小切手とはどういうものか解説しています。手形との違いや小切手の種類、振り出しの方法や換金の流れ、勘定科目(仕訳)や活用するメリット・デメリットについても紹介します。小切手について調べている方は参考にしてください。
2024.08.01(最終更新日:2024.08.14)
小切手とはどういうものか解説しています。手形との違いや小切手の種類、振り出しの方法や換金の流れ、勘定科目(仕訳)や活用するメリット・デメリットについても紹介します。小切手について調べている方は参考にしてください。
2024.08.01(最終更新日:2024.08.14)
「小切手」とは、お金の代わりにやり取りできる有価証券の1つです。
小切手で支払う場合、取引銀行の当座預金に預けてあるお金が原資です。支払いの際には、銀行で受け取った小切手帳に振出人名や日付、金額を記載して取引の相手方に渡します。
多額の現金を持ち運ぶわけではないため、盗難や紛失のリスクが低く、入出金の事務負担も軽減できるため、主に金額の大きな取引で用いられます。小切手を使用するには、事前に銀行で当座預金口座を開設し、審査を受けなければいけません。
当座預金口座にお金がないなどの理由で、小切手の決済ができないことを「不渡り」と呼びます。
不渡りを出すと、対外的な信用力が大きく低下し、追加の融資が受けられなくたったり、銀行取引の停止処分を受けたりなど、会社の経営に悪影響を及ぼします。
手形とは、小切手と同様に専用の用紙に振出人名や金額を書き込んで取引相手に渡し、現金化できる決済方法です。小切手との違いとしては、小切手がすぐに現金化できるのに対し、手形は原則として支払期日にならないと現金化できない点が挙げられます。
手形は、今すぐに現金がないけれど、将来支払のための現金が手に入る場合に使われます。現金がなくても取引時の支払ができるのが、手形の特徴です。
政府は2026年を目途に紙の手形・小切手を廃止し、全面的に電子化する方針を示しています。これを受け、三井住友銀行などの大手銀行は、当座勘定を新たに開設する顧客に対して小切手の発行を停止する旨を発表しました。
紙の小切手を使うと、小切手帳の発行料金や印紙税がかかります。小切手を取引先に送る郵送料などの金銭的負担がありましたが、電子化した小切手ではそれらの費用がかかりません。
また、小切手の発行や郵送作業をする手間もなくなり、事務負担軽減にもつながります。紙の小切手を現物管理する必要もなくなるため、紛失や盗難、封入ミスがなくなる点でも改善効果が期待できます。
出典:三井住友銀行「手形・小切手の全面的な電子化に向けた各種対応に関するお知らせ」
小切手は、細かく3つの種類に分かれており、それぞれで換金方法や換金できる日付が異なります。小切手の種類と特徴を理解しておかないと換金時にトラブルの原因となるため、ここでは小切手の種類について解説します。
持参人払式小切手とは、小切手に受取人が指定されていない小切手です。
銀行に小切手を持参した人であれば、いつでも誰でも支払いが受けられる自由度の高い小切手となります。
線引小切手とは、銀行に持参すると現金を渡されるのではなく、持参した人の銀行口座にお金が振り込まれる小切手です。線引小切手の見た目には、小切手の上部に2本の平行線が引かれている特徴があります。
振込されることによって記録が残り、誰に支払われたかが明確となるため、盗難や不正のリスクが抑えられます。
先日付小切手とは、実際の振出日よりも先の日付で振出日が設定されている小切手です。振出人の資金繰りの都合上、現在はお金がないけれど、指定した振出日には資金確保が見込まれる場合などに先日付小切手が使われます。
振出日が設定されているため、一見手形と同じように見えますが、先日付小切手には法的効力がありません。そのため、指定の振出日前であっても銀行に持ち込んで手続きを受ければ支払いが実行されます。
振出日より前に支払いが実行されても、当座預金口座にお金がなければ不渡りとなってしまいます。そのような事態を防ぐため、先日付小切手は信頼関係のある相手にのみ使いましょう。
小切手を使用して支払いを行う場合、支払いする側が小切手を振出し、取引先にこれを渡します。小切手を振出す場合、金融機関に相談して事前に準備をしておく必要があります。
小切手の振出しの手順は、以下の通りです。
小切手の振出しをするためには、まず金融機関で申し込みをして審査を受け、当座預金口座を開設する必要があります。当座預金口座が開設できたら、金融機関と支払委託に関する契約の締結をします。支払委託に関する契約を結ばないと、金融機関が口座からお金を動かせません。
当座預金口座のお金が足りずに小切手が不渡りになってしまうと、最悪のケースでは銀行との取引すべてが停止してしまいます。小切手を振出す前に、必要額以上の金額が口座に預けられているかを必ず確認しておきましょう。
金融機関との委託契約が締結されると、小切手帳の交付を受けられます。小切手帳の交付には手数料がかかり、この金額は金融機関によって異なります。また、小切手に使う印影の届出も行っておきましょう。
振出人から小切手を受けとった後、小切手を換金するまでの手続きは以下の流れで進めます。
小切手を受け取った人は、その小切手を自身が取引している銀行に持ち込んで換金が可能です。
小切手を受け取った銀行は、手形交換所を通して振出人の取引銀行に小切手を呈示します。その後、振出人の取引銀行が振出人の当座預金から小切手の金額を支払う流れとなります。
小切手の銀行渡りとは、線引きとも呼ばれる小切手の換金方法の1つです。
小切手の表の右肩などに「銀行渡り」と記載しておくことで、店頭で直接お金をもらうことができなくなり、小切手の持参人の口座に入金されるようになります。
銀行渡りにしておくと、持参人の口座に入金されて取引の記録が残るため、万が一小切手が他人の手に渡って換金されたとしても、資金の移動先が特定できます。
小切手は、受取人が銀行に対して換金を請求できる期間が定められており、この有効期限のことを「呈示期間」といいます。
小切手には振出日が書かれており、呈示期間は振出日の翌日から10日間です。
小切手の有効期限そのものは6カ月間ですが、振出日の翌日から10日が経過すると振出人が決済の取り消しを銀行に請求できるようになります。もし振出人に悪意があった場合、小切手が換金できなくなる恐れがあるため、換金手続きは早めに行いましょう。
小切手の仕訳について、振出しをした側と、受け取った側のそれぞれについて解説していきます。
小切手のうち、持参人払式小切手と線引小切手は同じ処理になりますが、先日付小切手だけは勘定科目が異なります。
例として、商品仕入の代金100万円について、持参人払式小切手または線引小切手で支払った場合を想定します。この場合の振出人側と受取人側の仕訳は以下の通りです。
(振出人側)
貸方 | 借方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 1,000,000 | 当座預金 | 1,000,000 |
(取人側)
貸方 | 借方 | ||
---|---|---|---|
現金 or 預金 | 1,000,000 | 売上 | 1,000,000 |
また、商品仕入の代金100万円について、先日付小切手で支払った場合についての仕訳例は以下の通りです。この場合においては、2段階の仕訳が必要となります。
振出時の仕訳
(振出人側)
貸方 | 借方 | ||
---|---|---|---|
仕入 | 1,000,000 | 支払手形 | 1,000,000 |
(受取人側)
貸方 | 借方 | ||
---|---|---|---|
受取手形 | 1,000,000 | 売上 | 1,000,000 |
先日付小切手は約束手形と同じく信用証券のため、小切手の振出時には手形同等物として扱います。
振出日に換金したときの仕訳
(振出人側)
貸方 | 借方 | ||
---|---|---|---|
支払手形 | 1,000,000 | 当座預金 | 1,000,000 |
(受取人側)
貸方 | 借方 | ||
---|---|---|---|
現金 or 預金 | 1,000,000 | 受取手形 | 1,000,000 |
未渡小切手とは、取引先に渡すために振り出したものの、何らかの理由で手元に残っている小切手を指します。月次の点検や決算整理で発見されるケースが一般的です。
通常だと、小切手を振り出した時点で支払いの仕訳を計上します。小切手を相手に渡していないのであれば未払いの状態となるため、未渡小切手を発見した時点で適切な仕訳の計上が必要です。
注意点として、小切手を振り出す対象である費用はすでに発生しているため、仕訳を消すのではなく未払金を計上する必要があります。
例えば、小切手振り出し時に以下の仕訳を計上したとします。
貸方 | 借方 | ||
---|---|---|---|
支払報酬 | 10,000 | 当座預金 | 10,000 |
振り出したはずの小切手が未渡小切手となっているのが発覚した時点で、以下の仕訳を計上します。
貸方 | 借方 | ||
---|---|---|---|
当座預金 | 10,000 | 未払金 | 10,000 |
このように費用の発生自体は取り消さず、未払金として処理します。
未取付小切手とは、取引相手に小切手を渡しているものの、取引相手が銀行に小切手を持ち込まず、まだ換金されていない小切手のことです。
銀行で取得できる当座預金の残高証明書と、帳簿上の残高が合わないことで判明します。
未取付小切手は、取引相手が銀行でまだ換金していないだけで、小切手の支払義務があることは変わりません。取引相手が小切手をずっと換金しないことは通常考えにくいため、未取付小切手があったからといって仕訳の計上は不要です。
銀行残高と帳簿上の残高のずれについては「銀行勘定調整表」を作成して、ずれを把握しておきます。
例えば、未取付小切手1,000があり、銀行残高が11,000、帳簿残高が10,000だった場合、銀行勘定調整表で銀行残高を1,000減らし、原因に未取付小切手と記載します。
小切手は、不渡りのリスクがあるものの、管理面のメリットなどから有用な決済手段としてビジネスの多くの場面で利用されています。
ここでは、小切手を活用するメリットについて解説します。
小切手は金額を記載すれば1枚で支払が済むため、特に金額の大きな取引をするときに便利です。
大きい金額の取引を現金決済で行うと盗難にあった場合の被害が大きくなるため、小切手の活用によってリスクを回避できます。
自社の取引銀行ですぐに換金してもらえるため、手続きがスムーズに行えます。
ただし、小切手には振出人の当座預金口座がある銀行名と住所が記載されており、小切手記載の銀行・支店以外と換金するときは取立手数料が必要です。
小切手を紛失したり、盗難されたりしてしまった際に、振出人から支払銀行に事故届けを提出することで支払いをストップできます。
現金での取引と比べ、リスク管理面でも被害が出ないような仕組みで運用できます。
小切手は、現金取引と比べて紛失・盗難時のリスクを防げ、取引がスムーズに行えるメリットがありますが、一方でデメリットも存在します。
経営に影響する場合もあるため、小切手を取引に使うかは慎重に検討しましょう。
小切手を換金する際には、当座預金口座から必要な金額が支払われます。そのため、事前に小切手の金額を上回る当座預金口座の残高の準備が必要です。
もし残高不足となった場合は小切手が決済されず、「不渡り」となります。1回でも不渡りをだすと信用力が大きく低下し、新たな融資を受けるのは難しくなり、経営面で大きな影響が出ます。
また、6か月経たない期間内で2回の不渡りを出すと銀行取引が停止され、実質倒産状態となってしまいます。
取引に関する契約書の解除条項には、1回の不渡りでも契約が解除となる条項が盛り込まれている場合もあり、不渡りによって複数の契約が一斉に解除となる恐れもあります。
小切手の不渡りによる影響は大きいため、当座預金の残高管理は徹底しましょう。
なお、小切手が不渡りとなった場合でも、小切手を所持している人は支払いを受ける権利があり、不渡りのときは小切手の所持人が振出人に直接支払いを請求できます。
小切手には、振出人の当座預金口座がある銀行の名前と住所が書かれています。
小切手の換金は振出した銀行以外のどの銀行でも可能ですが、小切手記載の銀行・支店以外の銀行で換金すると手数料が発生します。手数料は、概ね1件あたり1,000円前後となります。
出典参考:三菱UFJ銀行「手形・小切手交付手数料、取立手数料」
小切手には「文言証券性」という性格があり、小切手をめぐる権利・義務の内容は小切手上の記載によって決まります。そのため、もし小切手の数値を間違えてしまった場合でも、基本的には記載された数字の通りに支払わなければなりません。
文言証言性のため、小切手に記載する際は、数字が書き換えられないようにチェックライターという専用の器具を使うか、手書きの場合は漢数字を用いる必要があります。また、金額が訂正された小切手は、銀行では安全性の観点から支払いをしないことになっています。
小切手を紛失した、または盗難にあった際、振出人は当座預金がある銀行に対して支払いを差し止めてもらうために「事故届」を提出します。
事故届は振出人が提出する必要があるため、小切手の受取人が紛失・盗難にあった場合は速やかに振出人に連絡をとり、事故届を提出してもらわなければなりません。並行して、警察にも遺失届や盗難届を提出しましょう。
銀行に事故届を出す際は、紛失・盗難にあった小切手の金額と同額を銀行に預ける必要があり、預けておかないと振出人が取引停止処分を受ける場合もあるため注意しましょう。
小切手は、多額の取引をする際に、現金取引のリスクを防ぐのに便利な決済手段です。小切手を振出すには、あらかじめ当座預金口座を開設して必要な金額を準備し、金融機関と支払委託契約を締結しておく必要があります。
便利な反面、不渡りを起こすと経営に重大な影響が出るなどの危険性もあるため、当座預金口座の残高は、厳格に管理しましょう。
また、小切手の記載に不備があると換金ができないほか、金額を間違って書いてしまっても額面通りに支払わなければなりません。小切手の記載内容には細心の注意を払い、相手に渡す前に必ずチェックしておきましょう。