公認会計士とはどんな職業なのかについて解説しています。主な仕事内容(独占業務)や税理士との違い、公認会計士になる方法や試験の受験資格、受験科目、難易度や将来性についても紹介しています。会計士という職業に興味がある方は参考にしてください。
目次
- 公認会計士とは
- 税理士との違い
- 公認会計士は税理士登録が可能
- 公認会計士の主な仕事内容
- 監査(独占業務)
- コンサルティング
- 企業のファイナンス職(財務・経理)
- 税務
- 公認会計士になるには「日本公認会計士協会」への名簿登録が必要
- 公認会計士試験に合格する
- 3年以上の実務経験を積む
- 公認会計士試験について
- 受験資格
- 短答式試験の日程と概要
- 論文式試験の日程と概要
- 公認会計士試験の難易度・合格率
- 公認会計士の将来性について
- まとめ
公認会計士とは
公認会計士は、監査や会計、経営に関する専門的知識を活かし、独立した立場において財務情報の信頼性を保証するスペシャリストです。
主に以下の業務の遂行を通して健全な経済社会の維持と発展に寄与することを使命としています。
- 企業が作成した財務諸表の監査
- 経営コンサルティング
公認会計士を略して「会計士」と呼ぶこともあります。
税理士との違い
税理士は税務に関する専門家として、独立した公正な立場において納税義務の適正な実現を図ることを使命としています。
公認会計士の独占業務が監査であるのに対し、税理士は税務を独占業務としています。公認会計士と税理士の独占業務は以下のとおりです。
職種 | 独占業務 |
---|---|
税理士 | ・税務代理(確定申告の代行、税務調査の立ち会い) ・税務書類の作成(各種申告書などの作成) ・税務相談(法人・個人の税務相談に応じる) |
公認会計士 | 監査業務(財務書類の監査、財務書類の内容を証明する) |
公認会計士は税理士登録が可能
公認会計士は税理士試験を受験することなく税理士登録が可能です。実務経験も必要ありません。
ただし、公認会計士であれば自動的に税理士登録ができるわけではありません。
税務業務を行うには、以下の手続きを踏む必要があります。
- 書類申請
- 面接
- 税理士証票交付式
また、税理士登録後は、1年以内に登録時研修を受けなければなりません。
公認会計士の主な仕事内容
公認会計士は、独占業務である監査業務のほかに、会計のスペシャリストとして企業コンサルタントや企業の経理担当者といった仕事も選べます。
また、税理士登録をして税務に携わる公認会計士もいます。
監査(独占業務)
監査業務には、法令等の規定によって義務付けられた「法定監査」と、それ以外の「任意監査」の2種類があります。
上場企業や大企業は、毎年公認会計士や監査法人による法定監査を受けなければなりません。法定監査は公認会計士や監査法人だけが行える独占業務です。独立した立場から企業等の財務諸表の記載内容が適切か精査し、監査意見を表明することで企業の財務情報の信頼性を担保します。
一方、中小企業は監査を受ける義務はありません。企業の判断で自主的に受ける監査を任意監査といいますが、こちらも公認会計士の独占業務になります。
コンサルティング
公認会計士として身につけた知識や豊富な経験は企業コンサルティングに活かせるため、コンサルタントとしても活躍できます。
コンサルティング会社に所属する場合もあれば、独立開業するケースもあります。コンサルティング業務では、監査・会計のスペシャリストとしての知識を活かし、経営全般にわたる相談・助言を行います。
AGSコンサルティングにも公認会計士資格を保有するコンサルタントが多数在籍しており、お客様の課題解決に日々精進しています。
企業のファイナンス職(財務・経理)
公認会計士はファイナンスに関する高い専門性を有しているため、企業の財務や経理担当者として活躍する場合も多くあります。
2022年11月に政府が「スタートアップ育成5か年計画」を発表したこともあり、公認会計士がCFO(最高財務責任者)として企業のファイナンス全般を担当するケースが増える可能性もあります。
コーポレート・ガバナンス(企業統治)の意識が高まるなか、監査役や会計参与として企業で活躍する選択肢もあります。
税務
公認会計士は税理士登録が可能なため、税務でのキャリアも選択肢のひとつです。
税理士登録することで、企業の税務申告の代理や税務書類の作成、税務相談といった税理士の独占業務を行えます。
会計・税務両方の道が開けているという意味で、公認会計士は業務の幅が広いといえます。
公認会計士になるには「日本公認会計士協会」への名簿登録が必要
公認会計士試験に合格するだけでは公認会計士登録はできません。
ここでは公認会計士として登録するためのプロセスを解説します。
公認会計士試験に合格する
公認会計士になるためには、公認会計士試験に合格することが前提条件です。合格率は10%前後とされており、難易度の高い試験といえます。
一次試験である短答式試験に合格したうえで、二次試験である論文式試験にも合格する必要があります。
3年以上の実務経験を積む
公認会計士登録するためには、公認会計士試験に合格するだけでなく「業務補助」または「実務従事」の実務経験が必要になります。
2023年(令和5年)4月1日の法律改正により、必要となる実務経験の期間が2年以上から3年以上へと変更されました。
業務補助
公認会計士登録のための実務経験として認定される業務補助とは、法人の監査証明業務において公認会計士または監査法人を補助することを指します。監査法人に就職して業務補助を行うことが一般的です。
3年以上の実務経験が必要ですが、試験合格前に行った業務補助も実務経験としてカウントされます。雇用形態については常勤、非常勤を問わず実務経験として加算できます。
実務補習
実務補習とは、公認会計士試験の合格者に対して公認会計士に必要な技能を修習させるものです。3年間の実務補習では、以下を学びます。
- 会計
- 監査
- 税務
- 経営
- IT
- 法規・職業倫理
講義の受講、考査の受験、研究報告書の提出を行い、所定の単位を取得することで、後述する修了考査の受験資格が与えられます。
講義は平日の夜間と土日に行われており、週に1、2回のペースで参加する必要があります。
修了考査
実務補習の講義、考査、課題研究を修了し、単位を取得したあとに受験するのが修了考査です。修了考査は実務補習の卒業試験のような位置付けであり、合格することが公認会計士登録の要件となります。
修了考査では、実務補習で学習した6技能の試験が2日間にわたって実施されます。
修了考査の合格率は60%程度で、実務補習を修了すれば必ず合格できるという試験ではないため業務補助と並行して試験対策を行う必要があります。
出典:日本公認会計士協会「令和3年度(2021年度)終了考査の合格発表について」
公認会計士試験について
公認会計士試験には短答式試験と論文式試験の2つがあります。
公認会計士試験では、論文式試験に科目合格制度が設けられており、合格した科目に関しては2年間の免除が受けられます。
短答式試験、論文式試験の2つの試験のうち、論文式試験の一部を除けば科目の選択ができないのも税理士試験との違いです。
出典:日本公認会計士協会「令和6年(2024年)試験について」
受験資格
一定の受験資格を満たす必要のある税理士とは異なり、公認会計士試験には受験資格の制限はありません。
年齢や学歴、国籍等にかかわらず誰でも受験できます。
短答式試験の日程と概要
短答式試験は一次試験の位置付けで、毎年5月と12月の2回実施されます。
令和7年(2025年)試験の短答式試験日程は以下のとおりです。
種類 | 試験日程 | 合格発表 | インターネット出願期間 |
---|---|---|---|
第Ⅰ回 | 2024年(令和6年) 12月8日(日) | 2025年(令和7年) 1月17日(金) | 2024年8月23日(金)〜9月12日(木) |
第Ⅱ回 | 2025年 5月25日(日) | 2025年(令和7年) 6月20日(金) | 2025年2月3日(月)〜2月25日(火) |
出展:公認会計士・監査審査会「令和7年公認会計士試験の施行及び実施日程について」
短答式試験はマークシート方式による択一式であり、試験内容は以下の4科目です。
科目 | 概要 |
---|---|
財務会計論 | 簿記と財務諸表論に分かれており、簿記では帳簿の計算や作成方法が出題され、財務諸表論では簿記で学んだ計算方法などの背景や理論が問われます。 |
管理会計論 | 製品原価を求める原価計算と、経営指針の決定方法などを問う管理会計を出題範囲とする科目です。 |
監査論 | 監査の理論や実務、関連制度といった法定監査を実施するための知識が問われます。 |
企業法 | 会社法や商法、金融商品取引法などの企業に関連する法律から出題されます。 |
科目合格制度はありませんが、試験合格者はその後2年間は短答式試験が免除されます。
公認会計士試験には「短答式試験」と「論文式試験」がありますが、短答式試験に合格しなければ論文式試験を受験できません。
なお、一度短答式試験に合格すると以後2年間は受験が免除され、論文式試験から受験することが可能です。
論文式試験の日程と概要
一次試験である短答式試験に合格すると、二次試験である論文式試験に進みます。マークシート形式の短答式試験と違い、論文式試験では論述形式での解答が求められます。
短答式試験は年2回の実施ですが、論文式試験は年1回のみで毎年8月に実施されます。
令和7年(2025年)試験の論文式試験日程は以下のとおりです。
試験日程 | 合格発表 |
---|---|
2025年8月22日(金)〜24日(日) | 2025年11月21日(金) |
出展:公認会計士・監査審査会「令和7年公認会計士試験の施行及び実施日程について」
論文式試験は、必須科目4科目と選択科目1科目の計5科目からなります。
必須科目(すべて受験が必要)
科目 | 概要 |
---|---|
会計学 | 短答式試験では財務会計論と管理会計論に分かれていたものが、論文式試験では「会計学」というひとつの試験科目として出題されます。 |
監査論 | 法定監査を実施するための知識が問われ、監査の理論や実務、関連制度について論文形式で出題されます。 |
租税法 | 対象となる法律は法人税法、所得税法、消費税法の3つで、計算問題と論述問題が出題されます。 |
企業法 | 短答式試験と同様に会社法や商法、金融商品取引法などの企業に関連する法律から出題されますが、論文式試験ではほとんどが会社法からの出題になります。 |
選択科目(以下の4科目から1科目を選択)
科目 | 概要 |
---|---|
経営学 | 企業と企業経営について問われる科目で、分散や期待値などの計算問題や経営知識を問う問題が多く出されます。必要な学習量の少なさから、受験生の多くがこの経営学を選択します |
経済学 | 経済理論のうち、マクロ経済学では世界や国などの広範囲な経済活動の原理から出題され、ミクロ経済学では企業や消費者などの個々の行動原理についての知識が問われます。 |
民法 | 主に財産権に関する問題が出されます。数学的要素がないので、数学が苦手な方に適した科目です。 |
統計学 | 記述統計や推測統計の理論、確率、金融工学の基礎的理論からの出題です。 |
論文式試験を受験するためには短答式試験に合格する必要がありますが、短答式試験合格後2年以内に論文式試験に合格できなかった場合は、再び短答式試験から受験する必要があります。
公認会計士試験の難易度・合格率
会計資格の最高峰である公認会計士試験は難易度が非常に高く、過去の合格率を見ても、2021年が9.6%、2022年が7.7%、2023年が7.6%という低さで、狭き門であることがわかります。
合格までに必要な勉強時間は、一般的に3,000〜4,000時間が目安とされています。
出典:金融庁「令和5年公認会計士試験の合格発表の概要について」
公認会計士の将来性について
近年、会計ソフトやAIの機能向上によって公認会計士の仕事が奪われるのではないかと懸念する声が広まっています。書類の処理や取引データの仕訳、それらのデータ分析などは、AIが取って代わる可能性は大いに考えられるでしょう。
しかし、データ処理は公認会計士の仕事の一部にすぎません。公認会計士として活躍するには、クライアントとの信頼関係の構築といったコミュニケーションスキルが必要不可欠です。クライアントとの細かなコミュニケーションや専門知識を活かしたコンサルティングは、現在のAIでは難しい領域といえます。
公認会計士は、独占業務である監査以外にも企業のファイナンス職や監査知識を活かしたコンサルティングなど幅広い分野で活躍できます。 書類の処理やデータ分析をAIに任せ、公認会計士はAIが処理したデータを利用してクライアントに提案をするなど、AIを活用することで、今までよりも効率良く質の高い仕事ができるでしょう。
AIに仕事を奪われるのではなく、AIを有効活用することでむしろ仕事の幅を広げられる可能性があります。
まとめ
公認会計士の業務範囲は、独占業務である監査からコンサルティング、企業内ファイナンス職など多岐にわたり、活躍の場が広いのが特徴です。
公認会計士として登録するには公認会計士試験に合格するだけでなく、3年間の実務経験や実務補習、修了考査の受験といったプロセスが必要になります。
AIの出現によって公認会計士の将来性を危惧する声もありますが、AIを有効活用することによってむしろ公認会計士としての仕事の幅を広げるチャンスになるでしょう。