【タイ進出】会社清算手順について

【タイ進出】会社清算手順について

【タイ進出】会社設立手順について(2024年10月1日付掲載)」では、実際にタイに進出するにあたり、現地法人を設立することとなった際の設立手順について説明しました。今回は残念ながら、タイから撤退となった際の手続きおよび注意点を説明します。

 

※本稿は、三菱UFJ銀⾏会員制情報サイト「MUFG BizBuddy」寄稿記事からの転載です。

すべて表示

AGSの「国際サービス資料」をダウンロードする

1.はじめに

残念ながら諸般の理由により、タイを撤退するとなった際の大まかな手続きについて、説明します。

①事業停止時期の決定

解散登記に先立って、法人所得税の申告準備をする必要があります。これは、最初の解散登記を行ってから150日以内に、最終事業年度の法人所得税を申告しなければならないためです。事業停止時期を会社内部で決定し、取引先への連絡など解散に向けた準備を行います。

②解散登記

次に、解散についての決議を行うため、株主総会を実施します。会社解散は特別決議事項となるため、通常は、資本金の4分の1以上を有する株主が出席した上で、出席株主の有する議決権の4分の3以上の賛成が承認要件となります(別途定款で定めている場合は、そちらの定めに従います)。同時に、清算人の選任を行い、総会後の14日以内に解散および清算人の登記を行います(民商法典1254条)。

なお、清算人の定義は会社解散を決議後、取締役に代わって会社清算結了まですべての残存業務を会社の代表として執行する者とされています。

また、清算人の要件としては、原則として取締役が清算人に就任します。ただし附属定款にて別段の定めがある場合、附属定款に従います(民商法典1251条)。

③VAT(付加価値税)登記抹消登録

解散登記後にVAT登記抹消申請を行います。この際、必ず所轄税務署による税務調査を受けることとなります。税務調査が完了しないと会社清算結了登記できません。税務調査の時期は歳入庁がコントロールすることとなるため、対応できる担当者を準備する必要があります。

④清算登記

税務調査が完了すると、清算完了を承認する株主総会決議を行い、清算の登記が済むことで一連の手続きは完了となります。

会社が債務超過となっている場合は、以下についても検討する必要があります。

Ⅰ. 法的整理

直近の財務諸表において債務超過の場合、破産裁判所にて自己破産を申請することが可能です。自己破産申請のポイントは以下のとおりです。

  • 直近の財務諸表において債務超過であること(破産法第7条)
  • 清算人が自己破産を申し立てることが必要

Ⅱ. 任意整理

以下の条件をすべて充足できれば、任意整理を行うことも可能です。

  • 全債権者から全額債権放棄を受けること
  • すべての資産(土地、建物を含む)を処分できること
  • 債権放棄を受けた場合、債務免除益のかかる法人所得税を全額支払うことができること

解散・清算を選択し、従業員を解雇、または会社都合による退職とする必要がある場合は、労働者保護法第118条に従い、会社は従業員に1給与算定期間(約1カ月)以上前に書面で通知した上で、下表の解雇補償金を支払わなければなりません。

勤続年数解雇補償金額
~120日未満ゼロ
120日以上~1年未満解雇時最終給与の30日分
1年以上~3年未満解雇時最終給与の90日分
3年以上~6年未満解雇時最終給与の180日分
6年以上~10年未満解雇時最終給与の240日分
10年以上~20年未満解雇時最終給与の300日分
20年以上~解雇時最終給与の400日分

出所:各種資料より筆者作成

2.撤退スケジュール

具体的なスケジュールを説明します。例示的なフローとなり、各社状況によっては当該スケジュールとはならない旨、あらかじめご了承ください。

項目手続き
事業停止時期の決定取引先との調整や社内連絡などを行う。
会社の解散決議臨時株主総会を開催し、解散の特別決議を行う。

開催日の14日前までに招集通知発送や新聞広告を行い、同時に、清算人の選任を行う(民商法典第1251条)。

解散登記および清算人登記清算人による会社解散の公告(民商法典第1253条)および、解散の登記申請並びに登記(民商法典第1254条)を行う。
VAT抹消登録解散登記日から起算して15日以内に歳入局への解散通知、およびVAT登記抹消申請(歳入法第72条、第85条)を行う。
納税者ID返却解散登記完了日から60日以内に行う。
監査報告書作成解散日を期末日とする監査済み財務諸表の作成(歳入法第1255条)を行う。
法人税申告解散登記日より150日以内に法人所得税申告・納税(歳入法第68条、第72条)を行う。
税務調査歳入庁による税務調査を受ける。当該調査は数年にわたり実施されることがあるが、1年以上続く場合は別途株主総会の実施が必要となる。
清算報告会実施清算報告会実施の8日以上前に事前招集通知(民商法典第1255条、第1270条)を行う。
清算登記清算報告会実施後14日以内に清算終了登記申請、並びに登記(民商法典第1270条)を行う。

出所:各種資料より筆者作成

3.注意点

撤退に関しても、歳入庁による税務調査が必ず入るため、1~3年(またはそれ以上)ほどの時間がかかることはよくあるケースとなります。また、係官から追加書類の提出を求められたり、内容によっては延期されたりするケースもあり、十分な準備および時間的余裕を確保することが肝要です。

4.おわりに

歳入庁の税務調査など会社側でコントロールできないフローが多くある点や、清算手続きに数年かかる場合は毎年清算報告を行わなければならない点など、留意が必要です。また、清算人(外国人の場合)のビザの取り扱いに関して、外国人事業法の適用対象外であるなど、通常の会社運営とは違った規制やルールがあるため、経験豊富なタイの専門家に相談されることをお勧めします。

AGSの「国際サービス資料」をダウンロードする

監修者

  • 山嵜 正博

    株式会社AGSコンサルティング
    シンガポール支社・米国公認会計士

    山嵜 正博

    会計システム開発中に米国公認会計士を取得し、監査法人に入所。主に上場企業に対する会計監査及び決算支援の業務に携わる。

    2022年株式会社AGSコンサルティングに入社。2023年、AGSコンサルティングタイデスクとして来タイ。海外進出支援、会計税務の実行支援、内部統制支援、クロスボーダーの財務デューデリジェンスなどの、日系企業のタイ展開を総合的にサポートしている。