サクセッションプランとは?取り組む目的やメリット・デメリット、作り方や事例を解説

サクセッションプランとは?取り組む目的やメリット・デメリット、作り方や事例を解説

サクセッションプランとはどういったものか、なぜ今、重要視されているかについて解説しています。サクセッションプランに取り組む目的やメリット・デメリット、「人材育成」や「後任登用」との違い、プランの作り方、導入事例についても紹介しています。サクセッションプランについて調査、準備している方は参考にしてください。

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サクセッションプランとは

サクセッションプランとは

サクセッションプラン(Succession Plan)とは、長期にわたって将来の幹部候補や経営者候補となる人材の育成を計画的に準備することを指します。 ちなみに、サクセッションという言葉には「継承」「相続人」といった意味があります。

サクセッションプランの実践が進めば、突然幹部や経営者の交代が必要となった場合にも、大きな混乱を避けることができます。ここでは、サクセッションプランと人材育成、後任登用の違いについて解説します。

人材育成との違い

人材育成とサクセッションプランとの違いは、対象者のポジションや計画を主導する部署などにあります。人材育成は、会社が求める人材の育成を目的とするため、人事担当が主導して研修などを実施します。対象者を限定せず、広範囲な人材を対象に行うのが特徴です。そのため、育成期間は比較的短期間で、取得スキルはさまざまです。

一方、サクセッションプランは、育成対象を幹部候補や経営者候補に絞り、経営層自らが長期間にわたり育成を行います。

後任登用との違い

後任登用とサクセッションプランとの違いは、対象者の任命範囲や計画完了までに費やす時間などにあります。後任登用は、年齢や職務などを勘案し、幹部層に近い立場や部下の中から選ぶのが一般的です。選考期間が短く、任命範囲が狭いという特徴があります。

一方、サクセッションプランは、経営戦略として対象者を長期間にわたって育成し、組織や上司部下の関係などを問わずに実施します。対象者となってから、その役職に就任するまで5年以上費やすケースもあります。

サクセッションプランの目的や重要視される理由

サクセッションプランの目的や重要視される理由

サクセッションプランの目的は、大きく以下の3点に分けられます。

  • 後継者不在による経営リスクの軽減
  • 持続的な成長のため
  • 企業統治・国際指針への対応

それぞれについて、重要視される背景を含めて解説していきます。

後継者不在による経営リスクの軽減

後継者不在による経営リスクの軽減

引用:経済産業省「令和5年度 日本企業のコーポレートガバナンスの実質化に向けた実態調査 調査報告書 P.48」経済産業省が公表した調査によると、社長・CEO候補者の育成について「特段何も実施していない」と回答した会社の割合は43%でした。ここ数年で取り組みが増えた一方、依然何も手を打っていない会社が多く存在するのも事実です。

加えて、日本企業では経営層の高齢化が進んでいます。社長の平均年齢は64歳に迫っており、ここ16年間で4歳上昇しました。健康上の理由などで急に引退するリスクが高まっているといえます。経営トップが空席となれば、事業の方向性が失われかねません。こうしたリスクを最小化するための方法として、サクセッションプランの重要性が増しているのです。

出典:東京商工リサーチ「TSRデータインサイト」

持続的な成長のため

持続的な成長に向けて、十分な経営感覚やスキルを兼ね備えた候補者の育成が重要になっています。事業環境が激しく変化する現代において、従来型のトップによる後継指名や年功序列による任命では対応できない可能性が高いです。今求められているのは、過去の成功体験に依らず、経営戦略を着実に実行する人材といえます。

さらに、サクセッションプランの導入で、優秀な人材のリテンションにつなげる狙いもあります。人材の流動化が進むなか、幹部候補の離職を防ぎ、長期にわたって貢献してもらう仕組みとして、重要性が増しています。

企業統治・国際指針への対応

サクセッションプランの必要性は、コーポレートガバナンス・コードや、人的資本に関する情報開示の指針を示した「ISO30414」においても言及されています。いまや、後継者の育成に関する取り組みが、その会社の信用や資金調達に影響するようになりました。

コーポレートガバナンス・コード(CGコード)

東京証券取引所が策定した企業統治に関する指針で、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会の立場を踏まえたうえで、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組みを定めています。このなかで「取締役会は、経営理念や具体的な経営戦略を踏まえ、後継者計画の策定・運用に主体的に関与する」ように求めています。

ISO30414

ISO30414とは、 2018年12月に国際標準化機構(ISO)が発表した、人的資本に関する情報開示の国際的なガイドラインとして知られています。このなかで「Succession planning」の項が設けられており、重要性が言及されています。国際的な指針に明記されたことで、社内外のステークホルダーから広く信頼を獲得するために、サクセッションプランの状況を公開する会社もあります。

出典:日本取引所グループ公式サイト「 改訂コーポレートガバナンス・コードの公表」
出典:ISO国際標準化機構公式サイト「ISO/AWI 30414 人的資源管理」

サクセッションプランに取り組むメリット

サクセッションプランに取り組むメリット

サクセッションプランを策定する具体的なメリットとしては、以下の3点が挙げられます。

  • 後継者不在による経営の混乱を回避できる
  • 従業員のモチベーション向上につながる
  • 経営層に求められる人材要件を整理できる

後継者不在による経営の混乱を回避できる

迅速かつ的確に経営判断を行える人材がいないと、企業活動に支障をきたすことになってしまいます。サクセッションプランは、後継者の育成を計画的に行うため、後継者不在のリスクを軽減できるのが特徴です。

人事部に任せるのではなく、経営層が主体となって育成を行うため、企業風土や経営理念を継承しやすいといえます。社内で人材が育っていれば、急に後継者が必要になった場合でも素早い意思決定を継続できます。

従業員のモチベーション向上につながる

サクセッションプランの対象者は幹部や経営者の候補として選ばれるため、出世や待遇改善への道筋が整備されることになります。

候補者本人だけでなく、社内への波及効果も見込まれ、従業員のモチベーションを向上させたり、優秀な人材が外部に流出するリスクを減らしたりする効果が期待できます。

経営層に求められる人材要件を整理できる

サクセッションプランの策定で、その会社が経営層に求める人材要件が整理される点もメリットに挙げられます。これにより、人事慣例や属人的な評価を排除して、経営理念や成長戦略に沿った適切な人材を経営層に選択することができます。

従業員にとっては、目指すべき人材が分かりやすく定義されるうえ、会社側も適切に人事評価することにつながります。この人材要件は経営層を外部登用する際にも活用でき、メリットは採用にまで及びます。

サクセッションプランに取り組むデメリット

サクセッションプランに取り組むデメリット

サクセッションプランを導入するに当たっては、以下のようなデメリット(懸念点)もあります。

  • 多大な時間と育成コストがかかる
  • 対象従業員が退職してしまうリスク
  • 対象外となった従業員へのケアが必要

サクセッションプランを円滑に導入できるよう、デメリットについても把握しておきましょう。

多大な時間と育成コストがかかる

サクセッションプランは、将来の幹部や経営者の育成となるため、数年から数十年といった長期的な取り組みとなります。準備から運用にかかる時間に加え、経営層が直接実施するため育成コストは大きくなります。

即効性のある施策ではないことを前提に、対象者を含め慎重な計画の策定が必要です。

対象従業員が退職してしまうリスク

サクセッションプランの対象従業員が、育成途中に退職してしまう可能性もあります。退職が決まった時にはすでに多大な時間と費用を投入しているケースが多く、その分損害は大きくなります。

長期的な取り組みとなるため、昇格後のビジョンを共有するなど、対象者が退職しないような持続的なケアも必要です。

対象外となった従業員へのケアが必要

サクセッションプランによる育成の対象外となった従業員は、出世の道が途絶えたように感じてしまい、モチベーションが低下する可能性があります。その結果、生産性の低下や離職につながる可能性も考えられます。

対象者だけでなく、そのほかの従業員のキャリアプランやモチベーション維持のための施策を検討することも大切です。

サクセッションプランの作り方・進め方

サクセッションプランの作り方・進め方

サクセッションプランは、経営者自らが主導し、長期的なビジョンと手法を明確にして進める必要があります。主に以下の手順で計画を策定し、実践していきます。

  1. 中長期の経営戦略を明確にする
  2. 対象となるポジションや人材要件を決める
  3. 候補者となる人材を選出する
  4. 候補者に合わせた育成計画の作成と実行
  5. 育成進捗の確認と振り返り

それぞれについて、解説します。

1.中長期の経営戦略を明確にする

サクセッションプランの導入にあたり、まずは中長期の経営戦略を明確にする必要があります。自社を取り巻く環境や競合他社と比較した際の優位性などを整理したうえで、今後のかじ取りを考えなければなりません。

それらを踏まえて幹部候補や経営者候補が定まります。サクセッションプラン自体が経営戦略であることを忘れず、中長期の視野を持つことが必要です。

2.対象となるポジションや人材要件を決める

次に、対象となるポジションと人材要件を定めます。対象者は代表取締役だけなのか、役員クラスや部長職までなのか、ポジションによって求められる人材像は異なってきます。

例として、役員クラスに必要な要件として以下のようなものが考えられます。

  • 経営に関する知識
  • リーダーシップ
  • コミュニケーション能力
  • 語学力
  • グローバルな視点
  • 責任あるポジションの経験
  • 組織内や業界での人脈

具体的な人材要件を決めておくと、候補者の選出や育成進捗の評価に役立ちます。

3.候補者となる人材を選出する

設定した人材要件に沿って、社内から候補者を選出します。候補者の選考には、試験や面接・自薦や他薦などの方法がありますが、いずれの方法でも「求める要件が備わっているかどうか」を判断することが目的となります。どのポジションの候補者を選出するのか、何人選出するのかによっても方法は異なりますので、入念に検討しましょう。

また、候補者だけでなく、候補から外れた従業員に対してモチベーションが低下しないようなケアも必要です。

4.候補者に合わせた育成計画の作成と実行

候補者を選出したら、それぞれに合わせた計画を作成する必要があります。能力やスキルには個人差があり、ポジションごとに求められるレベルも異なります。

候補者の個性や信念・能力に合わせたプランを策定し、着実に実行していきましょう。

AGSコンサルティングでは、サクセッションプランの作成・運用サポートを行っています。詳しくはお問い合わせください。

5.育成進捗の確認と振り返り

候補者に合わせた計画を実行した後は、一定期間ごとに進捗の確認や振り返りを行います。サクセッションプランは長期的な計画のため、進捗が芳しくないようであればやり方の変更が必要です。

候補者の育成状況に合わせて、足りない点は補強するなど随時見直しを図っていきましょう。万が一、期待した成果が得られない場合には、新たな候補者の選出も検討する必要があります。

サクセッションプランの導入事例

サクセッションプランの企業事例

サクセッションプランを導入した企業のなかには、成功事例を公表するところも増えています。

ここでは、参考となる事例を3つ紹介します。

りそなホールディングス

りそなホールディングスは、2007年6月にサクセッションプランを導入しました。持続的な企業価値向上に向けて、「役員の役割と責任を継承するメカニズム」を生み出すことを目的としています。求められる人物像として「勝ちにこだわる姿勢」や「多角的・論理的に本質を見極める」、「新しいりそな像を創り出す力」など、7つの軸を設定しているのが特徴です。

対象者の評価内容は全て指名委員会に報告されるほか、指名委員会は各種の育成プログラムに関与して対象者と接点を持つようにしています。こうした進め方を通じて、役員の能力や資質の把握、全体の底上げを極めて高い透明性のもとで実現しました。

出典:株式会社りそなホールディングス「コーポレートガバナンスの概要」

カゴメ株式会社

カゴメ株式会社では、取締役に必要な能力として「財務・会計」「農業・食・栄養」などの計11項目に細分化し、それぞれのスキルの定義を明確化しています。役員・部長層を対象に、OJTとOff-JTによる「教育」と、実務で発揮される行動に注目した「選抜」を組み合わせた独自の育成方法を採用しています。

2026年に就任した新社長は、約5年間にわたる育成プロセスのなかで、「システマティックで多面的な評価」に基づき選任されました。2035年のビジョン実現に向けた役割を任されており、中長期的な経営戦略を見据え、計画的に後継者育成を進めた事例といえます。

出典:カゴメ株式会社「統合報告書」

株式会社小松製作所(コマツ)

コマツは、国内外合わせて約750にも及ぶ主要なポジションを「グローバルキーポジション」と位置づけ、サクセッションプランを策定しています。経営トップは「常に後継者育成を考えること」を行動指針に掲げ、自社の行動様式を示す「コマツウェイ」にも明文化しています。

後継者選びのポイントには「修羅場を経験することで、困難に立ち向かう強い意志力を身に付けさせること」「利害の反する当事者をまとめる組織運営能力を養わせること」「不正をゆるさない、コンプライアンス意識を常に持たせること」といった文言が並び、強いマインドセットを求めています。

出典:コマツ(株式会社小松製作所)「統合報告書」

まとめ:サクセッションプランのお困り事は専門家へ

サクセッションプランとは?取り組む目的やメリット・デメリット、作り方や事例を解説

サクセッションプランは、幹部候補や経営者候補を育成するための長期的な人材育成計画です。経営層の高齢化や事業環境の変化を受け、重要性は年々増しているといえます。サクセッションプランを策定・実行することは、事業承継リスクを減らすだけではなく、社内の活性化や優秀な人材のリテンションといったメリットも享受できます。

一方、「中長期的な視点でどう後継者育成を立てればいいのか」「候補者以外の離職やモチベーション低下をどう防いでいくのか」といった実務上の課題もあります。

AGSでは、後継者・マネジメント層を対象に、経営に必要な知識や経営判断力の向上を目的とした独自の育成プログラムを提供しています。サクセッションプランでのお困り事があれば、お気軽にお問い合わせください。

監修者

  • 入沢 文紀

    株式会社AGSコンサルティング
    執行役員 マネジメントサービス部門長 兼 HRコンサルティング部門長

    入沢 文紀

    2000年の入社以降、税務会計顧問、IPO支援、BC(ビジネスコンサルティング)事業に従事。 その後、名古屋支社副支社長として事業再生支援に携わり、数多くの再生実績を有する。

    2015年からBC事業部の事業部長としてお客様の再成長支援に従事。 2017年よりマネジメントコンサルティング事業を立ち上げ、企業経営は、事業力×組織ヒトの想いのもと、中長期での経営安定のための組織/ヒトづくりに邁進。