インドネシアにおける新税務管理システム「コア・タックス・システム(CTAS)」の導入と実務上の重要論点-PMK-81/2024に基づく2026年申告への対応

インドネシアにおける新税務管理システム「コア・タックス・システム(CTAS)」の導入と実務上の重要論点-PMK-81/2024に基づく2026年申告への対応

インドネシア財務省は2024年10月18日、財務大臣規則2024年第81号を公布し、新税務管理基幹システムであるコア・タックス・システム(CTAS)の導入に向けた法的枠組みを整備しました。本規則は2025年1月1日より施行されます。本稿では、CTAS導入に伴う行政メカニズムの変化と、実務上の留意点について解説します。

 

※本稿は、三菱UFJ銀⾏会員制情報サイト「MUFG BizBuddy」寄稿記事からの転載です。

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1. はじめに:CTASの概要と法的根拠

インドネシア財務省は2024年10月18日、財務大臣規則2024年第81号(PMK-81/2024)を公布し、新税務管理基幹システムであるコア・タックス・システム(Core Tax Administration System:CTAS)の導入に向けた法的枠組みを整備しました。本規則は2025年1月1日より施行され、既存の42の税務規則を廃止・統合しています。

CTASは、納税者登録、申告、納税、監査、徴収を含む税務の基礎プロセスを合理化する国税総局(DGT)の統合サービス管理システムです。本稿では、CTAS導入に伴う行政メカニズムの変化と、2026年に実施される2025年度分の申告から適用される実務上の留意点について解説します。

2. 行政メカニズムの主要な変更点

税務上の権利・義務の電子的実施と納税者アカウント

税務上の権利と義務は、原則として納税者ポータルやDGTの管理システムと統合された電子チャネルを通じて電子的に行使され、提出する電子文書には電子署名が要求されます。DGTは納税者に対して「納税者アカウント(Taxpayer Account)」を提供し、同アカウントを通じて決定書や電子文書が送受信される仕組みとなります。

NITKUの導入と支店NPWPの廃止

法人納税者および特定の個人事業主は、事業所在地を所轄の税務署に報告し、事業所在地ごとに「事業拠点識別番号(NITKU)」を取得する義務を負います。これに伴い、従来の「支店納税者番号(NPWP)」という用語および概念は適用されなくなります。

税金預託制度の創設

特定の税金債務に割り当てられていない税金の支払いを「税金預託(Deposit Pajak/Tax Deposit)」として扱う制度が導入されました。この預託金は、振替(Pemindahbukuan/Overbooking)プロセスを通じて未払いの税金の決済に充当することが可能であり、未使用分の還付を請求することも可能です。

3. 実務上の重要論点(2026年申告からの適用事項)

個人所得税:扶養家族のCTAS登録義務

2025年度分(2026年申告)より、個人所得税の確定申告はCTASを通じて行われます。従来の申告書への人数記載による控除適用から運用が変更され、政府データベースに登録・紐付けされた家族のみが扶養控除の対象として認識されます。インドネシア国籍を持たない扶養家族には新たに16桁の税務識別番号(NIP)が発行され、納税者本人のアカウント内で家族全員を「家族ユニットデータ(DUK)」として登録します。識別番号を紐付けない場合、配偶者控除や子供控除がシステム上で自動適用されず、税負担が増加するリスクがあります。登録には家族のパスポート、暫定居住許可(KITAS)、家族関係を証明する書類(戸籍謄本の英訳・公証等)の事前準備が必要です。

外国人駐在員に対する属地的課税の適用要件

特定の専門資格を有する外国人駐在員が、国内源泉所得に対してのみ課税を受けること(属地的課税)を申請する場合の要件が厳格化されました。当該適用を受けるためには、過去2年間の年次所得税申告書を提出する必要があり、承認の有効期間は4年間と規定されています。

法人所得税:財務諸表の電子提出義務

帳簿記入が義務付けられている納税者の年次所得税申告には、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を含める必要があります。公認会計士による監査を受けている場合は監査済みの財務諸表を、親会社の場合は連結財務諸表を添付しなければなりません。法人納税者は、年次税務申告書を電子文書形式でのみ提出することが義務付けられており、非電子形式(郵送等)で提出した場合は未提出とみなされます。

納税期限の標準化

各税目のタイムスケジュール順守を標準化するため、納付期限の変更が行われました。付加価値税(VAT)および法人所得税(CIT)を除き、一般的な納税スケジュールは翌月15日に変更されています。

4. 日系企業に求められるガバナンスの再構築

CTASの導入は、当局によるデータマッチングと課税ベースの捕捉能力を飛躍的に高めるものです。日系企業においては、自社のNITKU取得状況の確認、電子署名プロセスの社内規程化、および新しい納付期限に適合する資金繰り管理体制の構築が急務となります。

さらに、駐在員の個人所得税に関する扶養控除の適用漏れを防ぐため、人事・総務部門の主導による家族のNIP取得およびCTASへのDUK登録サポートを計画的に進めることが強く推奨されます。PMK-81/2024の規定は多岐にわたるため、自社のビジネスモデルに及ぼす個別の論点について、専門家を交えた影響度の精査が不可欠です。

監修者

  • 間所 拓平

    株式会社AGSコンサルティング
    国際部門シンガポール支社長・公認会計士

    間所 拓平

    2009年、監査法人A&Aパートナーズ入社。小規模企業から上場企業を対象に監査業務、内部統制支援、IPO支援等の業務に従事。
    2018年にAGSコンサルティングに入社。M&Aトランザクション業務に従事後、AGS Consulting Singaporeにて日系企業のシンガポール進出に際しての会計・税務支援、内部統制支援、クロスボーダーの財務デューデリジェンスやその後のPMI等をサポートしている。

    2024年よりインドネシアのジャパンデスクを兼務。