※本稿は、みずほ銀行発信の『Asia Gateway Review』2026年1月号に寄稿した記事の転載になります。Asia Gateway Reviewはみずほ銀行シンガポール支店で編集され、主にASEAN関連のテータを中心に月一回発行されているニュースレターです。
目次
- はじめに
- 申告納付のスケジュールとタイミング
- 課税対象期間
- 申告期間
- 納税通知(NOA)発⾏と納付期限
- 延⻑申請
- 申告義務の有無とIRASからの通知
- 居住者/⾮居住者の判定と税率
- 課税対象
- 申告⼿順
- 1.myTax Portalにログイン
- 2.申告フォームを選択
- 3.給与情報等の⼊⼒/事前⼊⼒情報の確認
- 4.追加情報の⼊⼒
- 5.控除・リベートの申請
- 6.内容確認 → 提出
- おわりに
はじめに
あけましておめでとうございます。年が明け、今年もシンガポールでの確定申告の時期が近付いてきました。シンガポールでは日本と異なり、毎月の給与から所得税は源泉徴収がされず、原則的に各個⼈が確定申告を実施して⾃主的に所得税を納税する必要があります。毎年のことになりますが、本コラムにて改めての確認のため基本から触れていきたいと思います。
申告納付のスケジュールとタイミング
通常の確定申告のスケジュールは以下の通りです。
課税対象期間
- シンガポールの個⼈所得税の課税対象期間は日本と同じ暦年ベース(1月1日〜12月31日)です。
- 課税期間を「Year of Assessment(YA)」と呼び、確定申告をする年でYAを呼称します。例えば2025年1月1日〜12月31日までの期間については、2026年に確定申告をする形になるので、「YA2026」と呼びます。
申告期間
- e-Filing(電子申告)︓毎年 3月1日〜4月18日
- IRASから通知が届いたら、myTax Portalでログインして確認ができます。
納税通知(NOA)発⾏と納付期限
- 確定申告後、IRASが審査し、通常5月〜9月頃にNotice of Assessment(NOA)が発⾏されます。
- 確定申告後、即時にNOAが発⾏される場合もあります。
- 納付期限はNOA発⾏日から30日以内。
- 支払い⽅法︓GIRO(分割払いも可)、インターネットバンキング、AXS端末など。
延⻑申請
- 申告期限の延⻑は、myTax Portalで最⼤14日程度の猶予申請が可能。
申告義務の有無とIRASからの通知
前年の総所得がS$22,000以上、または⾮居住者としてシンガポール源泉所得がある場合などが原則的にシンガポールで確定申告が必要とされております。
ただ実務上は、たとえ収⼊が少なくてもIRASから申告が必要な旨の通知を受けた場合には申告が必要となります。そのため、myTax Portal上で⾃⾝の連絡先や通知受信設定(メール/SMS)をしておく必要がございます。IRASからの申告案内や審査通知を確実に受け取るため、住所や電話番号の管理は重要となります。
また反対に前年の収⼊や控除が一定以下でIRASが⾃動で申告を済ませてくれる場合やAuto Inclusion Scheme(AIS)の適⽤等によりIRASが申告不要と判断した場合には、IRASからNo-Filing Service(申告不要)の通知が届き、その場合は特に確定申告の⼿続きは不要(ただし、任意で⾃主申告することは可能です)となります。
居住者/⾮居住者の判定と税率
シンガポールの国内法上、以下の場合、税務上「居住者(Resident)」とみなされます。
- シンガポール市⺠またはPR
- 外国⼈でも暦年で183日以上滞在
- 連続して2年間通算183日以上滞在、または3年超継続滞在
居住者は累進課税(0〜24%)が適⽤され、⾮居住者は給与等に対し15%または居住者税率の⾼い⽅を適⽤します。
状況によっては税務上の居住者/⾮居住者の判定はシンガポール国内法だけでなく、日本法および租税条約を加味して検討する必要がある場合があるため、個別検討が必要になります。
課税対象
- 全世界所得課税である日本に対し、シンガポールは領域課税主義なので、原則としてシンガポール国外源泉所得に関しては課税されません。
- ただし、給与等に関しては給与の支払法⼈や受け取る銀⾏口座の場所、通貨の種類で判断するものではなく、シンガポール法⼈との雇⽤契約に基づく就労に対する給与として支給されているものは、原則的に日本本社が給与を支払っていた場合や日本の口座に⼊⾦がされている場合でもシンガポール国内源泉所得として課税対象となるため注意が必要です。
- また、現⾦支給される給与だけでなく社宅、⾞両、税⾦の会社負担等、現物給与(Benefits-in-kind)も課税対象となります。
申告⼿順
実際に申告をする場合は以下の⼿順で申告を⾏います。
1.myTax Portalにログイン
- IRASの公式サイト(https://www.iras.gov.sg/)からmyTax Portalにアクセス
- 個⼈のSingpass(シンガポールのデジタルID)でログイン
2.申告フォームを選択
- 「Individual Income Tax Return」→ YA(課税年度)を確認
3.給与情報等の⼊⼒/事前⼊⼒情報の確認
- 毎年3月1日までに雇⽤主からIR8(日本の源泉徴収票のような書類で1年間に支給された給与や⼿当の情報が記載)が発⾏される
- IR8の情報を基に給与額等を⼊⼒
- AIS(Auto Inclusion Scheme)企業(※)の場合、給与・⼿当・BIK(社宅・⾞など)が⾃動反映
※AISとは従業員5名以上の会社が、IRASに対して従業員の給与情報を電子的に送信する制度です。AISによって会社が申告したデータは⾃動的に従業員個⼈の所得情報として反映がされますので、従業員個⼈はmyTax Portalから給与情報の⼊⼒ページに⾏きAISにより⾃動反映されている給与情報を確認することができます。
4.追加情報の⼊⼒
海外支給分(日本本社給与)、株式報酬(RSU/ESOP)、その他所得の⼊⼒
5.控除・リベートの申請
配偶者控除、扶養控除、など
6.内容確認 → 提出
提出後、確認メールが届きます
おわりに
日本からの駐在員の場合、個⼈所得税申告に関しては会社の⽅で対応されているケースも多いかと思いますが、ご⾃⾝で確定申告を対応しなければならない場合や、現地法⼈の責任者として赴任されている場合は、雇⽤主側の⽴場として個⼈所得税の基本的なルールや仕組みを理解しておくことが必要となります。
本コラムが日系企業にとって当地での適切な申告納税の実施の一助となれば幸いです。
