株式会社と合同会社の違いについて解説します。それぞれの特徴や違いの詳細、メリット・デメリット、場合に応じてどちらがおすすめかと行った部分も紹介しています。株式会社と合同会社の違いや特徴について調べている方は参考にしてください。
目次
- 株式会社と合同会社の主な違い
- 会社の所有者と経営者の関係性
- 会社の代表者
- 意思決定の方法
- 役員の任期
- 定款の認証の有無
- 監査役の人数
- 資金調達の方法
- 株式上場
- 決算公告の義務
- 利益配分の方法
- 株式会社を設立するメリット・デメリット
- メリット
- デメリット
- 合同会社を設立するメリット・デメリット
- メリット
- デメリット
- 株式会社と合同会社はどちらがおすすめ?
- 株式会社が適している場合
- 合同会社が適している場合
- まとめ
株式会社と合同会社の主な違い
「株式会社」と「合同会社」は、両者とも法人という形態ですが、様々な点で違いがあります。
ここでは、株式会社と合同会社の違いについて解説します。
会社の所有者と経営者の関係性
株式会社は、所有と経営の分離がされているのが特徴です。会社の所有者である「株主」と会社の経営を行う「経営者」が分かれていて、会社の経営者は株主総会で決定されます。
なお、小規模の会社では、創業者が出資者兼経営者となっているケースもあります。
一方、合同会社は「出資者」と「経営者」が同一になります。出資したすべての社員に経営の決定権が与えられます。
会社の代表者
会社の代表者の呼称にも違いがあります。株式会社の代表者は「代表取締役」です。株主総会および取締役会によって選任されます。
一方、合同会社の代表者は「代表社員」と呼ばれます。定款で代表社員を定めます。
意思決定の方法
株式会社では、重要な意思決定を「株主総会」で行うことが会社法で定められています。会社の組織・事業に関する重要事項や、役員選定といった重要事項は、株主総会決議によって決定されます。
一方、合同会社では、特に定款に定めのない限り「社員の過半数(多数決)」で意思決定が行われます。定款で社員総会の設置を定めて意思決定を行うことも可能です。
役員の任期
株式会社では、取締役の任期は2年、監査役の任期は4年と定められています。定款や株主総会決議によって任期を短くすることも可能です。株式譲渡に制限のある非公開企業では、定款によって役員の任期を最大10年まで伸ばすことも可能です。
一方、合同会社では取締役や監査役といった役職を設置しないため、基本的に役員という概念はありません。定款によって代表社員の任期を定めることは可能です。
定款の認証の有無
株主会社は、定款を作成したら公証役場で認証を受けなければなりません。公証役場での認証は会社設立時の1度のみで、定款を変更しても認証を受ける必要はありません。
一方、合同会社は公証役場で定款の認証を受ける必要はありません。
監査役の人数
株式会社の中でも、「監査役設置会社」にあたる会社では、監査役を3名置かなければなりません。監査役設置会社にあたるのは、取締役会を設置している会社と、資本金5億円以上または負債200億円以上の大会社です。
なお、株式譲渡制限のある非公開会社では、取締役会を設置しない場合や会計参与がいる場合には監査役の設置義務はありません。
合同会社では、監査役の設置は義務付けられていません。
資金調達の方法
株式会社と合同会社の大きな違いのひとつに、資金調達の方法があります。株式会社の場合、株式を発行することで多数の出資者から資金を募るため、大規模な資金調達が可能です。
一方、合同会社では株式による資金調達ができないため、金融機関からの借入や、社債の発行といった限定された資金調達方法に頼る必要があります。
株式上場
株式会社の場合、株式を上場することで、さらに多くの資金調達が可能です。
一方、合同会社は株式を発行できないため、株式の上場もできません。
決算公告の義務
株式会社は、定時株主総会終結後、遅滞なく決算書類を公告しなければなりません。これは非上場会社であっても同様です。
一方で合同会社には決算公告の義務はありません。
利益配分の方法
株式会社は、会社の利益を配当という形で出資者である株主に還元します。出資比率に応じて利益配分の金額が決定され、出資額が多いほどより多くの利益が配分されます。
一方、合同会社では利益配分の方法に定めはありません。出資比率に関わらず、定款で利益配分の方法が定められます。
株式会社を設立するメリット・デメリット
株式会社は資金調達がしやすく、知名度や信用度も高いというメリットがあります。
一方、設立・維持コストや意思決定のスピード、利益配分の自由度という点は、デメリットといえるかもしれません。
ここでは、株式会社を設立するメリット・デメリットについて解説します。
メリット
株式会社を設立するメリットとして、資金調達のしやすさや信用度の高さが挙げられます。
株式を発行して資金調達が可能
株式会社は、株式を発行することで幅広い投資家から出資を募るため、他の資金調達方法よりも多くの金額が調達可能です。事業拡大の際には多額の資金が必要になりますが、株式発行による資金調達で、事業に様々な可能性が生まれます。
株式発行による資金調達は、金融機関からの借入金と違って出資金の返済が不要です。自己資本比率が上がることで、財務体質の強化にもつながります。
合同会社よりも知名度・信用度が高い
会社には、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」といった形態がありますが、株式会社という言葉は広く一般に知れ渡っており、日常的に耳にする機会も多いため他の会社形態に比べて知名度が高く、ネガティブなイメージも少ないといえます。
合同会社に比べて会社法などの規制が強いことも、株式会社の信用度の高さに繋がっています。人材募集をする際や金融機関から融資を受ける際、株式会社の信用度によって事が有利に働く可能性があります。
デメリット
株式会社設立のデメリットとしては、設立時の費用負担が大きいことや利益配分の自由度が低いことが挙げられます。
設立や維持するための手間や費用負担が大きい
株式会社は、設立時に必要な手数料の負担が大きいといえます。
以下の表は会社設立時に必要となる手数料の比較です。株式会社設立に必要な手数料は、合同会社に比べて多額になることがわかります。
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
定款収入印紙代 | 40,000円 (電子定款では不要) | 40,000円 (電子定款では不要) |
定款謄本手数料 | 250円/1ページ | 0円 |
定款認証手数料 | 30,000円〜50,000円 (資本金に応じて) | 0円 |
登録免許税 | 150,000円 または 資本金 × 0.7% どちらか高い方 | 60,000円 または 資本金 × 0.7% どちらか高い方 |
また、株式会社は毎年決算公告を行わなければなりません。公告の媒体は、官報、日刊新聞、電子公告の3つがあり、媒体によって料金は変わります。
決算公告の義務がない合同会社には不要な費用が、株式会社では必要となります。
意思決定にやや時間がかかる
意思決定に時間がかかるのも、株式会社のデメリットといえます。株式会社で重要な意思決定をする際は、取締役会の承認と株主総会での決議が必要になります。会社の経営者と所有者両方が承認しなければなりません。
一方、合同会社は定款に定めた方法で迅速な意思決定が可能です。取締役会や株主総会の議決は必要ありません。
利益配分に自由度がない
株式会社には利益配分の自由度がないというデメリットもあります。
株式会社では出資比率に応じて利益配分の金額が決定されますが、株数が多い出資者ほど多くの利益が配分されるため、利益配分を調整できません。
合同会社を設立するメリット・デメリット
合同会社は、設立コストの小ささ、意思決定の速さ、利益配分の自由度の高さがメリットです。
一方、知名度・信用度や資金調達といった面では株式会社に劣ります。合同会社のメリットおよびデメリットについて紹介します。
メリット
合同会社のメリットとしては、設立コストの小ささや利益配分の自由度が高いことが挙げられます。
株式会社より設立コストが小さい
合同会社のメリットとして、会社の設立コストが小さいことが挙げられます。
上述した通り、会社を設立するためには様々な手数料がかかります。例えば、「定款の謄本手数料」と「認証手数料」は株式会社設立の際は必要ですが、合同会社の設立には不要です。
資本金の小さな会社の場合、株式会社に比べて登録免許税を低く抑えられるメリットがあります。
意思決定がスムーズ
合同会社は、スピーディーな意思決定ができることも大きなメリットです。
株式会社が重要な意思決定をするためには、取締役会の承認や株主総会での決議が必要なため、時間と手続きを要します。合同会社の場合は定款に定めた方法で意思決定ができるうえに、株式会社と異なり株主が存在しないため、第三者が意思決定に介入することもありません。
しかし、議決権割合は一人一議決権が原則のため、社員間で意見が対立してしまうと収拾がつかなくなる可能性があることには留意が必要です。
利益配分に自由度がある
利益配分の方法を会社が決められるのも、合同会社のメリットです。
合同会社では、利益配分を定款で定めることにより、独自の方法で分配が可能です。
利益配分の柔軟性と自由度は合同会社の大きなメリットといえます。
デメリット
合同会社のデメリットとしては、資金調達方法が限られることや信用度の低さが挙げられます。
株式会社よりも知名度・信用度は低い
合同会社は2006年に始まった新しい会社形態ということもあり、一般的には馴染みが薄く認知度は低いかもしれません。
法的な規制も株式会社に比べると厳しくないことが多いため、信用度という点でも株式会社より低いかもしれません。人材募集や、金融機関からの融資といった際には知名度や信用度が影響するケースもあります。
資金調達の手段が限られる
合同会社と株式会社との大きな違いが、資金調達手段の多様性です。
合同会社では、株式会社のように株式の発行による資金調達ができません。
合同会社の資金調達手段は、金融機関からの融資や社債の発行といった他人資本による資金調達か、政府などからの補助金や助成金に限られます。
株式会社と合同会社はどちらがおすすめ?
株式会社と合同会社のどちらがおすすめかは、会社を設立する目的や将来的な想定によって変わってきます。
両者のメリットとデメリットを理解したうえで、どちらが適しているかを正しく判断することが重要です。
株式会社が適している場合
株式会社の設立が適しているのは、以下のようなケースです。
- 多額の資金調達をしたい
- 将来的に株式上場を想定している
多額の資金調達が必要になることが想定される場合は、株式会社を選択しましょう。株式会社は、株式を発行することで幅広い投資家から出資を受けられます。金融機関からの融資など、他の資金調達方法と比べて調達できる金額が多いため、将来的に多額の資金が必要になる場合には株式会社を設立すべきでしょう。
また、将来的に株式上場を視野に入れている場合も、株式会社がおすすめです。株式上場をすることで、会社の株式を証券取引所で取引できるようになるため、非上場の会社より資金を集めやすいメリットがあります。
会社としての知名度や信用度も上がるため、こういったメリットを享受したい場合は、株式会社の設立を検討しましょう。
合同会社が適している場合
合同会社の設立が適しているのは、以下のようなケースです。
- 設立・維持コストを抑えたい
- 第三者に経営介入されたくない
- なるべく経営を簡素化したい
税負担の軽減目的や許認可のために法人格が必要といった理由で会社を設立する場合には、設立コストや維持コストを抑えられる合同会社がおすすめです。決算公告が不要なため、公告に伴う費用も発生しません。
株式会社は幅広い投資家から出資を受けることができる一方、投資家に経営介入されるリスクを伴います。合同会社は出資者が社員のため、第三者が経営に介入することはありません。経営の独立性を保ちたい場合は、合同会社の方が適しているといえます。
また、合同会社は株式会社で義務付けられている手続きなどがいらないメリットもあります。取締役会や株主総会を開く必要もなければ、決算公告をする必要もありません。日々の経営を簡素化したい場合にも、合同会社がおすすめです。
まとめ
「株式会社」と「合同会社」には、所有者と経営者の関係、設立時の手続きや費用、資金調達や利益配分の方法など、多くの面で違いがあります。
それぞれにメリットやデメリットがあるため、どちらの方が良い・悪いと一概にはいえません。会社の規模や事業内容によって、どちらを選択したほうが良いかは異なります。
会社を設立する際は、それぞれの特徴を把握したうえで適切な会社形態を選択しましょう。