米国公認会計士(USCPA)とは?主な仕事内容やなり方、日本の公認会計士との違いや難易度について解説

米国公認会計士(USCPA)とは?仕事内容やなり方、難易度について解説

米国公認会計士(USCPA)とはどのような職業かを解説しています。主な仕事内容や日本の公認会計士との違い、米国公認会計士へのなり方や試験の合格率・難易度、将来性についても紹介しています。米国公認会計士について調べている方は参考にしてください。

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米国公認会計士(USCPA)とは

米国公認会計士(USCPA)とは

米国公認会計士とは、米国各州の会計士委員会が設定をする公認会計士資格です。USCPA(United States Certified Public Accountant)とも呼ばれています。その歴史は古く、第一回米国公認会計士試験は、1917年に実施されました。

米国公認会計士は国際資格のため、国際会計基準(IFRS)の知識があるというだけでなく高い英語力の証明にもなります。日本国内においても、外資系やグローバル企業などへの就職・転職を視野に入れている場合に大きな強みとなるでしょう。

米国の資格ですが、日本をはじめ世界各国から受験できるという点も、米国公認会計士の特徴です。

米国公認会計士の主な仕事内容

米国公認会計士の主な仕事内容

米国公認会計士は、米国各州で会計士として仕事をすることをはじめ、自己のキャリアアップや就職、転職のために活かせる資格です。資格取得後は米国企業やグローバル企業をはじめ、監査法人やコンサルティングファームにおいても活躍の幅が広がります。

さまざまな分野での活躍が期待できる米国公認会計士の主な仕事内容は、以下のとおりです。

監査業務

会計士は監査業務の専門家であるともいえ、各企業の監査業務を行います。決算書を確認したり、企業が適正な財務諸表を作成しているか検証したりします。

日本の企業においても国際会計基準(IFRS)を採用している場合は、米国公認会計士の知識が役立ちます。

会計・税務業務

会計業務はもちろん、米国税務の業務にも携わります。

主な業務内容としては、国際会計基準に基づく英文での決算書の作成、米国の法律に基づく税務申告のサポートが挙げられます。

内部統制業務

内部統制の仕組みを作ることや、運営のサポートを行います。

米国公認会計士と日本の公認会計士との違い

米国公認会計士と日本の公認会計士との違い

米国公認会計士と日本の公認会計士の主な違いは、「日本国内において、公認会計士として独立して働くことができるかできないか」という点です。

日本国内でも国際会計が求められる場であれば、米国公認会計士のスキルや知識は活かせます。監査業務については、「日本の公認会計士の業務をサポートする形」であれば行えますが、監査報告書への署名や日本国内での独立開業はできません。

また、日本の公認会計士では可能な税理士登録も、米国公認会計士では行えません。

一方で、日本の公認会計士の資格のみでは、海外では現地の公認会計士の資格として働くことはできません。公認会計士は日本国内で有効な資格であるため、米国を中心としたグローバルな舞台で活躍したい場合は、米国公認会計士の取得を目指すとよいでしょう。

米国公認会計士の資格を持っていれば、米国以外にも以下のような国で会計業務にあたることができます。

米国公認会計士の資格を持っていることで業務が可能な「国際相互承認協定参加国」

  • 南アフリカ
  • オーストラリア
  • ニュージーランド
  • カナダ
  • アイルランド
  • メキシコ
  • スコットランド

国際相互承認協定参加国については今後も増える可能性があるため、活躍の場はさらに広がるのではなくことが想定されます。

出典:全米州政府会計委員会(NASBA)公式サイト「Mutual Recognition Agreements(相互承認協定)」

米国公認会計士になるには

米国公認会計士になるには

米国公認会計士は国家資格であり、米国だけでなく国際相互承認協定を締結している国でも活用できます。

そのため、公認会計士としてグローバルに活躍したい人にとっては魅力的な資格だといえるでしょう。

ここでは、米国公認会計士になるための手順について解説します。

1.出願州の受験資格を満たす

米国公認会計士になるには、受験に合格することが1つの要件ですが、受験資格やキャリアパスは米国の各州ごとに異なります。

まずは、どの州に出願するか決めるところから始めましょう。

以下の表は、州ごとの受験資格の一例です。

出願州受験資格
アラスカ州4年生大学卒業の学位、会計15単位
モンタナ州会計24単位、ビジネス24単位、高卒受験可能
ニューヨーク州総単位120単位、指定会計科目4科目
ワシントン州4年生大学の学位、総単位150単位、会計24単位、ビジネス24単位

出典:全米州政府会計委員会(NASBA)公式サイト「CPA Exam(公認会計士試験)」

大学卒業を要件としている州が多いなか、たとえばモンタナ州のように高卒でも受験資格がある州もあります。

なお、試験のために必ずしも渡米する必要はなく、日本国内でも受験可能です。

また、この「受験資格」はあくまで試験を受けるためだけの要件であり、公認会計士の資格自体を取得するための要件ではありません。資格(ライセンス)取得のための要件は別に存在するため、後の項目「3.資格(ライセンス)の申請・取得を行う」で解説します。

2.試験に合格する

米国公認会計士になるためには、4科目の試験に合格する必要があります。

各科目の詳細は、以下のとおりです。

試験科目概要
AUD
(監査手続)
・監査実務に対する知識が問われる

・監査と証明業務や、会計士としての責任が出題範囲となる

BEC
(企業経営環境)
・ビジネス界の商取引の知識が問われる

・企業会計以外の管理会計やファイナンス、コーポレートガバナンスや経済学、ITの概論までが出題範囲となる

FAR
(財務会計)
・一般的な会計知識が問われる

・企業会計だけではなく、政府や非営利組織会計も出題範囲となる

REG
(諸法規)
・職業倫理やビジネス法務の知識が問われる

・連邦税法やビジネス法が出題範囲となる

出典:全米州政府会計委員会(NASBA)公式サイト「What is the Uniform CPA Examination?(統一公認会計士試験とは何ですか?)」

日本の公認会計士試験は、短答式が年に2回、論文式は年に1回となります。短答式に合格しないと論文式を受けることができないため、試験合格のチャンスは年に1度しかありません。

しかし、米国公認会計士試験は、年間を通じて受験ができます。希望する試験日と時間を選択でき、土日も受験可能です。同一科目の再受験申込みにおいても受験結果発表後からすぐに可能なため、もし受験科目が不合格になった場合でもすぐに再受験できます。

合格発表は、受験日から遅くとも1ヵ月後には、米国公認会計士協会のサイトで発表されます。

3.資格(ライセンス)の申請・取得を行う

日本の公認会計士も試験合格だけでは資格を取得することはできず、実務経験が3年以上必要ですが、米国公認会計士においても試験合格に加え一定の要件を満たさなければ資格を取得できません。

受験資格同様、資格取得の条件も州によって異なります。

たとえばニューヨーク州であれば、資格取得のために以下のような要件をクリアする必要があります。

出願州ライセンス取得資格

ニューヨーク州

・4年生大学の学位

・総取得単位150単位

・会計33単位、ビジネス36単位

・1年から2年の会計実務

など

出典:全米州政府会計委員会(NASBA)公式サイト「New York(ニューヨーク)」

資格取得は受験資格よりもハードルが高いものですが、試験などはないため、単位や実務経験を積んでいけばクリアできます。

また、米国公認会計士の資格は定期的に更新が必要で、更新タイミングも州によって異なります。日本の公認会計士は「CPE制度」という継続教育は更新義務がありますが、資格の更新はありませんので、この違いは把握しておきましょう。

出典:日本公認会計士協会「CPE(継続的専門研修)制度」

米国公認会計士試験の合格率と難易度

米国公認会計士試験の合格率と難易度

米国公認会計士試験の合格率と難易度について、日本の公認会計士試験にも触れながら解説をしていきます。

試験では4科目合格が必要

2023年10月時点の試験科目は、以下の4科目です。

  • AUD(監査手続)
  • BEC(企業経営環境)
  • FAR(財務会計)
  • REG(諸法規)

米国公認会計士試験では、前述した4科目に合格する必要があります。科目合格には18ヵ月の有効期限があるため、期限内に4科目合格を目指すことになります。

なお、4科目は同時ではなく、1科目ずつ受験することも可能です。

合格率は50%程度

米国公認会計士試験の合格率は、50%程度と発表されています。

科目別の合格率は以下のとおりです。

科目名合格率
AUD(監査手続)47.68%
BEC(企業経営環境)58.25%
FAR(財務会計)42.3%
REG(諸法規)59.22%

出典:AICPA&CIMA公式サイト「Learn more about CPA Exam scoring and pass rates」

BEC(企業経営環境)とREG(諸法規)は合格率が高く、FAR(財務会計)とAUD(監査手続)は合格率が低いことがわかります。しかし、全体として50%程度の合格率はあるため、日本の公認会計士試験よりも高い合格率といえるでしょう。

日本の公認会計士試験の令和4年の合格率は、7.7%となっています。ただし、そもそもの受験資格や合格率の出し方が米国と日本では異なります。

受験資格は、日本は学歴や取得単位数を問わず誰でも受験できます。一方、米国公認会計士試験は一定の学歴や単位の取得が必要となります。

合格率については、科目合格ではなく、短答式と論文式の合格が最終合格となります。上記日本の合格率は、最終合格者を出願者で除して計算した数値です。したがって、合格率でどちらが難しいのかを単純には比較できません。

出典:金融庁公式サイト「令和4年公認会計士試験の合格発表の概要について」

英語力も必要

米国公認会計士試験は、当然ながら英語で出題されます。必要な英語力は日常会話レベルではなく、会計や税法に関する専門用語、表現を理解できるレベルが求められます。

米国の大学受験レベルの英語力があれば米国公認会計士を目指せますが、重要なのは会計用語に関連する英語力のため、米国公認会計士試験用の英語に精通しておく必要があります。

2024年から試験制度が変更される(CPA Evolution)

米国公認会計士試験は2024年から試験制度が変更されます。

現行は、先に記載をしたとおり4科目合格となりますが、2024年からは、3科目が必須科目となり、1科目は選択科目合格になります。

変更点は下表のとおりです。

現行試験制度科目
FAR(財務会計)すべて必須科目

(CORE)

AUD(監査手続)
REG(諸法規)
BEC(企業経営環境)

 

新試験制度
FAR(財務会計)必須科目

(CORE)

AUD(監査手続)
REG(諸法規)
BAR(ビジネス分析及び報告)

選択科目

(DISCIPLINES)

3科目のうち、1科目選択

ISC(情報システム及び統制)
TCP(税法遵守及び税務計画)

新試験制度では、BEC(企業経営環境)がなくなり、代わりにBAR(ビジネス分析及び報告)、ISC(情報システム及び統制)、TCP(税法遵守及び税務計画)が加わりました。これら3科目のうち、1科目の合格が必要です。

なお、現行の試験制度でFAR、AUD、REGに合格をしている場合、新試験制度での再受験は不要です。また、BECに合格をしている場合、BAR、ISC、TCPの選択科目受験は不要となります。

出典:全米州政府会計委員会(NASBA)公式サイト「CPA Evolution」

米国公認会計士の将来性について

米国公認会計士の将来性について

米国公認会計士の将来性については、「会計ソフトやAIの機能向上によって仕事が奪われる」「大量の書類や取引データの仕訳、それらのデータからの傾向分析などは、AIにとって変わられる可能性がある」ともいわれています。

日本と同様、米国においても公認会計士の仕事はクライアントとの信頼関係が大事であり、コミュニケーションが重要な要素となります。データの処理や事務的な作業だけではなく、クライアントである企業からの会計相談はもちろん、今後企業がどのように成長していくかなどの相談を受けることもあります。

クライアントとの信頼関係を築きながら企業の成長を手助けするというのは、現在のAIには難しいと考えられています。

米国公認会計士の活躍の場は、米国だけではありません。米国公認会計士協会(AICPA)と相互認証協定を結んでいるカナダやメキシコ、オーストラリアやニュージーランドなどでも仕事をすることが可能です。

さらには、香港やアイルランドでも追加の研修などを受けることにより、公認会計士の資格を得ることができます。日本は相互協定を結んではいませんが、英語力や会計知識があることは強みになるでしょう。

グローバルに活躍できる人材として、AIを有効活用して仕事の幅を広げていくことが重要です。

まとめ

米国公認会計士(USCPA)とは?仕事内容やなり方、難易度について解説

米国公認会計士の概要や将来性について解説をしました。米国公認会計士は米国の各州で受験資格が異なり、試験合格をしただけでは資格が与えられません。

試験は4科目合格式となり、2024年からは必須3科目、選択1科目となります。米国公認会計士を取得すれば、世界はもちろん、日本でも活躍の幅を広げることができます。

米国公認会計士試験に挑戦をしてみたいという方は、ぜひ資格取得に挑戦し、世界を舞台に活躍を目指しましょう。