シンガポールにおいて、物品・サービス税(GST)登録企業を対象とした電子インボイス制度「InvoiceNow」の導入が段階的に進められています。2025年以降、一部の企業に対してはこのInvoiceNow対応が義務化されるため、早めの対応が求められます。本稿では、制度の概要および実務上の対応ポイントについて、簡潔に整理します。
※本稿は、三菱UFJ銀⾏会員制情報サイト「MUFG BizBuddy」寄稿記事からの転載です。
2025.08.07
シンガポールにおいて、物品・サービス税(GST)登録企業を対象とした電子インボイス制度「InvoiceNow」の導入が段階的に進められています。2025年以降、一部の企業に対してはこのInvoiceNow対応が義務化されるため、早めの対応が求められます。本稿では、制度の概要および実務上の対応ポイントについて、簡潔に整理します。
※本稿は、三菱UFJ銀⾏会員制情報サイト「MUFG BizBuddy」寄稿記事からの転載です。
目次
シンガポールにおいて、物品・サービス税(GST)登録企業を対象とした電子インボイス制度「InvoiceNow」の導入が段階的に進められています。2025年以降、一部の企業に対してはこのInvoiceNow対応が義務化されるため、早めの対応が求められます。
本稿では、制度の概要および実務上の対応ポイントについて、簡潔に整理します。
InvoiceNowは、Peppol(ペポル)という国際標準規格に基づいた電子インボイス送受信の仕組みです。シンガポール政府(情報通信メディア開発庁(IMDA)および内国歳入庁(IRAS))は、企業間の請求書処理をデジタル化・効率化し、税務報告の正確性と透明性を高めることを目的として、この制度の普及・義務化を進めています。具体的には、企業が発行する請求書情報を、会計システムを通じて電子的に取引先へ送信すると、同時に税務当局(IRAS)にも提出される形となります。
以下の通り、対象企業が段階的に拡大されます。
| 適用開始日 | 対象企業 | 要件 |
|---|---|---|
| 2025年 11月1日以降 | 設立後6ヵ月以内にGST登録を申請する企業(任意登録) | InvoiceNowによる送信義務あり |
| 2026年 4月1日以降 | 任意でGST登録を行うすべての企業 | 同上 |
| 今後検討中 | 既存のGST登録企業 | 将来的に義務対象となる可能性が高い |
出典:各種資料より作成
このため、現時点で義務化対象ではない企業においても、早期導入を視野に入れて準備を進めることが推奨されています。
InvoiceNowの対象となるのは、以下のような取引に関する請求書です。
これらの取引に関して、会計システムから自動的に電子インボイスデータが抽出・送信される仕組みが求められます。
InvoiceNowへの対応にあたり、企業が準備すべき主な項目は以下の通りです。
IMDAが認定する「InvoiceNow-Ready Solution」の導入が必要です。現在利用している会計ソフトが対応しているか、もしくはアップグレードが必要か、ソフトウェアベンダーへ確認してください。
電子インボイス送信にあたり、取引先とのやり取りにはPeppol IDが必要です。これは通常、個別企業登録番号(UEN)に基づき取得されます。
IRASが定めるGSTのカテゴリー(種類によってSR、ZR、ES33などのコードがある)と、自社の仕訳コードを対応付けておく必要があります。誤送信や誤分類を防ぐためにも、社内ルールを整備することが望まれます。
会計・税務部門のみならず、IT部門や外部の税理士・コンサルタントとも連携し、体制の確認・整備を進めることが重要です。
InvoiceNowを導入することで、企業は請求業務や税務対応において多くのメリットを享受できます。主な利点は以下の通りです。
請求書の発行・受領をデジタル化することで、印刷、郵送、手入力の作業が不要になります。IMDAによると、処理コストは最大80%削減可能とされています。
標準化されたフォーマットと自動送信により、入力ミスや二重処理といったエラーが大幅に減少します。
リアルタイムで請求データを送信できるため、支払いサイクルが短縮され、売掛金の回収もスムーズになります。
請求データが整然と記録・保存されることで、GST申告や監査対応がより正確かつ効率的に行えます。
Peppolネットワークは日本やマレーシアなど他国でも導入が進んでおり、国境を越えた請求業務にも対応可能です。将来的な義務化に備える先行投資としても有効です。
現在はInvoiceNow対応が義務ではない企業も、将来的にはすべてのGST登録企業に対象が拡大される可能性があります。特に日本企業のシンガポール子会社等においては、本社との連携や会計処理の標準化が進んでいる場合も多いため、制度に即した適切な対応を行うことが求められます。今後の業務効率化や税務リスク管理の観点からも、早めの導入検討が推奨されます。
制度や実務面での不明点がある場合は、IMDAやIRASのガイドラインを参照のうえ、必要に応じて会計士や導入サポート事業者に相談することをお勧めします。