雑費とはどのような勘定科目かについて解説しています。雑費として仕訳されやすい経費や、いくらまで経費計上できるか、消耗品費との違いや雑費を仕分けする際のポイント・注意点なども紹介しています。雑費について調べている方は参考にしてください。
2024.08.22(最終更新日:2024.08.23)
雑費とはどのような勘定科目かについて解説しています。雑費として仕訳されやすい経費や、いくらまで経費計上できるか、消耗品費との違いや雑費を仕分けする際のポイント・注意点なども紹介しています。雑費について調べている方は参考にしてください。
2024.08.22(最終更新日:2024.08.23)
雑費とは、当てはまる勘定科目がない費用を計上するための勘定科目です。
一時的、かつ少額な費用のために用いられる科目であるため、「どの科目に当てはめたらいいかわからないのでとりあえず雑費にする」といった安易な使い方は避けましょう。
本来はないことが望ましいため、他に該当する科目がある場合は雑費ではなくその科目を使い、仮に雑費を科目として使用する場合も総額が大きくならないよう注意する必要があります。
基本的に費用はそれぞれに適した勘定科目で仕訳するものであり、積極的に雑費に割り振るのは望ましくありません。
上記の前提を踏まえた上で、雑費に計上されやすい費用としては以下が挙げられます。
振込手数料や証明書の発行手数料は「支払手数料」で処理されることが多く、清掃費が臨時的ではなく定期的に発生するのであれば「委託費」などで処理します。
いずれにせよ、雑費とするのは「一時的で少額な費用」である点を押さえておきましょう。
雑費の経費計上について、いくらまでに抑えなければいけないと具体的な金額が決まっているわけではありません。目安としては、販管費全体の10%を超えない程度に抑えるように意識しておきましょう。
雑費の金額が他の科目に比べて大きいと、税務調査が行われた際に指摘されやすくなり、雑費の内訳を精査される可能性が高くなります。
雑費の金額を抑えるためにも、雑費と仕訳する前に他の勘定科目に仕訳できないか都度検討しましょう。
雑費に計上してしまいやすい勘定科目の1つに「消耗品費」があります。雑費の金額が大きくなるのを防ぐ意味でも、消耗品費で仕訳できるものは消耗品費で仕訳するよう精査しましょう。
ここでは、雑費と消耗品費の違いや使い分けのポイントについて解説します。
消耗品費とは、使用期間が1年未満か、取得単価が10万円未満の什器備品が該当します。
消耗品に該当する費用としては、主に以下の項目が挙げられます。
取得価額が10万円以上の資産は固定資産となります。10万円以上かどうかは単価で判断するため、例えばパソコンを5台まとめて購入した場合、パソコン1台ずつの価格で判断します。
固定資産は購入した事業年度に全額費用とすることはできず、基本的には減価償却によって毎事業年度費用化していきます。例外として、使用期間が1年未満のものは取得価額が10万円以上でも購入した期の費用として全額処理します。
また、青色申告を行う法人のうち、常時使用する従業員の数が500人以下の法人は、30万円未満の固定資産を購入した場合に、購入した期の費用として全額計上できます。この特例については、1事業年度中で取得価額300万円分までしか適用できない点を把握しておきましょう。
雑費と消耗品費の区分について、税法上の明確な定義はなく、雑費と消耗品どちらで仕訳するかは判断基準があいまいになりがちです。会計においては、一度「この費用はこの科目を使う」と決めたら基本的に継続して同じ処理をしないといけないというルールがあります。
例えば、4月5日に購入したレジ袋は消耗品費としたけれど、6月8日に購入したレジ袋は雑費にするといった処理は避け、どちらか一方の勘定科目を使用するように統一しましょう。
消耗品費とする判断の目安の1つとして、「物品であり消耗するかどうか」があります。ボールペンやコピー用紙、デスクやロッカーなど、物品であり、使うにつれて消耗していくものが消耗品費となります。
雑費と消耗品のどちらで計上する費用かを統一するために、社内ルールを明確にしておくのも1つの手です。
雑費の仕訳方法の例として、ゴミ処理に5万円かかった場合では、以下のように仕訳を行います。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
雑費 | 50,000 | 現預金 | 50,000 | ゴミ処理代 |
また、個人用途と事業用途の両方で支出する場合、雑費を按分する必要があります。
例えば、自宅の一室をオフィスとして使っている場合において、引っ越しの費用はプライベートで使用する部分と事業でオフィスとして使用する部分で按分し、事業部分の費用だけを計上します。
雑費を仕訳する際に、証憑の取得・保管を必ず行いましょう。雑費は少額や臨時の費用が計上されるため、証憑の入手が漏れてしまいやすいです。
雑費の計上額が大きいと税務調査で精査される可能性があるため、もし精査された場合に証憑を提出する必要があります。
ここでは、雑費を仕訳する際のポイントや注意点について解説します。
雑費に限った話ではありませんが、後で第三者が見た時に何の費用かわかるように摘要欄に情報を記述しておきましょう。
例えば、イベントのキャンセル費用であれば、「キャンセル代+イベント名」と摘要欄に記述するなど、あとから誰が見てもわかるような書き方を心掛けましょう。
雑費を計上する際には、消費税区分に注意しましょう。消費税区分には「課税取引」「不課税取引」「非課税取引」「免税取引」の4種類がありますが、この区分を間違えると消費税の申告を間違えることになります。
取引の大半は課税取引として扱われますが、場合によっては不課税取引や免税取引として扱われる費用もあります。また、課税取引にしても10%と軽減税率8%がある点には注意しましょう。レシートや領収書に記載がある場合は、それに従って仕訳を進めます。
特に気を付けないといけないのが、インボイス制度に関する処理です。費用の消費税を計上し、仕入税額控除の適用を受けるためには、適格請求書発行事業者である取引先からインボイスの交付を受ける必要があります。
インボイスかどうかについては、レシートや領収書にTから始まる13桁の数字が記載されているかを確認しましょう。もしTから始まる番号が記載されておらず、取引先が適格請求書発行事業者でない場合は、仕入税額控除が受けられません。インボイスの交付を受けていない費用を仕訳する場合、原則としては消費税を入力しません。
インボイス制度の特例として、課税仕入の税金額のうち2026年10月1日までは80%、2029年10月1日までは50%を仕入税額控除できます。実際に適格請求書発行事業者でない相手に対する費用を仕訳する場合は、課税仕入で入力し、特例を受ける費用であるとわかるようにする必要があります。
会計ソフトで仕訳を入力している場合は、特例を受ける費用であると選択できる機能が付いていることが多いため、忘れずに選択しておきましょう。
雑費は他の科目に該当しない費用が計上されるため、勘定科目だけを見ても何の費用かがわかりづらいです。そのため、雑費は税務調査時に確認項目になりやすい特徴があります。
可能な限り他の勘定科目で費用を処理し、どうしても他の科目に当てはまらない場合に使用する程度にしておくのが望ましいでしょう。
雑費と間違えやすい科目に「雑損失」があります。雑損失は営業外費用の科目であり、本業と直接関係ない費用が計上されます。営業外費用のうち、金額の小さい雑多なものを計上するための勘定科目です。
例えば、現金と帳簿が一致しない場合の現金不足分、盗難による損失、損害賠償金などが該当します。雑損失に計上できるのは営業外費用の総額の10分の1以下の金額の費用のみで、10分の1を超える費用は、独立した勘定科目で計上する必要があります。(財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則 第九十三条)
また、雑費と雑損失は名前が似ているため、会計ソフトで入力している時にうっかり混同して入力してしまう懸念もあります。
月次や年度の決算時などに元帳をチェックして、雑費と雑損失が間違って計上していないか定期的に確認しましょう。
雑費はどの科目にも当てはまらない、一時的で少額な費用を計上する際に使用する勘定科目ですが、雑費の総額が多いと税務調査時の確認項目となりやすい傾向があります。そのため、雑費への計上額は必要最小限に留める意識を持って計上しましょう。
例えば、証明書の発行手数料であれば「支払手数料」勘定、清掃代であれば「委託費」勘定が使え、文房具であれば「消耗品」勘定を使います。
1年に1回しか発生せず、金額が大きくない費用に対して雑費を使うくらいの認識がちょうどよいでしょう。
また、雑費に限りませんが、仕訳をする際は第三者が見ても何の費用かわかるように、摘要欄に費用の内容や相手先を記載しておくことが大切です。
雑費は消費税、インボイスなど、計上にあたって注意すべき点が多い勘定科目であるため、ポイントを押さえて社内で確認する体制を整えておきましょう。