FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)について、仕事内容や必要スキルを解説しています。また、M&Aコンサルタントとの違いや、FAS業務のやりがいも解説しています。FASについて興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
2023.07.01(最終更新日:2023.09.08)
FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)について、仕事内容や必要スキルを解説しています。また、M&Aコンサルタントとの違いや、FAS業務のやりがいも解説しています。FASについて興味がある方は、ぜひ参考にしてください。
2023.07.01(最終更新日:2023.09.08)
FAS(ファイナンシャル・アドバイザリー・サービス)とは、「企業に対して財務に関するアドバイスやサポートサービスを提供する会社」のことです。また、FASが行う業務自体を指す場合もあります。
FASの代表的な仕事は、M&Aのアドバイス・サポート業務です。そのほかに、企業再生支援や財務不正防止体制の構築、経営戦略の立案支援など、企業を財務の視点から全面的にサポートします。
FASの主な仕事(業務)内容は、以下の6つです。
これらの業務について、以下で詳しく解説します。
M&A業務では、企業の合併や買収を財務の視点から全体的にサポートします。具体的な業務内容は以下のとおりです。
ただし、請け負う案件によって業務内容は異なり、M&Aの業務全体をサポートする場合と一部の業務のみを担当する場合があります。
また、FASに依頼する企業はM&Aの買い手だけとは限りません。M&Aの売り手企業から依頼されることもあります。
PMI(Post Merger Integration)とは、M&A後の統合プロセスのことです。M&Aは、複数企業の買収・合併だけで終わりではありません。経営理念や業務の流れなどが異なる複数企業が一つにまとまり、事業を円滑に進められるようになってはじめて成功となります。
その意味で、PMIはM&Aの成功を左右する重要な業務といえます。統合プロセスは、大きく3種類に分けられます。
統合プロセス | 取り組む内容 |
---|---|
経営統合 | 経営理念、経営戦略、人事評価制度、予算管理など |
業務統合 | 業務の流れ、情報システム、人事、拠点配置など |
意識統合 | 社風、文化など |
PMIでは、どの企業の制度やシステム、考えを重視するのかなど、分析力や提案力が必要になります。
従業員間のトラブルや企業の信用低下につながらないよう、M&Aの成約前から準備することが一般的です。
デューデリジェンスとは、M&Aを行う前に対象企業の価値やリスクなどを調査することです。財務内容や事業計画、資産などから買収価格が適正なのか、思わぬ負債を抱えていないかなどを調査します。
デューデリジェンスが正しく行われないまま大きなリスクを抱える企業を買収してしまうと、買収後に買い手企業の経営状況が悪化する可能性も考えられます。そのため、デューデリジェンスは慎重かつ詳細に行う必要があります。
バリュエーションとは、M&Aにおいて買収対象企業の価値を正しく評価することです。価格交渉を優位な立場で進め、不当な金額で買わされるリスクを減らす効果があります。
具体的な評価方法は、以下の3つです。
評価方法 | 詳細 |
---|---|
インカムアプローチ | 将来見込まれる利益や、キャッシュフローに注目して評価する方法 |
マーケットアプローチ | 株式市場の取引価格を直接的、または間接的に参照して評価する方法 |
コストアプローチ | 財務諸表の純資産をもとに企業価値を評価する方法 |
バリュエーションの評価内容をもとに算出した価格は、あくまで価格交渉のための参考値です。価格交渉の結果、あらかじめ算出した価格からかけ離れた数値になることもあります。
フォレンジックとは、企業の不祥事や不正に関する予防や対処のことです。具体的な業務として、不正があった場合の調査・報告や不正防止のマニュアル作成、不正防止体制の構築が挙げられます。
財務業務に対するサポートだけでなく、不祥事や不正が起きない仕組み作りもFASの重要な業務の一つです。
企業は日本のグローバル化、デジタル化をキャッチアップしてビジネスをさらに発展させなければなりません。FASは、財務の専門性を活かして企業再生支援やマネジメント、M&Aなど、経営戦略やビジネスの高度化につながるサポートも行います。
「ビジネスの発展」という先を見据えたサポートができる点は、FASの大きな強みです。
FAS業務は財務諸表や会計資料を多く扱う仕事であるため、財務系の知識と経験が求められます。監査法人や金融業界、M&A業務や財務部門などの勤務経験を通じてそれらのスキルを身につけておきましょう。
業務をするために必須となる資格はありませんが、財務系の知識を持っているとアピールできる「公認会計士」や「日商簿記検定2級」以上は、取得しておいて損はないでしょう。
また、近年はグローバルに事業を展開する企業も増えてきています。英語を身に着けておけば、英語の資料や会話が必要な場面で重宝されます。
FASに関連する会社は、大きく「Big4系」と「Big4系以外」に分けられます。
Big4系とは、グループ会社を含めた最大手会計ファーム4社をまとめた総称です。Big4系のFASは、以下を指します。
Big4系のFASは、大手ならではの豊富な知見やノウハウを活かし、高度なサービスを幅広く提供しています。多国籍企業や上場企業など、年間売上げが大きなクライアントに向けたサービスを提供できることが特徴です。
もともと監査法人内の一部門としてサービスを提供していました。しかし、アメリカの大手エネルギー会社「エンロン社(Enron Corporation)」の不正発覚・破綻をきっかけに、監査業務の独立性が求められ、監査業務とコンサルティング業務を切り離し分社化、FAS専門企業として法人化してきた経緯があります。
Big4系以外のFASには、税理士法人を親とするFASや独立系FASがあります。具体的な会社を一部紹介します。
Big4系以外のFASは、主に中小企業やベンチャー企業向けのサービスを提供しています。なかにはM&A特化型、企業再生特化型など、特定のサービスに特化した会社もあります。
Big4系のFASに比べて部門が細分化されていないことが多く、短期間で幅広い業務を経験できることが特徴です。少数精鋭体制で一人あたりの利益率が高い会社では、高年収にも期待できるでしょう。
なお、株式会社AGSコンサルティングも2023年4月にFAS業務に特化した専門ファーム「株式会社AGS FAS」を設立しました。
FAは「ファイナンシャル・アドバイザー」の略であり、財務全般のアドバイザーのことをいいます。
FASが企業に対して財務に関するアドバイスやサポートサービスを提供する会社を指すのに対して、FAはFAS業務を行う個人を指します。
「M&Aコンサルタント」や「M&Aアドバイザリー」もFASと似た言葉です。
M&Aコンサルタントは、「M&Aに関する一連の流れを支援する業務や人」を指し、M&Aアドバイザリーは「M&Aコンサルタントのサービス自体」を指します。
財務全般のアドバイスやサポートサービスを提供するFASは、M&Aアドバイザリーを含めた企業再生支援や財務不正防止体制の構築など、M&A以外の幅広い財務業務にも対応しています。
FAS業務はM&Aや企業再生支援など幅広い業務が身につくため、財務全般のプロになれます。経営者を相手に仕事をすることも多く、自身を大きく成長させてくれる仕事だといえるでしょう。
また、FAS業務は企業と従業員の未来に大きな影響を与えることになります。FAS業務成功の喜びと、クライアントから直接感謝される喜びは、大きなやりがいです。
クライアントに頼られる環境は、仕事に対するやる気にもつながります。
FASは、企業に対して財務に関するアドバイスやサポートサービスを提供するコンサルティングファームです。主な業務内容には、M&Aや企業再生支援、財務不正防止体制の構築などが挙げられます。
FAS業務を遂行するには、財務系の知識と経験が必須です。経理など、財務関連の部署で経験を積むとよいでしょう。
また、必須ではありませんが、FAS業界で働くときに有利な公認会計士や日商簿記検定2級以上の資格取得をおすすめします。