近年、マレーシアでは、同国に進出している日系企業にとっても影響の大きな税制改正等が発表されており、ビジネスを行う上で重要なポイントの1つとなっています。本稿では、日系企業が注意しておくべきマレーシア税務の最近の「アレコレ」を紹介します。
※本稿は、三菱UFJ銀⾏会員制情報サイト「MUFG BizBuddy」寄稿記事からの転載です。
2022.06.15(最終更新日:2024.12.02)
近年、マレーシアでは、同国に進出している日系企業にとっても影響の大きな税制改正等が発表されており、ビジネスを行う上で重要なポイントの1つとなっています。本稿では、日系企業が注意しておくべきマレーシア税務の最近の「アレコレ」を紹介します。
※本稿は、三菱UFJ銀⾏会員制情報サイト「MUFG BizBuddy」寄稿記事からの転載です。
近年、マレーシアでは、同国に進出している日系企業にとっても影響の大きな税制改正等が発表されており、ビジネスを行う上で重要なポイントの1つとなっています。本稿では、日系企業が注意しておくべきマレーシア税務の最近の「アレコレ」を紹介します。
マレーシアでは従前より、マレーシア国内源泉所得(マレーシア国内で発生または稼得した所得)が課税対象とされており、マレーシア国外で得られた所得である、いわゆる「国外源泉所得」に関しては基本的に課税対象外となっていました。
しかし、2022年の税制改正により、2022年1月1日以降は原則的にマレーシア居住者またはマレーシア居住法人がマレーシア国内で受領する国外源泉所得についても課税対象となりました。
なお、経過措置として2022年1月1日から2022年6月30日までは、マレーシア国内で受領する国外源泉所得は3%の税率で課税されます。
原則、マレーシアでの法人税申告期限は、決算期から7カ月以内とされています。従って、2021年12月が決算期の法人の場合、原則的に確定申告期限は2022年7月31日までとなります。
しかしながら、マレーシア内国歳入庁(Inland Revenue Board of Malaysia:IRB)は、2021年賦課年度および2022年賦課年度(YA2021およびYA2022)の確定税申告期限について、1カ月の猶予期間を設けることを発表しています。つまり、2021年12月が決算期の法人の確定申告期限は2022年8月31日まで、2022年3月期の法人の場合は2022年11月30日までとなります。
マレーシアでは、各事業年度の法人税額につき見込申告の提出を義務付けており、原則的にその事業年度開始の30日前までに見込申告の提出をしなければなりません。また、その見込申告における法人税額は、前年の見込申告における法人税額の85%を下回ってはならないとされています。
見込申告書を提出した法人は、その見込申告に基づき、事業年度開始後2カ月目より毎月15日までに法人税の分割納付を行うこととなります。なお、最終的な分割納付額の合計が、確定申告における最終法人税額を30%以上、下回ってしまった場合には、その不足額に対し、10%のペナルティーが科されます。
見込申告を行った法人は、事業年度開始から6カ月目と9カ月目に見込申告の修正をする機会が与えられており、見込申告における法人税額の変更をIRBに申請することができます。
ただ、この見込申告の修正に関しては、新型コロナの影響により例年に比べ多くの企業で利益の変動が起きることが予想されるため、2022年税制改正により、通常の6カ月目と9カ月目に加え、事業年度開始から11カ月目での修正も認められるようになりました(2022年10月31日決算期まで)。
マレーシアでは2019年の税制改正において、税務上の繰越欠損金の繰り越し期限が7年とされていましたが、2022年の税制改正により10年に延長されることになりました。
なお、この改正により、2018年賦課年度(YA2018)以前に発生した欠損金についても、すべて2028年賦課年度(YA2028)まで繰り越すこととされています。
2022年の税制改正において、所得税法第107条Dに基づく新しい源泉徴収税規定が発表され、2022年1月1日に施行されています。
この新しい規定に基づき、マレーシア法人は、居住者である個人*が法人の代理人、ディーラー、販売店として行った販売、取引等(以下,「販売コミッション」)から発生する総支払金額に対して、2%の源泉税を徴収する必要があります。
さらに、その源泉徴収を行った法人は、販売コミッションの支払いから30日以内にIRBに当該源泉税を納付することが義務付けられています。
なお、法人の源泉徴収義務は、前年1年間に受け取った販売コミッションの合計が10万リンギ以上である個人の場合のみ、適用されます。
IRBは、マレーシア税法の適切な執行を目的として納税者からさまざまなデータを収集しています。マレーシア所得税法第81条では、税務署長に対し、必要な情報を要求する権限を与えています。
実際、マレーシアの日系企業にもIRBからレターが届いており、一定の期限内に取締役やサプライヤーまたはベンダーに対する支払いの情報等を提供するように要求されることがあります。
このような方法で収集された情報をもとに、IRBにおいて税務調査等が実施される可能性も考えられます。
今回は、日系企業が注意すべきマレーシア税務の最近の「アレコレ」をいくつか紹介しました。
本稿で紹介した中だけでも、国外源泉所得に対する課税関連の変更や販売コミッションに係る源泉税の取り扱い等、納税者にとって課税範囲が広がったり、事務手続きが増したりする改正が入っています。このような改正の影響を受ける会社においては、注意を怠ると税務署からの指摘や予期せぬペナルティー等につながる可能性があります。
予期せぬリスクを回避するため、マレーシアの税制改正等に関しては、必要な情報を適切に整理し、それが自社にとって影響があるものか否かを事前に把握しておくことが大切になります。
* 個人事業主やパートナーシップのパートナーを含む。