J-SOX(内部統制報告制度)とは?会社法との違い、2024年改訂の内容や3点セット、対応プロセスを解説

J-SOX法(内部統制報告制度)とは?概要や特徴、海外子会社への導入方法を解説

上場企業には「J-SOX(内部統制報告制度)」への対応が義務付けられており、IPO準備企業も上場審査に向けて対応が必須となります。2024年4月に基準が改訂され、従来にも増して、実質的なリスク管理が求められています。本記事では、J-SOXの基本や会社法との違い、最新の改訂ポイント、在外子会社対応を含む実務プロセスまで網羅的に解説します。

 

この記事の要点
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    J-SOX(内部統制報告制度)は、上場企業に義務付けられた財務報告の信頼性を確保するための制度であり、国内外の連結子会社等もその評価範囲に含まれます。違反時には厳しい罰則が科されます
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    2024年4月適用の基準改訂によって、サステナビリティ等の非財務情報の重視、経営者の責任強化、自社特有のリスクに応じた評価範囲の決定など、実質的なリスク管理が求められるようになりました
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    IPO準備段階やM&A後、海外子会社への導入では、早期の対応が重要です。特に海外展開は難易度が高く、現地の慣習を尊重しながら専門家と連携して進めることが成功の鍵となります
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J-SOX(内部統制報告制度)とは

J-SOX法(内部統制報告制度)とは

「J-SOX」とは、金融商品取引法に基づく、財務報告の信頼性確保を目的にした内部統制報告制度のことです。米国において会計処理の不祥事を規制するために生まれた「SOX法」の日本版として導入されました。

上場企業は、金商法に基づき、自社の財務報告に係る内部統制が有効に機能しているかを評価し、その結果を「内部統制報告書」として有価証券報告書と合わせて開示する義務があります。

内部統制との違い(会社法との違い)

会社法J-SOX
対象企業大会社・指名委員会等設置会社など上場企業・連結子会社
目的業務の適正確保財務報告書の信頼性確保
対象者取締役会経営者(当該会社)
内容広範囲の内部統制体制を求める財務報告に係る内部統制に限定し、詳細なリスク管理を求める
作成文書事業報告内部統制報告書
罰則刑事罰は特になし(ただし取締役の損害賠償責任に問われる可能性あり)個人:5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金

法人:5億円以下の罰金

※いずれも内部統制報告書が提出されない場合、内部統制報告書の重要な事項について虚偽の記載をした場合

出典:金融庁公式サイト「金融商品取引法等の一部を改正する法律案要綱(金融商品取引法第 197 条の2、第 207 条関係)」
出典:総務省公式サイト「内部統制関連資料」

そもそも「内部統制」とは、企業が事業活動を効率的かつ健全に運営するためのルールや仕組み全般を指す、一般的な用語です。混同されやすいものとして「会社法における内部統制」があります。その中でも特に、会社法(第362条)では、大会社等の取締役会に対して、企業集団全体の業務の適正を確保するための体制整備を求めています。

一方、J-SOXは、内部統制という大きな枠組みの中で、特に財務報告の信頼性を担保するために設けられた、法的な報告義務制度といえます。会社法における内部統制と比較すると、J-SOX(金融商品取引法)は、対象が財務報告に特化している点や、違反時に厳しい罰則規定が設けられている点に大きな違いがあります。

出典:e-Gov「会社法第362条」
出典:e-Gov「金融商品取引法第24条の4の4」

2024年のJ-SOX改正 3大ポイント

内部統制とは

2008年にスタートしたJ-SOXは、2023年に大幅な基準改訂が行われ、2024年4月以降に開始する決算期から新基準が適用されています。具体的には、ビジネス環境の複雑化、IT環境の激変、そして巧妙化する不正会計の多発を背景に、主に以下の3点が強化されました。

  • 財務以外の報告も重要に
  • 経営者の責任とガバナンスの強化
  • 評価範囲の決定とIT統制の見直し

財務以外の報告も重要に

これまでのJ-SOXは、「財務諸表の数字が合っているか」という点のみが重要視されていました。

しかし、今回の改訂では、内部統制の目的の一つである報告の信頼性が、財務報告だけでなく、気候変動リスクや人的資本といったサステナビリティに関する「非財務情報」にも広がり得る旨が明記されました。J-SOXにおける直接の評価対象はあくまで財務報告に係る内部統制のままですが、非財務情報であっても財務諸表の数値に影響を与えるものや、有価証券報告書内で財務情報と密接に関わる記載については、全社的なリスク管理の枠組みの中で整合性を意識することが求められるようになっています。

なお、非財務情報とは、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表では捉えきれない、企業の社会的、環境的、ガバナンス(統治)に関する側面を示す情報を指します。

経営者の責任とガバナンスの強化

過去に発生した重大な不正会計事件の多くは、経営トップ自身の関与や過度なノルマのプレッシャーなど、経営者による内部統制の無効化が原因で起きています。

これを受け、改訂基準では、取締役会や監査役などの監視機能をより強化し、経営層の独断専行を牽制する仕組みが盛り込まれました。

また、内部統制に関係する各部門の役割も再定義され、制度の運用・評価における最終責任が経営者にあることが、改めて明記されています。

評価範囲の決定とIT統制の見直し

従来、J-SOXの評価範囲の選定は、売上の3分の2をカバーしていれば概ね妥当といった、形式的な基準に基づいて行われていました。

しかし、改訂後は、この目安にとらわれず、自社特有のリスクを考慮して実質的に評価範囲を決定することが求められます。例えば、グループにおける売上高の割合が数%の子会社であったとしても、グループ全体にとって重要な事業を担っているのであれば、評価範囲に含めることを検討しなければなりません。

また、サイバー攻撃などのリスクの高まりを受けて、IT統制についても、外部のクラウドサービス等を利用する際のリスク管理やサイバーセキュリティ対策を、より重要視する必要があります。

J-SOX対応の整備・見直しが強く求められる状況

J-SOXの主な特徴

J-SOXはすべての上場企業に義務付けられていますが、特に、以下のフェーズにあるような企業は、早急な内部統制の構築・見直しが必要となります。

  • IPOに向けた準備段階
  • M&Aを実施した後のPMI(統合プロセス)
  • 事業環境の変化に伴うスコープの拡大

IPOに向けた準備段階

上場審査をクリアするということは、すなわち上場企業に相応しい内部統制が整備されていることと同義です。IPOに向けた過程では、J-SOXの文書化、整備、運用評価を進めていく必要があります。

IPOを行う成長企業にとっては、J-SOXへの対応自体が初めてとなるため、社内関係者へJ-SOXの意義を理解させ、いかに早期に準備を進めて課題を洗い出せるかが、上場スケジュールの鍵を握るといえます。

M&Aを実施した後のPMI(統合プロセス)

M&Aの取引成立後は、買収した企業(子会社)をグループ内の重要度に応じて、自社のJ-SOXの評価範囲に組み込む必要があります。

PMIで統合すべきポイントは、人事制度、ITシステムといった経営基盤に関わるものから、企業文化といったソフト面まで多岐にわたります。その中で、監査法人が要求するスケジュールに合わせて、短い期間でJ-SOXの導入を進めなければなりません。

事業環境の変化に伴うスコープの拡大

法改正や円安傾向などの外部要因を受け、グループ内における在外子会社の重要性が、従来に比べて相対的に高まるケースが増えています。これに伴い、これまで対象外だった海外子会社が新たにJ-SOXの評価範囲(スコープ)に含まれることがあります。

在外子会社へのJ-SOX導入は、日本国内に比べても日本本社・現地拠点ともに負担が大きいため、導入の背景やスケジュールを早期に共有し、現場の協力を得ることが重要です。

J-SOXの対象企業と違反した場合の罰則

J-SOXの対象企業

J-SOXの対象企業と評価範囲

J-SOXへの対応が義務付けられるのは、金融商品取引所に上場しているすべての企業です。ただし、実際の評価範囲は、本社単体だけにとどまりません。以下のようなグループ会社等も、評価の対象範囲に含まれます。

  • 子会社(海外に所在する場合を含む)
  • 関連会社
  • 外部委託先(給与計算やシステム運用など、財務報告に関連する業務を委託している場合)

子会社が非上場企業で連結している場合は、親会社が子会社分の内部統制評価を行い、子会社による自社評価は不要です。一方、子会社が上場している場合は、親会社と子会社ともに子会社の内部統制評価を行わなければなりません。

子会社によって内部統制報告の作成・監査が済んでいる場合は、親会社はその書類を活用して内部統制評価を行えます。

J-SOXに違反した場合の罰則

J-SOXに違反した場合、金融商品取引法に基づく重い刑事罰の対象となり、経営陣個人と会社の両方に罰則が科されます。

内部統制報告書の重要な事項について、虚偽の記載をした場合や正当な理由なく内部統制報告書を提出しなかった場合、個人に対しては5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金(またはその両方)が科されます。また、法人に対しては5億円以下の罰金が科されます。

これらの法的ペナルティに加え、上場廃止リスク、株主からの損害賠償請求(代表訴訟)、社会的信用の失墜など、企業存続を揺るがす甚大な経営リスクを伴います。

J-SOX対応の実務プロセスと進め方

J-SOX対応の進め方

実際にJ-SOX対応を進める際の実務プロセスを、5つのステップで解説します。

  1. 評価範囲を決める
  2. J-SOX(内部統制)3点セットの作成
  3. 自社の内部統制の評価・是正
  4. 公認会計士・監査法人による評価
  5. 内部統制報告書の開示

1. 評価範囲を決める

まずは全社的な視点で、評価を行う対象範囲を決定します。評価項目は大きく分けて、以下の4種類です。

内部統制の種類内容
全社的な内部統制企業全体および財務報告全体に大きく影響する統制
決算・財務報告に係る内部統制財務諸表などの有価証券報告書を作成する一連の過程の統制
業務プロセスに係る内部統制業務プロセスに組み込まれ一体となって遂行される統制
IT統制ITを利用した情報システムに関する統制

一度に全業務の内部統制を評価することは、作業量が膨大となり困難なため、経営者は、全社的な内部統制の評価結果を踏まえ、財務報告の信頼性に大きく影響する業務を選定し、内部統制を部分的に評価します。

その際、2024年の基準改訂に伴い、単なる売上比率だけでなく、自社特有のビジネスリスク、非財務情報、ITリスクなどを加味して評価範囲を決定することが重要です。

2. J-SOX 3点セットの作成

資料の種類内容
業務記述書業務内容や手順、業務担当者などを明文化した書類を指します。業務の概要や管理方針、業務分担などを把握するために作成します。
フローチャート業務の流れを図式にして可視化した書類です。取引と会計処理の流れを整理することで、内部統制上のリスクが明確になります。
リスクコントロールマトリクス(RCM)業務上のリスクと、そのリスクへの対応策を表にした文書です。業務ごとのリスクを識別し、どのようにリスクを低減させるのかといった関係性が明確になります。

評価範囲が決まったら、業務プロセスのどこで不正やミスが起きそうか、それを防ぐチェック体制が組み込まれているかを可視化するための文書を作成します。これらは以下の3種類の文書にまとめられ、総称して「3点セット」と呼ばれます。

業務記述書

評価対象とする業務の手順を、時系列に沿って詳細な文章で表現したマニュアルです。誰が、いつ、どのようなシステムを使って業務を行っているかを記述します。

フローチャート

業務記述書の内容をベースに、業務の流れを視覚的に図解したものです。プロセス全体の繋がりや、情報の流れを直感的に把握するために用います。

リスクコントロールマトリクス(RCM)

業務プロセスに潜むリスクと、それに対応する統制活動(コントロール)を対比させた一覧表です。J-SOX評価において、特に重要なツールとなります。

3. 自社の内部統制の評価・是正

3点セットで定めたルールが正しく設計されており、実際にその通りに運用されているかをテスト・評価します。

結果に問題があった場合は内部統制を是正し、是正できなかった不備は「開示すべき重要な不備」なのかを評価したのち、評価過程と評価結果を内部統制報告書に記載します。

4. 公認会計士・監査法人による評価

これまでのプロセスで行った自己評価の結果が妥当であるかを、外部の独立した監査人(公認会計士・監査法人)が評価します。

監査人は、直接内部統制の有効性を評価するのではなく、「経営者が行った自己評価の手続きや結果が妥当であるか」を監査します。内部統制に重要な不備が見つかった場合でも、内部統制報告書にその旨の記載があれば、内部統制報告書は適正であると判断されます。

監査人からの追加テストや証拠提出の要請に対応し、最終的に問題がなければ、内部統制監査報告書を受け取ります。

5. 内部統制報告書の開示

監査結果を受け、経営者は「当社の財務報告に係る内部統制は有効である」旨を記載した内部統制報告書を作成します。

作成した内部統制報告書は、各事業年度終了後、3ヵ月以内に有価証券報告書とあわせて財務局および金融庁へ提出・開示します。

なお、2024年改訂以降は、評価範囲を決定した具体的な理由や、経営層が内部統制にどう関与したかなどを、付記事項として詳細に記載する必要があります。

新規上場企業にも内部統制報告書の提出は義務付けられており、これから上場を目指す企業はJ-SOXへの対応が必要不可欠です。

海外子会社へのJ-SOX対応

海外子会社に内部統制を導入する場合の留意点

海外子会社へのJ-SOXの導入は、国内子会社に比べて、言語や慣習の違いも影響し、難易度が高くなります。

導入に当たっては、現地の慣習やルールを尊重し、親会社から無理なトップダウンによる指導を行わないことがポイントといえます。例えば、地域によって、以下のような点に留意すべきです。

地域 留意点 
東南アジア 本社の意向を重視しつつも、現地の独自の法令や言語・文化に配慮した対応が不可欠 
北米・欧州・豪州等 現地国なりの方法で文書化評価を進めていくことを望む場合も多く、日本にコントロールされたがらないことがある 

ここでは、以下の7ステップに沿って、 海外子会社へのJ-SOX導入を解説します。

  1. 現地の体制確認
  2. 導入スケジュールの決定
  3. 文書のフォーマット・評価項目の決定
  4. 内部統制に関する教育・概念の説明
  5. 評価範囲別の調査と評価
  6. 現地に即した3点セットの作成
  7. 整備・運用状況の評価と監査対応

1. 現地の体制確認

海外子会社の場合、内部統制担当者が現業と同時進行で対応するケースが多く、リソースが十分でない状況が想定されます。

そのため、まず現地子会社に対応可能な人員がどの程度存在するかを、把握する必要があります。

2. 導入スケジュールの決定

海外子会社へのJ-SOX導入のスケジュールは、国内子会社に比べて余裕を持たせることがポイントです。

海外子会社では、日本本社と物理的な距離や時差が生じるため、対面でのコミュニケーションは難易度が高いです。主なコンタクトの手段であるメール等のコミュニケーションについても、国内に比べてやりとりに時間がかかります。海外では長期休暇による担当者不在のケースもあるため、事前に休暇日程を確認してスケジュールを策定することが、作業の効率化につながります。

特に、企業買収時や子会社の重要性が上がってJ-SOXのスコープに入るようなケースでは、親会社と子会社が綿密なコミュニケーションを図り、入念にスケジュールを調整して対応することが重要です。

3. 文書のフォーマット・評価項目の決定

内部統制評価において使用する3点セットや、評価調書等の文書のフォーマットおよび評価項目を決定します。

文書のフォーマットについては、最終的には現地の担当者に自己点検してもらうケースが一般的であるため、初期段階で各文書をどの言語(日本語・英語・現地語)で作成して自己点検するかを明確化しておく必要があります。いずれの言語を採用するにせよ、新任の担当者が容易に理解できる表現を用いるのが望ましいでしょう。

また、評価調書上の評価項目については、国内拠点の場合と同様に、監査法人と事前に協議する必要があります。評価項目の数が多すぎると、大幅な作業工数が発生して非効率になる恐れがありますので、この点も監査人との協議内容に含めたほうがよいでしょう。

4. 内部統制に関する教育・概念の説明

海外子会社へのJ-SOX導入において、現場への教育は非常に重要です。J-SOXは日本独自の制度であるため、そもそもなぜ内部統制の構築が必要かを丁寧に説明しなければなりません。

加えて、日本の親会社と海外子会社とでは使用言語も異なるため、本社と現地担当者との間でコミュニケーションギャップが生じやすいという課題もあります。

内部統制の教育を行ううえで押さえるべきポイントは、以下の2つです。

内部統制は既存の業務の中に存在する

内部統制の概念だけ説明しても、現地の人員が具体的にイメージすることは難しいでしょう。

しかし、現地の従業員が日々取り組んでいる業務(資料間のチェック、承認など)の中にも、多くの内部統制が存在しています。J-SOXに対して難解であるというマイナスイメージを持たれないよう、具体的な日常業務を交えながら指導・教育することが効果的です。

現地の慣習・ルールを尊重し、親会社からトップダウンによる指導を行わない

海外子会社への教育にあたっては、現地の慣習などを尊重し、決して親会社からトップダウンで行うわけではないことを伝えます。海外子会社が主体となって内部統制を構築することの理解を促しましょう。

現地の人員に納得感を持ってもらえると、協力を得やすくなり、作業がスムーズに進められます。そのためには、現地とのコミュニケーションを根気よく取ることが大切です。可能であれば、現地へ出向いて対面で教育を行い、会食等を通じて現地のメンバーと仲良くなるのもよいでしょう。

5. 評価範囲別の調査と評価

評価対象となる範囲に応じて、現地へのアプローチ方法は異なります。

全社統制プロセスの評価

理念や組織体制など、全社に影響を及ぼす統制です。

グループ統制でカバーできるものも多いため、現地での評価範囲は限定し、現地で定められないルールについては日本側で事前に想定課題を整理しておくのが肝要です。

決算・財務報告プロセスの評価

決算・財務報告に直結するプロセスです。

全社的な観点と個別の勘定科目に分け、現地の経理担当者にJ-SOXの重要性を説明して配慮しながらヒアリングを行い、課題解決を促します。

業務プロセスの評価

日々のオペレーションに組み込まれた統制活動です。

事前にアンケートを実施して簡易的にプロセスを把握し、関連帳票を入手した上で、現地のヒアリングに臨むと効率的です。

6. 現地に即した3点セットの作成

J-SOX導入の最終段階において、調査内容を基に、3点セットを作成します。

3点セットの作成に当たっては、業務内容の詳細を正確に記載したり、日本では馴染みのない現地固有の業務内容を理解したりするため、多くの作業工数が発生します。文書化に使用する言語が日本語以外の場合は、さらに翻訳の作業負荷も生じます。このタスクが、J-SOX導入の中で、最も作業工数がかかる工程といえるでしょう。

一方で、スピードを重視して3点セットの品質が低くなってしまうと、後工程である整備・運用状況評価の場面において手戻りが生じ、想定外の作業工数が発生する恐れもあります。

そのため、有効かつ効率的な3点セットを作成するには、以下のポイントが重要です。

  • 勘定科目、リスク、コントロールそれぞれの関係が明確である
  • プロセス全体を俯瞰的に確認可能である(過度に詳細でない)
  • コントロールの記載内容が具体的である

海外子会社がJ-SOXのノウハウを有していない場合、親会社のサポートが不可欠です。各プロセスにおける標準的なリスクを、事前に設定しておくなどの対応を取りましょう。海外子会社が一から文書化を進めるのではなく、標準的なリスクに相当する業務を特定し、文書を作成する手法が有効かつ効率的です。

7. 整備・運用状況の評価と監査対応

前工程で作成した3点セットは、あくまで理想的なルールの文書化にすぎません。作成後は、そのルール通りに現場の業務が継続的に正しく回っているか、整備・運用状況をテストする必要があります。

サインやデータ履歴などの証跡を確認し、運用ルールが守られていない不備が発見された場合は、期末までに業務改善と再テストを行います。最終的にこれらの評価結果を日本の親会社へ報告し、監査法人からの追加質問等に対応して完了となります。

「在外子会社におけるJ-SOX対応時のよくある課題」をダウンロードする

まとめ:IPO準備から海外展開まで、抜け漏れのないJ-SOX対応を

J-SOX法とは?内部統制の概要や特徴、海外子会社への導入方法を解説

J-SOXは、金融商品取引法に基づく、財務報告に関する内部統制報告制度のことです。上場企業は、内部統制が有効に機能しているかを評価し、内部統制報告書として開示しなければなりません。

2024年の基準改訂により、J-SOXは、より実質的なガバナンス強化とリスク管理を問われるようになりました。経営層のコミットメントが強く求められる中、自社特有のリスクに応じた評価範囲の選定や、統制の見直しが必須となっています。

一方で、IPOを目指す準備企業や、海外子会社を多く抱えるグローバル企業にとって、限られたリソースで、適切な内部統制を整備・運用することは容易ではありません。J-SOX対応に不安や課題を感じた場合は、早い段階で豊富な実績を持つ外部の専門家へ相談することをおすすめします。

AGSコンサルティングでは、IPO準備企業向けの内部統制構築支援から、グローバルネットワークを活用した在外子会社へのJ-SOX展開まで、各社の状況に合わせた実践的なサポートを提供しています。J-SOX導入に課題を抱えているご担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

J-SOXに関するよくある質問

Q. J-SOXの対象となるのはどのような企業ですか?

金融商品取引所に上場しているすべての企業が対象です。また、実際の内部統制の評価範囲には、本社だけでなく、国内外の連結子会社や関連会社、さらに業務の一部を委託している外部委託先まで含まれます。なお、新規上場企業にも提出義務があるため、これから上場を目指すIPO準備企業も対応が必須です。

Q. 会社法における内部統制と、J-SOXの違いは何ですか?

会社法が取締役会に対して広範囲な業務の適正確保を求めているのに対し、J-SOXは財務報告の信頼性確保に特化している点に大きな違いがあります。また、会社法の内部統制には罰則がありませんが(取締役の損害賠償責任に問われる可能性はあり)、J-SOXには違反時に個人に対する5年以下の拘禁刑や、法人に対する5億円以下の罰金といった厳しい罰則規定が設けられています。

Q. 2024年のJ-SOX基準改訂で、何が一番大きく変わりましたか?

最も大きな変化は、形式的基準から実質的なリスク管理への移行です。気候変動や人的資本などの非財務情報であっても、財務諸表の数値に影響を与えるものは整合性が問われるようになったほか、経営者の責任がより強く明記されました。また、評価範囲を決定する際も、売上の3分の2といった機械的な基準にとらわれず、自社特有のリスクを考慮して決めることが求められます。

Q. J-SOX対応で作成する3点セットとは何ですか?

業務プロセスにおけるリスクとチェック体制を可視化するための「業務記述書」「フローチャート」「リスクコントロールマトリクス(RCM)」の3つの文書を指します。これらを作成することで、業務の流れのどこで不正やミスが起きそうか、リスクを低減する仕組みがあるかを明確にします。

Q. 海外子会社へJ-SOXを導入する際、気をつけるべきポイントは何ですか?

日本本社からの無理なトップダウンによる指導を行わず、現地の慣習やルールを尊重することが重要です。言語や文化の壁があるため、制度の目的を丁寧に説明・教育するとともに、自己点検を見据えた言語やフォーマットの決定を、日本国内より余裕を持ったスケジュールで進める必要があります。

監修者

  • 間所 拓平

    株式会社AGSコンサルティング
    国際部門シンガポール支社長・公認会計士

    間所 拓平

    2009年、監査法人A&Aパートナーズ入社。小規模企業から上場企業を対象に監査業務、内部統制支援、IPO支援等の業務に従事。
    2018年にAGSコンサルティングに入社。M&Aトランザクション業務に従事後、AGS Consulting Singaporeにて日系企業のシンガポール進出に際しての会計・税務支援、内部統制支援、クロスボーダーの財務デューデリジェンスやその後のPMI等をサポートしている。

    2024年よりインドネシアのジャパンデスクを兼務。