事業再生とは

事業再生とは、採算性の悪い事業に着目し、事業を根本から改善することで利益率を立て直すことを指します。
会社に倒産への赤信号がともったとしても清算せず、借入金や買掛金の弁済・支払い期限の延長を視野に入れ、利益率の高い事業を再構築します。
企業再生との違い
企業再生は、事業再生と一緒によく使われる言葉です。企業全体に着目し、赤字や債務超過などの原因を根本から改善し、適切で安定した経営に軌道修正します。
言葉の違いに法的根拠はありません。対象が各事業なのか、それとも会社経営全体なのか、という違いを捉えて使い分けるのが一般的です。
再生が必要なケース
日本公認会計士協会が発行している「監査基準委員会報告書570_継続企業」には、以下のような場合、その会社の経営状況は赤信号に近いと書かれています。
- 売上高が著しく減少していること
- 継続的に営業損失を出していること
- 買掛金等の返済が難しくなっていること
- 主な仕入先から与信を断られる
東京商工リサーチの調査によると、2025年に倒産した企業の件数は10,300件でした。会社が倒産するときに取るべき行動は、主に「破産」か「再生」の2つです。
出典:東京商工リサーチ「全国企業倒産状況」
破産
清算を目的とした、債務整理手段の一つです。債務超過などで会社経営の存続が難しくなったとしても、破産手続きを行えば資産・負債が清算されます。
「倒産」と「破産」は、厳密には異なる意味を持つ言葉です。倒産には法的な定義がなく、一般的に債務の返済ができないなどの理由でこれ以上の経営が難しい場合に使われます。言い換えると、事業が立ち行かない状態です。
一方で破産は、清算するために行う法的手段であり、具体的に会社を畳む段階です。
「破産企業」は、事業が立ち行かなくなり清算に向かっているので「倒産した」といえます。逆に、「倒産企業」には、再生の道が残されており、必ずしも「破産した」とは限りません。
再生
経営がうまくいっていない会社や事業を、何らかの方法で安定した軌道に戻す救済措置全般を指します。
企業再生に成功した具体例
企業再生の事例として特に有名なのは、一度は経営破綻し上場廃止となった日本航空(JAL)が再上場まで果たしたことです。JALは2008年のリーマンショックを引き金に脆弱な財務状況が露呈し、投資にも失敗した結果、破綻状態にまで追い込まれました。
しかし、その後政府や金融機関、労働組合などの協力を取り付け、2010年に会社更生法の適用を申請し、2012年に再上場することとなりました。 京セラ創業者の稲盛和夫氏をはじめ、数々の経営プロフェッショナルを投入した結果ともいえます。
適切に手続きを踏み、かつ情熱をもって取り組めば、再生の道が開ける好事例になったといえるでしょう。
事業再生のメリット、その他手法の種類や違い

手続きとしての再生は、「法的再生」と「私的再生」の2つに区分できます。それぞれメリットとデメリットがあるため、会社の状況を鑑みて手段を選択する必要があります。
| 法的再生 | 私的再生 |
|---|
| 民事再生 | 私的整理ガイドライン |
| 会社更生 | 中小企業活性化協議会 |
| 特定調停 | 事業再生ADR |
| 破産 | |
| 特別清算 | |
法的再生
裁判所の管理下で実施される、法的手続きを利用して再生する手法のことです。裁判所の介入により一部の債権者が反対しても、再生計画に基づいて手続きを進められる半面、費用が多額になりやすい側面があります。
再建型手続き(会社を立て直す手法)の民事再生、会社更生、特定調停、そして清算型手続き(会社を畳む手法)の破産と特別清算があります。
再建型手続きと清算型手続きのどちらを選択すべきかは、一概にいえません。手続きの費用を用意できるか、早期の黒字化が可能か、などの観点から総合的に手段を選ぶ必要があります。
民事再生
民事再生法に基づく裁判手続きであり、裁判所の監督下にあります。経営者が主体となり、債権者などの多くの利害関係者の同意を得ながら再生計画を策定します。
これを遂行することにより、会社の事業の再建を目指すものです。
会社更生
会社更生法に基づく裁判手続きです。民事再生と大きく違うのは、再生手続きを主体的に進めていくのが、裁判所によって選任された更生管財人という点です。
この場合、基本的に経営陣の交代が求められます。
特定調停
債務者が借入金などの処理について裁判所に申し立て、調停委員会と呼ばれる特別な機関に利害関係者間を取り持ってもらう法的な手続きです。
民事再生より比較的費用が安いのが特徴です。
破産
破産法に基づき裁判所に申し立てて、残った会社財産を債権額に応じて債権者に分配する手続きです。会社の法人格はなくなります。
多くの中小企業では、会社代表者が個人で会社の借り入れなどを肩代わりすることが多くあります。この会社代表者個人が行う一般的な債務整理も同じ手続きで行えます。
特別清算
会社法に規定のある倒産手続きで、株式会社のみ利用可能です。
経営者が主体となって柔軟に手続きを進められ、破産よりも素早く安い費用で会社を清算できるのが特徴です。
私的再生
私的再生は、裁判所に頼らず、当事者間で協議して会社の再建を法的再生のように行う手続きです。
会社のイメージを損ないにくくする反面、反対する債権者の影響力が大きくなりやすい手段といえます。
私的整理ガイドラインや中小企業活性化協議会 、事業再生ADRなどに分けて、それぞれ説明します。
私的整理ガイドライン
私的整理ガイドライン研究会による規定で私的整理が始まると、金融機関などの債権者による権利行使は一時停止されます。
一般債権者への支払いや決済は停止されないため、取引先などに倒産したことが知られにくいという特徴があります。
これにより、会社のイメージを損ないにくくなります。
中小企業活性化協議会
中小企業活性化協議会は、中小企業再生支援協議会と経営改善支援センターを統合して再編された機関です。
全国に設置されており、公正中立な立場から、中小企業の再生計画の策定や金融機関との調整などを支援しています。
本協議会による再生支援は、所定の手続きに基づいて行われます。
事業再生ADR
私的再生の際に、中立的な第三者機関であるADR事業者が私的再生に協力する手続きです。
ADRとは「Alternative Dispute Resolution」の略称で、つまり一定の条件の下、裁判以外の場で問題を解決する手法です。民事再生と同じく、債権者には税法上の債権放棄に関わる損失計上が認められます。
また、債務者も債務免除を行った際に発生する免除益課税に対して、一定の要件を満たすことにより税制上配慮がなされています。
事業再生の手続きのやり方・流れ

ここからは、実際の手続きの流れについて述べていきます。主な流れは、以下のとおりです。
- 現状確認
- 再生方針の決定
- 事業計画の策定
- スポンサー募集と財源確保
- 再生手続き
上記は、あくまで一般的な事業再生(または企業再生)の流れです。実際は、資金状況や債権者の状況などによって変わるので注意が必要です。
どんな場合にも大事なことは、再生に必要な資金がなくなる前に手続きを終わらせる迅速性です。
1.現状確認
現在、会社が置かれている状況を、数字で客観的に把握します。
把握すべき主な項目は、次のとおりです。
- 資金
- 損益
- 債務残高
- 担保資産の有無
- 経営悪化の原因分析
- 今後の見通し
2.再生方針の決定
資金繰りが悪化し続けると予想される場合、どの再生方法が適切かを判断します。
債権者への説得を伴う「債務免除」を行う必要があるかを見極めるのがポイントです。
3.事業計画の策定
採算の取れる事業について選択と集中を行い、再生後の事業計画を立案します。
不採算事業でのリストラ、赤字部門の整理、未稼働資産の処分など、数年単位での計画が必要です。
4.スポンサー募集と財源確保
自力再生が困難なケースでは、資金力や信頼性に足るスポンサーを味方につけ、かつ新たな融資元を探すことになります。
会社単体での努力だけでは限界があるため、外部からの協力を得ます。
5.再生手続き
私的再生の場合は、再生計画案の策定と、債権者への経緯説明および計画案への承認が必要です。
法的再生の場合は、まず裁判所に手続きの開始を申し立てます。その後、債権調査手続きと財産状況調査を行い、策定した再生計画案について債権者からの承認を得る必要があります。
まとめ:会社状況を見極め、最適な再生手法の選択を
先行き不透明な事業環境が続いているなかで、創業・承継してから継続して右肩上がりの会社の方が少ないかもしれません。しかし、どんな場合でも必ず対処方法はあります。
事業再生(企業再生)にはさまざまな手法がありますが、いずれもメリットとデメリットが存在します。現在の会社状況を冷静に見極めたうえで適切な手法を選択する必要があり、岐路に立つ会社にとってその判断は重いといえます。判断に悩むことがあれば、早めに専門家に相談することが大切です。