総勘定元帳とはどのような帳簿かを解説しています。保存期間や仕訳帳との違い、作成する目的・メリット、作成方法(書き方)、テンプレートなどについても紹介しています。総勘定元帳について調べている方は参考にしてください。
目次
- 総勘定元帳とは
- 保存期間が定められている
- 仕訳帳との違い
- 総勘定元帳を作成する目的・メリット
- 総勘定元帳の作成方法(書き方)
- 総勘定元帳の記載項目
- 仕訳帳から総勘定元帳への転記方法
- 相手勘定科目が複数ある場合の転記方法
- 総勘定元帳のテンプレートについて
- まとめ
総勘定元帳とは
総勘定元帳(そうかんじょうもとちょう)とは、すべての取引を勘定科目ごとに分類した帳簿です。
帳簿には、会社法で作成が義務付けられている「主要簿」と、主要簿を補助する目的で作られる様々な「補助簿」があります。
総勘定元帳は、主要簿に該当します。
主要簿 | 仕訳帳 総勘定元帳 |
---|---|
補助簿 | 預金出納帳 売上帳 仕入帳 売掛金元帳 固定資産税台帳など |
総勘定元帳では、記入した仕訳がまとめられている「仕訳帳」から転記し、勘定科目ごとに分類します。
会社の取引が勘定科目ごとにまとまっているため、それぞれの残高を把握したり、特定の勘定科目の内訳を把握したりするのに便利です。
保存期間が定められている
帳簿書類には保存期間が定められており、法人税法上はその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間(法人税法126条、150条の2)、会社法上は10年間(会社法第432条、435条)、保存する義務があります。
ここでいう帳簿とは、例えば総勘定元帳のほか、仕訳帳、預金出納帳、売上帳、固定資産台帳などが該当し、書類には貸借対照表や損益計算書、注文書、契約書などが該当します。
総勘定元帳も帳簿に含まれるため、定められた期間、保存しなければなりません。
また、法人税法上、青色申告書を提出した事業年度に青色繰越欠損金が生じた場合、または青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度については、10年間の保存義務があります。
仕訳帳との違い
仕訳帳とは、日々の取引を「借方」「貸方」に分け、適当な勘定科目を用いて仕訳した会計帳簿です。日々の取引を発生順に記載します。
複式簿記においては、資産の増加や費用の発生は借方、負債の増加や収益の発生は貸方に取引を記載し、借方と貸方の合計金額を必ず一致させなければなりません。
仕訳帳の目的は、日々の取引を発生順に記載してお金の流れを把握することです。
総勘定科目が、それぞれの科目について発生した取引を把握できるのに対し、仕訳帳は特定の日の取引について全て把握できる違いがあります。
総勘定元帳を作成する目的・メリット
決算において、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成する際は、総勘定元帳を基礎資料として用います。総勘定元帳は、勘定科目ごとの発生原因や取引日、残高などが簡単に分かるため、勘定科目ごとの財務分析がしやすいためです。
例えば、会社の現預金を仕訳帳だけで把握しようとすると、日付順に記載した取引の中から現金や預金の勘定科目だけを集計しなければならず、膨大な時間がかかってしまいます。
総勘定元帳であれば、科目ごとに残高が記載されているため、現金と預金の残高を把握するのが容易です。
また、残高を把握した結果として前年度より大幅に現預金が減っていた場合でも、科目ごとに費用を確認できるため、原因が把握しやすいというメリットもあります。
総勘定元帳の作成方法(書き方)
総勘定元帳の形式には「標準式」と「残高式」の2種類があります。
標準式
標準式とは、総勘定元帳の借方と貸方の金額を別々に記載する方式です。取引の詳細を明確に確認できます。
残高式
一方で、残高式は対象となる科目の残高を記載する方式で、常に残高を確認できます。
一つひとつの取引ごとに残高を把握できるため、実務では残高式が主流です。
総勘定元帳の記載項目
総勘定元帳に記載する項目は下記になります。
項目 | 内容 |
---|---|
日付 | 取引のあった日付を記載。仕訳帳の日付欄に書かれた日付を転記。 |
摘要 | 取引の内容を記載。記載内容は仕訳帳の摘要欄から転記。 |
仕丁 | 各取引が仕訳帳のどのページとリンクしているかを記載。該当する仕訳帳のページ数(丁数)を転記。会計ソフトでは、総勘定元帳から該当する仕訳帳のページへ画面を移すことができるため、仕訳帳のページ数を示す仕丁欄はない場合が多い。 |
相手勘定科目 | その取引の相手側となる勘定科目を記載。仕訳帳に記載した相手方の勘定科目を記載。紙の総勘定元帳では、摘要欄にまとめて記載する場合が多い。 |
借方金額 /貸方金額 | 対象となる科目の金額が仕訳帳の借方に記載されていれば総勘定元帳の借方に、仕訳帳の貸方に記載されていれば総勘定元帳の貸方に金額を記載 |
頁 | 総勘定元帳のページ数を記載 |
会計ソフトを使う場合、記載項目は主に日付、摘要、相手勘定科目、金額で、頁は自動で付されます。
仕訳帳から総勘定元帳への転記方法
総勘定元帳は、仕訳帳の内容を転記して作成します。
例えば、現金で仕入れを行った場合の転記方法は以下のとおりです。
下記の仕訳における勘定科目は仕入と現金のため、総勘定元帳の仕入と現金の項目に、それぞれ取引の内容を記載します。
仕訳帳
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|---|
10月5日 | 仕入 | 2,000 | 現金 | 2,000 | 食材 |
元帳には日付、相手勘定科目、金額、摘要を転記します。
総勘定元帳(現金)
日付 | 相手勘定科目 | 摘要 | 借方 | 貸方 | 残高 |
---|---|---|---|---|---|
繰越 | 50,000 | ||||
10月5日 | 仕入 | 食材 | 2,000 | 48,000 |
総勘定元帳(仕入)
日付 | 相手勘定科目 | 摘要 | 借方 | 貸方 | 残高 |
---|---|---|---|---|---|
繰越 | 100,000 | ||||
10月5日 | 現金 | 食材 | 2,000 | 102,000 |
相手勘定科目とは、仕訳における借方または貸方どちらかの科目に着目した場合の、もう一方の勘定科目です。
上記の例では、仕入に着目すると相手勘定科目は現金、現金に着目すると相手勘定科目は仕入になります。
転記する際、仕訳帳に記載されている科目の金額が借方なのか貸方なのかを間違えないようにしましょう。
上記例では、仕入は借方にきている勘定科目のため、総勘定元帳の仕入では借方に金額を記載します。一方で、総勘定元帳の現金は貸方にきているため、貸方に金額を記載します。
相手勘定科目が複数ある場合の転記方法
10月1日に商品10万円を売り上げて、手数料155円が差し引かれた代金が普通預金口座に振り込まれたとします。仕訳は下記のとおりです。
日付 | 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|---|
10月1日 | 普通預金 | 99,845 | 売上 | 100,000 | ケータリング |
支払手数料 | 155 |
借方や貸方において複数の勘定科目を使う仕訳を「複合仕訳」といいます。複合仕訳の場合、総勘定元帳では科目を「諸口」として1行にまとめます。
総勘定元帳(売上)
日付 | 相手勘定科目 | 摘要 | 借方 | 貸方 | 残高 |
---|---|---|---|---|---|
繰越 | 50,000 | ||||
10月5日 | 諸口 | ケータリング | 100,000 | 150,000 |
諸口の具体的な内容が知りたい場合は、仕訳帳を確認します。
ほとんどの会計ソフトでは、総勘定元帳の画面から特定の仕訳を選択すると、その仕訳の画面に直接移ることが可能であり、簡単に仕訳を確認できます。
総勘定元帳のテンプレートについて
総勘定元帳を一から作成する場合、会計ソフトを使うと総勘定元帳が簡単に作成でき、おすすめです。会計ソフトでは、仕訳を入力すると、仕訳に使った勘定科目の総勘定元帳が自動で作成されます。
会計ソフトを使用せずに手動で総勘定元帳を作成する場合、テンプレートの活用がおすすめです。
「総勘定元帳 テンプレート」と記載すれば、複数のテンプレートが出てきます。
作成の際には、仕訳からの転記ミスに気を付けてください。日付や金額、相手勘定科目や摘要など、複数の仕訳を転記する際にミスが発生しがちです。
また、借方と貸方の勘定科目両方を総勘定元帳に記載する必要があるにもかかわらず、片方の科目しか総勘定元帳に記載しないミスも起こりやすいため、注意してください。
総勘定元帳への転記ミスは、会計ソフトでは起こりません。税法や会社法で総勘定元帳の保存義務があるなどの場合は特に、会計ソフトの使用をおすすめします。
まとめ
総勘定元帳は、仕訳帳の内容を転記するものであり、法人税や会社法で保存義務が定められています。残高や科目ごとに、どんな取引がいつ、いくら発生したのかを簡単に把握できるため、財務分析や損益分析に役立ちます。
記載方法は標準式と残高式の2種類がありますが、取引ごとの残高を把握できる残高式が一般的です。会計ソフトでも、基本的に残高式で作成されます。
手動で総勘定元帳を作成する場合、仕訳帳からの転記ミスや転記漏れが起きやすいため、注意しましょう。会計ソフトなら、仕訳を入力すれば、使用した勘定科目の総勘定元帳が自動で作成されるため、総勘定元帳の作成に別途時間を使う必要もありません。総勘定元帳の画面から、該当する仕訳の画面に直接移ることもできるため、会計ソフトの使用をおすすめします。