資本金とはどのような資金かを解説しています。出資金との違いや平均額、使い道・役割や資本金からわかること、増資する方法やメリット・デメリットについても紹介しています。資本金について調べている方は参考にしてください。
2024.09.27
資本金とはどのような資金かを解説しています。出資金との違いや平均額、使い道・役割や資本金からわかること、増資する方法やメリット・デメリットについても紹介しています。資本金について調べている方は参考にしてください。
2024.09.27
資本金とは、ビジネスを始めるための元手となる資金です。会社設立時や増資時に出資者から払い込まれた資金のほか、経営者の自己資本も資本金となります。
資本金は、法人を設立する際に必要です。
2006年施行の新会社法により、最低限準備しないといけない資本金額の制限が撤廃され、1円でも会社を設立できるようになりました。
ただ、1円でも設立できるものの、資本金の金額は会社の規模感を表します。
資本金は金融機関などからの融資と異なり、返済義務がありません。資本金が大きければ、それだけ資金を調達できる安定性があるとみなされ、社会的な信用度が高くなります。
資本金が少なすぎるとビジネスをする上で信用が得にくいため、ある程度の資本金は確保しておく必要があります。
資本準備金とは、会社に出資された金額のうち、資本金にしなかった金額です。
資本金の2分の1を超えない額まで資本準備金にできます。
会社が赤字になった際に、資本金を取り崩して補填しようとすると、登記内容の変更が求められるなど、必要な手続きが多く手間がかかります。
一方、資本準備金を準備しておけば、基本的に登記を経ず株主総会決議で取り崩せます。資本準備金には、赤字の補填が資本金に比べてやりやすいというメリットがあります。
出資金とは、ビジネスを営む上で必要だとして、出資者が提供した資金です。
出資者として他社に出資した際に使用する会計上の科目で、貸借対照表では「投資その他の資産」として固定資産に分類されます。
一方で、資本金は出資を受ける側が使用する科目であり、貸借対照表上は「純資産」に分類されます。
資本金の見せ金とは、資本金を実際の金額よりも意図的に多く見せる行為です。
例えば、金融機関から一時的にお金を借りて、それを会社の口座に入金することで出資されたお金だと見せかけるケースです。
見せ金は違法行為です。虚偽の資本金を登記した場合、「公正証書原本不実記載罪」にあたり、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。
加えて対外的な信用も失うため、ビジネスの存続に大きな影響を及ぼします。
総務省・経済産業省の調査によると、2021年の会社数177万社のうち、資本金300~500万円未満の会社が57万社と一番多く、次いで資本金1,000万円~3,000万円未満の会社が55万社となっています。資本金3,000万円未満の会社が158万社と、全体の約90%を占めます。
資本金の額は会社ごとにばらつきが大きく、平均額は意味を持ちませんが、一般的な資本金額としては300~500万円、大規模会社でない限り多くても3,000万円未満と考えてよいでしょう。
出典:総務省・経済産業省「令和3年経済センサス‐活動調査 速報集計 企業等に関する集計」
資本金の使い道は限定されていないため、事業に関するものであれば運転資金や設備投資など自由に使えます。
ただし、資本金は会社のお金です。代表者1人の会社であっても、代表者個人のために使うと、会社から代表者への貸付金となります。
税法上、会社から代表者への貸付金は、定められた利率で利息を徴収しなければなりません。徴収しなかった利息は会社から代表者への給与となり、源泉所得税や社会保険料などの金額が増加します。
なお、資本金はあくまで出資された事実を表すものです。
例えば100万円が出資されたら、帳簿上「資本金100万円」が加えられます。この100万円を使ってしまっても、帳簿上の資本金は100万円から変わりません。
資本金額を使い切っても、売上や融資により会社に資金があるなら会社が潰れるわけではない点を認識しておきましょう。
資本金額が大きければ、それだけ出資を受けている会社であることを示し、会社の規模感の目安になります。
例えば、法人税法における中小企業は資本金1億円以下の会社とされており、中小企業にのみ認められた軽減税率の適用を受けられるなど、税率や税額が資本金によって変わります。
また、国の中小企業政策における対象範囲を決める際にも、資本金の金額が1つの基準になります。
ご参考までに、中小企業基本法における中小企業者と小規模企業者の定義を以下で紹介します。
業種分類 | 中小企業基本法の定義 | |
---|---|---|
資本金の額又は 出資の総額 | 常時使用する 従業員の数 | |
製造業その他 | 3億円以下の会社 | 300人以下の会社及び個人 |
卸売業 | 1億円以下の会社 | 100人以下の会社及び個人 |
小売業 | 5,000万円以下の会社 | 50人以下の会社及び個人 |
サービス業 | 5,000万円以下の会社 | 100人以下の会社及び個人 |
業種分類 | 中小企業基本法の定義 |
---|---|
製造業その他 | 従業員20人以下 |
商業・サービス業 | 従業員5人以下 |
資本金は、その会社を信用できるかを、取引先が判断するための材料の1つです。資本金を増資すると、会社の信用度が増します。
資本金を増資する方法は、有償増資と無償増資の2種類があります。
有償増資とは、追加の出資を受ける方法を指します。第三者割当増資や公募増資、株主割当増資などがこれに該当します。
無償増資とは、追加出資を受けずに、会社の剰余金を資本金に振り替える方法です。
ここでは、それぞれの増資方法について解説します。
第三者割当増資とは、特定の第三者を会社が選び、株式を発行する方法です。主にベンチャーキャピタルや投資家などから増資を受けます。
割当先を事前に決められるため、信頼できる相手から増資を受けられる点がメリットです。
非公開会社の場合、第三者割当増資をするにあたって、株主総会の特別決議が必要となります。株主総会の特別決議を行うには、株主の半数以上が出席し、かつ出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。
公開会社の場合は、取締役会決議で第三者割当増資を行えます。ただし、株式を引き受ける者に特に有利な条件で株式を発行するケースでは、株主総会の決議が必要です。
公募増資とは、広く一般の投資家に株式を発行する方法です。株式市場を通して募集するため、公募増資ができるのは上場企業に限られます。
公募増資は取締役会決議で行えますが、株式を引き受ける者に特に有利な条件で株式を発行する場合は、株主総会の決議が必要です。
広く出資を募るため、自社株の流通を活発化するメリットがありますが、会社にとって好ましくない相手が株主になるリスクもあります。
株主割当増資とは、すべての既存株主に対して、その持株比率に応じて新株を引き受ける権利を付与して出資を募る方法です。
既存株主の持株比率に影響を与えないため、既存株主から受け入れられやすいのがメリットです。
株主割当増資を実施する場合、原則として株主からの引き受け申し込みを受け付ける日の2週間前までに募集事項等を通知する必要があります。また払込期日の前日までに割り当てる株式数の通知も必要です。必要な手続きが多く不便な点がデメリットです。
株主割当増資を実施するには、非公開会社の場合は株主総会の特別決議が必要です。公開会社の場合は、取締役会決議で行えます。
剰余金の資本組み入れとは、追加の出資を伴わない増資の方法です。
剰余金には、資本剰余金と利益剰余金の2種類があります。
資本剰余金とは、増資などの資本取引で生じた金額のうち、資本金に組み入れなかったものを指します。利益剰余金とは、会社の事業で得た利益のうち、株主等に配当せず会社内部に留保したものをいいます。
これらの剰余金を資本に組み入れる場合には、株主総会の決議が必要です。剰余金の資本組み入れは、新たに出資者を探したり、資金の払い込みを伴ったりすることなく、株主総会の決議のみで行える点がメリットといえます。
資本金は返済する必要がないため、資本金の有償増資をすると財務に余裕が生まれ、会社の倒産リスクが低くなります。
資本金の額は対外的な信用力の指標となり、許認可取得の条件であったり、大手企業との取引や金融機関の融資判断に影響したりするため、取引の締結や融資を受けやすくなる点もメリットです。
資本金を多くすると、税制における優遇措置が受けられなくなるデメリットがあります。
例えば、消費税では、会社設立から2期目までは消費税の納税義務が免除されますが、設立時の資本金が1,000万円以上だと納税義務が免除されません。会社設立時の資本金額には注意する必要があります。
また、事業年度終了時の資本金が1,000万円以下かどうかによって、法人住民税の均等割の金額が変わります。法人住民税の均等割とは、会社の利益にかかわらず資本金や従業員数で金額が変わる税金です。
資本金1,000万円以下で従業員50人以下の場合は7万円、50人超の場合は14万円となります。資本金が1,000万円超1億円以下で従業員50人以下の場合は18万円、50人超の場合は20万円です。
ほかにも資本金が1億円以下の会社は、中小法人への税の優遇措置が受けられます。
資本金1億円以下の中小法人が受けられる優遇措置は、以下の通りです。
資本金1億円以下の会社は、法人税法上の優遇措置を受けられます。例えば、資本金1億円の会社は外形標準課税の適用対象から外れます。
法人事業税は収入割・所得割・付加価値割・資本割の4項目で構成され、外形標準課税はこの中の付加価値割と資本割を指します。
資本金1億円以下の会社は、業種によって収入割か所得割のどちらかまたは両方が課されますが、資本金1億円超の会社では、それに加えて外形標準課税も課されます。
この外形標準課税の適用を免れるため、資本金を減資して1億円以下にするのが「外形外し」です。
コロナ禍の影響による財務基盤の悪化に対応するため、資本金を1億円以下に減資する会社が増えています。減資して外形標準課税の適用対象外となった会社としては、HISやJTB、出前館、日医工、スカイマークなどが挙げられます。
「外形外し」が増加している流れを受けて、課税の公平性などの観点から、国は令和6年度税制改正で外形標準課税制度を見直しました。
2025年4月1日以後は、前事業年度に外形標準課税の対象だった会社については、新事業年度の資本金が1億円以下でも、資本金と資本剰余金の合計が10億円を超える場合は外形標準課税の対象となります。
資本金は会社が出資を受けた金額であり、返済義務がなく、会社の事業のために自由に使えます。資本金の金額は会社規模を判断するための基準の1つで、資本金が大きければ取引先や融資先からの信用を得やすくなります。
資本金を増資したい場合、有償増資または無償増資によって実施しますが、それぞれの方法によって必要な手続きが異なる点に注意が必要です。
また、資本金1億円を超えているかどうかによって、税制上の優遇措置が受けられるかが変わります。優遇措置を受けたいなら、増資する場合でも一部を資本剰余金に振り替えるなど工夫をしましょう。
ただし、2025年4月1日以降は外形標準課税制度が変わります。減資によるいわゆる「外形外し」が難しくなるため、改正点を正しく把握しておきましょう。