インドネシアは東南アジア最大級の経済圏であり、日系企業にとっても重要な進出先の一つです。一方で、税制は複雑かつ頻繁に改正されるため、正確な理解と最新情報の把握が不可欠です。本稿では、インドネシアの主要な税目の概要について解説します。
※本稿は、三菱UFJ銀⾏会員制情報サイト「MUFG BizBuddy」寄稿記事からの転載です。
2025.06.19(最終更新日:2025.07.03)
インドネシアは東南アジア最大級の経済圏であり、日系企業にとっても重要な進出先の一つです。一方で、税制は複雑かつ頻繁に改正されるため、正確な理解と最新情報の把握が不可欠です。本稿では、インドネシアの主要な税目の概要について解説します。
※本稿は、三菱UFJ銀⾏会員制情報サイト「MUFG BizBuddy」寄稿記事からの転載です。
インドネシアは東南アジア最大級の経済圏であり、日系企業にとっても重要な進出先の一つです。一方で、税制は複雑かつ頻繁に改正されるため、正確な理解と最新情報の把握が不可欠です。本稿では、インドネシアの主要な税目の概要について解説します。
インドネシアではさまざまな税目がありますが、多くの企業にとって影響のある法人所得税、個人所得税、源泉徴収税、付加価値税についてみていきます。ちなみに、インドネシア語で所得税を意味するPajak PengHasilanの略称、および所得税法上の条文番号により、該当する税金が「PPH〇〇」のように記載されることも多くあります。
原則として一律22%が課されることとなります。ただし、株式の40%以上を公開しており、一定の要件を満たす上場企業は3%軽減され、19%となります。また、年間売上高が500億ルピア以下の法人は、課税所得のうち48億ルピアまでの年間総売上に対応する課税所得は50%の減税措置を受けることができます。
会計年度は暦年(1月1日~12月31日)が一般的ですが、暦年ではない連続する12カ月を会計年度とすることも可能であり、税務申告は採用した会計年度に基づき行われます。申告納付の期限は事業年度終了後4カ月以内であり、申告に限り事前に申請を出すことで2ヵ月の延長が認められています。
インドネシア居住法人は全世界所得課税が適用されます。納税義務者の税務申告に基づく申告納税方式が採用されており、原則として申告納付はオンラインシステムを通じて行われます。
原則として月次での予定申告納付が義務付けられています。予定納付額は原則として前課税期間の法人所得税の実績に基づき計算され、毎月翌月15日までに納付し、翌月20日までに申告を行います。
課税年度終了時から5年間(犯罪を伴う場合は無制限)
欠損金の繰越可能期間は最高5年とされています。特定の地域や事業、または特定の税制優遇を受けた場合には最大10年まで延長されることがあります。なお、欠損金の繰り戻し還付は認められていません。
インドネシアには連結納税制度はなく、グループ会社を有している場合であっても各法人単位で申告、納税を行う必要があります。
インドネシアの個人所得税は、税務上の居住者に該当するか非居住者に該当するかで課税される範囲が異なります。居住者はインドネシア国内外の全世界所得に対して個人所得税が課せられる一方、非居住者はインドネシアの国内源泉所得のみが課税対象となります。この考え方は日本の個人所得税とほぼ同じであるといえるでしょう。
会社から支給される給与以外にも、住宅費等の手当、車両などの現物給与についても課税対象に含まれる点に留意が必要です。
個人所得税の税率は以下のとおり、年間の課税所得に応じた累進課税となっています。
個人所得税の税率
年間課税所得 | 税率 |
---|---|
6,000万ルピア以下 | 5% |
6,000万ルピア超~2億5,000万ルピア以下 | 15% |
2億5,000万ルピア超~5億ルピア以下 | 25% |
5億ルピア超~50億ルピア以下 | 30% |
50億ルピア超 | 35% |
出典:各種資料より作成
個人所得税は暦年が計算期間となり、原則として翌年3月末が申告期限となります。給与所得に関しては、雇用主(企業)は従業員に支給する給与から所得税額を源泉徴収し、給与支給日の翌月10日までに納付を行い、20日までに申告書を提出する義務があります。
日本における消費税のような税目です。商品、サービスの販売や輸入等に対して課税され、最終消費者が負担することとなります。そのため企業が付加価値税を負担することはありませんが、企業側で付加価値税を徴収、申告することが必要となります。
2025年1月より12%に引き上げられましたが(従来は11%)、12%となる対象は奢侈税(しゃしぜい)の対象となる高級品に限定されました。そのため、実際には多くの取引で11%となっています。
商品・サービスの販売、輸入等
毎月の実績を翌月末までに申告し、付加価値税を納税する必要があります。
インドネシアでは、確実な徴税のために源泉徴収の対象が広く設定されています。特定の取引に関し源泉徴収税を課すことにより、法人税を前払いさせるような制度設計となっています。
法人税の前払いとして支払われる源泉徴収税は、最終的に確定申告において法人税額から控除されます。この前払いした法人税額がその課税期間の法人税額を上回る場合には、還付申請をすることになります。ただし、還付申請をする場合には税務調査が義務付けられています。
源泉徴収される税目とその対象および税率の例
税目 | 対象 | 税率 |
---|---|---|
PPH22 | 物品の輸入取引 | 「CIF(運賃保険料込み)+ 関税」の2.5% |
PPH23 | 国内居住者への利子・ロイヤリティ等 | 15% |
建物・土地以外のレンタル、 その他のサービス等 | 2% | |
PPH26 | 非居住者への支払い (利子・配当、ロイヤリティ、賞金等) | 20% |
非上場株式の売却 | 譲渡価格の5% |
出典:各種資料より作成
日本とインドネシア間の租税条約により、利子・配当・ロイヤリティの源泉税率は軽減される可能性があります(例:配当10%、利子10%、ロイヤリティ10%)
最終分離課税はファイナルタックスと呼ばれ、一度課税された後には課税されることがありません。日本の源泉分離課税に近い制度となっています。
対象となるのは、国内銀行からの利子、株式、土地・建物の売却等です。このような特定の取引については、最終分離課税の対象として課税がされ、源泉徴収により税金が徴収されます。こちらの最終分離課税に関しては、所得を受領した時点で課税が確定し納税が完了するため、通常の確定申告時には所得金額から除外されます。
インドネシアは人口規模と経済成長性から、日系企業にとって非常に魅力的な市場です。一方で、税制や規制が頻繁に改正されることや、今回は紹介できなかった優遇税制、移転価格税制やデジタル課税の強化なども、インドネシアへの進出企業に大きな影響を及ぼす可能性があります。現地の専門家との連携や、最新情報の継続的なモニタリングが不可欠といえるでしょう。