AGSの2人が語るM&Aの最前線。「コーポレートアクション」へと進化したM&A戦略と、統合への早期着手

AGSの2人が語るM&Aの最前線。「コーポレートアクション」へと進化したM&A戦略と、統合への早期着手

かつて日本企業において、M&Aは「会社の身売り」や「ハゲタカ」といったネガティブな文脈で語られることが少なくありませんでした。しかし2026年現在、その潮流は劇的な変化を遂げています。人口減少と内需縮小が確実視される現代において、M&Aは、非日常なイベントではなく、企業の生存と成長のために不可欠な「コーポレートアクション」へと進化しました。激動の時代において、経営者はどのような戦略を描くべきなのか。そして、M&Aを成功に導くための要諦とは何か。長年にわたり数多くのM&Aを支援し、今も最前線に立ち続けるAGSグループのM&Aサービスのリーダーである小林知之と坪井孝太に聞きました。

 

株式会社AGSコンサルティング 取締役 ビジネスコンサルティング部門担当 兼 ファイナンシャルアドバイザリー部門担当 小林 知之
株式会社AGS FAS 取締役 坪井 孝太

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「事業承継」から「成長戦略」へ。M&Aの民主化がもたらす新時代

「事業承継」から「成長戦略」へ。M&Aの民主化がもたらす新時代

話し手:株式会社AGSコンサルティング 取締役 ビジネスコンサルティング部門担当 兼 ファイナンシャルアドバイザリー部門担当 小林 知之

―― 日本企業を取り巻くM&Aの環境は、以前と比べて様変わりしたように感じます。現状をどう分析されていますか。

小林: 劇的な変化の只中にあると言っていいでしょう。中小企業のM&A市場は、約20年にわたる拡大期を経て、いま一つのピークに達していると分析しています。
かつてM&Aといえば、後継者不在による事業承継の解決策であったり、経営難に陥った際の窮余の一策であったりと、経営者にとっては「なるべく避けたいもの」という側面が強かったのが実情です。「会社を売る」という行為自体がタブー視された時代さえありました。
しかし現在、その意味合いは大きく変質しています。経営者同士の会話の中で、ごく当たり前に、事業戦略の一環としてM&Aが語られるようになりました。私たちはこれを「M&Aの民主化」と呼んでいますが、それほどまでに一般化したのです。

―― 「M&Aの民主化」が進んだ背景には、どのような要因があるのでしょうか。

小林: 経済状況や社会の変化といった、様々な要因が絡みあっています。注目すべきは、この波が、特定の業界に限らず広がりを見せているという点です。例えば、東証グロース市場における上場維持基準の厳格化を受け、出口戦略としてM&Aを選択するスタートアップ企業が増えています。また、上場企業におけるMBO(経営陣による買収)や、海外進出の手段としてのクロスボーダーM&Aなど、あらゆるフェーズの企業が動き出しているのです。
もはやM&Aは特殊なイベントではなく、経営者が自社の企業価値を向上させるために打つべき、一般的な「コーポレートアクション」の一つになったといえるでしょう。

―― M&Aを行うメリットは、特にどのようなところにあるとお考えですか。

小林: 厳しい現実ですが、人口が減少し、内需が縮小し続ける日本において、「オーガニック(自前)な成長」には限界があります。
ひと昔前であれば、良いモノを作りさえすれば売れる時代もありました。しかし今は違います。自前でゼロから新規事業を育て上げるには、あまりにも時間がかかりすぎる。変化のスピードが速い現代において、「時間を買い、市場を短期間で獲得する手段」としてM&Aを戦略の中核に据えることが、経営者にとって必然の決断になっているのです。

「事業承継」から「成長戦略」へ。M&Aの民主化がもたらす新時代

株式会社AGSコンサルティング 取締役 ビジネスコンサルティング部門担当 兼 ファイナンシャルアドバイザリー部門担当 小林 知之

―― そうした環境下で、これからのM&Aにはどのような姿勢が求められますか。

小林: 従来の中小・中堅企業のM&Aでは、仲介会社などから持ち込まれる案件を検討する「受け身」の姿勢が主流でした。「100%理想通りではないが、せっかく持ち込まれた案件だし、やってみようか」と判断するケースも多かったように思います。
しかし、真に成長戦略としてM&Aを位置づけるならば、そのアプローチ自体を変えなければなりません。より能動的に、「自社に足りないリソースは何か」「どのような技術があれば飛躍できるのか」ということを突き詰める。そして、成長のために必要なターゲット像を明確に固めた上で、その条件に合致する企業へ自ら声をかけていくのです。
ターゲットと戦略が明確であればあるほど、M&Aが生むシナジーは高まります。これからは、自らターゲットを探しに行く「仕掛けるM&A」こそが、競争優位の源泉になっていくでしょう。

―― 成長戦略の有無が企業の明暗を分ける時代において、リーダーはどう舵を切るべきでしょうか。

小林: 日本には、大企業予備軍ともいえる優秀な中堅企業が数多く存在します。私たちはこうした企業を「盤石な経営基盤を持つ実力企業」と評価していますが、一方で、事業規模が拡大しているにもかかわらず、大企業のような緻密な成長戦略を描ききれていないケースも散見されます。
現状維持を続けるだけでは、市場の変化に対応できずジリ貧に陥るリスクが高い。まさに「戦略なき会社に成長はない」ということです。そうならないためには、これまでの事業で培った資金と信用を、次の成長のために有効に使うべきです。自社の未来を創るための投資へ舵を切れるのは経営者だけですから、ぜひ「攻めの姿勢」で次のステージを目指していただきたいですね。

PMIの成否は「Day 1」以前に決まる。ミドルキャップ再編の波を乗り越えるM&A戦略

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話し手:株式会社AGS FAS 取締役 坪井 孝太

―― 理想の相手を見つけたとしても、実際にM&Aを実行し、成功させるのは容易ではありません。実務面での最大の課題は何でしょうか。

坪井: おっしゃる通り、能動的なアクションによって理想的な相手と巡り合ったとしても、それで成功が約束されるわけではありません。むしろ本当の勝負はそこから始まります。
M&Aの成功は「PMI(買収後の経営統合)」が決めるといっても過言ではありません。異なる文化や経営システムを持つ組織体を統合することは、どうしても予期せぬ反発や溝が生じるものです。いかに買収後のベストな統合の在り方を早期に検討できるのか。それがM&Aの成否に大きく関わってきます。

―― 「早期」というのは、具体的にどのタイミングを指すのでしょうか。

坪井: よく「PMIはDay 1(統合初日)から始めよう」と言われますが、私からすればそれでは遅すぎます。
基本合意したその日から、経営統合の在り方の検討も始めるべきであり、もっと言えば、買収可否判断や価値算定のための調査・分析、つまりデューデリジェンスの段階から、PMIの論点になりそうなポイントを確認しておくことが肝要です。
統合の検討が遅れたり、目線合わせが不十分だったりすると、それはそのまま企業価値の毀損につながるリスクになります。

―― デューデリジェンスの段階から統合後のプロセスを見据えるというのは、かなり早いですね。

坪井: はい。ですが、PMIの大きなイシューである「シナジー創出」に関しても、デューデリジェンスの段階で蓋然性の確認を行うことの重要性が増しています。「本当にこのシナジーは実現可能なのか」を数字と実態の両面から検証することは、残念ながら、できていない企業がまだ多いのが実情ではないでしょうか。
経営統合するにあたり、何をどこまで統合するのか、その難易度や実現可能性などをあらかじめ見極め、「統合方針案」として整理しておく。そして、最終契約合意した直後から対象会社側と統合方針の協議をスタートできれば、PMIの打ち手の自由度の幅は大きく広がります。結果的に、それらの周到な準備が生み出すシナジーを何倍にも増幅するのです。

―― 周到な準備の有無が、その後の展開を分けるわけですね。

坪井: その通りです。統合後は、矢継ぎ早に対応に追われる状況になります。その渦中において、目の前のタスク実施で精一杯になってしまうのか、それとも、あるべき統合に向けて着実に必要な手を打っていけるのか。その後の結果がどうなるかは、自明の理といえるのではないでしょうか。

PMIの成否は「Day 1」以前に決まる。ミドルキャップ再編の波を乗り越えるM&A戦略

株式会社AGS FAS 取締役 坪井 孝太

―― 最後に、今後のM&A市場の展望、特に注目すべきトレンドについて教えてください。

坪井: 「ミドルキャップ(中堅企業)の業界再編」が大きなテーマになると予感しています。
これまでは、大企業の事業ポートフォリオ見直しによる事業再構築や、中小企業における後継者不足に起因する事業承継がM&Aの中心でした。しかし2026年以降は、大企業と中小企業の間にあるミドルキャップの在り方がフォーカスされることが予想されます。
この層には、業績もそこそこ良く、財務状況も安定している堅実な企業が多い。しかし、超高齢化社会および人口減少の中においては、「良い会社」というだけでは単独での生き残りが難しくなってくるのです。そこでM&A戦略の重要性が、増してきます。

―― 堅実な企業であっても、再編の波は避けられないと。

坪井: そうですね。東証の上場維持基準の厳格化に加え、深刻な人材不足からくる人件費の圧迫、生成AIの進化などの要因も、この動きを後押しすることになるでしょう。
どうにもならなくなってから後追いで検討するのか、先んじて手を打っていくのか。この「早期検討・早期着手」ができるかどうかが、統合する側になるのか、統合される側にまわるのかの大きな分かれ道になります。変化を恐れず、自社の立ち位置を客観的に見極め、大胆な決断ができる企業こそが、この再編の時代を生き抜いていけるのだと思います。

戦略から統合までを一気通貫で。AGSが伴走する企業の「未来」

人口減少、内需縮小、そして急速な業界再編と、日本企業が直面する課題は複雑かつ待ったなしの状況です。今回、2人が語ったように、 M&Aはもはや「非日常のイベント」ではなく、企業の生存と飛躍のために、当たり前に検討し、実行する「日常的なコーポレートアクション」へと変わりました。

しかし、M&Aを成功に導くには、「自社に足りないピースは何か」を見極める戦略立案から、最適なパートナーの選定、そしてDay 1以前から始まる緻密な統合プロセスの設計まで、フェーズごとの高い専門性と、それらを繋ぐ一貫した視点が欠かせません。

AGSグループは、一気通貫なM&A支援を通して経営者の皆様の挑戦を強力にバックアップいたします。戦略なき成長を回避し、統合によるシナジーを最大化するために。私たちは、企業の未来を共に創るパートナーとして、現場の最前線で伴走し続けます。

AGSグループのM&Aサービスに関する詳細は、こちらからご覧いただけます。

監修者

  • 小林 知之

    株式会社AGSコンサルティング
    取締役 ビジネルコンサルティング部門担当 兼 ファイナンシャルアドバイザリー部門担当・税理士

    小林 知之

    上場企業から非上場中小企業まで、様々なM&A案件のアドバイザリー業務に携わる。

  • 坪井 孝太

    株式会社AGS FAS
    取締役・FAS部門長

    坪井 孝太

    日本長期信用銀行入行後、大手会計事務所BIG4系のコンサルティングファーム、FASファーム等を経て現在に至る。20年以上にわたり国内外のM&A及びコンサルティングのプロフェッショナルとして、クライアントに寄り添った支援を行っている。