【シンガポール税務】GST登録企業に求められる「InvoiceNow」対応について

【シンガポール税務】GST登録企業に求められる「InvoiceNow」対応について

シンガポールにおいて、物品・サービス税(GST)登録企業を対象とした電子インボイス制度「InvoiceNow」の導入が段階的に進められています。2025年以降、一部の企業に対してはこのInvoiceNow対応が義務化されるため、早めの対応が求められます。本稿では、制度の概要および実務上の対応ポイントについて、簡潔に整理します。

 

※本稿は、三菱UFJ銀⾏会員制情報サイト「MUFG BizBuddy」寄稿記事からの転載です。

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はじめに

シンガポールにおいて、物品・サービス税(GST)登録企業を対象とした電子インボイス制度「InvoiceNow」の導入が段階的に進められています。2025年以降、一部の企業に対してはこのInvoiceNow対応が義務化されるため、早めの対応が求められます。

本稿では、制度の概要および実務上の対応ポイントについて、簡潔に整理します。

1. 制度の背景と目的

InvoiceNowは、Peppol(ペポル)という国際標準規格に基づいた電子インボイス送受信の仕組みです。シンガポール政府(情報通信メディア開発庁(IMDA)および内国歳入庁(IRAS))は、企業間の請求書処理をデジタル化・効率化し、税務報告の正確性と透明性を高めることを目的として、この制度の普及・義務化を進めています。具体的には、企業が発行する請求書情報を、会計システムを通じて電子的に取引先へ送信すると、同時に税務当局(IRAS)にも提出される形となります。

2. 義務化のスケジュール

以下の通り、対象企業が段階的に拡大されます。

適用開始日対象企業要件
2025年
11月1日以降
設立後6ヵ月以内にGST登録を申請する企業(任意登録)InvoiceNowによる送信義務あり
2026年
4月1日以降
任意でGST登録を行うすべての企業同上
今後検討中既存のGST登録企業将来的に義務対象となる可能性が高い
出典:各種資料より作成

このため、現時点で義務化対象ではない企業においても、早期導入を視野に入れて準備を進めることが推奨されています。

3. 対象となる取引とデータ

InvoiceNowの対象となるのは、以下のような取引に関する請求書です。

  • 標準税率(Standard-rated)課税取引
  • ゼロ税率(Zero-rated)取引
  • 非課税(Exempt)取引
  • GST仕入税額控除の対象となる請求書(Input tax claim)

これらの取引に関して、会計システムから自動的に電子インボイスデータが抽出・送信される仕組みが求められます。

4. 実務上の対応事項

InvoiceNowへの対応にあたり、企業が準備すべき主な項目は以下の通りです。

InvoiceNow対応会計システムの導入

IMDAが認定する「InvoiceNow-Ready Solution」の導入が必要です。現在利用している会計ソフトが対応しているか、もしくはアップグレードが必要か、ソフトウェアベンダーへ確認してください。

Peppol IDの取得

電子インボイス送信にあたり、取引先とのやり取りにはPeppol IDが必要です。これは通常、個別企業登録番号(UEN)に基づき取得されます。

税コードのマッピングと社内ルールの整備

IRASが定めるGSTのカテゴリー(種類によってSR、ZR、ES33などのコードがある)と、自社の仕訳コードを対応付けておく必要があります。誤送信や誤分類を防ぐためにも、社内ルールを整備することが望まれます。

関係者との情報共有

会計・税務部門のみならず、IT部門や外部の税理士・コンサルタントとも連携し、体制の確認・整備を進めることが重要です。

5. 導入によるメリットと留意点

InvoiceNowを導入することで、企業は請求業務や税務対応において多くのメリットを享受できます。主な利点は以下の通りです。

業務効率の向上

請求書の発行・受領をデジタル化することで、印刷、郵送、手入力の作業が不要になります。IMDAによると、処理コストは最大80%削減可能とされています。

ヒューマンエラーの削減

標準化されたフォーマットと自動送信により、入力ミスや二重処理といったエラーが大幅に減少します。

キャッシュフローの改善

リアルタイムで請求データを送信できるため、支払いサイクルが短縮され、売掛金の回収もスムーズになります。

税務コンプライアンスの強化

請求データが整然と記録・保存されることで、GST申告や監査対応がより正確かつ効率的に行えます。

国際取引・将来制度への対応

Peppolネットワークは日本やマレーシアなど他国でも導入が進んでおり、国境を越えた請求業務にも対応可能です。将来的な義務化に備える先行投資としても有効です。

6. 今後に向けて

現在はInvoiceNow対応が義務ではない企業も、将来的にはすべてのGST登録企業に対象が拡大される可能性があります。特に日本企業のシンガポール子会社等においては、本社との連携や会計処理の標準化が進んでいる場合も多いため、制度に即した適切な対応を行うことが求められます。今後の業務効率化や税務リスク管理の観点からも、早めの導入検討が推奨されます。

制度や実務面での不明点がある場合は、IMDAやIRASのガイドラインを参照のうえ、必要に応じて会計士や導入サポート事業者に相談することをお勧めします。

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監修者

  • 中村 聡一郎

    株式会社AGSコンサルティング
    国際部門シンガポール支社・日本国公認会計士

    中村 聡一郎

    有限責任あずさ監査法人にて、上場企業、金融機関を中心に監査業務に従事。

    2023年に日本AGSに入社しM&Aトランザクション業務に従事したのち、現在はシンガポールに移り、日系企業のシンガポール進出支援のほか、クロスボーダーM&Aにおける財務デューデリジェンス、海外子会社への決算及び内部統制支援等の業務を行っている。