租税公課について解説しています。経費計上できる勘定科目や消費税の仕訳、法人税等との違いや経費計上できる・損金算入できないものについても紹介しています。租税公課について調べている方は参考にしてください。
2024.08.02(最終更新日:2024.08.14)
租税公課について解説しています。経費計上できる勘定科目や消費税の仕訳、法人税等との違いや経費計上できる・損金算入できないものについても紹介しています。租税公課について調べている方は参考にしてください。
2024.08.02(最終更新日:2024.08.14)
「租税公課」とは会計上の勘定科目の1つであり、国や地方に納める税金と公共団体に納める会費や、罰金などの費用に対して使う科目です。
例えば、収入印紙代、登録免許税、法人事業税、公共サービスの手数料、税込方式で仕訳する場合の消費税などが挙げられます。
税務申告の際、租税公課は経費にできるものとできないものに分かれるため、何が経費にできるのかを把握しておく必要があります。
租税とは、国や地方公共団体に納付する税金の総称です。
ただし、税金の中でも「法人税」「住民税」「事業税(所得割)」は租税公課ではなく、「法人税、住民税及び事業税」科目に分類されます。
租税となる項目例としては、以下が挙げられます。
公課とは、国や地方公共団体が発行する各種証明書の発行費用や行政サービスの手数料、公共団体へ納める会費、罰金等の総称です。
公課となる項目例としては、以下が挙げられます。
交通反則金は本来、違反した従業員や事業主自身が支払う性質のお金であり、事業遂行に必要ではないため、費用となりません。
しかし、法人の場合で業務遂行中に生じた交通違反に対する交通反則金を法人が負担した場合は、「租税公課」として費用計上します。
法人税等とは、法人税(法人所得税)や法人住民税、法人事業税を指します。法人への税金のうち、法人の所得に対して課される税金が法人税等になり、法人に課されるそれ以外の税金が租税公課となります。
特に注意すべきなのが、法人事業税の外形標準課税です。
外形標準課税は、事業年度終了の日における資本金または出資金の額が1億円を超える法人等を対象に課される法人事業税です。外形標準課税は所得に対して課される税金ではないため、租税公課勘定で処理します。
租税公課の対象となる費用のうち、税務申告の際に経費として損金算入できるものとできないものがあります。
国や地方公共団体に対して支払った税金などでも、経費に計上できるものがあります。税負担を軽減するため、どの支払いが経費計上できるのかを知っておくことは重要です。
ここでは、損金算入できるものとできないものについて説明します。
損金算入できる費目は、以下のとおりです。
費目 | 説明 |
---|---|
印紙税 | 紙形式で契約書や領収書を発行する際、取引金額に応じてかかる税金 |
登録免許税 | 不動産や法人などの登記・登録を行う際にかかる税金 |
法人事業税のうち外形標準課税 | 期末の資本金または出資金が1億円超の法人等にかかる外形標準課税(資本割及び付加価値割) |
事業所税 | 特定の市区町村において、一定規模以上の事業を行っている事業主に対して課税される税金 |
税込方式で仕訳する場合の消費税 | 売上高や仕入高を消費税込みの総額で記帳する税込方式を選択した場合の消費税額 |
固定資産税 | 不動産の所有にかかる税金 |
不動産取得税 | 不動産を取得した際に、取得者に課される税金 |
自動車税・軽自動車税 | 自動車の所有者に課される税金 |
公共サービスの手数料 | 地方公共団体などが行う公共サービスの利用手数料 |
固定資産税や不動産取得税、自動車税などは、あくまで事業で使ったり、法人が所有していたりする不動産や車に対してかかる税金のみが租税公課の対象です。個人が所有している家や車で、プライベートでしか使用しないものに対する税金は、租税公課の対象にはなりません。
損金算入できない費目は、以下のとおりです。
費目 | 説明 |
---|---|
罰金、科料 | 交通規則違反などで課せられる罰金や科料 |
延滞税、延滞金 | 税の申告遅延などのペナルティとして課せられる延滞税や延滞金(一定のものを除く) |
租税公課のうち、税金の申告遅延や申告が適正に行われなかった場合などに課される延滞税や延滞金、加算税、加算金(一定のものを除く)は損金算入できません。また、交通違反などで課される罰金や科料も損金算入できません。
租税公課のうち、ペナルティとして課されるものや法律違反で課されるものは、損金算入できないと覚えておきましょう。
租税公課として計上しない費用や、そもそも法人の費用とならない費目について、以下の表にまとめました。
費目 | 説明 |
---|---|
法人税、法人住民税、法人事業税 | 法人の所得に対して課される税金 |
所得税 | 個人の所得に対して課される税金 |
県民税、市町村税(住民税) | 地域に住む個人に課せられる税金 |
相続税 | 相続の際にかかる税金 |
国民健康保険料 | 個人が加入する国民健康保険の保険料 |
国民年金保険料 | 個人が加入する国民年金保険の保険料 |
法人の所得に対して課される税金は「法人税、住民税及び事業税」の科目で処理します。法人の所得に対して課される自らの税負担を、自らの損金にすることは認められていないため、「法人税、住民税及び事業税」は損金算入できません。
法人の費用となる税金は、事業活動に対して課されるものに限られるため、個人に対して課される所得税や個人住民税、相続税、国民健康保険料、国民年金保険料なども対象とはなりません。
なお、役員や従業員が加入する社会保険料のうち、法人負担分については「法定福利費」という科目で計上し、全額経費として損金算入することができます。
法人が税込経理方式を採用している場合、その消費税額は租税公課として損金算入できます。
確定した消費税をどう扱うかは、法人が採用する経理方式によって異なります。ここでは、経理方式ごとに消費税をどのように取り扱うかについて解説します。
注意点として、「消費税を損金算入できるのだから、法人税法上は税込経理方式の方が有利」とは必ずしもならないことが挙げられます。その理由についても併せて解説します。
税込経理方式とは会計上、売上や仕入、購入した資産などを、消費税を含めた金額で計上する方式です。
例えば税抜金額100円、消費税10円の商品を仕入れたとすると、以下の仕訳になります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 110円 | 現預金 | 110円 |
期末に納付すべき消費税の額が確定した段階で、以下の仕訳により消費税を計上します。
ここでは消費税を10,000円とします。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
租税公課 | 10,000円 | 未払消費税 | 10,000円 |
税込経理方式の場合、法人税の計算上、消費税を租税公課として損金算入できるため、一見すると有利です。
しかし、費用や取得資産が税込価格になると、資産額をもとに算定される税金も大きくなります。損金算入できる金額に限度が設けられている経費についても、場合によっては不利になる可能性があります。
例えば、法人で税抜価格100万円、消費税10万円である車を購入した場合、税抜経理方式では償却資産税が課される対象は税抜価格100万円です。税込経理方式の場合では、税込価格110万円に対して償却資産税が課されるため、税込経理方式の方が税金は大きくなってしまいます。
また、一定の条件を満たす中小企業は、年間800万円以下の接待交際費、あるいは接待交際費の中の接待飲食費の50%までを損金に算入できます。税込経理方式によって接待交際費の金額に消費税分が含まれてしまった結果、損金算入できない接待交際費が増えてしまう可能性があります。
税抜経理方式では、売上や仕入、購入した資産などについて消費税を除いた金額で計上し、消費税分は仮勘定で処理する方式です。
例えば、税抜金額100円、消費税10円の商品を仕入れたとすると、以下の仕訳になります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 100円 | 現預金 | 110円 |
仮払消費税 | 10円 |
税抜金額200円、消費税20円の商品を販売したとすると、以下の仕訳になります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現預金 | 220円 | 売上 | 200円 |
仮受消費税 | 20円 |
期末に消費税が確定した段階で、仮払消費税と仮受消費税の差額と消費税額がずれた場合、収益または費用を計上します。
例えば、仮払消費税40,000円、仮受消費税50,000円、確定した消費税12,000円の場合、以下の仕訳になります。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
仮受消費税 | 50,000円 | 仮払消費税 | 40,000円 |
未払消費税 | 12,000円 | ||
租税公課 | 2,000円 |
期末の消費税処理で出た損益は、法人税法上の益金または損金に計上します。
税抜経理方式は、税込経理方式と比べて計算が煩雑なものの、会社の取引の実態を正確に表せます。税込経理方式と税抜経理方式はどちらでも選べますし、どちらを選んでも年間の消費税額は同じです。
ただし、経理方式の変更を行うと会計データの期間比較が難しくなるため、経理方式の変更を検討する際は慎重に進めましょう。
納税方式には、申告納税方式・賦課課税方式・特別徴収方式の3つがあり、それぞれの方式で経費計上できるタイミングが異なります。
事業年度をまたぐ場合には、各事業年度の法人税などが異なってくるため、納税方式ごとの経費計上できるタイミングを把握しておきましょう。
ここでは、それぞれの方式について、経費計上できるタイミングを解説します。
申告納税方式とは、納税者自らが税務署へ税金の申告を行うことで税額が確定し、確定した税額を自ら納付する方式です。
申告納税方式の税金は、申告を行った事業年度に必要経費として損金算入できます。
申告納税方式の税金としては、主に以下のものがあります。
賦課課税方式とは、納める税額の計算及び通知を国税であれば税務署長が、地方税であれば地方団体の長が行う方式です。税務署長や地方団体の長は「賦課決定通知書」または「納税通知書」を各納税者に送り、納税者は受け取った通知書に記載された税額を納めます。
賦課決定のあった事業年度に必要経費として損金算入できます。
賦課決定方式の税金としては、主に以下のものがあります。
特別徴収方式とは、代表者が国や地方団体の代わりに税を徴収し、かつその徴収すべき税を国や地方団体に納める方式です。
例えば、サラリーマンが給与から天引きされる住民税が代表的です。ただし、個人住民税は租税公課の対象にはなりません。
特別徴収した税金は、納入申告書に納入金額などの必要事項を記載し、徴収した月の翌月10日(土曜日・日曜日、祝日のときはその翌日)までに金融機関等で納入する必要があります。
特別徴収方式の場合、納入申告書を提出した事業年度に損金算入できます。
租税公課の対象となる特別徴収方式の税金としては、主に以下のものがあります。
租税公課とは、国や地方に納める税金と公共団体に納める会費、罰金などに対して使う勘定科目です。主に、事業活動に対してかかる税金で、かつ法人の所得に対して課される税金以外のものが対象となります。
上場企業や大企業で特に間違えやすいのが、法人事業税の外形標準課税である「付加価値割」と「資本割」です。外形標準課税は所得に課される税金ではないため、租税公課となります。
租税公課は法人税の計算上、基本的には経費として損金算入できます。ただし、ペナルティによる税金や交通違反などによる罰金など、経費として損金算入できないものもあることを把握しておきましょう。
消費税については、税込経理方式の場合に損金算入できますが、償却資産税などの他の税金が高くなってしまうケースもあります。必ずしも税抜経理方式より税金が安くなるとは限りません。
また、税込経理方式と税抜経理方式を切り替えると、各事業年度での実績比較が困難になってしまいます。業績予測や経営方針の決定に影響を及ぼすため、よほどの事情がない限り経理方式を変えず、変更する場合にも慎重に検討を進めましょう。