金を払い込む
- 設立登記をする
これらのプロセスを経て、設立まで、おおよそ1ヵ月ほどがかかります。
また、会社を設立する際には、主に以下のような費用がかかります。なお、下記は株式会社の場合です。
| 出資金 | 1円~ |
|---|---|
| 登録免許税 | 150,000円 |
| 定款認証手数料 | 15,000円~50,000円 |
| 印鑑作成費用 | 数千円~ |
| 行政書士や司法書士への報酬 | 100,000円~200,000円程度 |
ペーパーカンパニーを設立するのが、タックスヘイブンなど、海外であれば、設立費用や手続きは、国や地域などによって異なります。
日本と同様、登記申請手数料や定款認証手数料、住所費用、公証人手数料などがかかるケースが多いようです。加えて、手続きを代行するエージェントを利用した場合、報酬も上乗せされます。
海外にペーパーカンパニーを設立する場合でも、日本と同様に、数十万円の費用が掛かると考えたほうがよいでしょう。
出典:J-Net21「新会社法って何ですか? 資本金1円でも会社が設立できると聞きました。」
出典:国税庁「登録免許税の税額表」
出典:日本公証人連合会「会社の定款手数料の改定」
ペーパーカンパニーの維持費
ペーパーカンパニーには事業の実態がないため、一般的な企業と異なり、人件費や営業費用がかかりません。
一方で、維持するために最低限必要なコストとしては、以下のようなものが該当します。
- 法人住民税均等割(年間70,000円~)
- 決算費用
- 税務申告費用 等
これらの費用が年間およそ数十万円かかり、加えて、決算や申告にかかる事務コストも発生します。
ペーパーカンパニーがタックスヘイブンにある場合でも、それでも維持するために必要な手続きのコストは免れません。また、タックスヘイブン対策税制が適用され、税金面でのコストが余分に発生する可能性もあります。
なお、手続きをエージェントに代行すると、その分だけ支出がかさむ点は、設立時と同様です。
ペーパーカンパニーを設立する目的・メリット

ペーパーカンパニーが作られる理由としては、次のようなものが考えられます。
- M&Aや不動産投資
- 税金対策
- 違法行為
それぞれについて、説明します。
M&Aや不動産投資
違法性のないペーパーカンパニーの利用目的として、M&Aや不動産投資などがあります。
例えば、M&Aでは、買収資金の不足を補うために、買収対象企業の株式などを担保に資金調達を行うLBO(Leveraged Buyout)という手法がよく採られます。
この際に、ペーパーカンパニー(SPC)を設立し、SPCに資金調達を行わせることで、親会社など本体の財政負担を避け、倒産といった経営上のリスクを回避できます。
LBOでは、借入資金の返済は対象会社がSPCと合併して行うことが多いため、親会社は財政負担がなくリスクを抑えてM&Aを進められるというのがメリットです。
不動産投資でも、SPCに売却した不動産を担保に融資を受け、資金調達を行う場合があります。
SPCは、特定の資産を証券化し、直接的な融資や株式発行に比べて柔軟な資金調達ができます。投資家にとっても、証券化することで投資結果を利回りに換算しやすくなり、投資判断が容易になります。
なお、本記事では、事業実態を持たない会社という観点から、SPCをペーパーカンパニーの一種として説明していますが、一般的には、SPCをペーパーカンパニーと呼ぶことはあまりないので、ご留意ください。
税金対策
※本記事は、ペーパーカンパニーによる税金対策を推奨するものではありません。
ペーパーカンパニーを設立することで、以下のような効果が得られることがあります。
- 所得の分散による税負担の減少
- 接待交際費の計上による税負担の減少
- 不動産売却による税負担の減少
- タックスヘイブンによる税負担の減少
ただし、ペーパーカンパニーを利用して不当に税額を減らしたと認定された場合、税務申告の内容を当局に否認され、追徴課税される可能性があります。脱税として告発される可能性もあります。
違法行為
許されるものではありませんが、ペーパーカンパニーが設立される大きな理由の一つとして、違法行為のために利用することがあります。
ペーパーカンパニーを設立するケースでは、登記上の経営者や取締役に別の誰かを仕立て上げ、実質的な経営者と関係のない会社に見せかけることが少なくありません。
近年では新型コロナウイルス対策の補助金を巡っては、複数のペーパーカンパニーを設立し、それぞれで別に申請して公金を詐取する事件が発生しました。
その他、犯罪組織のマネーロンダリングに利用されたり、企業が巨額損失を隠匿するために使ったりと、ペーパーカンパニーは様々な違法行為に使われます。
出典:日本経済新聞「経産省元キャリア2人、起訴内容認める 給付金詐欺公判」
ペーパーカンパニーを設立するリスク・デメリット

ペーパーカンパニーの最大のリスクは、なんといっても税務上の否認リスクです。
ペーパーカンパニーには税務上の利点がある場合もありますが、税金対策目的の利用が不適切だと判断されると、国税当局に追徴課税を課されます。悪質だと認定されれば、最高税率50%の重加算税を課されたり、脱税として告発されたりする可能性もゼロではないでしょう。
かつては、タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立する税金対策が流行しましたが、タックスヘイブン対策税制を始めとする規制が整備された現在では、税負担の軽減効果は失われています。
また、税務リスク以外では、実態がないとはいえ、会社を運営する以上ランニングコストが発生するというデメリットもあります。
運営形態や設立した地域などによって負担に差はあるものの、ペーパーカンパニーによる恩恵がランニングコストを上回らなければ、手間をかけて損をするだけという結果になりかねません。
タックスヘイブン対策税制
タックスヘイブン対策税制は、日本の個人や会社がタックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立し、所得を移転して税負担を軽減する行為を規制する制度です。
同税制を適用されると、タックスヘイブンにある子会社の所得は日本にある親会社に合算され、日本で法人税や所得税が課されます。
同税制では、海外子会社の以下のような要素で、タックスヘイブン対策税制の対象となるかを判定します。ただし、これらの要素がすべてというわけではないため、実際には、より詳細な検討が必要な点に留意してください。
- 事業を行うための事務所や店舗、工場などの施設があるか
- 現地で事業の管理・支配・運営を行っているか
- 主な事業が株式の保有などではないか
いずれも現地子会社の事業実態を問うもので、タックスヘイブン対策税制は、いわばペーパーカンパニーを規制するための制度といえるでしょう。
出典:国税庁「外国子会社合算税制に関するQ&A(平成29年度税制改正関係等)」
ペーパーカンパニーと取引するリスク

自社がペーパーカンパニーを設立するつもりがなくても、取引先が実はペーパーカンパニーだったという可能性はゼロではありません。
万が一、ペーパーカンパニーと取引してしまった場合、自社が詐欺などの被害にあう恐れがあります。また、自社が被害者にならなくても、知らない間に間接的にマネーロンダリングなどの犯罪に関与してしまうリスクもあります。
ペーパーカンパニーを一目で見抜くのは難しいですが、その可能性を常に頭の片隅に入れておき、新規の取引先と取引をする際は、事前に法務チェックを挟むなど、可能な限りのリスクヘッジを行いましょう。
ペーパーカンパニーの調べ方

取引先や、取引先候補がペーパーカンパニーかどうかを調べる方法としては、以下のようなやり方があります。
- ホームページなど公開情報を確認する
- 登記簿を確認する
- 信用調査会社を利用する
ただし、いずれの方法も、ペーパーカンパニーだと100%言い切れるわけではありませんので、様々な角度から情報収集を行い、総合的に判断することが重要です。
ホームページなど公開情報を確認する
まず、Web検索等で、相手方の会社の情報を入手しましょう。
公式ホームページを見て、会社概要、事業内容、役員の氏名、外部とのリンクなどを確認します。代表者名や役員の名前なども検索すると、より相手方について詳しく知ることができます。国税庁の法人番号サイトで検索し、会社が実在するかを調べるのも有効です。
ただし、インターネットから得られる情報は有用ですが、ホームページの内容が虚偽である可能性もなくはないので、インターネット上だけの情報をもって安全だと判断するのは早計です。
登記簿を確認する
ホームページなどからの情報収集を行い、さらなる情報が必要だと感じたら、商業・法人登記の登記事項証明書を取得してみるとよいでしょう。
全国にある法務局で、企業の登記情報を取得できます。手数料は、申請方法や交付方法などで異なりますが、高くても600円です。
登記情報からは、以下のようなことが分かります。
| 取締役の変更登記 | 法律で定められた2年ごとに退任や重任が登記されているか |
|---|---|
| 社名変更 | 頻繁に社名が変わっていないか |
| 本店の移転 | 頻繁に拠点を移していないか |
どれも、該当しているからといって、すぐペーパーカンパニーと断定することはできませんが、社名変更や本店移転を頻繁に行っているような会社は、よほどの事情がない限り怪しいといえます。
信用調査会社を利用する
信用調査会社からデータを取得するのも有用です。東京商工リサーチや帝国データバンクといった信用調査会社には、膨大な数の企業データが蓄積されています。
社名・従業員数・役員といった基本的なデータに加えて、売上高や利益といった財務情報も得られますので、こうした情報を判断材料にするとよいでしょう。
これらの信用調査会社の企業データベースを利用する料金は、件数などにもよりますが、おおむね数千円~数万円です。
まとめ

ペーパーカンパニーは、事業の実態がない、書類上だけに存在する会社です。違法な税逃れや犯罪などに利用されることが多いイメージがありますが、例外として、M&AにおけるSPCなど合法なケースも存在します。
ペーパーカンパニーを利用した税金対策は、国税当局に否認され、最悪の場合、脱税として告発される可能性もあります。取引相手がペーパーカンパニーだった場合、犯罪の被害にあったり、マネーロンダリングなどに間接的に関与してしまうリスクもゼロではありません。
Webから得られる情報や登記情報などを活用して、慎重に判断しましょう。
