振替伝票とは?書き方や記入例、作成する際の注意点などをわかりやすく解説

振替伝票とは?書き方や記入例、作成する際の注意点などをわかりやすく解説

振替伝票とはどのような場合に使用するかを解説しています。振替伝票以外の伝票(入金伝票、出金伝票、売上伝票、仕入伝票)や伝票性について、実際の書き方・作り方や記入例、作成する際の注意点も紹介しています。振替伝票について調べている方は参考にしてください。

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振替伝票とは

振替伝票とは

現金による取引が生じたときは、「入金伝票」と「出金伝票」という伝票が使われます。これに対して、現金以外の取引があったときに使用する伝票が、「振替伝票」です。振替伝票は「仕訳伝票」とも呼ばれます。

振替伝票を使う取引の例としては、普通預金からの支払や預金口座への入金、掛取引などが挙げられます。振替伝票では、仕訳の借方と貸方の双方に現金の勘定科目を使用しません。

仕訳帳ではなく、取引内容を簡易に示した伝票を使って総勘定元帳に取引を記録する方法を伝票制、または伝票式会計といいます。取引の記録を複数名で行えるため、取引を記録する負担を分担できるのが伝票制のメリットです。

振替伝票以外の伝票の種類

振替伝票以外の伝票の種類

伝票とは、取引の内容を一定の様式に沿って簡潔に記録したものです。種類としては以下の5つが挙げられます。

  • 入金伝票
  • 出金伝票
  • 振替伝票
  • 売上伝票
  • 仕入伝票

ここでは、振替伝票以外の4つの伝票について解説します。

入金伝票

入金伝票

現金の入金があったときは、入金伝票を起票します。例えば、商品を販売し、その売上として現金を受け取った場合などに用いられます。

入金伝票には、主に伝票番号や入金された日付、金額、勘定科目、摘要を記入します。総勘定元帳に転記する際は、借方に現金、貸方に相手科目とします。

なお、他の伝票と間違えないように、伝票の枠線が赤色で印刷されている場合もあります。

出金伝票

出金伝票

現金で出金があったときは、出金伝票を起票します。例えば、従業員が立て替えた経費を会社の現金で支払った場合などに用いられます。

出金伝票に記載する項目は入金伝票と同じく、伝票番号や出金された日付、金額、勘定科目、摘要です。総勘定元帳に転記する際は、貸方に現金、借方を相手科目とします。

なお、他の伝票と間違えないように、伝票の枠線が青色で印刷されているものもあります。

仕入伝票

仕入伝票

仕入伝票は、商品の仕入れを行ったときに使用する伝票です。商品の品名や数量、単価、金額、摘要などの項目を記入します。総勘定元帳に転記する際は、借方に仕入、貸方を買掛金とします。

現金や手形で支払った場合でも、いったん掛けで仕入れ、掛代金をすぐに現金や手形で決済したとみなして処理します。

売上伝票

売上伝票

売上伝票は、商品を販売して売上が発生したときに使用する伝票です。商品の品名や数量、単価、金額、摘要などの項目を記入します。総勘定元帳に転記する際は、貸方が売上、借方が売掛金となります。

現金や手形を受け取った場合でも、いったん売掛金で販売し、すぐに現金や手形で回収したとみなして処理を行います。

伝票制の種類

伝票制の種類

伝票制は、利用する伝票の種類によって1伝票制、3伝票制、5伝票制の3つに分けられます。

自社がどのような取引を行い、現金を取り扱っているかによって、採用すべき伝票制が変わります。ここでは3種類の伝票制について解説します。

1伝票制

振替伝票のみを使用し、すべての取引を振替伝票で起票するのが1伝票制です。仕訳の煩雑さや集計の手間があり、近年では1伝票制はあまり採用されていません。

メリットとしては、振替伝票のみを使用するため複数の伝票を使う必要がなく、伝票の管理自体はシンプルである点が挙げられます。

3伝票制

3伝票制では、入金伝票、出金伝票、振替伝票の3種類を使用し、入金と出金以外の取引をすべて振替伝票で起票します。

3伝票制は主に現金取引が中心となる業種で採用されており、伝票制においては一番スタンダードな形式といえます。

5伝票制

5伝票制では、入金伝票・出金伝票・振替伝票・仕入伝票・売上伝票の5種類を使用します。

入金と出金、仕入と売上以外の取引を振替伝票で起票します。

振替伝票の書き方と記入例

振替伝票の書き方と記入例

振替伝票では、取引内容を2つに分け、借方と貸方の双方に金額や勘定科目を記入します。

以下は、振替伝票のサンプルです。

振替伝票

振替伝票では、それぞれの取引の内容が客観的に見て分かるようにしなければなりません。

ここでは、振替伝票に記載すべき各項目について、書き方のポイントを解説します。

日付

日付の欄には、取引があった年月日を記入します。取引のあった日付をいつとするかは、取引内容や会社内のルールによって変わります。

例えば、取引先が検収を完了した日に売上を計上するとルール化していた場合、取引先から渡された検収書の日付が売上の計上日となります。仕入れの場合であれば、記載される日付は基本的に取引先の納品書に書いてある日付です。

注意しなければいけないのが、決算日が近い場合の取引です。

例えば、決算日が3月31日の場合、取引日付が3月までであれば当期の取引となりますが、4月以降であれば翌期の取引となります。決算日前後の取引については、会計年度を意識して日付を確認しましょう。

金額

金額の欄には、取引金額を借方と貸方の双方に記入します。

振替伝票の金額を間違えてしまうと、各金額を集計した際に決算書の数値が誤ったものとなるため、伝票に記載した金額が正しいかを必ずチェックしましょう。

勘定科目

勘定科目は、左側に借方の勘定科目、右側に貸方の勘定科目を記入します。

取引によっては、適した勘定科目が複数ある場合もありますが、同じ種類の取引であれば、同じ勘定科目で処理し続ける必要があります。科目で迷った場合は、過去の伝票を参考にしつつ、科目を選びましょう。

例えば、通信費と荷造運賃という2つの勘定科目の使い分けについて、実務上では境界線が統一されにくいものです。税務上では、どちらを使っても変わりはありません。

しかし、郵便で送るものは通信費、小包や宅急便で送るものは荷造運賃の科目を使うと社内ルールで処理が決まっている場合は、自身も社内ルールに従って科目を記載しなければなりません。これは会計ルールにおいて、同じ取引は常に同じ勘定科目を使う「一貫性の原則」があるためです。

摘要

取引の具体的な内容や取引相手の名前、名称などを簡潔に記載します。

例えば、税務調査の際には、伝票と根拠になる領収書などの書類が一致しているかを確認されます。どの根拠書類を基に伝票を作成したのか、後からでも分かりやすいように、摘要欄は必ず記載しましょう。

振替伝票の作り方

振替伝票の作り方

振替伝票の作り方には、主に手書き、表計算ソフトを利用する方法、会計ソフトを利用する方法の3つがあります。

昨今では業務効率化のために会計ソフトで作成するのが一般的になっていますが、それぞれの方法にメリット・デメリットがあるため、紹介します。

手書き

手書きで振替伝票を作成する際には、借方や貸方および各必要事項を記入し、必要に応じて係印や承認印を押します。

手書きのメリットは、普段パソコンを使用しない人でも伝票を作成できる点です。デメリットとしては、紙の伝票が貯まっていくため集計作業が煩雑になり、管理の手間がかかる点です。

表計算ソフト(エクセル等)

エクセルなど表計算ソフトを活用して、効率的に伝票を作成できます。

主なメリットは、パソコンで伝票を作成するため、紙の伝票が貯まらず管理しやすい点です。また、会計ソフトを購入・契約する代金も節約できます。

デメリットは、データを間違って消してしまったり上書きしてしまったりした場合に元のデータが分からなくなるリスクがあるため、定期的にバックアップを取っておく必要がある点です。決算書を作成する際、伝票の集計に手間がかかるのも難点です。

会計ソフト

会計ソフトでは、専用のフォームを利用して各データを直接入力でき、集計作業も簡略化できます。必要な経理情報をすぐに検索することも可能で、担当者同士で情報交換がしやすくなります。

メリットとして、決算書や試算表を作成する際に伝票の集計を自動で行うため、作業時間の短縮や人為的な作業ミスを減らせる点が挙げられます。会計ソフトに振替伝票のテンプレートを設定する機能がある場合、一度設定しておけばそれ以降同じ取引があった際、スムーズにデータ入力が可能です。

例えば、会員制のサービスを提供し、毎月同額の売上が発生する場合、以下のように伝票を設定しておけば、毎月その伝票を呼び出して登録するだけで作業が終わります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額摘要
現金10,000売上10,000会費 〇〇社

デメリットとしては、会計ソフト購入のコストが発生する点と、会計ソフト自体の使い方を覚える必要がある点です。

入力方法を一度覚えてしまえば簡単に作業できますが、導入時に操作方法を学ぶ必要があります。

振替伝票を作成する際の注意点

振替伝票を作成する際の注意点

振替伝票の作成にあたっては、守るべきルールがいくつかあります。

ここでは、振替伝票の作成や取り扱いに関する注意について解説します。

保存期間が存在する

振替伝票などの経理関係書類や、帳簿、決算書などは、法律により一定期間の保存義務があります。

保存の必要がある帳簿および書類は、以下の通りです。

これらの保存義務期間は、法人税法では7年間、会社法では10年間と定められています。

従来は税務関係書類は紙による保存が原則でしたが、電子帳簿保存法が改正され、事前の届出なしに仕訳帳や伝票、貸借対照表などを電子データで保存することが可能となりました。紙の領収書はスキャナ保存することも一つの手段です。

ただし、電子保存を利用するにあたっては、タイムスタンプの付与や検索機能の確保、社内ルールの整備などを行う必要があります。

借方と貸方は一致させる

振替伝票の不変のルールとして、借方の合計金額と貸方の合計金額が必ず一致する必要があります。振替伝票を作成する際は、借方と貸方が一致しているかを確かめましょう。

例えば、給与が200,000円、実際の振込金額が170,000円だったとして、下記の伝票を作成したとします。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
給与200,000普通預金170,000

実際のお金の動きはこの通りだとしても、この伝票では借方と貸方の金額が一致していないため間違いです。正しい伝票の記入例は、以下となります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
給与200,000普通預金170,000
預り金30,000

給与からは税金や社会保険料が天引きされ、天引きした分は「預り金」として処理します。

振替伝票の借方と貸方の合計金額が一致しない場合は、仕訳内容や金額に誤りがないかを確かめ、必ず原因をつきとめましょう。

まとめ

振替伝票とは?書き方や記入例、作成する際の注意点などをわかりやすく解説

伝票のひとつである「振替伝票」は、現金取引以外の取引を処理する際に使用し、経理業務においては日常的に作成する帳票です。

伝票には法律で義務付けられた保存期間があるため、伝票内容を総勘定元帳に転記した後でも捨てずに保存しておく必要があります。また、各伝票の借方と貸方の合計金額が一致しているかを確かめましょう。

振替伝票を効率良く管理するには、会計ソフトを利用するのがおすすめです。会計ソフトは、仕訳を入力すれば伝票が作成され、集計を自動で行ってくれます。また、多くの会計ソフトでは借方と貸方の合計金額が一致していない伝票は登録できない機能が付いているため、作業ミスを減らせます。

伝票の作成について内部統制を整備するのであれば、伝票作成者の係印と、上長の承認印を必ず伝票に押すこと、というルールを作成しておきましょう。