財務三表のひとつである貸借対照表(B/S、バランスシート)について解説します。損益計算書(P/L)との違いや書類の見方、主な勘定科目や、貸借対照表を活用した財務状況の分析方法についても紹介しています。貸借対照表(B/S、バランスシート)とはどういうものなのか調べている方は参考にしてください。
2024.01.31(最終更新日:2024.03.12)
財務三表のひとつである貸借対照表(B/S、バランスシート)について解説します。損益計算書(P/L)との違いや書類の見方、主な勘定科目や、貸借対照表を活用した財務状況の分析方法についても紹介しています。貸借対照表(B/S、バランスシート)とはどういうものなのか調べている方は参考にしてください。
2024.01.31(最終更新日:2024.03.12)
貸借対照表(B/S、バランスシート)とは、企業の特定時点(決算日)での財政状態を示す会計報告書です。企業が持つ「資産」「負債」「純資産」を表形式で一覧にしています。
資産には、企業が所有する現金、在庫、債権などが含まれ、負債には借入金や支払債務などが含まれます。純資産は、資産から負債を差し引いたものです。
貸借対照表を見れば、企業の財務状況を評価できます。資産と負債のバランスを把握すると、企業の健全性やリスクなどがわかります。
貸借対照表は、財務三表の一つです。
財務三表とは、以下の3つの書類を指します。
種類 | 概要 |
---|---|
貸借対照表 (B/S、バランスシート) | 企業の特定時点における資産、負債、純資産を示します。 |
損益計算書(P/L) | 特定期間の収益と費用を記録し、純利益または純損失を計算します。 |
キャッシュ・フロー計算書 | 企業の資金繰りについて示します。 |
財務三表は、企業の財務状況を評価するための3つの主要な会計報告書です。財務三表を通して企業の財務状況、業績、キャッシュ・フローの詳細などを理解できます。
損益計算書は、売上高、費用、最終的な純利益または純損失が記載されており、企業の特定期間内の経済活動の成果を表します。「Profit and Loss Statement」を略して「P/L」とも呼びます。損益計算書によって企業の収益性と効率性を評価できます。
一方で貸借対照表は、特定の時点での企業の財務状況を示す報告書です。資産、負債、純資産の3つの要素で構成され、企業の財務健全性を示します。
貸借対照表は「時点」を捉え、企業の財務状態を示しますが、損益計算書は「期間」に焦点を当て、企業がその期間にどのように業績を上げたかを示します。
損益計算書と貸借対照表は、密接に関連しています。損益計算書の純利益(純損失)は、貸借対照表の純資産を増加させ、純損失は純資産を減少させます。貸借対照表と損益計算書を同時に分析すれば、企業の財務健全性と業績の両方を理解できます。
キャッシュ・フロー計算書は、企業の特定期間内の現預金の流入と流出を示す会計報告書です。営業活動、投資活動、財務活動からの現金の増減を記録し、企業の資金繰りを示します。
キャッシュ・フロー計算書は現金の流れに焦点を当て、現金の増減を追跡しますが、貸借対照表はある時点での資産、負債、純資産のバランスを示します。
キャッシュ・フロー計算書と貸借対照表も密接に関連しており、キャッシュ・フロー計算書に記載されている現預金の変動は、貸借対照表の「現預金」の部分に反映されます。また、貸借対照表に記載されている資産や負債の変動は、キャッシュ・フロー計算書の営業活動や投資活動の部分に影響を与えます。
キャッシュ・フロー計算書と貸借対照表を共に分析すれば、企業の現預金の安定性と全体的な財務状態の両方を詳細に理解でき、より詳細な財務分析が可能です。
出典:中小企業庁公式サイト「中小企業の会計 31問31答」
貸借対照表が「バランスシート(B/S)」と呼ばれる理由は、左側の資産と右側の負債・純資産の合計が常にバランスを取るように構成されているからです。
たとえば、企業が1,000万円の資産と600万円の負債を持っている場合、純資産は400万円になります(1,000万円 – 600万円)。
ここでは、貸借対照表の見方や書き方を解説します。貸借対照表は、以下の3つの部に分かれています。
資産の部は貸借対照表の左側に、負債の部と純資産の部は右側に記載され、左右の合計額は必ず一致します。
以下ではそれぞれの部と詳細な項目について解説していきます。
貸借対照表の「資産の部」は企業の所有する資産を示し、以下の3つが記載されます。
流動資産は、現金化しやすい資産で、以下の勘定科目が含まれます。
勘定科目 | 解説 |
---|---|
現金・預貯金 | 会社が保有する現金で銀行預金、郵便貯金、金銭信託を含みます。 |
受取手形 | 商品やサービスの対価として受け取る手形で、満期日と取引銀行が指定された上で期日に支払いを受けられます。 |
売掛金 | 商品やサービスの販売に対し、後日支払われる代金で、将来代金を請求できる権利でもあります。 |
有価証券 | 株券や債券などが該当します。 |
流動資産は営業活動に関連する資産を示す正常営業循環基準に合致するものが表示され、該当しない資産は1年基準で判断されます。1年基準では、期末日から1年以内に現金化・費用化される資産が流動資産とされます。
固定資産は、企業の長期的な事業運営に使用される資産です。流動資産と異なり、1年以上の期間をかけて経済的利益を提供します。固定資産には、有形固定資産、無形固定資産、およびそのほかの固定資産が含まれます。
有形固定資産は物理的な形を持つ資産のことで、建物、機械、土地などが挙げられます。無形固定資産は物理的な形を持たない資産であり、特許権、著作権、ソフトウェアなどです。
そのほかの固定資産は投資有価証券、長期貸付金など、有形固定資産と無形固定資産に当てはまらない資産を指します。固定資産の管理と評価は、企業の長期的な財務戦略と資産の効果的な活用に重要な役割を果たします。
繰延資産は、将来の期間にわたって経済的利益の提供が期待される支出を反映する会計項目です。繰延資産は即時に費用として計上されず、複数の会計期間にわたって費用化されます。
主な勘定科目は以下のとおりです。
「負債の部」は企業が負う財務的な義務を示し、主に流動負債と固定負債に分けられます。
流動負債は、通常1年以内に支払われるべき企業の短期的な負債を指します。この区分には以下のような主な勘定科目が含まれます。
勘定科目 | 解説 |
---|---|
買掛金 | 商品や原材料、サービス等の金額をあとから支払います。 |
支払手形 | 手形による支払金額です。 |
短期借入金 | 返済期限が貸借対照表日の翌日から起算して1年以内の借入金です。 |
1年以内に返済予定の 長期借入金 | 長期借入金のうち、返済期間が貸借対照表日の翌日から起算して1年以内になった場合の借入金です。 |
未払金 | 本来の営業取引以外の非継続的な取引から生じる一時的債務です。 |
流動負債は、企業の短期的な財務義務を反映し、短期的な財務健全性を評価するために必要な項目です。
固定負債は、1年以上の長期間にわたって支払われる企業の負債を指します。
固定負債には以下のような主な勘定科目が含まれます。
勘定科目 | 解説 |
---|---|
社債 | 資金調達手段として企業が発行します。 |
長期借入金 | 返済期限が1年を超える借入金です。ただし、1年以内であれば短期借入金として区分します。 |
預り保証金 | 取引や賃貸借契約の際の担保となる保証金や敷金です。 |
純資産の部は、株主資本と株主資本以外の2つからなります。純資産には以下のような主な項目が含まれます。
株主資本は以下の4つに区分されます。
株主資本以外の各項目は、以下の2つに区分されます。
純資産の部の管理と報告は、企業の財務状況の透明性を高め、株主や投資家に対して重要な情報になります。
出典:企業会計基準委員会公式サイト「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」
貸借対照表を含む財務三表を読み解くことで、企業の財務状況や安全性を理解できます。
ここでは、貸借対照表の読み方と分析について説明します。
自己資本比率は、企業が資本調達をどれくらい自己資本(≒純資産:返済不要な株主からの資本や利益の蓄積)で賄っているかを測る指標です。
自己資本比率が高い場合は、企業が外部借入に依存せずに自己の資本で事業を運営していることになり、財務的に安定しているとみなされます。
また、突発的な経済的ショックに対しても、より強い耐性を持っていると評価されます。
自己資本比率は、以下の計算式で求めることが可能です。
自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100
流動比率は、企業が現在の流動資産(現金やその他短期間で現金化可能な資産)を用いて、短期間内に支払う必要がある流動負債(短期借入金や未払金など)をどれだけカバーできるかを示します。
流動比率が高いほど、企業は短期的な債務を支払う能力が高いと考えられ、財務的に安定しているといえます。
一般的に、流動比率が100%以上であれば、流動資産が流動負債をカバーしていますが、業界や市場状況によって理想的な比率は異なります。
流動比率は、以下の計算式で求めることが可能です。
流動比率 = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
当座比率は、企業の短期的な支払能力を、流動比率より厳密に測定するための財務指標です。具体的には、企業の流動性の高い資産(現金、預金、受取手形、売掛金など)が、短期間内に支払う必要がある流動負債をどれだけカバーできるかを示します。
当座比率が高いと、企業は短期間内に発生する負債に対して、より安定して対応できることを示します。
この指標は、現金や速やかに現金化できる資産に焦点を当てるため、流動比率よりも厳格な流動性の尺度といえます。
当座比率は、以下の計算式で求めることが可能です。
当座比率 = (流動資産-棚卸資産) ÷ 流動負債 × 100
固定比率は、企業の長期的な財務安定性を評価するための指標です。企業の固定資産がどの程度自己資本によって賄われているかを示します。
固定比率が100%以内であれば、企業は自己資本により固定資産をカバーできており、長期的な財務リスクが低いと考えられます。
固定比率が100%以上の場合は、企業が固定資産の購入のために外部借入に多くを依存しており、財務的な安定性が低くなります。
固定比率は、以下の計算式で求めることが可能です。
固定比率 = 固定資産 ÷ 自己資本 × 100
固定長期適合率は、企業の長期的な資金調達のバランスを示す財務指標です。企業が固定資産への投資のために、どの程度安定した資金調達を行っているかを測定します。
固定長期適合率が低い場合、企業が固定資産に対して安定した資金調達を行っており、財務的に安定していると考えられます。企業の長期的な財務構造と持続可能性を評価するのに役立ちます。
固定長期適合率は、以下の計算式で求めることが可能です。
固定長期適合率 = 固定資産 ÷(自己資本 + 固定負債)× 100
貸借対照表の作成には、会計ソフトの利用が一般的かつ効率的です。会計ソフトを使用すればデータの整理と報告書の作成が簡略化され、正確性が向上します。普段からこまめに仕訳を行い、データを最新の状態に保ちましょう。
一般的な貸借対照表を作成する手順は、以下のとおりです。
会計ソフトを使用すれば自動的にデータを整理し、必要な報告書を生成できます。
今回は、貸借対照表(B/S、バランスシート)とは何か、貸借対照表の読み方や見方について解説しました。
貸借対照表は財務三表の一つで、企業の特定時点(決算日)での財政状態を示す会計報告書です。他の財務三表と組み合わせることで、企業の財務状況の安全性を深く理解できます。
貸借対照表の数値を利用した財務分析の仕方を押さえ、より深く企業の財務活動を分析するためにお役立てください。