取締役とはどのような役職かを解説しています。取締役の任期や選任要件、求められる役割やスキル、責任範囲や給与・報酬体系についても紹介しています。取締役に関する情報や他の役員との違いなどを調べている方は参考にしてください。
目次
- 取締役とは
- 取締役の任期
- 取締役の選任要件
- 取締役に求められる役割
- 取締役会がある場合の役割
- 取締役会がない場合の役割
- 取締役の種類と他の役員との違い
- 代表取締役とは
- 専務・常務取締役とは
- 社外取締役との違い
- 執行役員との違い
- 社長との違い
- 取締役の責任範囲
- 会社に対して負う責任
- ステークホルダーに対して負う責任
- 取締役に求められるスキル
- 経営に関する知識や経験
- マネジメントスキル
- 特定分野の専門スキル
- 取締役の給与・報酬
- まとめ
取締役とは

取締役とは、会社経営における重要事項の決定や業務の執行の意思決定を行う役員です。
会社法第326条によって「株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない」ことが定められています。
ここでは、取締役の任期と選任要件について解説します。
取締役の任期
取締役の任期は会社法第332条に定められており、公開会社の場合、取締役の任期は原則2年です。
選任されてから丸2年ではなく、「選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」となります。
原則2年の任期は、定款や株主総会の決議によって短縮が可能です。任期の延長はできませんが、任期満了後に再度同じ役職に就任することは可能で、これを重任といいます。なお、公開会社とは、会社の承認なしに自由に株式を譲渡できる株式会社を指します。
一方、非公開会社の場合は、定款に定めることで取締役の任期を最大で10年まで延長できます。
取締役の選任要件
取締役の選任には、株主総会での決議が必要です。
会社法第341条によって、取締役を選任するためには「議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行わなければならない」と定められています。
ただし、定款によって決議に必要な出席者数を議決権の3分の1以上とすることや、決議に必要な票数を過半数より多く設定することも可能です。
なお会社法第331条により、以下に該当する場合は取締役に選任できません。
- 法人
- 会社法等の法律の規定に違反して刑に処せられた後、その執行が終わってから2年が経過していない場合
- 上記以外の法令の規定に違反して拘禁刑以上の刑に処せられ、その執行が終わっていない場合
取締役に求められる役割

取締役は会社の経営に関する意思決定を行う重要なポジションです。意思決定された業務を執行する役割も求められます。
取締役は、取締役会がある会社と取締役がない会社とで役割が異なるため、それぞれの会社での取締役の役割について解説します。
取締役会がある場合の役割
会社法第327条により、以下の会社には取締役会の設置が義務付けられています。
- 公開会社
- 監査役会設置会社
- 監査等委員会設置会社
- 指名委員会等設置会社
取締役会が設置されている会社では、取締役は取締役会に出席して会社の重要事項や業務遂行に関する意思決定を行います。
なかでも、代表取締役または業務を執行する取締役は、最低でも3ヵ月に1回は自分の職務の執行状況を取締役会に報告しなければなりません。
取締役会がない場合の役割
取締役会がない会社の取締役は、取締役会なしで業務・経営に関する意思決定やその執行を行います。
取締役が2人以上の場合には、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって意思決定を行うことが会社法第348条2項に定められています。
取締役の種類と他の役員との違い

取締役には代表取締役や専務取締役、常務取締役といった種類があります。社外取締役や執行役員、社長など、取締役との違いがわかりづらい役職もあります。
ここでは、取締役の種類を解説するとともに、他の役員との違いについても説明します。
代表取締役とは
代表取締役は会社を代表する最高責任者です。代表取締役は株主総会の決議によって専任された取締役のなかから、取締役会にて選出されます。取締役会を設置していない場合は、定款の定めに基づき、取締役の互選で決める場合や株主総会の決議で決める場合などがあります。
代表取締役という役職は、会社法の中で定義されており、取締役会を設置している会社は、代表取締役を置くことが会社法362条3項によって規定されています。
必ずしも1人である必要はなく、代表取締役を複数人置いている会社もあります。複数人の代表取締役を置くと、業務負担を分散、軽減できるメリットがある一方で、代表取締役の間で意見が対立した際に、取締役会決議を行うなど、調整が必要になるというデメリットもあります。
専務・常務取締役とは
取締役を専務取締役や常務取締役という肩書きに分けている会社は多く存在します。
専務取締役は代表取締役の補佐をする立場であり、代表取締役社長や副社長の次のランクに位置する取締役として設定しているケースが多くみられます。
常務取締役は主に業務執行の役割が求められる立場であり、専務取締役に次ぐポジションとして設定しているケースが多く見られます。
会社法では専務取締役や常務取締役といった役職の定めはありません。あくまで会社のなかで決められた役職名であり、登記上はいずれも「取締役」という記載になります。
社外取締役との違い
社外取締役は、社内から選任された取締役ではなく、社外から招き入れた取締役です。会社の機関設計上、あるいは上場会社等はガバナンス強化の視点から、社外取締役の設置を求めているケースもあります。
会社法第2条15項においては社外取締役の要件が定められており、社外取締役に選任されるには、10年以内に当該株式会社や子会社の業務執行取締役、会計参与または監査役でなかったことが条件になります。取締役等の配偶者や二親等内の親族も選任できません。
社外取締役はもともと会社の役員・従業員ではないため、社内の人間関係や派閥から独立した第三者の立場から経営の意思決定に参加します。そのため、客観的な視点から経営を監督するなど、重要な意思決定を慎重に進める効果も期待できます。
執行役員との違い
会社法では、執行役員は役員に含まれません。会社法上の役員とは、取締役、会計参与、監査役を指します。執行役員という役職は、あくまで会社が任意で定めているに過ぎません。
執行役員は、取締役が意思決定した経営方針に基づいて業務の執行や事業の統括をする立場にあり、職務権限上、取締役の次に重要な決裁等を任されることが多くなっています。
一方で、役員ではないため、取締役に期待されている経営方針の決定や重要事項の決定に関する権限はありません。
社長との違い
取締役が会社法に定められた役職であるのに対し、社長は一般的な呼称であり、社長という役職は会社法には定義されていません。
社長と同様に、会長、副社長、CEOといった肩書きも会社法には定めがなく、いずれも一般的な呼称です。
社長は会社の代表者であり最高責任者として使われることが多く、通常は取締役のなかから選出されます。「代表取締役社長」というように、会社法上の役職と一般的な呼称を組み合わせた肩書きを使用している会社も多く存在します。
取締役の責任範囲

取締役は一般の従業員と比べて、その職務に大きな責任が伴います。責任範囲は社内だけでなく第三者の利害関係者にまで及びます。
ここでは、取締役が会社に対して負う責任、外部のステークホルダーに対して負う責任について解説します。
会社に対して負う責任
取締役は、会社から経営を委任されている立場となり、法令や定款、株主総会の決議を守り、会社のために職務を忠実に遂行する義務を負います。また、会社との競業や利益が相反する取引、つまり取締役が得をして会社が損害を被るような取引を回避する義務もあります。
会社法第423条には、取締役などの役員が任務を怠ったことで会社に損害が生じた場合には賠償する責任を負うと規定されています。取締役は自身の過失によって会社に損害を与えると、損害賠償責任といった法的な責任を負わなければならない可能性があります。
ステークホルダーに対して負う責任
取締役は、会社だけでなく第三者に対しても責任を負います。会社法第429条には、取締役がその職務を行う上で悪意や重大な過失があった際、第三者に生じた損害を賠償する責任があると規定されています。
取締役が賠償責任を負うのは、取締役が遂行した職務によって直接的に第三者が損害を被った場合です。例えば、財務諸表に虚偽の記載をしたことによって第三者が不利益を被ったケースが該当します。
また、放漫経営が原因で会社が倒産した場合に債権者が受ける間接的な損害も賠償責任の範囲に含まれます。
取締役に求められるスキル

会社の意思決定を行う取締役には、様々なスキルが求められます。
ここでは、取締役が身に付けるべきスキルについて説明します。
経営に関する知識や経験
取締役に必要なのは、経営に関する知識や経験です。取締役には会社の重要事項や業務遂行に関する意思決定や助言を行う役割があります。
適切な意思決定や助言をするためには、事業戦略や組織戦略、財務、法務といった、経営に関する様々な分野の知識が必要です。
マネジメントスキル
取締役は、組織全体を管理する立場にあります。そこで求められるのが、マネジメントスキルです。具体的には、部下である管理職の従業員を束ねる能力が必須です。
適切な助言を与えて管理職をサポートするだけでなく、管理職を育成して組織力を向上させることも重要な役割となります。管理職をまとめられるだけのリーダーシップも、取締役になくてはならないスキルです。
特定分野の専門スキル
取締役には、経営に関する全般的な知識だけでなく、特定の専門分野に関する深い知識も求められます。
取締役には、1つの担当分野の責任者として部門を統括する役割があります。たとえば、最高財務責任者(CFO)であれば、財務・経理部門のトップとして会計・財務分野の知識と経験が必要です。会社の意思決定をする上で会計・財務の観点から検討が必要な際は、CFOの意見が重要視されるため、財務の深い知識と経験に基づいた意見が求められます。
CFOのほかにも最高マーケティング責任者(CMO)や最高技術責任者(CTO)など、それぞれマーケティング部門や製造部門のトップとして担当分野の深い知見がなければ、部門の統括や適切な助言はできないでしょう。
取締役の給与・報酬

一般の従業員に対しては給与が支払われますが、取締役に支払われるのは役員報酬です。役員報酬は、定款もしくは株主総会の決議で定めるよう会社法361条に規定されています。定款に報酬内容を記載すると変更時の手続きが煩雑になるため、役員報酬は株主総会で定めるのが一般的です。
株主総会で役員報酬の総額を決定し、取締役会で役員ごとの内訳金額を定めることもできます。取締役会がない場合は、取締役の合意で決定します。
取締役への役員報酬は、一般の従業員への給与と異なり、毎月決まった額が支払われる必要があり、基本的に1年間は報酬金額を変更できません。
役員報酬には明確な金額の上限・下限は定められていません。ただ、会社の業績に対して役員報酬があまりにも高額に設定されていると、税務調査の対象になりやすい傾向があります。同業の類似法人と比較して不相当に高額である場合、過大であると税務署に指摘された役員報酬は損金に算入できなくなる可能性があります。
妥当性の観点から、競合企業や規模が近い会社の相場を参考にして報酬金額を検討することをおすすめします。
まとめ

株式会社には取締役を置くことが義務付けられています。取締役には会社経営に関する重要事項の意思決定を行う役割があり、専門知識やマネジメントスキルが求められます。
会社の意思決定を行う役職である以上、職務上の過失があった場合には賠償責任を負う可能性があることも忘れてはいけません。
取締役は、高いマネジメント能力や業務遂行能力が求められるポジションです。社外取締役や執行役員などとの違いを理解して適正な会社運営を目指しましょう。
