資金調達手段の一つである「デットファイナンス」とはなにかを解説しています。エクイティファイナンスとの違いや種類、活用する際のメリット・デメリット、注意点なども紹介しています。デットファイナンスに関して調べている方は参考にしてください。
目次
- デットファイナンスとは
- デットファイナンスの種類
- 公的融資
- 銀行借入(手貸、証貸、当貸等)
- ビジネスローン
- 社債の発行
- 私募債の発行
- 投資家からの融資
- デットファイナンスとエクイティファイナンスの違い
- 返済義務の違い
- 株主の権限の違い
- 貸借対照表上の表記の違い
- 資本の違い
- デットファイナンスのメリット
- 経営権を握られることがない
- 信用力が上がる
- 借入先の選択肢が多い
- デットファイナンスのデメリット
- 返済義務がある
- 利息がかかる
- 自己資本比率が低下する
- デットファイナンスを活用する際は資金繰り表を作成する
- まとめ
デットファイナンスとは
デットファイナンス(Debt Finance)は借り入れという意味で、金融機関から融資を受けたり、社債や私募債を発行したりするなどして企業が資金調達をする方法です。
企業がデットファイナンスによって資金を調達した場合、利息を支払う必要があります。金融機関から融資を受けた場合は、元本とともに利息を返済していきます。社債を発行した場合であれば、決められた期日に利息を支払う義務があります。
デットファイナンスの種類
デットファイナンスにはいくつかの種類があります。公的機関による融資や金融機関による融資、社債の発行、私募債の発行、投資家からの融資です。
公的融資
公的機関による融資として、日本政策金融公庫による「新創業融資制度」や地方自治体による「制度融資」などが挙げられます。
日本政策金融公庫とは、政府が100%出資する金融機関です。スタートアップ企業向けに無担保・無保証人で借り入れができる新創業融資制度を用意しています。
制度融資とは、地方自治体や金融機関、信用保証組合が連携して行う融資です。地方自治体による利息の負担軽減、信用保証協会による信用保証によって中小企業や小規模事業者の借り入れをサポートします。
公的融資には、以下の特徴があります。
銀行より借りやすい
日本政策金融公庫は広く制度を利用してもらうため、銀行よりも貸付条件を柔軟に設定しています。
銀行融資が受けられない企業でも、公的融資なら受けられるケースがあります。
利息の金利が低い
公的機関は、一般的に低金利で融資を行っています。
企業にとっては低コストで資金調達が可能になり、返済負担を軽減できます。
借入期間が長い
公的融資は銀行と比べて長期間での借り入れが可能なため、資金の使途に合わせた柔軟な返済スケジュールを立てられます。
無担保・無保証
一部の公的融資では、担保を提供せずに融資を受けられることがあります。中小企業のように資産が限られている企業にとっては大きなメリットといえます。
条件によっては保証人を立てずに融資を受けられることもあるため、保証人を探す手間を省けます。
審査に時間がかかる
公的融資の審査は、銀行融資に比べて時間がかかる場合があります。
資金調達を急ぐ場合には、余裕を持って申し込みを行いましょう。
銀行借入(手貸、証貸、当貸等)
銀行借入とは、主に都市銀行や地方銀行、信用金庫、信用組合といった民間の金融機関からの融資を指します。
都市銀行はある程度の事業規模がある企業向けの融資が中心のため、中小企業は地方銀行や信用金庫、信用組合から融資を受けることが多くなります。
銀行借入の場合、融資金額や融資内容によっては担保を求められることに留意しましょう。
金利が低め
銀行借入は他の資金調達方法に比べて金利が比較的低くなる傾向にあります。
特に、信用力の高い企業や担保を設定する場合は、低い金利で融資が下りる場合が多いです。
金利を低く抑えて資金調達ができるのは、企業が安定的な経営を行う上で大きなメリットとなります。
借入金額が大きい
銀行借入は借入金額が比較的大きいのが特徴です。大規模な投資や設備購入、事業拡大などの資金ニーズに対応できます。
審査が厳しい
銀行借入は借入金額が大きくなるため、金融機関は融資先企業の経営成績や財務状況などから返済能力を厳しく審査します。
信頼性の高い企業でないと融資を受けるのは難しいでしょう。
ビジネスローン
ビジネスローンとは、銀行やノンバンクが事業資金を融資するローン商品です。
開業資金や運転資金、設備資金などを融資します。ビジネスローンの特徴は以下のとおりです。
審査が通りやすい
ビジネスローンは審査が通りやすいのが特徴です。
その代わり、金利は公的融資や銀行融資よりも高い傾向にあります。
借り入れがスピーディー
ビジネスローンは審査や書類手続きが簡素化されているため、急な資金ニーズに迅速に対応できるのがメリットです。
金利が高い
ビジネスローンの金利は、他の長期融資よりも高めな傾向にあります。
ビジネスローンを提供する金融機関は、審査が通りやすくスピーディーな融資を提供する代わりに金利を高く設定することでリスクを軽減しています。
融資を受ける企業にとっては利息の負担が増えることになるため、そのデメリットを考慮した上で借り入れを行いましょう。
社債の発行
社債の発行は、企業が債券市場から資金を調達する手段で、大規模な資金調達や長期の投資資金に適しています。
企業は投資家に対して一定期間後に元本と利息を返済する約束をします。社債の利率や期間は発行時に設定します。
社債による資金調達の特徴は、以下のとおりです。
金利を低めに設定できる
社債を発行する際、企業は発行する債券の利率を設定します。
企業の信用力が高く安定した経営状況を持つ企業ほど、低い金利で社債を発行できます。
返済は一括で行う
社債による資金調達では、発行した債券の返済が一括で行われることが一般的です。
債券の発行時に設定された返済期間を迎えると、企業は元本と利息を一括返済します。
社債を発行する際は、返済期限までに返済資金を確保する必要があります。
私募債の発行
公募の手続きを経て発行する社債を公募債、それ以外の方法で発行する社債を私募債といいます。私募債には公募の手続きが不要です。
中小企業が私募債を発行する場合には、金融機関や信用保証協会などが償還について保証することが多く、保証を受けるためには一定の財務基準を満たす必要があります。
また、一定水準以上の財務状況であれば一括償還の債権発行が可能です。公募債と同様に低金利であることがメリットといえます。
投資家からの融資
投資家からの融資では、ソーシャルレンディングなどを利用して資金を調達します。ソーシャルレンディングとは、資金提供を通じて利益獲得を狙う投資家と融資を受けたい企業をマッチングさせるサービスです。
ソーシャルレンディングでは、サービスを運営する会社が、インターネット上で個人投資家から資金を集め、ファンド業者を通じて企業に融資します。
ソーシャルレンディングでは一般的な融資よりも資金調達を早く行えるメリットがある一方、金利は銀行融資などと比べて高い傾向があります。
デットファイナンスとエクイティファイナンスの違い
資金調達の方法には種類がいくつかありますが、主に利用される「デットファイナンス」と「エクイティファイナンス」にも違いがあります。以下ではそれぞれの違いを比較します。
返済義務の違い
デットファイナンスは借り入れによる資金調達のため、元本の返済義務と利息支払義務があります。
一方、エクイティファイナンスは株式を発行して出資を受けることによって資金調達をするため、元本の返済や利払いの必要はありません。
株主の権限の違い
エクイティファイナンスでは、株主から出資された資金の返済義務は生じませんが、事業収益を配当金として株主に還元することが求められます。
また、株主は経営に参加する権利を有し、株主総会で議決権を行使できます。
これに対し、デットファイナンスで資金を貸し付けた融資元が融資先企業の経営に関与することはありません。
貸借対照表上の表記の違い
ある時点での企業の財政状態を示す会計帳簿を「貸借対照表(バランスシート)」といいます。エクイティファイナンスとデットファイナンスとでは、貸借対照表における表記箇所が異なります。
貸借対照表の資産、負債、純資産の大枠のうち、借り入れであるデットファイナンスが負債を増加させるのに対し、エクイティファイナンスでは純資産を増加させます。
資本の違い
デットファイナンスは他人資本である一方、エクイティファイナンスは自己資本として扱われます。
株式の発行によって調達した資本を自己資本、金融機関などからの借り入れによって調達した負債のことを他人資本と呼びます。
自己資本は返済の必要のない資金ですが、他人資本は返済しなくてはなりません。
デットファイナンスのメリット
デットファイナンスには、活用することによる様々なメリットが存在します。以下では、デットファイナンスのメリットについて解説します。
経営権を握られることがない
エクイティファイナンスによる資金の調達は、多数の株式を保有する株主に経営権を掌握されて会社を支配されるリスクを伴います。
一方、デットファイナンスによって融資元に経営権を握られることはないため、主体的な企業経営を続けられます。
信用力が上がる
デットファイナンスで借り入れた資金を予定通りに返済できると、融資元からの信用度(評価)が上がります。創立間もない企業であっても、返済実績によって評価が上がれば、次第に好条件の取引が可能になるでしょう。
ただし、返済が滞れば信用情報機関に滞納の記録が残るため、会社の信用度が落ちて金融機関からの借り入れが不可になる場合もあります。
将来的に資金調達に困ることがないように、綿密な返済計画のもとに融資を受け、確実な返済を行いましょう。
借入先の選択肢が多い
借入先の選択肢が多く、資金調達がしやすいのもデットファイナンスの特徴です。
融資の条件が金融機関によって異なるため、ひとつの金融機関で融資を断られたとしても他の金融機関では融資を受けられる可能性があります。
デットファイナンスのデメリット
デットファイナンスにはメリットが多数ありますが、その一方でデメリットも存在します。
デメリットも理解した上で活用を検討しましょう。
返済義務がある
出資された資金を返済する必要がないエクイティファイナンスと違い、デットファイナンスでは借り入れた資金を期日までに返済しなければなりません。
そのため、常に返済を意識した資金繰りが求められます。返済が滞ると、一括返済を求められたり、資金が必要になったときに融資を拒否されたりする可能性があります。
業績不振などで資金繰りが悪化した場合は、早めに金融機関に相談しましょう。
利息がかかる
借り入れによる資金調達には、利息の支払いが伴います。多額の借り入れをした場合は支払う利息の金額も大きくなるため、利息による収益や資金繰りへの影響に留意しましょう。
自己資本比率が低下する
デットファイナンスは負債(他人資本)であるため、実行すると自己資本比率が下がります。
総資本で自己資本が占める割合を「自己資本比率」といいます。自己資本比率が低い場合、借入依存度の高い会社とみなされ、投資家や金融機関といった利害関係者からの評価が低くなる傾向にあります。
その結果、追加融資や助成金、補助金を受けようとする際に不利になる場合があります。
デットファイナンスを活用する際は資金繰り表を作成する
デットファイナンスを活用する際には、返済義務が発生することに留意しましょう。
無理のない返済計画を立てるには、返済期間や元本金額、利息金額を把握するとともに、将来の収益やキャッシュフローの予測が必要になりますが、精度の高い返済計画を作成するために役立つのが「資金繰り表」です。
資金繰り表とは、資金の動きを管理するために作成する表です。資金繰り表を作成することで、一定期間の収入や支出、借り入れ、返済の結果、月末の現預金残高がいくらになるか予測できます。
資金繰り表を適切に作成することで資金計画が可視化され、借入金の返済による資金ショートを防ぐ助けとなります。
まとめ
デットファイナンスは、金融機関や公的機関、投資家などから資金を調達する方法です。
企業の成長や安定した運営のために欠かせない資金調達ですが、方法によってメリットとデメリットの両方があります。デットファイナンスによる無計画な借り入れを行ってしまうと、過度な負債を抱えることになり財務リスクを増大させてしまいます。
資金繰り表を活用した綿密な返済計画をもとに、健全な体制でデットファイナンスを活用しましょう。