本稿では、タイ国内において、営利目的での活動を行うために現地法人を設立することとなった際の手続きや留意点について、手順を追って説明します。
※本稿は、三菱UFJ銀⾏会員制情報サイト「MUFG BizBuddy」寄稿記事からの転載です。
2024.10.01(最終更新日:2025.10.17)
本稿では、タイ国内において、営利目的での活動を行うために現地法人を設立することとなった際の手続きや留意点について、手順を追って説明します。
※本稿は、三菱UFJ銀⾏会員制情報サイト「MUFG BizBuddy」寄稿記事からの転載です。
本稿では、タイ国内において営利目的での活動を行うために進出を決定し、現地法人を設立し、日本人労働者がタイにて就業するにあたり注意すべき点を、設立手順を追って説明します。
タイではいくつかの進出形態がありますが、今回は株式会社の設立を前提としています。また、タイ投資委員会(BOI)やタイ工業団地公社(IEAT)でのライセンスは取得していない、外資規制適用の一般的な非公開株式会社に対する説明となりますので、ご留意ください。各種ライセンスについては取得条件等があるため、コンサルティング会社等にご相談ください。
まず、留意点を説明したのち、具体的な手続きについて説明します。
基本的なこととして、進出地域を選択します。バンコク都内や近隣地域、または遠方と、それぞれの特徴により進出地域が決定されるかと思います(工業団地の有無や工業団地内で取り扱える製品、国内輸送や輸出形態により、それぞれ特徴があります)。進出地域を選択することで、各地域の所轄税務署や社会保険事務所等が決定されます。
現在、資本金金額が500万バーツを超える場合、設立登記日から15日以内に銀行の残高証明を商務省に提出することが義務付けられています。別の言い方をすると、15日以内にタイ法人名義で銀行口座を開設し、着金までを行う必要があります。
口座開設が外国人の場合、銀行によっては口座開設の必要書類として、労働許可証(Work Permit)を求められることがあります。しかしながら、労働許可証は会社を設立し、ある一定の条件を満たさないと発行されません。つまり、本規定に倣うのであれば、法人設立、労働許可証発行、口座開設、資本金送金・着金までを15日以内に行わなければならないこととなります。そのため、労働許可証がなくとも口座開設が可能な銀行を探すか、日本側で取引実績のある銀行に相談する必要があります。これらに関しても、時間等の制約がある旨、留意が必要です。
設立自体は、1ヵ月から1.5ヵ月程度で完了が可能です。
一方で日本人の駐在員を置く場合など、実際の業務を運営する上ではさらなる手続きが必要となります。設立後、さらに数カ月程度かかることから、実際に日本人が駐在する場合は、早くても半年程度時間を要する点に留意が必要です。
では、下表で具体的な設立に対する手順を説明します。項目によっては順番の入れ替え、または同時進行も可能となります。
なお、各項目においても細かい規定やルールがありますが、以下は簡易的な説明なので、実際に手順を進める際は、コンサルティング会社等にご相談ください。
【図表1:設立に対する手順】
| No. | 手順 | 説明/留意点 |
|---|---|---|
| 1 | 本店住所地確保 | 本店住所地となる賃借物件を確保します。物件によってはその後の手順に影響する可能性もあるので、内装や室内備品について確認することをお勧めします。契約や敷金などの支払は、2の商号予約後でも可能です。 |
| 2 | 商号予約 | 発起人による商号予約を行います。同一商号や類似商号は使用できないため、事業開発局に事前確認します。また、商号は代替も含め3つ用意する必要があります。審査に数日程度を要し、使用許可から30日間が有効となります。それまでに基本定款を登記しない場合は権利が消滅し、新たに予約し直す必要があります。 |
| 3 | 会社印作成 | 商号の使用許可が下りたら、会社印を作成します。こちらは任意ですが、ほとんどの会社が作成します。会社印にはタイ語での会社名を必ず入れることとなっています。英語表記やロゴについては任意です。 |
| 4 | 定款作成・登記 | 基本定款を最低2部作成し、発起人が署名、さらに2名の証人が証明します。このうち1部を本店住所地の登記所にて登記します。附属定款については任意ですが、多くの会社が作成しており、必要に応じて制定します。 |
| 5 | 株式の引受・ 創立総会の開催 | 株式の引受を行い、引受後、発起人は創立総会を開催しなければなりません。その際、決定事項を記載した報告書や株式引受人の名簿を準備する必要があります。 |
| 6 | 銀行口座開設・ 資本金の送金 | 前述のとおり、銀行口座開設には労働許可証が必要なケースがありますが、本時点では、労働許可証は発行前となります。そのため、労働許可証がない状態でも口座開設が可能かを本時点前に確認し、また、その際に必要な書類を揃える必要があります。口座が無事開設されたら、基本定款に定めたとおり、資本金を送金します。 |
| 7 | 設立登記 | 創立総会後3ヵ月以内に、事業開発局宛に会社の登記申請を行う必要があります。 |
| 7までが、会社の設立登記手順となります。 8以降は、日本人駐在員受け入れのための手続きとなります。 | ||
| 8 | 税務登記 | 売上が年間180万バーツ以下の場合は登記免除となりますが、労働許可証の取得には付加価値税(VAT)申告書が必要なので、税務登記を行います。本店住所地管轄の税務署にて登記を行いますが、記入式の書類のほか、本店住所地の物件の写真(商号を掲げた看板や、実際の作業風景など)が必要です。詳しくは所轄税務署の指示に従ってください。 |
| 9 | タイ人従業員雇用 | 一般的に外資規制を受ける法人の場合、現時点の法律では、日本人1名あたりタイ人従業員4名の雇用が条件となっています。この時点で4名全てのタイ人を雇う必要はありませんが、煩雑かつタイ語での書類準備等を要するため、最低1名の管理部所属のタイ人を雇用することをお勧めします。 |
| 10 | 社会保険事務所登録 | タイ人従業員を雇用した場合、社会保険の加入が必要です。所轄の社会保険事務所にて社会保険の登録を行います。 |
| 11 | VAT申請 | 労働許可証の取得条件として、1~3ヵ月分のVAT申告書が必要となります。操業開始前であれば売上が生じていないことから、0バーツのVAT申告書を提出します。 |
| 12 | タイ入国 | 駐在予定の日本人従業員のタイ入国となります。労働ビザの期限は現時点で90日なので、期間にご留意ください。 |
| 13 | 労働許可証申請 | 入国管理局にて労働許可証を申請します。半日から1日かかるケースが大半です。 |
| 14 | 労働ビザ延長申請 | 13にて労働許可証を取得できたら、労働ビザを延長します。同時に行うケースが一般的です。 |
※このほか、工場を法人として設立する場合は建設許可、建設後は操業開始前の操業許可など、建設期間以外にも時間がかかるのでご注意ください。
出所:各種資料より筆者作成
ここまで、一般的なタイ法人の設立について説明しました。
法人設立自体はそこまで難易度は高くないものの、タイ進出の際の注意点として、その後のVAT登記やタイ人従業員の雇用、労働許可証の取得などがあります。また、実際に日本人がタイで就業するとなると、空転期間を含めた時間、及びそれに伴う金銭が想像以上にかかるかと思います。
その他、細かな留意点などもあるため、タイ進出の期間も含め、信頼のおけるコンサルティング会社または現地法律事務所にご相談ください。本稿がタイ進出の参考になれば幸いです。