2025年に新設された「中小企業新事業進出補助金」とは、どのような補助金か解説しています。事業再構築補助金との違いや、第1回の公募要領の内容,、スケジュール、採択後に補助金の返還を求められるケースについても紹介しています。申請手順も解説していますので、「中小企業新事業進出補助金」について調べている方は参考にしてください。
AGSコンサルティングは、「新事業進出補助金」の申請をご支援いたします。
▶支援をご希望の場合は、お気軽にお問い合わせください。
2025.03.13(最終更新日:2025.06.10)
2025年に新設された「中小企業新事業進出補助金」とは、どのような補助金か解説しています。事業再構築補助金との違いや、第1回の公募要領の内容,、スケジュール、採択後に補助金の返還を求められるケースについても紹介しています。申請手順も解説していますので、「中小企業新事業進出補助金」について調べている方は参考にしてください。
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目次
中小企業新事業進出補助金は、中小企業が既存の事業と異なる新市場・高付加価値事業へ進出する際にかかる費用を、支援する補助金です。新規事業への挑戦を目指す中小企業の設備投資を促進し、生産性向上や、地方における持続的な賃上げを狙いとしています。
2025年3月26日に最後の公募を終えた「第13回事業再構築補助金」の後継として、新設されました。
補助上限は7,000万円で、投資額の2分の1を支援します。新規サービスをスタートさせて、新規顧客の獲得を検討している企業にうってつけの補助金といえるでしょう。
なお、前身である事業再構築補助金の事務局は、人材派遣大手のパソナが国から受託していましたが、2025年2月19日に決定された中小企業新事業進出補助金の事務局は、博報堂を幹事社とした以下の計4社のコンソーシアムとなりました。
中小企業新事業進出補助金は、例えば以下のような取り組みに活用できます。
2025年6~7月に第1回申請受付を開始し、2026年度末までに4回程度の公募を予定しています。
出典:中小企業基盤整備機構「中小企業新事業進出補助金ホームページ」
中小企業新事業進出補助金は、「ポスト事業再構築補助金」として新設されました。
では、両者には、どのような違いがあるのでしょうか。ここでは、2つの補助金の違いについて解説します。
事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響下で厳しい環境に追い込まれた中小企業を支援する性質が強い補助金でした。
国のコロナ対策の中でも肝いりの施策であり、補助金導入にあたって、2020年度第3次補正予算では、1兆1,485億円もの予算が割り当てられています。
その後も、3年間、13回にわたって公募が行われ、総額で2兆円超が投入され、第1~12回で合計80,691事業者が採択されました。
公募回 | 採択発表日 | 採択事業者数 |
---|---|---|
第1回 | 2021年6月18日 | 8,016者 |
第2回 | 2021年9月2日 | 9,336者 |
第3回 | 2021年11月30日 | 9,021者 |
第4回 | 2022年3月3日 | 8,810者 |
第5回 | 2022年6月9日 | 9,707者 |
第6回 | 2022年9月15日 | 7,669者 |
第7回 | 2022年12月15日 | 7,745者 |
第8回 | 2023年4月6日 | 6,456者 |
第9回 | 2023年6月15日 | 4,259者 |
第10回 | 2023年9月22日 | 5,205者 |
第11回 | 2024年2月13日 | 2,437者 |
第12回 | 2024年11月9日 | 2,031者 |
出典:経済産業省の発表データを元にAGSグループが作成(事業再構築補助金ホームページ)
一方、新事業進出補助金は、コロナ要因に依存しない恒常的支援を目指すと補助金と考えられます。
既存事業が停滞する企業も多い中、新規事業の積極的な設備投資を行い、中小企業の従業員の賃上げを後押しする施策となっています。
そのため、事業再構築補助金の申請にあたって多かった「非接触」「感染症対策」を重視した事業計画ではなく、中小企業新事業進出補助金では、サービスの新規性や継続性、独自性、収益性を重視した事業計画が重要視される可能性が高いでしょう。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、現代ビジネスのトレンドとして外せない要素です。
中小企業新事業進出補助金では、審査項目などにおいて特に注記されているわけではありませんが、業務効率化や新たな付加価値創出のためにDX を活用した事業計画が評価される可能性が高いでしょう。
例えば、AI やIoT、クラウドサービスなどを活用したサービス提供が注目されると予想できます。
対象 | 区分 | 中小企業 |
---|---|---|
新市場・高付加価値事業への進出 | ||
補助金 | 通常上限 | 7,000万円 |
通常補助率 | 1/2 | |
設備投資等 | 必要投資額 | 1,500万円以上 |
補助事業期間 | 交付決定日から14ヵ月以内 | |
補助対象経費 | 機械装置・システム構築費、建物費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、広告宣伝・販売促進費 | |
賃金要件 | 給与支給額や賃上げ | 1人あたり給与支給総額成長率成長率 または給与支給総額成長率 |
最低賃金 | 地域別最低賃金 + 30円以上 | |
期間 | 公募要領公開 | |
公募期間 | 2025年6~7月10日(第1回) | |
規模 | 予算 | 1,500億円 |
補助件数等 | 2026年度末まで4回程度公募 6,000社程度 | |
事業計画書 | 10~15ページ以内(AGS予測) | |
その他 | 収益納付は求めない |
出典:中小企業基盤整備機構「中小企業新事業進出補助金 公募要領(第1回)」
中小企業新事業進出補助金では、補助金を受け取れる対象者や、補助対象となる経費などが規定されています。申請する前に、自社が該当するかどうか、しっかり確認しましょう。
中小企業新事業進出補助金の対象となるのは、日本国内に本社を持つ中小企業です。
ここでいう中小企業とは、資本金または常勤の従業員数が、以下の表以下となる事業者を指します。
業種 | 資本金 | 従業員数 (常勤) |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車・航空機用タイヤおよびチューブ製造業、工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業、情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
上記以外の業種 | 3億円 | 300人 |
さらに、企業の成長・拡大に向けた新規事業への挑戦を行うことが、要件となっています。
中小企業新事業進出補助金は、中小企業が行う、新製品や新サービスを新規顧客に提供する新たな挑戦に対して支援するものです。
補助金を受け取るためには、以下の要件を満たさなければなりません。
上記の6項目を全て満たすことができ、3~5年の事業計画に取り組むことが、中小企業新事業進出補助金の要件となっています。
中小企業新事業進出補助金の補助上限額は、従業員数によって4段階に分かれています。
従業員数 | 通常の補助上限額 | 大幅賃上げ特例の 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|---|
20人以下 | 2,500万円 | 3,000万円 | 1/2 |
21~50人 | 4,000万円 | 5,000万円 | |
51~100人 | 5,500万円 | 7,000万円 | |
101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
表にある「通常の補助上限額」とは、基本要件のうち、賃上げに関する以下の2点を満たした場合を指します。
この場合、補助上限額は、従業員数101人以上の7,000万円となります。
また、補助率は、従業員数にかかわらず、事業にかかった費用の2分の1が補助されます。中小企業新事業進出補助金では1,500万円以上の投資が要件とされているため、活用する際には最低でも約750万円の自己負担が必要です。
なお、補助上限額は、「大幅賃上げ特例」の要件を満たすことで、最大9,000万円まで上乗せされます。
中小企業新事業進出補助金の補助上限額が引き上げられる「大幅賃上げ特例」とは、事業終了時点で、以下の2点の両方を満たすものを指します。
通常の要件との違いは、以下の通りです。
項目 | 通常の要件 | 大幅賃上げ特例 |
---|---|---|
給与支給総額 | +2.5% | +6.0% |
事業場内最低賃金 | +30円 | +50円 |
6.0%以上の賃上げが求められるため、適用するためのハードルは高いですが、特例を適用できれば、最大2,000万円を上乗せすることが可能です。
中小企業成新事業進出補助金の補助対象経費となるのは、以下の支出です。
注意点として、中小企業新事業進出補助金は、中小企業の将来にわたる持続的な競争力強化への取り組みを支援することを目的としています。
そのため、補助対象経費には、事業化に必要不可欠な事業資産として、以下のいずれかの経費が必ず含まれている必要があります。
一方、以下の経費などは、補助対象になりません。
申請時に計上されている経費の大半が対象外の経費である場合、採択は難しいと認識しておきましょう。
なお、補助対象経費の精査は、交付申請時に行われます。
補助金に採択されたとしても、精査の結果次第では、申請時に計上された経費がすべて補助対象になるとは限らない点に注意が必要です。
中小企業新事業進出補助金の審査は、以下の2プロセスで行われます。
このうち口頭審査は、書類審査において一定の基準を満たした事業者の中から必要に応じて行われ、すべての申請者を対象にしたものではありません。
それぞれの審査方法について解説します。
補助対象事業としての適格性 | ・補助事業により高い付加価値の創出や賃上げを実現する目標値が設定されており、かつその目標値の実現可能性が高い事業計画となっているか |
---|---|
新規事業の新市場性・高付加価値性 | ・社会においても一定程度新規性を有する製品やサービスか ・同一ジャンルのなかで付加価値や高価格化が図れるものか |
新規事業の有望度 | ・継続的に売上や利益の確保が見込める市場か ・免許や許認可などの参入障壁をクリアできるか ・競合他社との差別化が可能か |
事業の実現可能性 | ・事業化のスケジュールや課題解決方法が明確か ・事業を遂行できる財務状況か ・適切な人材や事務能力を確保できているか |
公的補助の必要性 | ・川上、川下への経済波及効果が大きい、社会的インフラを担う、新たな雇用を生み出す事業等は高評価 ・費用対効果が高いか ・地域やサプライチェーンのイノベーションに貢献するか ・国の補助がなくても容易に実施できる事業ではないか |
政策面 | ・日本経済の構造展開を促すことに資するか ・日本の経済成長やイノベーションを牽引し得るか ・ニッチ分野においてグローバル市場でトップを獲得できる潜在性があるか ・雇用創出や地域の経済成長の牽引を期待できるか |
書類審査では、主に上記6点が重視されます。
加えて、審査項目には含まれていませんが、「過剰投資の抑制」についても意識する必要があります。補助金の採択を受けるには、自社だけでなく、他社の思惑も絡んでくるため、業界のトレンドに注意を払った上で、他の申請者との差別化を意識するとよいでしょう。
なお、事業再構築補助金では、事業計画の作成にあたり、税理士や経営コンサルタントなどの「経営革新等認定支援機関」の関与が必須条件とされていましたが、悪質な経営コンサルタントが質の低い計画書による申請を乱発した事例も散見したことから、中小企業新事業進出補助金においては、経営革新等支援機関の関与は要件とされていません。
中小企業新事業進出補助金では、認定支援機関を含む専門家に計画作成の助言を受けることは認めていますが、申請者自身に責任を持って事業計画の達成に取り組んでもらうため、計画の作成自体を代行してもらうことを禁止しています。作成代行が発覚した場合、不採択・採択取消・交付決定取消となります。
中小企業新事業進出補助金の書類審査においては、一定の要件を満たす事業者については、加点が行われます。
主な加点項目は、以下のとおりで、応募締切日時点で満たしている必要があります。
パートナーシップ 構築宣言加点 | 「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトにおいて宣言を公表している事業者 |
---|---|
くるみん加点 | 次世代育成支援対策推進法(次世代法)に基づく「くるみん認定」を受けている事業者 |
えるぼし加点 | 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく「えるぼし認定」を受けている事業者 |
アトツギ甲子園加点 | 「アトツギ甲子園」のピッチ大会に出場した事業者 |
健康経営優良法人 加点 | 「健康経営優良法人2025」に認定されている事業者 |
技術情報管理認証制度 加点 | 「技術情報管理認証制度」の認証を取得している事業者 |
成長加速化マッチングサービス加点 | 「成長加速マッチングサービス」おいて会員登録を行い、挑戦課題を登録している事業者 |
再生事業者加点 | 中小企業活性化協議会等から支援を受け、以下のいずれかに該当する事業者 ・再生計画等を「策定中」の者 ・再生計画等を「策定済」かつ過去3年以内に再生計画等が成立等した者 |
口頭審査は、一定の審査基準を満たした事業者の中から必要に応じて行われます。オンラインにて実施され、出席するのは申請事業者自身(経営者など)1名のみです。
事業計画の作成をサポートした士業者や経営コンサルタント、社外顧問などの同席は認められていません。
審査では、主に以下の4点について質疑応答が行われます。
申請時に提出した事業計画をいかに経営者自身が理解し、またビジョンを明確に説明できるかが問われます。
中小企業新事業進出補助金は、新設された補助金であるため、これまでの採択実績はありません。参考までに、前身である事業再構築補助金をみると、採択率は26.5%でした(第12回実績)。
約4社に1社の狭き門であることが分かります。
なお、中小企業新事業進出補助金は、2026年度末までに4回程度の公募を行い、約6,000社を採択する予定となっています。
出典:事業再構築補助金「第12回公募 補助金交付候補者の採択結果」
出典:中小企業基盤整備機構「中小企業新事業進出補助金 スケジュール」
2025年6月頃(予定)に申請受付をスタートする第1回公募スケジュールは、以下のとおりです。
2025年1月 | – |
---|---|
2月 | – |
3月 | – |
4月 | |
5月 | – |
6月 | 公募開始 |
7月 | 公募締切(7月10日18時) |
8月 | – |
9月 | – |
10月 | 採択発表(ここから2ヵ月以内に交付申請) |
11月 |
|
12月 | 交付決定(ここから設備投資開始) |
交付決定から14ヵ月 (採択発表から16ヵ月) | 設備投資の期限 |
中小企業新事業進出補助金の申請手順は、おおむね以下の通りです。
中小企業新事業進出補助金の申請にあたっては、GビズIDプライムアカウントが必要となります。
GビズIDは、1つのID・パスワードで様々な行政サービスにログインできるサービスです。
近年では、補助金などを申請するためにアカウントが必要となるケースも多くあります。
GビズIDには、大きく分けて、法人代表者もしくは個人事業主しか取得できない「プライム」と、組織の従業員用のアカウントである「メンバー」、さらに機能制限があるものの簡易的に取得できる「エントリー」の3種類があります。
このうち「プライム」のアカウントを取得するためには、書類審査を受ける必要があり、アカウント発行までは1週間程度を要します。
補助金の公募が開始してから取得手続きを始めても間に合わない可能性があるため、前もってGビズIDプライムのアカウントを取得しておきましょう。
また、中小企業新事業進出補助金の第1回公募の期間は、2025年6月~7月頃の予定となっており、約1ヵ月しかありません。
申請のために必要な各種書類の準備や、GビズIDプライムアカウントの取得には、それぞれ相応の時間がかかるため、手を付けられるところから順番に準備を進めておくのが賢明でしょう。
付加価値額の年平均成長率の目標が達成できなくても、補助金の返還を求められることは、原則としてありません。
一方で、補助金の基本要件として定められている、以下の2項目が未達の場合、未達成率に応じて、補助金の返還義務があります。いずれも、会社の掲げた目標値を下回った場合に返還義務が生じます。
ただし、この場合でも、付加価値額が増加しておらず、かつ企業全体として営業利益が赤字の場合は、補助金の返還を求めないとしています。
また、天災などの事情がある場合も同様です。
なお、補助金の採択結果は、事業計画に記載のあるすべての経費に対して、補助金の交付を保証するものではありません。
採択後の交付申請の段階で、補助対象経費として適切なものであるかどうかが精査され、その結果次第では、応募申請時に計上していた補助金申請額が減額されたり全額対象外となったりする可能性もあります。
中小企業新事業進出補助金は、新事業への挑戦に最大9,000万円を支援する、中小企業向けの補助金です。
補助金を得るためには、新事業に進出し、付加価値額の増加と賃上げを盛り込んだ計画書を作成・提出しなければなりません。
準備には時間がかかるため、手を付けられるところから早期に着手し、専門家の力を借りて採択を目指しましょう。