2024年12月16日、マレーシア企業委員会(Companies Commission of Malaysia:CCM)は、新しい監査免除適格基準を定めた実務指令第10/2024号(Practice Directive No.10/2024)「マレーシアの特定の民間企業に対する監査免除の適格基準」を発行しました。この新たな免除要件は、2025年1月1日以降に開始する財務報告期間から適用されます。
※本稿は、三菱UFJ銀⾏会員制情報サイト「MUFG BizBuddy」寄稿記事からの転載です。
2025.04.14
2024年12月16日、マレーシア企業委員会(Companies Commission of Malaysia:CCM)は、新しい監査免除適格基準を定めた実務指令第10/2024号(Practice Directive No.10/2024)「マレーシアの特定の民間企業に対する監査免除の適格基準」を発行しました。この新たな免除要件は、2025年1月1日以降に開始する財務報告期間から適用されます。
※本稿は、三菱UFJ銀⾏会員制情報サイト「MUFG BizBuddy」寄稿記事からの転載です。
マレーシアでは、原則的に監査法人による会計監査が義務付けられており、一定の要件(監査免除要件)を満たす場合にのみ監査が免除されてきました。従来の監査免除要件は以下の通りで、休眠会社と売上金額や総資産規模等の要件を満たす一定の小規模企業に限り、適用を受けられる形となっていました。
上記の監査免除要件を満たす一部の小規模企業しか監査が免除されないマレーシアでは、多くの企業が会計監査を受けなければなりません。しかし、監査が必要とされる企業に対し、監査法人の数が圧倒的に不足する状況が続いており、監査の需給バランスの解消が一つの課題となっていました(2023年12月31日時点で、監査が必要な66万6767の企業数に対し、認証を受けた監査人は1,919人)。
さらに、マレーシア政府は、マレーシア企業がビジネスを行う上でのコスト削減も政府の課題としています。今回の監査免除要件の緩和は、特に中小零細企業の管理コストの削減にもつながるものと考えられます。
上記を背景として、2024年12月16日にマレーシア企業委員会(Companies Commission of Malaysia:CCM)は、監査免除要件について新しい実務指針(Qualifying Criteria For Audit Exemption For Certain PrivateCompanies In Malaysia)を発表しました。この新たな免除要件は、2025年1月1日以降に開始する財務報告期間から適用されます。
以下の要件のうち、いずれか2要件を満たす場合に監査が免除されます。
※設立時から休眠状態にある企業、または直前および当年度に休眠状態にあった企業も、監査免除となります。
※外国法人、公開会社、公開会社を親会社とする株式会社は、免除を受けられません。
新基準への移行を円滑に行うため、各基準値の適用に関しては以下の通り、3年をかけて段階的に導入されます。
Year | 2025 (Phase 1) | 2026 (Phase 2) | 2027 (Phase 3) |
---|---|---|---|
会計 年度 | 2025年中に 開始する会計年度 | 2026年中に 開始する会計年度 | 2027年以降に 開始する会計年度 |
基準値 | |||
売上 | 1,000,000リンギ | 2,000,000リンギ | 3,000,000リンギ |
総資産 | 1,000,000リンギ | 2,000,000リンギ | 3,000,000リンギ |
従業員 | 10人 | 20人 | 30人 |
※当会計年度および直近の2会計年度における金額(人数)
今回の監査免除基準の変更により、第1フェーズの時点からマレーシアの全企業(Active Companies)のうち約42%の企業がこの新しい監査免除の恩恵を受けることになると言われています。これまで監査が必要とされていた企業に監査免除が適用される場合、費用の面だけでなく、手間の面からも得られるメリットは非常に大きいものと考えられます。
一方で、監査を受けないことにより、企業の財務諸表の正確性について第三者からの保証がなくなるので、企業の財務情報に対する信頼性は相対的に低くなるものと考えられます。それに伴い、税務コンプライアンスへの影響や企業の業績評価の観点からも、より注意して観察する必要性が増すものと思われます。
特に、近年、急激に数が増加している企業の合併・買収(M&A)に関して、対象が監査を受けていない企業である場合には、財務や税務のデューデリジェンスの重要性はますます高まるでしょう。