予実管理(予算実績管理)とはどのようなことを指しているか解説しています。予算管理との違いや目的、実際に行う場合の手順ややり方、成功させるポイントや運用上の注意点も紹介しています。予実管理について調べている方は参考にしてください。
2024.09.10
予実管理(予算実績管理)とはどのようなことを指しているか解説しています。予算管理との違いや目的、実際に行う場合の手順ややり方、成功させるポイントや運用上の注意点も紹介しています。予実管理について調べている方は参考にしてください。
2024.09.10
予実管理とは「予算実績管理」ともいい、企業の予算と実績を管理することを指します。あらかじめ設定しておいた具体的な数値目標である予算と、実際の業績(実績)との差分を分析・改善していく経営手法です。予算には売上予算、利益予算、原価予算、経費予算などが含まれます。
予実管理を行うことで、事業計画をもとに設定した予算に対して、どの程度達成できているのかを把握し、定量的な分析が可能です。予算通りに実績が推移していない場合、事業計画が達成されなくなってしまうことになるため、課題を洗い出して具体的な改善策を講じていきます。
予算管理とは、予算計画を策定し、適切に実施されているかを分析して、問題がある場合は改善することを指します。予実管理と予算管理はどちらも経営手法の1つです。それそれでやるべきこと自体に大きな違いはありませんが、予実管理とは目的が異なります。
予実管理は、予算に対して、どの程度達成できているのかを把握し、定量的な分析を行っていくことを主目的とするのに対し、予算管理では、予算計画を重視し、社内全体での目標設定、人材や物資、経費の効率的な配分を考えることが主目的です。ただし、予算管理であっても、計画するだけではなく、実施されているかも確認するため、実際には大きな違いはありません。
予実管理を行う目的は、目標達成に対する過程における数値上の問題や課題を可視化することです。予算に対する実績を都度チェックすることで、予算達成に向けてその時々でどの程度進捗しているのかを確認できます。
例えば、ある部門が利益予算をオーバーして赤字となっている場合、その内訳を分析して売上が低迷しているのか、コストが重くなっているのかなど原因を把握します。
予実管理によって現状を適切に把握し、目標達成に向けた柔軟な軌道修正を行えることが大きなメリットです。
予実管理を行う場合の手順としては、予算とスケジュールの作成、月次決算の実施、予算と実績の比較、対応策の検討・実施などに大別されます。
それぞれのプロセスについて、注意すべきポイントも踏まえ具体的に説明します。
予算目標がない状態では、現状の良し悪しを判断する術がありません。まずは事業計画をもとに会社全体の予算目標を立て、そこから各部門やプロジェクトごとの予算目標へと落とし込んでいきます。
目標の策定にあたっては、自社や業界全体の実績、成長率、トレンドも踏まえ、現実的に達成可能な数値を設定しましょう。実現が不可能な目標を立てると実績が到底追いつかない状況が続き、従業員のモチベーションが下がることにもなり、予実分析を行う意味がなくなってしまいます。
反対に、低すぎる目標では企業としての成長が見込めません。努力すれば達成できると思える水準で、かつ現実的に達成可能な予算目標を設定することがポイントです。
予算が決まったら、次はいつまでに何を達成するのかと、達成のための具体的なアクション及びKPIを設定しましょう。
各部門やプロジェクトごとに予算目標を達成するための具体的なアクションを設定しましょう。その場合、そのアクションで良いかを判断し、かつ、いつまでに達成させるのかも明確にしておく必要があります。
それらのアクションが進んでいるかを図る指標として活用するのがKPIとなり、KPIとは「Key Performance Indicator」の略です。日本語では「重要業績評価指標」や「重要達成度指標」と呼ばれ、目標達成のための各プロセスにおいて、達成度合いの計測と評価をするための指標です。
例えば、売上を伸ばすための営業であれば、「アポイント件数」「成約率」「リピート率」「平均受注単価」などをKPIと定めます。
予算目標だけでは「具体的に何をしたらよいのか」が明確になっておらず、次の行動に結びつきません。KPIを設定して次にすべきことを明確にしましょう。予算を達成するためには、どの時点でどの程度の目標を達成している必要があるかといったマイルストーンも一緒に決めておくことが重要です。
予算目標を設定し、KPIやスケジュールを決めた後は、定期的に実績の確認と予算との比較を行います。
予算と実績を比較するための1つの方法が、「月次決算」です。
月次決算とは、月ごとに現金残高の管理や、棚卸し、減価償却の算定、未収収益や未払費用といった経過勘定の計上などを行うことです。月次決算によって経理の負担は大きくなってしまうものの、予実管理の精度を高めることができます。
また、月次決算だけでなく、毎週KPIに対する進捗を確認することでも実績を確認し、週次でのアクションを修正することも大切です。
予算と実績を比較し、予算が達成できていないのであれば原因を分析し、アクションの見直しやKPIの再設定などによって改善につなげましょう。
予実管理を成功させるためには、実現可能な予算を設定することや、予実の分析と改善を適切に行うことなどがポイントとなります。
ここでは、予実管理を成功させるポイントについて、掘り下げて解説します。
根拠のない高すぎる予算目標を設定してしまうと、「達成できるわけがない」という雰囲気が社内に蔓延し、従業員のモチベーション低下につながってしまいます。
”高すぎる目標を達成しなければいけない”という過度なプレッシャーによって、虚偽の業績報告をする従業員が出るなど、粉飾につながる危険性も高まります。
一方で、低すぎる予算目標では簡単に達成できてしまい、従業員の向上意欲が失われる恐れがあります。「ここまでやれば十分」という意識によって、会社の成長が阻害されることは避けなければなりません。
従業員の能力が十分に発揮され、同時に現状の課題点を発見するためにも、簡単には達成できず、かつ頑張れば手が届くラインに予算目標を設定しましょう。
PDCAとは、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」の頭文字を取ったものです。PDCAサイクルでは、主に以下のサイクルを繰り返していきます。
予実管理では、目標と実績数値の定期的な確認を習慣とすることが不可欠です。定期的に目標の達成度合いを比較分析し、そこから明らかになった課題をフィードバックして、改善策を実施していきます。定期的な評価によって目標未達部分に気付けば、より早く改善のための対策を講じることができます。
こうしたPDCAサイクルを実施するにあたっては、周期を可能な限り短く回すことがポイントです。ビジネス環境が大きく変化する現代社会では、1年もあれば環境が大きく変化してしまいます。
PDCAサイクルは業種や目標の大きさなどの要因を考慮しつつ、1か月や1週間などの周期を決めて行いましょう。予算目標を達成するためには、できるだけ早期に課題を発見し、それを解消していく動きが重要です。
予実管理のスムーズな実行には、進捗状況、実績の見える化や自動化が必要です。
システムで一元的に情報を管理することで、自分だけでなく周囲や他部門の数値も把握でき、協力関係を築きやすくなります。また、自動化など仕組みを作ることによって管理の俗人化を防げます。
情報管理をGoogleスプレッドシートやExcelで行う場合には、入力タイミングやフォーマットの統一など運用面での事前整備が必要です。
予実管理に手間がかかると、作業者の負担が増えるだけでなく、改善点を把握した時には手遅れになっていたり、情報が古くなっていたりといった問題が生じる可能性もあります。
また、情報を一元管理するための手段として、SFAの活用も一つの選択肢です。SFAとは「Sales Force Automation」の略称であり、営業支援システム・ツールのことです。情報管理の効率化や自動化を図れます。
SFAには高機能・汎用的なものから「案件管理だけ」などシンプルな機能に絞ったものまで様々な種類が見られます。導入にあたっては、自社に必要な機能を整理することがポイントです。
予実管理は、要点を押さえられないと上手く機能しないことがあります。
ここでは、予実管理を行う上での注意点を解説します。
予算目標の達成はもちろん大事ですが、達成にこだわりすぎるあまりに無理を強いると現場の疲弊を招きます。また、予算目標達成のプレッシャーが強いと、実績をごまかして売上を水増しするなどの不正行為につながる恐れもあり、対外的な信用のためにも避けなければなりません。
未達の原因として、社員の仕事のやり方だけでなく、設定した予算目標自体が現実的でない可能性も考えられます。
例えば、取引先の状況が急変したり、競合他社が新商品を開発して既存の製品が陳腐化したりなど、予算の前提となるビジネス環境に変化が生じている場合があります。
予算と実績に乖離が生じた場合、まずはきちんと原因を分析し、問題点を正確に把握して次につなげることに注力しましょう。
予算目標はどういった事業計画のもとに設定されたのか、その目的を従業員全体で共通認識を持っておきましょう。
予実管理の目的は、現状を正しく把握し、経営改善の施策を実施することです。予算と実績の細かい差異ばかりに目が向き、分析自体が目的となってしまうと、予実管理の本質を見失ってしまいます。
予実管理や、その結果としての予算達成は一つの目標地点ではありますが、最終目的ではありません。あくまで事業計画に基づいた目的達成の手段という意識を共有できるよう、目的を明確にしておきましょう。
予算をたてる上で、ビジネス環境に合った数値を設定することが大切です。
低すぎる予算を設定すると、「予算は達成できているのだから」という思考になりがちで、それ以上の意欲向上が望めなくなります。
企業の継続的な成長のためには、頑張れば手が届くラインを見極め、適切な目標設定を行いましょう。
予実管理は、企業が事業計画を達成し、成長を続けていくために必要な取組みの1つです。
目標に対する進捗度合が可視化できていないと、何をいつまでにどれだけ頑張ればいいのかわかりません。役職者の勘や経験に頼った経営では、急速に変化するビジネス環境に対応できなくなります。
目標達成のためには適切な予算を設定し、KPIやスケジュールを決め、月次決算を行い、予算と実績の比較分析を行って得た改善策をフィードバックして、新たな施策を実施していくという一連の流れが必要です。
予実管理は細かい差異だけを見ると本質が見失われてしまうため、その目的や理由をあらかじめ明確にし、社内全体で共通認識を持っておくことがポイントとなります。
また、社内全体で予実管理に取り組むためには、情報の一元化も大切です。売上報告や経費申請を早くあげる、棚卸の時期を工夫するといった各部門との連携を図るための仕組み作り、営業支援システムの導入など効率化に向けた改善も検討しながら進めましょう。