年末調整とは?確定申告との違いや受けられる控除、必要書類などを解説

年末調整とは?確定申告との違いや受けられる控除、必要書類などを解説

年末調整とはどのような手続きかを解説しています。確定申告との違いや年末調整の対象となる人・ならない人、年末調整で受けられる控除、提出期限などのスケジュール、書類を提出できなかったときにどうなるかなども紹介しています。年末調整の時期に不明点が出てきた方は参考にしてください。

 

※この記事は、2025年6月時点の情報に基づいて作成しています

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年末調整とは

年末調整とは

年末調整とは、給与や賞与から源泉徴収された所得税の過不足を調整する手続きです。税法では、原則として、すべての人に、年間の収入や経費を計算して自分の税額を算出する確定申告を、義務付けています。

しかし、確定申告をするには税務の知識が必要であり、それを受け付ける税務署の事務コストの面からも、全ての納税者が確定申告を行うのは現実的ではありません。

そこで、納税者の大半を占めるサラリーマンなどについては、確定申告で行う作業を、年末調整という仕組みで会社に代行してもらうことで、確定申告を不要としています。

会社は、毎月支払う給与や賞与を支給する際に、概算で算出した所得税を差し引き、国に納付する「源泉徴収」を行います。ただし、源泉徴収されるのは、あくまで概算額です。そのため、実際に個々の従業員が納付すべき所得税とは差異が生じます。年末調整は、その差額を算定して調整する手続きです。

年末調整は、以前は紙媒体で提出するのが通例でしたが、近年では電子化、DX化が順次進められています。

年末調整の対象になる人

会社に勤めて源泉徴収されている人は、原則として年末調整の対象になります。1年を通じて勤務している人だけでなく、年の途中で就職し年末まで勤めている人や、青色事業専従者(家業に従事して給与を受け取っている人)も該当します。年の途中で転職した人は、転職先の会社で年末調整を行うことになるため、前職の源泉徴収票を転職先に提出しなければなりません。

転職した場合、通常は、退職のタイミングで前の職場から源泉徴収票を受け取りますが、受け取っていなければ、前の職場に連絡して源泉徴収票の発行を請求しましょう。

年末調整の対象にならない人

会社に勤めて源泉徴収されている人でも、一定の条件に該当する場合は年末調整の対象とならず、自身での確定申告が必要です。

また、自営業やフリーランスなど、会社勤めでない個人事業主も年末調整の対象になりません。
年末調整の対象にならないのは、主に下記のような場合です。

  • 給与所得が2,000万円を超える人
  • 副業などで2ヵ所以上から給与の支払いを受け、別の会社で年末調整を受ける人
  • 災害減免法によって、その年の給与に対する所得税の徴収猶予や還付をすでに受けている人

給与所得が2,000万円を超える場合は、確定申告をしなければなりません。

また、年末調整を受けられるのは1ヵ所の職場のみです。2ヵ所以上の職場に勤め、それぞれ給与をもらっているのであれば、確定申告が必要です。

副業については、副業の所得が20万円以上なら、年末調整を受けていたとしても、自身で改めて確定申告をしなければなりません。20万円以下であれば、改めての確定申告は不要です。

ただし、副業の所得が20万円以下でも、市区町村に対して住民税の申告が必要である点に注意してください。

 (参考)所得とは

 (参考)所得とは

所得とは、給与や売上から各種の所得控除や経費などを差し引いた「もうけ」の部分を指します。

所得税は、この所得の部分に対して課されます。副業で給与を受け取っている方であれば、額面金額から給与所得控除や社会保険料、通勤手当などを差し引いた部分が所得となります。

一方、副業で得ているのが事業所得や雑所得などであれば、売上から様々な経費を差し引いたものが所得となります。どこまでを経費として差し引けるかは、所得の種類によって変わるので注意してください。

収入との違い

収入とは、所得控除や経費を差し引く前の、労働やサービスの対価として得る金銭を指します。給与でいえば額面金額にあたり、個人事業であれば売上が該当します。

この収入から、各種の控除や経費が差し引かれたものが所得となります。

手取りとの違い

手取りとは、実際に受け取る金額を指します。

整理すると、まず「収入(額面金額)」があります。

そこから非課税通勤手当などを除き、給与所得控除を引いたものが「給与所得」です。

さらに、そこから各種の所得控除を差し引くと、実際に税金が課される「所得」となります。

「手取り」は、この流れの中で、「収入から所得税・住民税・社会保険料が引かれたもの」を指します。

年末調整と確定申告の違い

年末調整と確定申告の違い

年末調整と確定申告は、どちらも所得税を計算して納付する手続きです。年末調整は、会社が従業員の代わりに計算を行ってくれるのに対し、確定申告は個人が自身で行います。

前述したように、給与所得が2,000万円を超えていたり、給与を2ヵ所以上からもらったりしている場合、年末調整を受けられないため、確定申告をしなければいけません。

また、年末調整を受けていても、副業の所得が20万円以上ある人、医療費控除や住宅ローン控除(1年目)を適用する人、災害減免法の適用を受ける人などは、改めて自分で確定申告する必要があります。

年末調整で受けられる控除と提出が必要な書類

年末調整で受けられる控除と提出が必要な書類

年末調整では、各種の控除を受けて所得税額を減らせますが、控除を受けるには、各申告書に控除内容を記載し、必要書類を提出する必要があります。

各種控除を受けるための申告書と必要書類について解説します。

給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除を受けるために必要な申告書です。

なお、2024年の年末控除については、定額減税が実施されるため、「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼年末調整に係る定額減税のための申告書兼所得金額調整控除申告書」に名前が変わっています。

この申告書に関係する各種の控除について説明します。

基礎控除

合計所得が2,500万円以下であれば、合計所得に応じて最大48万円の基礎控除が受けられます。

基礎控除は、従来は所得にかかわらず一律38万円の控除が認められていましたが、2020年に、「高所得者にまで税負担の軽減効果を及ぼす必要は乏しい」との観点から、所得制限が設けられました。

合計所得金額に応じた控除額は以下のとおりです。

納税者本人の合計所得金額控除額
2,400万円以下48万円
2,400万円超2,450万円以下32万円
2,450万円超2,500万円以下16万円

出典:自民党「平成30年度税制改正大綱」4ページ

配偶者控除

納税者本人の合計所得が1,000万円以下かつ、配偶者の合計所得が48万円以下であれば、納税者本人が控除を受けられます。納税者本人の合計所得金額に応じて、控除額は変わります。例えば妻が専業主婦である場合に、夫が配偶者控除を受けられます。

納税者本人の合計所得に応じた控除額は以下のとおりです。

控除を受ける本人の

合計所得金額

控除額
70歳未満の配偶者70歳以上の配偶者
900万円以下38万円48万円
900万円超950万円以下26万円32万円
950万円超1,000万円以下13万円16万円

配偶者特別控除

配偶者の所得が48万円を超えてしまい、配偶者控除が受けられなくなっても、所得が133万円を超えるまでは、配偶者特別控除を受けられます。

傾向として、配偶者が専業主婦(主夫)の場合は配偶者控除、パート・アルバイトなどをしている場合は配偶者特別控除が適用されることが多いです。配偶者特別控除の控除額は、配偶者だけでなく、納税者本人の所得によっても変わります。

納税者本人と配偶者の合計所得に応じた控除額は、以下のとおりです。

配偶者の合計所得金額控除を受ける納税者本人の合計所得金額
900万円以下900万円超

950万円以下

950万円超

1,000万円以下

48万円超 95万円以下38万円26万円13万円
95万円超 100万円以下36万円24万円12万円
100万円超 105万円以下31万円21万円11万円
105万円超 110万円以下26万円18万円9万円
110万円超 115万円以下21万円14万円7万円
115万円超 120万円以下16万円11万円6万円
120万円超 125万円以下11万円8万円4万円
125万円超 130万円以下6万円4万円2万円
130万円超 133万円以下3万円2万円1万円

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、扶養控除、障害者控除、ひとり親控除、寡婦控除、勤労学生控除を受けるために必要な申告書です。

16歳以上の親族の続柄やマイナンバー、所得見積額など、各種控除を受けるために必要な情報を記入します。

この申告書に関係する各種控除について説明します。

扶養控除

同一生計で養っている16歳以上の親族がいる場合に、親族1人当たり最大63万円の扶養控除を受けられます。

控除額は、扶養親族の年齢や、同居しているかどうかによって変わります。

なお1人の扶養親族について、2人以上が扶養控除を適用することはできません。
子が1人の共働き家庭だと、扶養控除を適用できるのは父か母のどちらかです。

扶養控除の控除額は、以下のとおりです。

区分控除額
16歳以上19歳未満の扶養親族38万円
19歳以上23歳未満の扶養親族(特定扶養親族)63万円
老人扶養親族同居する直系尊属58万円
それ以外48万円

障害者控除

納税者本人、同一生計の配偶者、同一生計の扶養親族のいずれかが所得税法上の障害者に当てはまる場合には、障害者控除が適用されます。

障害者控除は、扶養控除が適用されない16歳未満の扶養親族がいるケースにも適用されます。

障害者控除の控除額は、以下のとおりです。

区分控除額
障害者27万円
特別障害者40万円
同居特別障害者75万円

寡婦控除

「寡婦(かふ)」とは、夫と死別・離婚した後に結婚していない女性です。所得税では、寡婦で一定の要件に当てはまる人に、27万円の控除を認めています。

寡婦控除の適用を受けるには、以下のうち、いずれかを満たす必要があります。

  • 夫と離婚した後婚姻をしておらず、扶養親族がおり、合計所得金額500万円以下
  • 夫と死別した後婚姻をしていないか、夫が生死不明で、合計所得金額が500万円以下

なお、後述する「ひとり親」の要件に当てはまる人は、寡婦控除より控除額の大きい「ひとり親控除」が適用されます。寡婦控除と、ひとり親控除の併用はできません。

また法律婚でなくても、住民票の続柄に記載がある内縁の夫ないし妻がいる場合、寡婦控除は受けられません。

ひとり親控除

従来の寡婦控除が、未婚のシングルマザーや、子供を育てるシングルファザーに対して公平でなかったことから、2020年度税制改正で「ひとり親控除」が導入されました。

性別や、婚姻歴があるかどうかにかかわらず、本人の合計所得金額が500万円以下かつ、同一生計で総所得48万円以下の子どもを持つ場合に、35万円の控除を認めるものです。

ひとり親控除と寡婦控除の両方に当てはまる場合、併用はできず、控除額が大きいひとり親控除が適用されます。

なお、2026年以降は、ひとり親控除について、以下の改正が行われます。

  • 控除額が、35万円から38万円に引き上げ
  • 本人の所得上限が、500万円以下から1,000万円以下に引き上げ

出典:自民党「令和6年度税制改正大綱」24ページ

勤労学生控除

働きながら学校に通う、いわゆる「勤労学生」には、27万円の控除が認められます。

勤労学生控除の適用を受けるには、以下の3つの条件を満たさなければなりません。

  • 給与所得などの勤労による所得があること
  • 合計所得金額が75万円以下かつ、勤労以外の所得が10万円以下であること
  • 特定の学校の学生、生徒であること

ここでいう特定の学校には、学校教育法や私立学校法などに規定された学校のほか、職業訓練学校なども該当します。

給与所得者の保険料控除申告書

個人的に加入している生命保険料や地震保険料、個人年金保険料、iDeCoなどの小規模企業共済等掛金がある場合、所得控除が受けられます。保険料控除申告書は、その控除を受けるために提出する書類です。

社会保険料に対する所得控除についても、天引きされていないものは、この申告書で手続きを行います。

また、小規模企業共済等掛金控除やiDeCoについての記載も、この申告書で行います。

生命保険料控除

1年間に支払った生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料について、一定の金額の控除を受けられます。

支払った全額を控除できるわけではなく、新契約と旧契約で下記の計算式に当てはめて、控除額を算定します。新契約か旧契約かは、保険会社などから送られてくる保険料控除証明書に記載されています。

新契約
年間の支払保険料等 控除額
20,000円以下 支払保険料等の全額
20,000円超 40,000円以下 支払保険料等 × ½ + 10,000円
40,000円超 80,000円以下 支払保険料等 × ¼ + 20,000円
80,000円超 一律40,000円

 

旧契約
年間の支払保険料等 控除額
25,000円以下 支払保険料等の全額
25,000円超 50,000円以下 支払保険料等 × ½ + 12,500円
50,000円超 100,000円以下 支払保険料等 × ¼ + 25,000円
100,000円超 一律50,000円

地震保険料控除

地震保険料控除の対象となるのは、居住用の建物に限られ、別荘や空き家にかけた地震保険料は控除できません。

店舗併用住宅については、原則として、居住用資産にかかるものだけが対象となります。

2006年までに契約した「旧長期損害保険」と、それ以降の「地震保険」で控除額が異なり、それぞれの控除額は以下のとおりです。

区分年間の支払保険料の合計控除額
地震保険料50,000円以下全額
50,000円超50,000円
旧長期損害保険料10,000円以下全額
10,000円超 20,000円以下支払金額 × ½ + 5,000円
20,000円超15,000円
両方がある場合それぞれの控除額の合計

(最大50,000円)

社会保険料控除

毎月の給与から徴収されている社会保険料については、全額を所得から控除できます。

自分だけでなく、同一生計の配偶者や子の社会保険料を支払った場合にも、全額が対象です。

なお、給与から徴収されている主な社会保険として、以下のようなものが挙げられます。

  • 健康保険
  • 厚生年金
  • 介護保険
  • 雇用保険

小規模企業共済等掛金控除(iDeCoなど)

小規模企業共済法に規定された共済契約に基づく掛金については、全額を所得から控除できます。

控除できる掛金は、以下の3つです。

  • 中小企業基盤整備機構と結んだ共済契約の掛金(旧第二種共済契約の掛金は対象外)
  • 確定拠出年金の掛金
  • 地方公共団体が実施する、いわゆる心身障害者扶養共済制度の掛金

近年、加入者が増えている個人型確定拠出年金(iDeCo)は、この控除が適用されます。

給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 兼 (特定増改築等)住宅借入金等特別控除計算明細書(※該当する従業員のみ)

住宅ローンを組んでマイホームを新築したり、特定の増改築を行ったりした場合、所定の条件を満たすと「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」が受けられます。

ただし、住宅借入金等特別控除を受ける初年度は、自身で確定申告をしなければならず、2年目以降から年末調整のみで控除が受けられます。

年末近くに金融機関から送られてくる、「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を、申告書と一緒に会社に提出します。

住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)

住宅ローン控除を受けるためには、様々な要件を満たす必要があります。

また適用できる期間や控除限度額も、住み始めた時期によって細かく分かれています。

住宅ローンを受けるための要件には、例えば以下のようなものがあります。

  • 新築や増改築から半年以内に住み始めていること
  • 年末まで住み続けていること
  • 新築であれば床面積40平方メートル以上かつ所得1,000万円以下であること
  • ローンが10年以上で組まれていること
  • 過去数年以内に譲渡所得の特例を受けていないこと

適用を誤ると、本来受けられるはずの所得控除を受けられなかったり、逆に控除額が過大で後になって不足分の納税を求められたりする可能性があるので、注意してください。

なお、適用要件は変更されることも多いため、その時々の最新情報をチェックするようにしましょう。

参考:名古屋国税局「令和6年分 住宅借入金等特別控除チェック表(令和6年1月1日から令和6年12月31日までの間に入居した場合)」

年末調整を行っていても確定申告が必要な控除

年末調整に反映されない控除については、たとえ年末調整を受けていても、自分で改めて確定申告をしなければ適用されません。

確定申告が必要な控除としては、前述した住宅ローン控除の1年目以外にも、以下のようなものがあります。

  • 医療費控除
  • セルフメディケーション税制
  • 寄附金控除
  • 雑損控除と災害減免法

それぞれについて、説明します。

医療費控除

医療費控除は、支払った年間の医療費が、以下の金額を超えた場合に、超過分を最大200万円まで控除できる制度です。

  1. 年間の総所得200万円未満なら総所得金額の5%
  2. 年間の総所得200万円以上なら10万円

自身のみでなく、同一生計の配偶者や親族の医療費と合算して一定額を超えていても、控除対象になります。

セルフメディケーション税制

セルフメディケーション税制は、ドラッグストアなどで売っている対象医薬品を年間12,000円を超えて購入した場合に、超過分を最大88,000円まで控除できる制度です。

対象医薬品は、適宜追加や削除が行われていて、最新のリストは厚生労働省のウェブサイトなどで確認できます(参考までに、2024年11月時点では約3,000商品が対象)。店頭では、製品パッケージやレシートにセルフメディケーション税制の対象であることが記載されています。

医療費控除と同様、同一生計の親族と合算することが可能です。

注意点として、医療費控除とセルフメディケーション税制の併用はできず、どちらかの選択適用である点には注意しましょう。

寄附金控除(ふるさと納税など)

国や地方公共団体、特定公益増進法人などに支出した寄附金については、「特定寄附金」として控除を受けられます。

控除できるのは、以下のいずれか低い金額から、2,000円を差し引いた額です。

  • その年に支出した特定寄附金の額の合計額
  • その年の総所得金額の40%相当額

よく知られる「ふるさと納税」制度も、寄附金控除の制度を利用しています。

ただ、ふるさと納税については、利用者の利便性向上のため、以下の条件を満たしている場合にのみ、確定申告を省略できる「ワンストップ特例制度」が設けられています。

  • もともと確定申告が必要ない給与所得者であること
  • 1年間の寄付先が5自治体以内であること

雑損控除と災害減免法

自然災害によって損害を受けた人は、翌年の確定申告で「雑損控除」か「災害減免法」のどちらかの優遇措置を適用できます。

雑損控除は、以下のいずれかのうち多い方の金額を所得から控除します。

  • (損害金額 + 災害等関連支出の金額 – 保険金等の額)-(総所得金額等)× 10%
  • (災害関連支出の金額-保険金等の額 – 5万円

一方の災害減免法は、所得金額に応じて、所得税額が減免されます。

所得金額の合計額軽減または免除される所得税の額
500万円以下所得税の額の全額
500万円超 750万円以下所得税の額の2分の1
750万円超 1,000万円以下所得税の額の4分の1

どちらも年末調整では適用できないため、確定申告が必須です。

住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除・1年目)

住宅ローン控除は、2年目以降は年末調整のみで事足りますが、1年目は必ず確定申告をしなければなりません。

1年目の確定申告の際に必要な主な書類は、以下のとおりです。

  • 確定申告書
  • 源泉徴収票
  • 本人確認書類の写し
  • 住宅ローンの年末残高等証明書
  • (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 建物・土地の登記事項証明書
  • 建物・土地の不動産売買契約書(請負契約書)の写し
  • 認定通知書の写しまたは性能証明書等(認定長期優良住宅・低炭素住宅・省エネ住宅の場合)

年末調整のスケジュール(提出期限はいつまで?)

年末調整のスケジュール(提出期限はいつまで?)

会社と従業員、それぞれについて年末調整のスケジュールを解説します。

会社従業員
10月【10月中旬~11月中旬】
申告書を配布
【10月中旬~】
保険料の証明書等の準備
11月【11月中】
申告書を回収
【11月下旬】
添付書類をそろえて申告書を提出
12月【12月中】
税額を確定
【12月~1月】
給与の加減算で還付・追加徴収
特になし(修正がある場合は年内に対応が必要)
1月【1月10日または20日】
源泉徴収税の納付期限
【1月31日】法定調書、給与支払報告書、退職者の源泉徴収票の提出期限
特になし

会社側のスケジュール

会社は、おおむね10月中旬~11月中旬頃に従業員に対して申告書を配布し、11月中には回収しましょう。回収した申告書を基に、12月中に所得税額を確定させ、源泉徴収税額との差額を計算し、清算します。差額を清算する還付または追加徴収は通常、12月や1月の従業員の給与に加減算する形で行います。

翌年の1月10日、または納期の特例を適用している場合は1月20日までに、年末調整後の源泉徴収税額を納付してください。

さらに、会社は「法定調書」を作成し、1月31日までに支払事務を取り扱う事務所、事業所等の所在地を所轄する税務署に提出する必要があります。

加えて、「給与支払報告書」および、退職者の「源泉徴収票」を、それぞれ給与の支払いを受けている従業員の1月1日現在の住所地の市区町村長に提出しなければいけません。こちらも提出期限は1月31日までです。

従業員側のスケジュール

従業員は、会社から配布された各種申告書に必要事項を記入し、保険料の証明書などと一緒に、会社に提出します。

提出期限は会社によって異なりますが、遅くても11月下旬には提出することが望ましいです。

年の途中で転職してきた人は、前職の源泉徴収票も提出してください。

年の途中で年末調整の対象となる人

下記のいずれかに当てはまる人は、年の途中で年末調整が行われます。

  • 海外支店等に転勤したことなどの理由により非居住者となった人
  • 死亡によって退職した人
  • 著しい心身の障害のために退職した人(退職した後に再就職をし給与を受け取る見込みのある人は除きます)
  • 12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人
  • いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人(退職後その年に他の勤務先から給与の支払を受ける見込みのある人は除きます)

年の途中に行う年末調整でも、やることは通常の年末調整と変わりません。

1年間の給与総額ではなく、その時点までに支払いが確定している給与総額を基に年末調整を行い、所得税額を確定します。

なお、年の途中に年末調整を行った人に対しては、年末に改めて年末調整をやり直す必要はありません。

年末調整の書類を提出しなかった場合

年末調整の書類を提出しなかった場合

年末調整をしなかったり、必要な書類を提出しなかったりすると、従業員は、翌年2月~3月に確定申告をしない限り各種の所得控除が受けられません。

また、会社は、法的義務を怠ったとして罰則を科されるリスクがあります。両者にとってデメリットが大きいため、年末調整は必ずやるべきです。

万が一、会社が年末調整をしてくれないような場合には、従業員は源泉徴収票を手に入れて自分で確定申告を行うか、税務署に相談するようにしましょう。

確定申告をしないと各種控除を受けられない

所得控除の大半は、年末調整で手続きがされるため、従業員は、年末調整の書類を提出しないと控除自体が受けられません。保険料控除に必要書類や証明書などを提出しなかった場合も同様です。

毎月の源泉徴収では所得税額を概算して控除を行いますが、配偶者控除や保険料控除などの所得控除は考慮されていません。それを調整するための年末調整なので、年末調整を怠ると還付を受けられず、多くの場合で損をします。

さらに、住民税についても、前年の所得税の金額を基に税額が算定されるため、年末調整を受けずに所得税額が多くなると、翌年の住民税額も増えてしまいます。

年末調整をしなかった場合、各種の控除を受けたければ、自身で確定申告をして、控除に必要な項目を申告書に記入し、各種証明書を提出しなければなりません。

確定申告もしなかった場合

年末調整も受けず、確定申告も怠ると、最終的には、一度決まった税額の減額を求める「更正の請求」という手続きを取らなければならなくなります。そうならないために、年末調整の書類は適切に提出するようにしましょう。

なお、年末調整では、毎月の給与などから源泉徴収した額と、最終的な税額との過不足が調整されます。多くの場合では、各種の控除が適用されて還付額が生じますが、税額が不足しているケースもあり得ます。

その場合、12月~1月の給与などで減算調整されますが、年末調整をしないと、その調整が行われません。確定申告まで怠ると、税金の未納が発生してしまい、延滞税や加算税などのペナルティを受ける可能性もあるため、必ず対応するようにしましょう。

確定申告は原則3月15日まで

確定申告の期限は、原則として翌年2月16日から3月15日までとなっています。

確定申告期は税務署が混み合うため、電子方式での申告(e-Tax)もおすすめです。

参考:【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)

雇用主は罰則を受ける可能性がある

従業員の所得税を徴収し、国に納めるのは、雇用主の義務です。年末調整を行わないと正しい所得税額を算定できないため、雇用主が自らの利益のために故意に年末調整を実施しなかった場合、罰則の対象になります。

年末調整を実施せず、従業員から適切な所得税を徴収していなかったり、年末調整書類に虚偽の記載や記録をして税務署の承認を受けたりした場合、雇用主には1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。

また、年末調整を行ったとしても、所得税の納付期限や法定調書などの提出期限に遅れた場合も、罰則を受ける可能性があります。

年末調整後に変更・修正が生じた場合

年末調整後に変更・修正が生じた場合

年末調整に記載する内容は、毎年12月31日時点での現況です。つまり、会社に年末調整書類を提出した後、12月31日までに子どもが生まれたり、結婚して扶養家族が増えたりしたケースでは、年末調整のやり直しが必要です。本人や配偶者の見込み年収が大幅に変わった場合も、年末調整の修正が必要なケースがあります。

他にも、保険会社から控除証明書が後から届き、保険料控除申告書に記入漏れがあった場合も、修正が必要です。会社側で年末調整を修正できるのは、原則として、給与所得の源泉徴収票を発行する前、かつ翌年1月末までです。ただし、実際には、各会社の事務の都合などにより、それより前でも変更できない場合もあります。記載内容に変更が生じた際には、なるべく早く担当者や担当部署に相談しましょう。

仮に変更・修正が間に合わない場合や、会社で受け付けてもらえない場合は、自身で確定申告をしなければなりません。

まとめ

年末調整とは?確定申告との違いや受けられる控除、必要書類などを解説

年末調整は、給与所得者の所得税額を確定するための手続きです。

年末調整の申告書や必要書類を提出しなかった場合、本来は受けられるはずの控除が受けられません。

従業員は、会社が定める提出期限までに忘れず提出しましょう。

監修者