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資産管理会社は設立したほうがいい?気になる効果やメリットについて

現在、資産管理会社を設立する方が増えています。不動産などの資産を所有し将来に相続の問題が生じるであろう方ほど高い関心を持っており、実際に設立している事例が多くあります。今回は、資産管理会社を設立することのメリットやデメリットについて解説いたします。

資産管理会社とは

事業の目的

資産管理会社は、資産管理を事業目的とした会社です。不動産投資や資産形成を行っている人が、自らの資産を管理する目的で設立する会社のことをいいます。

資産管理会社はオーナーの資産を有利に運用・管理する目的のためだけに設立されるため、プライベートカンパニーとも呼ばれます。

会社設立をおすすめしたい方

資産管理会社を活用してメリットが得られるのは、以下の方です。

●本業以外の事業(不動産投資)がある方
●資産があって事業承継対策が必要な方

個人投資家や資産運用などの副業をおこなっている方

個人で不動産投資を行う場合は経費や税金などの支出や借入金の返済負担が大きく、キャッシュが手元に残らないこともあります。

事業承継対策が必要な方

資産管理会社の設立は事業承継対策が行えるため、土地などの不動産を多く所有している方はメリットがあります。

また、オーナーが社長の場合は、資産管理会社の自社株を普通株式と無議決権株式で発行し、後継予定者へ普通株式を、それ以外の者には無議決権株式を相続等させる方法があります。

無議決権株式とは株主総会における議決権がない、または制限されている株式です。後継予定者ではない相続人に相続させることで、会社の事業承継がスムーズになります。

不動産投資の仕組み

不動産投資会社の種類

不動産投資会社を設立する場合は、不動産の保有形態や取引の違いにより、以下の3種類が考えられます。

不動産保有会社

資産管理会社が不動産を所有して事業主になる方法です。不動産収入は資産管理会社に入り、そこから役員報酬として代表や役員に給与が支払われます。

サブリース法人

不動産の所有権はオーナーの名義にしたままで、資産管理会社に一括で貸し付けます。そして、資産管理会社から賃借料がオーナーに支払われるという流れです。

不動産管理会社

オーナー名義の不動産の管理を、資産管理会社に委託する方法です。資産管理会社が家賃を回収し、そこから管理手数料を差し引いた分をオーナーに支払うという流れです。

シンプルな仕組みですが管理業務の範囲が広くなることもあり、その一部又は全部を専門の管理会社にアウトソーシングすることになります。

不動産投資におけるリスクコントロール

投資におけるコントロールできないリスクは、株などの取引によって投資したお金が回収できない、マイナスになるなどの価格変動の可能性です。

しかし不動産投資の場合は、天災を除けば物件そのものがなくなることはありません。また不動産の賃料は「賃料の粘着性」と呼ばれ、あまり価格変動しません。

不動産投資には一定の需要もあり、リスクと対策を理解することで、リスクコントロールがしやすい投資といえます。

資産管理会社のメリット

資産管理会社を設立するメリットはさまざまありますが、ここでは主に以下のメリットについて解説します。

所得の分散効果

資産管理会社の役員に、オーナー自身だけでなく妻や子供などを就任させ、家族に役員報酬(給与)を支払うことで、所得の分散が可能となります。

個人の所得税は、所得が増えるほど税率が高くなります(累進課税)。オーナー1人に報酬を支払うよりも、複数の家族間で報酬を分散することで所得税の税率が低くなり、結果的に所得税の負担を軽減することができます。

また役員報酬を毎月支払うことで、現金資産を子供に移転させることができ、相続税の納税に備えることができます。

経費の範囲拡大

個人事業主に比べて、資産管理会社(法人)は経費にできる範囲が広がります。具体的には、前述した家族への役員報酬や退職金、法人名義の車の維持費などです。これらを経費とすることで、資産管理会社の法人税を軽減することができます。

損益通算の範囲拡大

損益通算とは、複数の事業にまたがって収支を通算することです。 個人事業主は所得の種類ごとに収支を計算し、そのうち損益通算が可能な所得が限定されているため、例えば株式投資などの損失と不動産事業の利益は通算できません。

不動産投資以外にも株などの金融商品投資や複数の事業を営もうとする場合には、資産管理会社で事業を行うことで、法人の事業収支として損益通算が可能となります。

繰越控除の期間延長

繰越控除とは、事業で損失を出したときにその年だけでなく次年度以降にそれを繰越して所得から差し引ける制度のことです。個人事業主は繰越期間が最長3年間なのに対し、法人は10年まで損失の繰越が可能です。

不動産投資では出口戦略として所有不動産の売却が想定されますが、売却価格が購入時よりも低くなる場合には損失が発生することがあります。不動産管理会社の場合は、この損失を長期間にわたって繰り越せます。

事業承継対策

土地などの不動産は、相続人が多くなるほど遺産分割が難しくなります。 しかし、資産管理会社に一括して不動産を所有させて株式を相続人に分配すれば、不動産に対する権利を間接的に分配できるようになり、遺産分割をスムーズに行えます。また前述のとおり、無議決権株式などを発行している場合には、相続時において会社経営に対するコントロールも可能です。

さらに資産管理会社の株式の評価額は、相続税評価額(路線価または固定資産税評価額)で計算した会社の純資産価額から、資産の含み益にかかる法人税相当額(37%)で計算されるため、不動産価額よりも低く評価されます。ただし取得後3年以内の不動産は、会社の純資産価額の計算上は通常の取引価格で評価されるため、留意が必要です。

社会保険の加入

資産管理会社の役員に就任すると給与所得者となるため、健康保険や厚生年金といった社会保険への加入が可能となります。 特に年金については、個人事業主が加入する国民年金と給与所得者が加入する厚生年金とでは内容に違いがあります。そのため、厚生年金に加入できるのはメリットです。

資産管理会社のデメリットと注意点

資産管理会社に関わらず、法人を設立し維持するためにはメリットだけでなくデメリットもあります。具体的には、「コストの発生」と「事務負担の増加」です。

様々なコストの発生

法人の設立や維持、運営にはさまざまなコストがかかるため、これらは資産管理会社の設立のデメリットといえます。

設立コスト

設立に関する最低費用水準は、株式会社は約25万円、合同会社は約10万円です。 合同会社は会社設立時の認証手続きが不要なため定款認証費用がかからず、また決算報告義務(官報への掲載など)がありません。

株式会社

合同会社

定款認証費用

5万円

-

登録免許税※

15万円

6万円

定款印紙代

4万円

4万円

印鑑作成、謄本手数料他

数千円

数千円

※ 出資額が大きくなる場合、株式会社は出資額の半分を資本金に組み入れる必要がありますが、合同会社はそのような制限がないため、資本金の額を低く抑えることで登録免許税の負担を抑えることが可能です。



定款は最近では電子定款といって、公証役場への提出をペーパーレスとすることで定款印紙代を節約できます。そのほか、司法書士などに手続きを依頼する場合には、報酬として4~8万円ほどかかります。

維持コスト

資産管理会社を維持していくうえで、税理士報酬や法人住民税などの負担があります。 法人の場合は赤字決算であっても住民税の均等割が最低でも毎年約7万円発生するため、継続的なコストとして大きな負担となります。

運営コスト

社会保険料は、会社と社員が折半で負担することになっています。資産管理会社の実態は会社と役員の両方が本人のため、経営者が支払うべき社会保険料も事実上自己負担となります。

不動産の移転コスト

個人名義の不動産を資産管理会社に移す際には、登録免許税(固定資産税評価額の2%)、不動産取得税(固定資産税評価額の3~4%)、消費税(取引価格の10%)などの移転コストが発生します。

また資産管理会社に移転した資産は、会社の所有物となるためオーナーが個人的な目的で自由に使うことはできなくなります。個人で利用した場合には、役員報酬や配当という形での支払いが行われ、所得税の課税対象となるため留意が必要です。

事務負担の増加

個人事業主であれば、すべての経営判断を事業主1人で行えます。 しかし、法人になると経営上の重要な事項に関しては、株主総会や取締役会の決議が必要です。実質的なオーナーだけの会社であっても、株主総会と取締役会の議事録は残しておく必要があります。

また、会計帳簿や決算書の作成、税務申告業務などの手続きや書類が増えるため、法人の場合には事務負担が増加します。

資産管理会社設立の方法と手順

設立する方法は一般的な会社設立と同じですが、法人形態としては株式会社と合同会社があります。合同会社には、設立コストや管理コストが安くすむというメリットがあります。 会社設立の大まかな流れは、以下のとおりです。

基本事項の決定

社名や本店所在地など、会社の基本事項を決める必要があります。社名には一定のルールがあるため、ルールに従った名前でなければなりません。 また、基本事項として以下を決めておく必要があります。

●本店所在地
●出資者、役員
●資本金(1円から可)
●決算月(設立から1年以内であればいつでも可)

法人設立のために必要な準備

印鑑の作成

会社設立の際に、設立登記申請で必要となる代表者印をつくります。会社設立後の事業運営を考えて、銀行印、社印(角印)、実印の3点セットを用意することが一般的です。

定款の作成・認証

定款とは会社の目的や組織など会社の運営に関する基本事項を定めたもので、法人を設立する場合は必ず必要です。「絶対的記載事項」として定款に必ず記載すべき事項は、以下の項目です。

●事業目的(事業の内容)
●商号(社名)
●本店の所在地
●設立に際して出資される財産の価格または最低価格
●発起人の氏名・住所
作成した定款を公証役場または電子認証により、公証人の認証を受けることで法的に有効な定款となります。

出資金

出資金を金融機関に払い込みます。現在は株式会社であっても、出資金1円から設立できるようになりました。新規で代表者が銀行口座を開設し、出資者の名前で振込を行います。

役所への届け出

商業登記簿への登記をすることで、会社の設立が社会的に認められます。会社の設立登記は管轄の登記所(法務局)に申請して行い、登記申請が受理された日が会社設立日です。

設立登記申請を行ってから、実際に登記が完了するまでに数日かかります。完了すると、定款の写しや登記事項証明書を発行できます。

法人設立後は、「法人設立・設置届出書」を税務署及び都道府県事務所、市町村に提出してください。提出の際には、定款の写しや登記事項証明書を添付します。

まとめ

資産管理会社の設立は、不動産などの資産を多く所有されている方にはメリットが多いものです。しかし、さまざまなコストの発生や維持管理の負担も発生します。 自身の状況に合わせて資産管理会社の設立が本当にメリットになるか、慎重に検討しましょう。

  • 近藤 翔太

    監修者 近藤 翔太

    2008年入社。中堅中小企業の会計事務所業務を経て、2010年大阪支社立上げ時より赴任し、再生業務・事業承継業務・M&A業務等幅広い業務に従事。 大手証券会社に出向を経て、2017年より大阪支社副支社長。 現在、支社の事業承継・M&A責任者として、中堅中小企業から上場企業までの様々な案件を推進。2010年税理士登録。