税理士と会計士の違いについて様々な観点から解説します。仕事内容(独占業務)やクライアントの違い、試験制度や受験資格、難易度・資格登録の違いについても紹介しています。税理士と会計士にどのような違いがあるか調べている方は参考にしてください。
2023.09.20(最終更新日:2023.10.23)
税理士と会計士の違いについて様々な観点から解説します。仕事内容(独占業務)やクライアントの違い、試験制度や受験資格、難易度・資格登録の違いについても紹介しています。税理士と会計士にどのような違いがあるか調べている方は参考にしてください。
2023.09.20(最終更新日:2023.10.23)
税理士と会計士には、それぞれ法律で定められた「独占業務」が存在します。
独占業務とは、特定の資格を持った人しか従事できない仕事のことです。税理士は税理士法、会計士は公認会計士法によって独占業務が定められています。
ここでは、税理士と会計士それぞれの独占業務について解説します。
税理士は、「税の専門家」として以下の独占業務を行うことができます。
税理士が行える独占業務の一つとして、クライアントの税務に関する業務を代理する仕事が挙げられます。そもそも「税務」とは、税務署に税金を申告して納めることや、税務署から調査・処分が来た際に主張や陳述を行うことが該当します。
税務に関する書類である「確定申告書」や「相続税申告書」、「青色申告承認申請書」などの作成も、税理士が行える業務です。代理で作成した書類を税理士が企業に代わって税務署に提出することもできます。
また、所得税額・法人税額を計算することや税負担を軽減するためのアドバイス、税務調査の相談・立ち合いなども、税理士のみが行えます。これらの独占業務を税理士資格がない状態で行った場合は、有償・無償に関わらず税理士法に触れることになり、2年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることがあります。
会計士は、「財務諸表監査」の専門家として主に以下の業務を行うことができます。
財務諸表とは、損益計算書や貸借対照表など企業の財務状況を示す書類のことです。会計士は、企業が作成した財務諸表に誤りや不正がないかをチェックする「監査」が主な業務となります。
監査には、企業から独立した立場の会計士によって実施される「外部監査」と、企業内部で自主的に実施する「内部監査」があります。
また、財務諸表が適正に作成されていることが確認できた場合、その書類が信頼できることを外部に証明する役割も担っています。
なお、会計士は第三者の立場で監査を行わなければなりません。客観的な観点から財務諸表の信頼性を保証することによって、銀行や投資家は安心して企業と取引ができます。
「会計士」と「税理士」の仕事には内容の違いがありますが、公認会計士資格を有する人は、税理士試験に合格しなくても税理士登録が可能となっています。
これは、会計士の試験範囲に税理士として業務に従事する際に必要な税務の知識が含まれているためです。
ただし、税理士登録には約20万円ほど費用がかかるほか、毎年10万円以上の年会費が発生する点は留意しておきましょう。
税理士と会計士は仕事内容が異なるため、取引するクライアントも異なり、関係性や距離感も変わってきます。
ここでは、税理士と会計士のクライアントの特徴について解説します。
税理士は、基本的に税務代理や税に関する相談を通じてクライアントに寄り添い、パートナーのような距離感で経営をサポートします。
法人税や消費税を申告し納税する義務はどの企業にもあるため、税理士のクライアントは中小企業から上場企業までさまざまな規模となります。企業だけでなく、所得税や相続税の案件で個人や個人事業主がクライアントになるケースもあります。
そのため、税理士のクライアント対象数は、会計士と比べると多くなる傾向にあります。
会計士の仕事は、第三者の立場でクライアントの財務諸表を監査することです。クライアントに寄り添うパートナーというよりは、俯瞰的な立場でクライアントと向き合うことが多くなります。
また、会計士のメイン業務である「財務諸表監査」が義務付けられているのは、大企業や上場企業のみです。そのため、クライアントは必然的に大企業や上場企業が中心となります。
個人や中小企業がクライアントになることはほとんどなく、税理士に比べるとクライアント対象数は少ない傾向にあります。
税理士と会計士では、試験制度や受験資格も大きく異なります。
税理士と会計士の試験制度は大きく異なります。よく例えられる表現として税理士試験は「長距離走」、会計士試験は「短距離走」といわれています。
ここでは、税理士と会計士の試験制度の違いについて解説します。
税理士になるには、「簿記論」と「財務諸表論」の2科目と、定められた試験科目の中から選択した3科目に合格しなければなりません。ただし、5科目すべてを一度に受験し合格する必要はなく、好きなものから1科目ずつ選んで受験することが可能です。
また、合格した科目は生涯有効であるため、一つの科目が一度不合格になっても振り出しに戻ることはありません。仕事や育児と両立しながら自分のペースで学習を進めていきたい人には、税理士試験が向いているといえるでしょう。
なお、以下の中から3科目を選択する必要がありますが、「所得税法」か「法人税法」のどちらかは必ず選択しなければなりません。
税理士試験には、大学院で会計または税法に関する科目を一定の単位を取得し、修士論文が認められることで、科目免除を受けられる制度があります。
会計であれば1科目、税法であれば2科目が免除されます。
会計士になるにはマークシート型の短答式試験と、論述型の論文式試験の2つに合格する必要があります。
しかし、会計士試験は税理士試験と異なり、1科目ずつ試験を受けることはできません。複数の科目を一度に受験・学習しないといけないため、学生など一定期間に多くの学習量を確保できる人に向いている試験といえるでしょう。
短答式試験は12月と5月の年2回で開催されており、下記の4科目が出題されます。
短答式試験に合格したら、8月に実施される論文式試験を受験できます。論文式試験は下記の5科目です。
なお、短答式試験は合格後2年間のみ有効です。それまでに論文式試験に合格できなかった場合は、また短答式試験から受験しなおさなければなりません。
会計士試験には受験資格がなく、誰でも受験できます。
一方で、税理士試験は受験資格を満たさないと受験することができません。税理士試験の受験資格は、以下の通りです。これらのうちいずれか一つでも満たしていれば、受験が認められます。
なお、2023年度の試験より簿記論と財務諸表論の2科目に関しては、上で挙げた条件を満たさなくても受験が可能となりました。
税理士と会計士の試験制度や受験資格には違いがありますが、いずれも難関資格と呼ばれるほど合格が難しく、長期間の勉強が前提となります。合格までに必要な勉強時間は、一般的に税理士も会計士も共に3,000~4,000時間程度といわれています。
税理士試験は働きながら受験する社会人も多いことから、合格までに5年以上かかるケースもあります。一方、会計士試験は学生など勉強に専念できる環境の受験者が多いため、合格までの一般的な期間は2年程度となっています。
税理士試験や会計士試験に合格しても、すぐに「税理士」「会計士」と名乗れるわけではありません。
それぞれ条件を満たした上で、資格登録をする必要があります。税理士と会計士の資格登録と条件について解説します。
税理士試験に合格した人は、日本税理士会連合会の税理士名簿に登録を受けることによって税理士と認められます。ただし、登録を受けるには会計や税に関わる実務経験が2年以上必要です。
試験に合格する前の実務経験も要件として認められるため、税理士事務所で実務を学びながら試験を受け合格を目指すのが税理士になるための最短ルートといえるでしょう。
会計士試験に合格した人は、日本公認会計士協会の名簿に資格登録されることで会計士と名乗ることができます。
ただし、以下の3つの要件をすべて満たさなければ資格登録はできません。
会計士になるまでの流れとしては、監査法人で業務補助を行いながら実務補習の単位を取得した後、3年後に修了考査を受けて合格するというのが一般的です。
なお、実務補習とは、会計士になるために受けなければならない実務研修のことです。講義は平日夜間と土日に開催されており、頻度は週1回から2回程度となっています。必要単位の取得条件には、出席の有無やテストの結果、レポートの内容などがあります。
税理士と会計士はいずれも会計の専門家ではあるものの、専門とする仕事内容やクライアントの特徴が異なるほか、試験制度や資格登録の条件に違いがあります。
会計士資格を有する人は試験免除で税理士になれますが、「会計士が税理士より上位の資格」というわけではありません。いずれも難易度の高い国家資格であるため、どちらを選択しても自身のキャリアアップになるでしょう。
どちらを目指すのか悩んでいる人は、資格の取りやすさなどの理由で選ぶのではなく、「将来自分がどんな働き方をしたいか」や「どうやって世の中に貢献したいか」を考慮して選択することをおすすめします。