MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とはどのような言葉かを解説しています。経営理念やパーパスとの違い、策定の手順、有名企業のMVVの例なども紹介しています。MVVについて調べている方は参考にしてください。
目次
- MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは
- ミッション(Mission)とは
- ビジョン(Vision)とは
- バリュー(Value)とは
- 似た言葉との違い(経営理念・パーパス・クレドなど)
- 経営理念・企業理念
- パーパス(Purpose)
- クレド(Credo)
- MVVを策定するメリット
- 経営判断の基準の明確化
- 組織の一体感醸成とエンゲージメント向上
- 採用・人事評価制度の基準になる
- 企業ブランディングと対外発信
- MVVを策定する5つのステップ
- 1.自社の現状分析
- 2.経営層・従業員へのヒアリング
- 3.ミッションの言語化と作成
- 4.ビジョンの言語化と作成
- 5.バリューの言語化と作成
- MVV策定時のポイント
- MVVに一貫性があるか
- 共感できる内容か
- 簡潔にまとまっているか
- 独自性があるか
- 挑戦と現実味のバランス
- MVVが浸透しない場合の解決策
- 経営層による継続的なメッセージ発信
- 評価・表彰制度との連動
- 定期的な見直しと研修の実施
- 有名企業のMVV導入事例
- ソフトバンク株式会社
- 株式会社リクルートホールディングス
- 株式会社ヤッホーブルーイング
- まとめ
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)とは

MVVとは、Mission(ミッション)、Vision(ビジョン)、Value(バリュー)という3つの要素をまとめたもので、企業の経営や組織運営の根幹をなす概念です。経営学の巨匠であるピーター・ドラッカーが、その重要性を説いたことなどを背景に、広く知られるようになりました。
これら3つの要素は、企業が「何のために存在するのか」「どこを目指すのか」「何を大切にするのか」を示し、従業員や顧客、株主といったすべてのステークホルダーに対して、企業の姿勢を明確に伝える役割を担います。
MVVは、それぞれが独立した概念ではなく、ミッションを頂点とした階層構造になっています。まず、企業の存在意義である「ミッション」があり、そのミッションを達成した先にある未来の理想像が「ビジョン」、そしてビジョンを実現するために、従業員一人ひとりが持つべき共通の価値観や行動指針が「バリュー」となります。
それぞれの要素について、もう少し詳しく見ていきましょう。
ミッション(Mission)とは
ミッションは、企業が社会において果たすべき使命や、根本的な存在意義を言語化したものです。「社会に対してどのような価値を提供するために存在するのか」「私たちの事業の目的は何か」という問いへの答えといえるでしょう。
ミッションは、企業のすべての活動の出発点であり、時代や環境が変化しても揺らぐことのない、普遍的なものです。例えば、「地球上のすべての情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること」というGoogle社のミッションは、彼らの事業活動そのものを的確に表現しています。企業の規模にかかわらず、ミッションは、自分たちの活動の原点を言語化する、非常に重要なものです。
出典:Google Search「検索に対する Google のアプローチ」
ビジョン(Vision)とは
ビジョンは、ミッションを追求し続けた結果として実現したい、企業の将来の理想像です。「私たちは将来、どのような姿になっていたいか」「事業を通じてどのような世界を創り出したいか」を具体的に描いたものになります。
ビジョンは、組織が進むべき方向を示す役割を果たします。従業員全員が同じ未来像を共有することで、日々の業務がその未来に繋がっていることを実感でき、組織としての一体感が生まれるでしょう。
例えば、「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」というAmazon社のビジョンは、彼らが目指すべき明確なゴールを示しています。
バリュー(Value)とは
バリューは、ミッションを果たし、ビジョンを実現していく過程において、組織の構成員が共有すべき価値観や行動指針を定めたものです。「私たちは何を大切にし、どのように行動すべきか」という問いに対する答えであり、組織独自の文化やDNAを形成する要素となります。
例えば、顧客への対応方法や製品開発の方向性など、様々な場面で「どちらの選択が私たちのバリューに合っているか」を考えることで、判断に一貫性が生まれます。また、採用活動においては、自社のバリューに共感してくれる人材を見極めるための重要な指標にもなるでしょう。
優れたバリューは、単なるお題目ではなく、日々の行動に落とし込めるような、具体的で分かりやすい言葉で表現されることが重要です。
似た言葉との違い(経営理念・パーパス・クレドなど)
用語 | 主な意味・ニュアンス | MVVとの関連性 |
|---|---|---|
経営理念・企業理念 | 創業者や経営者の哲学・信念。企業活動全般の根本的な考え方。 | MVV全体を包含する最上位の概念、もしくはミッションに近い概念として使われることが多い。 |
パーパス (Purpose) | 社会における企業の存在意義。「何のために存在するのか」を社会との関わりの中で定義する。 | ミッションとほぼ同義だが、より社会貢献やステークホルダーとの関係性を重視するニュアンスが強い。 |
クレド (Credo) | 従業員が持つべき信条・行動規範。「何を信じて行動するか」を具体的に示す。 | バリューと近いが、より従業員個人の日々の具体的な行動に焦点を当てた指針。 |
コアバリュー (Core Values) | 企業活動の中核となる価値観。 | バリューとほぼ同義。 |
MVVには、「経営理念」「パーパス」「クレド」といった、様々な類似用語があります。
これらの言葉は、企業の根幹をなす考え方を示すという点で共通しており、多くの企業で混同されたり、あるいは同じような意味で使われたりしています。
実際に、これらの言葉に法律で定められたような厳密な定義分けは存在しません。企業が、それぞれの言葉に込める想いや解釈によって、その位置づけは異なります。
もっとも、一般的な傾向として、それぞれの言葉が持つニュアンスや使われ方には違いが見られます。その違いを理解しておくことは、自社の理念をどの言葉で表現するのが最もふさわしいかを考える上で、非常に有益でしょう。
経営理念・企業理念
経営理念や企業理念は、日本企業において古くから用いられてきた言葉です。
多くの場合、創業者や経営者の事業に対する哲学や信念が強く反映されており、企業活動の最も根本的な考え方を示します。
MVVとの関係では、MVVの3要素すべてを内包する、より大きな概念として扱われることもあれば、ミッションとほぼ同じ意味で使われることもあります。
パーパス(Purpose)
パーパスは「目的」「意図」と訳されますが、経営用語としては「社会における企業の存在意義」を指します。
MVVでいえば、ミッションと近い概念ですが、パーパスは「なぜ自社が社会に存在するのか」「事業を通じて社会にどう貢献するのか」といった、社会との関わりを強く意識したニュアンスを持つのが特徴です。
近年、ESG経営やサステナビリティへの関心が高まる中で、企業の社会的責任を示す言葉として急速に広まりました。
クレド(Credo)
クレドは、ラテン語で「信条」や「志」を意味します。企業においては、従業員一人ひとりが心掛けるべき信条や行動規範を示したものです。
MVVの中では、バリューに近い役割を持ちますが、より従業員の日々の具体的な行動に焦点を当てている点が特徴と言えるでしょう。
常に立ち返れるよう、カードにして全従業員が携帯するなどの取り組みも、クレドの特徴的な運用方法です。
MVVを策定するメリット

明確なMVVを策定し、組織全体に浸透させることは、単に企業理念を掲げる以上の、具体的かつ多岐にわたるメリットを企業にもたらします。MVVを策定することで得られる主要なメリットとして、以下のようなものがあります。
- 経営判断の基準の明確化
- 組織の一体感醸成とエンゲージメント向上
- 採用・人事評価制度の基準になる
- 企業ブランディングと対外発信
それぞれについて、解説します。
経営判断の基準の明確化
企業経営は、あらゆる意思決定の連続ですが、そこに明確な基準がなければ、場当たり的な対応になったり、判断に一貫性がなくなったりするリスクがあります。
例えば、創業期を乗り越え、従業員数が数十名から数百名規模へと拡大した中堅企業の場合、創業者のカリスマ性やトップダウンの指示だけでは組織を動かしきれなくなることも少なくありません。
こうしたケースでMVVは、経営のあらゆる意思決定における共通言語であり、「羅針盤」としての役割を果たすものです。
「この事業は、我々の存在意義に合致しているか」「この投資は、我々が目指す未来像に近づくものか」「この手法は、我々が大切にする価値観に基づいているか」など、すべての判断をMVVに照らし合わせることで、意思決定の精度とスピードが向上します。
特に、新規事業への参入や撤退、M&Aといった重要な局面において、MVVは進むべき道を照らす光となり、経営陣が自信を持って一貫した決断を下すための強力な支えとなるでしょう。
組織の一体感醸成とエンゲージメント向上
明確なミッションは、従業員一人ひとりに対して「自分の仕事が社会にどのように貢献しているのか」という働く意味を提示します。また、共有されたビジョンは、組織全体が向かうべき共通のゴールとなり、従業員のベクトルを一つに束ねます。
これにより、従業員が自らの業務に誇りを持てるようになり、会社への帰属意識を高めることが可能です。
会社が成長し、従業員が100名を超えて成長していく中で、希薄になりがちな「創業の想い」を、全従業員が共有できる言葉として再定義することで、組織全体の一体感が醸成されます。結果として、離職率の低下や、生産性の向上といった、具体的な経営成果にも繋がっていくでしょう。
採用・人事評価制度の基準になる
MVVは、人と組織に関する制度設計において、中心的な役割を担います。
採用活動においては、MVVは「求める人物像」を明確化します。自社のMVVを社外に積極的に発信することで、その価値観に共感する人材からの応募が期待でき、採用のミスマッチを大幅に減らすことが可能です。
採用面接の場でも、候補者の経験やスキルだけでなく、「自社のバリューにフィットするか」という観点で評価することで、自社の価値観に合致する人材の獲得に繋がります。
また、人事評価制度においても、MVVは公正な評価基準となります。
単に業績目標の達成度合いだけでなく、「バリューに沿った行動がとれていたか」を評価項目に加えることで、会社が求める行動を従業員に促すことができます。評価の納得感も高まり、従業員の成長を支援する、より効果的な人事制度の構築につながるでしょう。
企業ブランディングと対外発信
顧客やパートナーが企業を選ぶ基準は、製品やサービスの品質・価格だけではありません。特に現代社会においては、「その企業がどのような思想を持ち、社会に対してどのような姿勢で向き合っているか」という点が、重要な選択基準となっています。
MVVは、企業の「らしさ」を社外に伝えるブランディングの核となります。特に、大企業に比べて世間的な知名度が盤石ではない中堅企業や中小企業であるほど、市場で独自の存在感を放つための強力な武器となるでしょう。
自社の使命や目指す未来、大切にする価値観を一貫して発信し続けることで、顧客や取引先、投資家といったステークホルダーからの共感と信頼を獲得できます。
例えば、環境保護をミッションに掲げる企業が、その活動を一貫して発信し続ければ、同じ価値観を持つ顧客にとって「応援したい企業」となり、強いエンゲージメントが生まれるでしょう。
このように、MVVは、他社との差別化を図り、企業のブランド価値を長期的に高めていくための強力な武器となります。
MVVを策定する5つのステップ

MVVの策定は、以下の5つのステップに沿って行われます。
- 自社の現状分析
- 経営層・従業員へのヒアリング
- ミッションの言語化と作成
- ビジョンの言語化と作成
- バリューの言語化と作成
それぞれについて、解説します。
1.自社の現状分析
最初のステップは、MVVの土台となる「自社らしさ」を徹底的に掘り下げることです。過去から現在に至るまでの歩みを客観的に見つめ直し、自社の核となる要素を洗い出します。
具体的には、以下のような観点から情報を整理・分析すると良いでしょう。
- 創業の精神
- 歴史と沿革
- 自社の強み・弱み
- 市場での立ち位置
これらの情報を整理することで、自社が大切にしてきた価値観や、社会に提供できる独自の価値が明確になります。
2.経営層・従業員へのヒアリング
次に、組織を構成する「人」の声に耳を傾けます。
MVVは経営層だけで作るものではなく、全従業員が「自分たちの言葉」だと感じられるものでなければなりません。そのためには、様々な立場の従業員を巻き込むプロセスが不可欠です。
経営層や役員には、会社の未来に対するビジョンや事業にかける想いをヒアリングします。同時に、現場で働く従業員には、ワークショップやアンケート、個別インタビューなどを通じて、以下のような問いを投げかけてみましょう。
- 「この会社で働いていて、誇りに思う瞬間はどんな時ですか?」
- 「私たちの会社が、社会に最も貢献できることは何だと思いますか?」
- 「5年後、10年後、会社がどのようになっていたらワクワクしますか?」
- 「私たちが仕事を進める上で、大切にすべき行動や考え方は何でしょうか?」
多様な意見を収集することで、MVVに盛り込むべき要素の解像度が高まり、共感を呼びやすい言葉を生み出す土壌が育ちます。
また、従業員が、自分自身がMVVの策定に関わったという自覚を持つことで、策定後の定着にもつながります。
3.ミッションの言語化と作成
ステップ1と2で集めた情報を基に、いよいよMVVの核となる要素を言語化していきます。まずは、階層構造の最上位に位置するミッションから着手します。
ミッションは、「我々は何のために存在するのか」という問いへの答えです。企業の社会における存在意義や、果たすべき使命を、簡潔かつ普遍的な言葉で表現します。
この段階では、経営層を中心とした、少数のプロジェクトチームで、集約した意見に基づく複数の草案を作成し、議論を重ねていくのが効果的です。
完成したミッションは、従業員の心に響き、日々の仕事の目的となるような、力強いメッセージでなければなりません。
4.ビジョンの言語化と作成
ミッションが定まったら、次は、そのミッションを追求し続けた先にどのような未来を描くのかを言語化します。
ビジョンは、「ミッションを果たした結果、私たちはどのような姿になっているか」という未来の理想像です。
ミッションより具体的で、従業員が「そこに向かって進みたい」と心から思えるような、魅力的でワクワクする未来を描くことが重要になります。
例えば、期間を区切って「10年後の我々の姿」のように設定すると、より具体的な目標として機能しやすくなるでしょう。
5.バリューの言語化と作成
最後に、ビジョンの実現を支えるための具体的な行動規範である、バリューを定めます。
バリューは、「ビジョンを実現するために、私たちはどのような価値観を持ち、どのように行動すべきか」という問いへの答えです。従業員の日々の意思決定や行動の拠り所となるため、具体的で分かりやすい言葉で表現することが求められます。
例えば、「挑戦」という一言だけでなく、「失敗を恐れず、まずやってみる」のように、行動を促すフレーズにすると、現場での実践に繋がりやすくなるでしょう。
バリューは3〜5個程度に絞り込むことで、覚えやすく、日々の業務で意識しやすくなります。
MVV策定時のポイント

効果的なMVVを策定するためには、以下のようなポイントを意識することが重要です。
- MVVに一貫性があるか
- 共感できる内容か
- 簡潔にまとまっているか
- 独自性があるか
- 挑戦と現実味のバランス
それぞれについて、解説します。
MVVに一貫性があるか
ミッション、ビジョン、バリューの3つは、必ず一貫性のあるストーリーで繋がっている必要があります。
バリューに基づいた行動を積み重ねることでビジョンが実現し、そのビジョンはミッションの達成に向けた道標でなければなりません。
もし、ミッションとビジョン、バリューの間に論理的な矛盾やズレがあると、従業員は混乱し、行動の指針として機能しなくなります。
共感できる内容か
MVVは、組織の全従業員が「これは自分たちのものだ」と心から共感できる言葉でなければなりません。
専門的すぎる用語や、現場の感覚からかけ離れた抽象的な言葉は避け、従業員が自分の仕事との繋がりを実感できるような、シンプルで情熱のこもった表現を心掛けましょう。
簡潔にまとまっているか
優れたMVVは、覚えやすく、誰でも簡単に口に出せるものです。長すぎる文章や複雑な表現は、記憶に残らず、日常業務の中で意識されることもありません。
理想は、従業員が一言一句を暗記して、社外の人にも「私たちの会社は、こういうことを目指しているんです」と迷いなく説明できるような、簡潔で力強い言葉です。
独自性があるか
どの企業にも当てはまるような一般的な言葉は、自社の「らしさ」を表現できません。
自社の歴史、文化、強みといった独自の文脈を反映した、オリジナリティのある言葉を選びましょう。
独自性のあるMVVは、従業員のプライドを醸成すると同時に、社外に対しても強力な差別化要因となります。
挑戦と現実味のバランス
ビジョンは、従業員を鼓舞するような挑戦的なものであるべきです。
しかし、同時に、あまりに現実離れしたビジョンは、かえって従業員の士気を下げてしまう可能性があります。
「本気で取り組めば手が届くかもしれない」と感じられるような、ある程度の実現可能性を持たせ、未来へのワクワク感と、そこへ至る道筋への納得感のバランスを取ることが重要です。
MVVが浸透しない場合の解決策

多くの企業が直面する課題として、「MVVを策定したものの、額縁に飾られているだけで現場に浸透しない」という問題があります。
ここでは、MVVの形骸化を防ぎ、組織文化として定着させるための具体的な解決策を3つ紹介します。
経営層による継続的なメッセージ発信
MVV浸透の最大の鍵は、経営層自らが、MVVの伝道師となることです。朝礼や全社ミーティング、社内報など、あらゆる機会を捉えて経営層が自らの言葉でMVVについて語り続けましょう。
特に、重要な経営判断を下した際には、「なぜこの決断をしたのか」をMVVと関連付けて説明することで、MVVが単なるお題目ではなく、生きた経営の判断基準であることを示すことができます。
経営層の本気度が伝わってこそ、従業員もMVVを自分ごととして捉えるようになるでしょう。
評価・表彰制度との連動
人事評価や表彰制度にMVVの要素を組み込むことは、MVVを浸透させる上で、極めて効果的です。
例えば、バリューに定められた行動をどれだけ実践できたかを評価項目に加えたり、「今月のバリュー体現者」といった形で、MVVを実践した従業員を表彰する制度を設けたりします。
これにより、「会社は本気でMVVを重視している」という明確なメッセージを従業員に伝え、MVVに沿った行動を組織全体に促すことが可能となります。
定期的な見直しと研修の実施
一度策定したMVVも、事業環境の変化に合わせて見直しが必要になる場合があります。特にビジョンやバリューは、数年ごとに定期的に見直し、現状に即しているかを確認するプロセスを設けるとよいでしょう。
また、新入社員や中途入社者を対象とした、MVVを理解し、共感してもらうための研修も行いましょう。MVVが生まれた背景や、それぞれの言葉に込められた想いを丁寧に伝えることで、新しいメンバーもスムーズに組織文化に馴染むことができるでしょう。
加えて、既存の従業員向けにも、MVVと日々の業務を結びつけて考えるワークショップなどを定期的に開催し、常にMVVを意識する文化を醸成していくことが大切です。
有名企業のMVV導入事例

有名企業のMVV導入事例を3社取り上げ、それぞれの特徴や事業との関連性を解説します。自社のMVVを策定・見直しする際の参考にしてください。
ソフトバンク株式会社
MVV | 内容 |
|---|---|
| 経営理念 (ミッションに相当) | 情報革命で人々を幸せに |
| ビジョン | 世界に最も必要とされる会社 |
| バリュー | No.1、挑戦、逆算、スピード、執念 |
情報通信業界のリーディングカンパニーであるソフトバンクは、創業以来変わらない志を経営の根幹に置いています。
同社の経営理念「情報革命で人々を幸せに」は、事業領域が時代と共に変化しても揺らぐことのない、すべての活動の出発点です。この普遍的な使命があるからこそ、AIなど最先端テクノロジー分野への大胆な投資や事業展開を一貫して行うことができます。
そして、その先に見据えるのが「世界に最も必要とされる会社」という壮大なビジョンです。この高い目標が、求心力を生み、成長への強力なエンジンとなっています。
「No.1、挑戦、逆算、スピード、執念」というバリューには、逆境や壁、難題を乗り越えた先に顧客の笑顔があるという、創業者である孫正義氏の価値観が色濃く反映されています。
これらのMVVが、変化の激しい業界において、常に挑戦を続ける組織の精神的な支柱となっているのです。
株式会社リクルートホールディングス
| MVV | 内容 |
|---|---|
| ミッション (果たす役割) | まだ、ここにない、出会い。 より速く、シンプルに、もっと近くに。 |
| ビジョン (目指す世界観) | Follow Your Heart |
| バリューズ (大切にする価値観) | 新しい価値の創造 個の尊重 社会への貢献 |
人材領域から販促領域まで、多岐にわたる事業を展開するリクルートホールディングスは、その事業の本質を捉えたMVVを掲げています。
同社のミッションにある「出会い」というキーワードは、人と仕事、人と住まい、企業と顧客といった、リクルートが手掛けるすべての事業に共通する価値を的確に表現しています。
「Follow Your Heart」というビジョンは、サービスを利用するユーザーだけでなく、従業員一人ひとりの情熱や主体性を大切にするというメッセージです。
そして、そのビジョンを支えるのが「個の尊重」というバリューです。従業員の挑戦を後押しするこの価値観が、多くの起業家を輩出してきたリクルート独自の組織文化を育んできたといえるでしょう。
出典:株式会社リクルートホールディングス「ビジョン・ミッション・バリューズ」
株式会社ヤッホーブルーイング
| MVV | 内容 |
|---|---|
| ミッション | ビールに味を!人生に幸せを! |
| ビジョン | クラフトビールの革命的リーダー |
| バリュー (価値観) | ・法令の遵守 ・顧客は友人、社員は家族 ・経営情報の共有 ・自由な情報交換 ・顧客への全体責任 ・同僚への敬意 ・取引会社への礼儀 ・喫煙者なしの会社 |
「よなよなエール」などのクラフトビールで有名なヤッホーブルーイングは、そのユニークな企業文化を支える、情熱的で分かりやすいMVVを掲げています。
ミッションは、非常にキャッチーで覚えやすく、事業内容と顧客に提供したい「幸せ」という価値が直結しているのが特徴です。
また、「ビール事業を通じて文化を創る」という強い意志が、ビジョンにも表れており、従業員のエンゲージメントを高めるだけでなく、強力なファンを生み出す源泉となっています。
一般的に、バリューは抽象的な言葉で語られがちなのに対し、ヤッホーブルーイングの「価値観」は極めて具体的で、日々の行動に直結する言葉で表現されているのが最大の特長です。この分かりやすさが、従業員一人ひとりに深く浸透し、ヤッホーブルーイングならではの熱量の高い組織文化を創り上げているといえるでしょう。
まとめ

MVVは、企業が「何のために存在し(Mission)」「どこを目指すのか(Vision)」「何を大切に行動するのか(Value)」を定義した、経営の根幹をなす羅針盤です。
MVVは、日々の意思決定に一貫性をもたらし、従業員のエンゲージメントを高め、組織に一体感を生み出します。さらに、採用や人事評価の基準となり、社外に対しては強力なブランディングの核として機能するなど、そのメリットは多岐にわたります。
創業期を越えて組織が拡大し、新たな成長モデルを模索する中堅企業にとっては、MVVは企業の「第二創業」を成功に導くための設計図ともなるでしょう。
MVVを実効性のあるものにするためには、策定するだけで終わらせず、経営層が自らの言葉で語り続け、人事制度と連動させ、組織全体で実践することが重要です。
