EV/EBITDA倍率とは

EV/EBITDA倍率とは、その文言のとおり、EVをEBITDAで除した倍率になります。
PER倍率やPBR倍率等様々な指標がある中でもよく使われている指標です。
EVとは
EVとはEnterprise Valueの略称で、事業価値を表し、株式時価総額+純有利子負債(=有利子負債等-非事業資産)で求めることができます。
EBITDAとは
EBITDAとは、Earnings before Interest、Taxes、Depreciation & Amortizationの略称で、利払前、税引前、償却前の利益のことです。
簡易的には、営業利益に償却費を加算することで求めることができ、事業から得られる税引前のキャッシュフローに近い概念になります。
EV/EBITDA倍率で分かること
EBITDAは、単発的な特別損益の影響を受けず、また利率や資本構成の違い、税率の違い、償却制度の違いによる影響を受けないため、日本国内の他企業との比較のみならず、国際的に比較することが可能となります。
そのため、評価対象会社のEBITDAに類似企業のEV/EBITDA倍率を乗ずることにより、評価対象会社の事業価値を類推することができます。
企業価値評価におけるEV/EBITDA倍率のメリット・デメリット

他の評価方法にも当然言えることですが、EV/EBITDA倍率を使用するにもメリット・デメリットがあります。
企業がそのデメリットよりメリットが上回っていると判断した際に、EV/EBITDA倍率が指標として使用されることになります。
以下ではEV/EBITDA倍率を用いた場合のメリットとデメリットを解説します。
EV/EBITDA倍率のメリット
EV/EBITDA倍率を用いるメリットとして、グローバルに同業他社との比較ができる点が挙げられます。
EBITDAの説明でも述べましたが、利率、税率、償却制度は各国によって取扱いが異なりますし、同じ国内でも資本構成が違っていたり、定率法・定額法等の選択が異なります。経常利益や当期純利益に基づき評価した場合、純粋に海外を含めた同業他社と比較することは困難です。
そこでEBITDAを元にしたEV/EBITDA倍率を用いれば、制度間の影響を除外できるため、グローバルに企業価値を比較することが可能となります。
EV/EBITDA倍率のデメリット
一方でEV/EBITDA倍率にはデメリットもあります。
一つ目は、企業価値の評価対象企業や、比較対象となる同業他社のEBITDAがマイナスの場合がある点です。EBITDAは営業利益と減価償却費の合計であるため、営業利益が赤字(営業損失)の場合はEBITDAもマイナスとなる可能性があります。EBITDAがマイナスであればこれを計算の元とするEV/EBITDA倍率もマイナスとなり、企業価値評価の指標として不適切となります。
二つ目は、評価対象企業のキャッシュフロー状況を正確に表現できない場合がある点です。 EBITDAは事業から得られる税引前のキャッシュフローに近い概念であると前述しましたが、キャッシュフローそのものを正確に表現しているとは限りません。また、実務上は直近事業年度の実績EBITDAを用いたり、今期の着地予想のEBITDAを用いることが多いですが、例えばEBITDAが急減したり急増している場合には、いつ時点のEBITDAを使うのかということにも留意が必要です。
EV/EBITDA倍率を用いない企業価値評価方法
株価情報や類似企業の公表数値を使うマーケットアプローチの代表としての類似会社比較法(マルチプル法)ですが、この手法にはEV/EBITDA倍率法の他に、純資産からみたPBR(Price Book‐value Ratio)法、利益からみたPER(Price Earnings Ratio)法、EV/EBIT倍率法、PSR(Price Sales Ratio)法などの手法があります。
EV/EBITDA倍率の計算式

EV/EBITDA倍率を使用する意味やメリット・デメリットを述べてきました。
下記では、実際に使用する場合の計算方法を解説していきます。
EVとEBITDAとの割り算
EV/EBITDA倍率は下記の計算式で求められます。
「EV/EBITDA倍率=EV÷EBITDA」
EVの計算方法
EVは下記の計算式で求められます。
「EV=時価総額(株価×発行株式数)+有利子負債-非事業価値」
EBITDAの計算方法
EBITDAは下記の計算式で求められます。
「EBITDA=営業利益+減価償却費」
まとめ:目的に合わせて「EV/EBITDA倍率」を利用しましょう
企業価値評価の指標の一つとしてEV/EBITDA倍率について解説しましたが、いかがだったでしょうか。
EV/EBITDA倍率はあくまでマーケットアプローチの一手法であり、他にもたくさんの企業価値評価方法があります。
企業価値をどんな目的で用いるかによって、どの評価方法を選択するか検討する必要があることにご留意ください。