IFRS(国際財務報告基準)とはどのような会計基準なのか解説しています。日本の会計基準との違いや日本でもIFRSが導入された背景、IFRSを導入する場合のメリット・デメリットについても紹介しています。IFRS(国際財務報告基準)について調べている方は参考にしてください。
目次
- IFRS(国際財務報告基準)とは
- IFRSと日本基準の違い
- 日本でIFRSが導入された背景
- IFRSの導入が向いている企業
- 日本でIFRSを導入している企業
- IFRSを導入するメリット
- IFRSを導入するデメリット
- まとめ
IFRS(国際財務報告基準)とは

IFRS(国際財務報告基準)とは、International Financial Reporting Standardsの略称で、国際的な財務報告のための会計基準です。
IFRSは国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board、 IASB)によって策定され、ヨーロッパ連合(EU)を含む約140ヵ国以上で使われています。特にEUの上場企業は、IFRSの使用が必須です。
一方、米国ではUS- GAAP(Generally Accepted Accounting Principles)が使われており、利益を公表する際に「GAAP」と「Non-GAAP」という2つの異なる方法を採用しています。US-GAAPは米国で公式に認められた会計基準であり、米国で採用されている会計基準です。
IFRSは、財務報告に関する原則のみを明確にし、具体的な運用は各企業に任せる「原則主義」の考え方に基づいた基準と言われており、会計方針等の適用に際しては実態に応じて企業ごとに判断することが求められます。また、貸借対照表を重視する基準でもあります。
2024年2月末時点で、日本の上場企業でIFRSを採用しているのは、ローソンやメルカリなど267社です。グローバルなビジネスの世界において、IFRSは企業の財務報告の透明性と信頼性を高める役割を持ちます。国際市場で活動したり、資金を集めたりする企業にとっては、IFRSを採用する戦略的な意義があります。
一方で、日本の従来の会計基準は「細則主義」に基づいており、会計基準や解釈指針、実務指針などが詳細に規定されています。日本では以下の3つの会計基準が認められています。
- IFRS(国際財務報告基準)
- 日本基準
- 米国会計基準
IFRSと日本基準の違いは、次で解説します。
IFRSと日本基準の違い

IFRSは国際的な基準であり、世界中の投資家やステークホルダーに向けて透明で比較可能な財務情報の提供を目的としています。一方で、日本基準は日本国内の企業に適用され、日本の経済環境や法制度に合わせて作られています。
制定機関も異なり、日本基準は日本の企業会計基準委員会(ASBJ)によって制定されます。IFRSと日本基準の主な違いは、以下のとおりです。
| 項目 | IFRS | 日本基準 |
|---|---|---|
| 非上場株式の 貸借対照表計上額 | 時価評価で計上される | 取得原価で計上される |
| のれん | 償却処理はせず、減損テストの適用 | 通常20年以内で定額償却される |
| 研究開発費 | 研究フェーズの費用は費用として計上されるが、開発フェーズの費用は要件を満たす場合にのみ資産として計上される | 全て発生時に費用として計上される |
| リース | 短期と少額を除く原則すべてのリースについて使用権資産およびリース負債が計上される | ファイナンス・リースについてのみ計上される |
収益認識基準に関しては、日本でも企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」が強制適用されたことで、履行義務が充足された時点で収益を認識することになりました。
そのため、IFRSと日本基準でほぼ同じ基準となっています。
日本でIFRSが導入された背景

日本でのIFRS導入の背景は、2000年代初頭からの国際的な会計基準の動向と、日本市場の環境変化に深く関連しています。
2000年代初期では、世界的に会計基準の国際調和が進められ、多くの国々がIFRSを採用する、または採用に向けた動きを見せ始めました。 経済のグローバル化に伴い、国際的な投資を推し進める投資家や多国籍企業にとって、異なる国々の会計基準による財務報告の比較は困難であり、大きな問題だったのです。
財務報告で異なる会計基準が使われると、情報の比較が難しいという問題を引き起こしていたため、日本企業は海外の投資家に対して、より透明かつ比較可能な財務情報を提供するように動き始めました。
2005年には欧州連合(EU)が、EU域内の上場企業に対してIFRSの適用を義務付けました。そして2008年、アメリカの大手証券会社リーマン・ブラザーズの破綻によって引き起こされた世界的な金融危機が、透明性と財務報告の品質に対するさらなる要求をもたらし、多くの国がIFRSへの関心を高めるようになりました。
こうした流れを受け、2010年に日本の金融庁がIFRS対応の調査結果を公表し、同年に東京証券取引所が「IFRS準備状況に関する調査結果(概要)」を公表しています。
2011年には、企業会計審議会がIFRSの強制適用時期に関する審議を行い、2012年には金融庁が「国際財務報告基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」を公表しました。これに基づいて議論を行い、金融庁企業会計審議会は2013年に「国際財務報告基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」を公表。IFRSの任意適用要件の緩和や適用の方法、単体開示の簡素化といった方向性を示します。
2013年、金融庁は、「連結財務諸表の用語、様式および作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令」を公表し、IFRSの任意適用が可能な会社の要件を簡素化、IFRSに基づいて作成する財務諸表の適正性を確保する取り組みや体制の整備のみを行いました。
2010年代後半には、日本でもIFRSを適用する企業の数が徐々に増加し始めます。日本企業が国際的なビジネス環境に適応し、透明性と効率性を高めるための一環として捉えられます。
現在、IFRSの導入は、日本企業の国際的な規制環境への適応、資本市場の効率化、および国際的な財務報告の一貫性と比較可能性を高めるための指標の一つになりました。また、国際投資家に対するアピールとしても重要視されています。
日本でのIFRS導入は、国際的な会計基準の動向に対応し、グローバル化する経済環境のなかで日本企業の競争力を保つための戦略的な選択として進められてきたのです。
参考:日本公認会計士協会「第5章 国際財務報告基準(IFRS)の任意適用後の我が国の対応」
IFRSの導入が向いている企業
IFRSの導入は、すでに国外で事業を行っている企業や、今後海外進出を計画している企業に適しています。
トヨタ自動車やソニーのように、すでに多くの国で事業を展開している企業では、展開している国ごとの会計基準に準拠する必要性がなくなり、財務報告プロセスが簡素化できます。さらに、海外投資家に対して一貫した情報提供も可能になります。
また、ソフトバンクや日産自動車のように、国際資本市場での資金調達を積極的にしている企業は、国際的な比較可能性を高め、投資家との信頼関係構築に寄与できます。
家具・建材、紙製品、飲食料品など、海外需要の増大や円安が輸出増加を後押ししている企業は、海外進出を試みています。そのような企業は、IFRSの導入により国際的な業務報告の一貫性を確保する手段となります。
日本でIFRSを導入している企業
2024年2月末時点でIFRS適用会社数は267社、IFRS適用決定会社数は11社で、合計278社が導入をしています。
以下の表は、2024年以降にIFRSを適用したとJPXより公表された企業です。
| 企業名 | 業種分類 | 適用時期 |
|---|---|---|
| 村田製作所 | 電気機器 | 2024年3⽉期 第1四半期 |
| ライフネット生命保険 | 保険業 | 2024年3⽉期 第1四半期 |
| パーソルホールディングス | サービス業 | 2024年3⽉期 第1四半期 |
| UACJ | 非鉄⾦属 | 2024年3⽉期 第1四半期 |
| LITALICO | サービス業 | 2024年3⽉期 第1四半期 |
| ラストワンマイル | サービス業 | 2024年8⽉期第1四半期 |
| メルカリ | 情報・通信業 | 2024年6⽉期第1四半期 |
出典:日本取引所グループ(JPX)「IFRS(国際財務報告基準)への対応」
IFRSを導入する日本企業は年々増加しています。その理由として、海外子会社も含めてIFRSという一つの会計基準で会計が統一されているため、管理がしやすいことが挙げられます。
日本基準を適用している会社の場合、海外子会社はIFRSや現地基準で現地の会計処理を行い、連結財務諸表を作る際に日本基準への調整仕訳を行うことで、海外子会社の会計数値を日本基準に合うように修正するのが一般的です。
親子会社ともにIFRSを導入すれば、海外子会社が作成した会計数値を日本でもそのまま取り入れることができるため、月次での会計管理もスムーズに行うことができるようになります。
また、のれんの償却に関して、日本では20年以内に償却処理しないといけませんが、IFRSだとのれんの価値が大きく下がっている場合を除き費用化する必要が無いため、巨額ののれんが発生するような企業だと毎期の費用・損失額が大きく変わります。そのため、のれんの金額が大きい会社だと、費用化が必須の日本基準よりもIFRSの方が好まれる傾向にあります。
出典:企業会計基準委員会 「企業会計基準第21号 企業結合に関する会計基準」
IFRSを導入するメリット

IFRS導入の利点の一つは、海外投資家が企業の財務状況を理解しやすくなる点です。
IFRSは国際的に認知された会計基準であり、世界中の投資家が一貫した情報を基に企業を評価できるため、海外投資家からの信頼を得やすくなります。企業は国際資本市場での資金調達の機会を広げられるでしょう。
世界規模で事業展開を行う日本の大手企業がIFRSを採用すれば、海外の機関投資家や個人投資家からの注目を集めやすくなり、海外での資金調達の機会を増やせます。
また、国際的なM&Aにおいても、IFRSに準拠した財務諸表をそのまま活用できるため、プロセスがスムーズに進行します。
さらに、IFRSの導入は企業の信頼性や評価を高める効果があります。金融機関や投資家、取引先からは、「質の高い会計処理を実施している」「しっかりとした体制と内部統制が整っている」と認識されやすくなり、企業の信用力が上昇します。
もし海外に子会社や支店を持つ企業ならば、IFRSを国内外の拠点で一貫して採用すると大きなメリットになります。連結財務諸表の作成が容易になり、拠点間の管理連携が強化され、グループ全体の経営状況を容易に把握できるためです。迅速な意思決定を行うための基盤が整うのもメリットでしょう。
IFRSを導入するデメリット

IFRSを導入する際の主なデメリットは、そのプロセスで時間と労力、費用を要する点です。IFRSへの移行には、既存の会計システムの変更や更新が必要なため、調査に関する費用や監査の費用、システム導入の費用、外部のコンサルティングサービスにかかる費用、社内プロジェクトの運営費用等がかかってきます。
費用は企業の規模が大きくなるほど増加する傾向にあり、移行が完了するまでに数年かかる場合もあるため、総コストをしっかり見積もる必要があります。
さらに、会計基準の変更に伴い、関連するスタッフへの教育やトレーニングも必要です。特に、IFRSと日本基準との間には違いがあり、個別財務諸表は引き続き日本基準で作成しないといけないため、連結財務諸表の作成に際してIFRSに変換する手間がかかります。
また、IFRSを採用すると、企業結合やリース会計、固定資産会計など、会計方針を変更する必要があります。例えば、固定資産の減損処理に関して、日本基準では減損の兆候がある場合に減損テストを実施しますが、IFRSだとのれんに関して毎期同時期に最低1回は減損テストをする必要が生じます。新しい会計方針を社内に浸透させるのに、時間やコストがかかるでしょう。
IFRSの導入は国際的な会計基準への適応を意味しますが、その過程は複雑で、十分な準備とリソースの投資が求められます。従業員の理解を得ながら組織全体での対応が必要です。
まとめ

この記事ではIFRS(国際財務報告基準)の基本事項と、国際ビジネスにおいてIFRSがどのような役割を果たしているかについて解説しました。
経済のグローバル化が進むなかで、多国籍企業や国際的な投資家の間で、異なる会計基準の統一が求められています。そうしたなかで、IFRSは、国際的な財務報告の透明性と比較可能性を向上させるために設計されており、グローバルなビジネスを展開する企業にとって重要な基準となっています。
会計基準の選択は、企業のビジネス戦略や国際的な展開に深く関わっています。そのため、自社のビジネスに最適な会計基準を選択しましょう。
