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追徴課税とは?加算税の計算方法や税率、対象期間や注意点を解説

追徴課税とは?加算税の計算方法や税率、対象期間や注意点を解説

税金を納税する際に理解しておきたい「追徴課税」について解説しています。延滞税や加算税といった附帯税の概要、4つの加算税とその税率、追徴の対象となる要因や期間、追徴課税が発生してしまった際の注意点なども紹介しています。追徴課税について調べている方は参考にしてください。

追徴課税とは

追徴課税とは

追徴課税とは、本来支払うべき税額よりも納付額が少なかった場合や、納税期限内に税金を納めなかった場合に追加で課せられる税金を指します。また、実際に納めた税金と、本来納めるべきだった税金との差額に加え、「延滞税」や「加算税」といった附帯税が課される場合があります。

 

追徴課税の対象者は法人だけでなく、個人の方も該当します。

 

加算税とは、申告内容に不備があったり申告の期限を超過したりした場合に課される附帯税です。

 

延滞税とは納期限からの超過日数に応じて課される利息に相当する附帯税です。

 

延滞税の概要と計算式

延滞税は、定められた期限までに納める必要のある税金を納付していなかった場合に課税されます。申告後に申告内容について間違いが発覚し、納めるべき税額が足りていないと判明した場合にも延滞税がかかります。

 

延滞税の計算は以下のとおりです。

 

〔本来納税すべき額(10,000円未満の端数切捨て)×延滞税の割合×滞納日数〕÷365(日)

 

延滞税の税率は完納するまでの期間により異なります。納期限の翌日から2ヵ月以内に完納した場合は年率「7.3%」または「延滞税特例基準割合+ 1%」のいずれか低い方が適用されます。

 

納期限の翌日から2ヵ月を超えて納付した場合、その超えた日数には年率「14.6%」または「延滞税特例基準割合+ 7.3%」のいずれか低い方が適用されます。

 

延滞税特例基準割合とは、前年に財務大臣が告知する割合に、1%の割合を加算したものです。

 

出典:国税庁「No.9205 延滞税について」

 

加算税の概要

加算税とは、申告が適正にされない場合や、源泉徴収義務を果たさなかった場合等にペナルティとしてかかる税金です。

 

適正に申告等がされなかったその内容や、その悪質さによって税率などが異なります。詳細は財務省のホームページをご覧ください。

 

出典:財務省「加算税の概要」

 

追徴課税の4つの加算税と税率

追徴課税の4つの加算税と税率

加算税は、無申告加算税、過少申告加算や、不納付加算税、重加算税の大きく4つに分けられます。それぞれの概要を解説します。

 

出典:国税庁「No.2026 確定申告を間違えたとき」

 

無申告加算税

無申告加算税は期限内に申告せず、さらに納付すべき税金があることがわかった場合に課税されます。ただし、過去5年間に無申告加算税または重加算税が課税されたことがなく、かつ申告期限から1ヵ月以内に自主的に申告及び全額納付を行っている場合は、課税されません。

 

確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日までで、開始日と期限日が土日祝日にあたる場合は、その翌日(休み明けの平日)に振り替えられます。法人の場合、決算日の翌日から2か月以内が申告期限になっており、期限日が土日祝日にあたる場合は、休み明けの平日が期限となります。

 

ほかにも相続税や贈与税の申告が遅れた場合は、期限後申告とみなされます。相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10ヵ月以内、贈与税の申告期限は、もらった年の翌年の2月1日から3月15日までになっています。

 

確定申告が行われなかった場合、税務署が会計帳簿や銀行口座の入出金などを調査し、無申告を指摘される可能性があります。

 

ペナルティとして課税される税額は、納付すべき税額の50万円までは15%、50万円を超える部分については20%になります。(令和6年1月1日以後に法定納期限が到来するものは、300万円を超える部分については30%になります。)なお、税務署から無申告を指摘される前に、自主的に納付した場合は5%に軽減されます。

 

過少申告加算税

過少申告加算税は、期限内に申告を済ませたものの申告額が少なかったために修正申告や更正があり、追加本税が発生した場合に課税されます。あくまで税額の計算間違いや、見解の違いがあった場合に課せられるものです。

 

ペナルティとして追加本税の10%がかかります。期限内に申告した金額と50万円のどちらか多い方の金額を超える部分については15%の課税ですが、自主的な修正申告をすれば課税されないことがあります。

 

不納付加算税

不納付加算税は、源泉徴収した所得税を納付期限内に納めなかった場合に課せられるペナルティです。

 

雇用主には、従業員に給与を支払う際に源泉徴収を行う義務があり、給与支給日の翌月10日までに税務署へ支払わなければなりません。従業員10名未満の小規模な事業所では、半年分をまとめて納付することもできます。その場合、1月から6月までの分を7月10日までに、7月から12月までの分を1月10日までに納付する必要があります。

 

ペナルティとして、納付すべき源泉徴収した所得税の10%が課税されますが、税務署から指摘される前に自主的に源泉徴収額を納付した場合は5%に軽減されます。

 

税務調査後に源泉所得税を支払った場合の課税割合は10%です。税務署から納付確認があった段階や、税務調査の日程連絡があった際、速やかに納付すれば課税割合を5%に抑えられる場合があります。

 

重加算税

重加算税は加算税が課税される場合で、事実の隠ぺいや仮装により誤った額を申告した場合に課税されます。

 

事実の隠ぺいとは、税金の支払いに関する事実の一部または全部を隠すことです。たとえば、実際にあった売上を意図的に除外して申告書の作成をしたり、証明書類を破棄して提出しなかった場合などは事実の隠ぺいとされます。棚卸の際に、実際の在庫額よりも少なく計上したことが事実の隠ぺいとみなされる場合もあります。

 

事実の仮装とは、架空の事実が存在するようにみせかけることをいいます。実際にはない架空の仕入取引を作って計上したり、他人の名義を利用して書類を作成したりするような場合が該当します。実際に取引をしていない状態での経費の水増し計上や、実在しない会社との取引、架空の給与支払いなどが判明した場合には、事実の仮装があったとされ重加算税の対象になります。

 

重加算税は、課税される税率が一番大きく重いペナルティです。重加算税は、各加算税に応じて下記額が課税されます。

 

  • 過少申告加算税の代わりに、追加本税の35%が課税
  • 無申告加算税の代わりに、納付すべき税額の40%が課税
  • 不納付加算税の代わりに、納付すべき税額の35%が課税

 

追徴課税の対象となる期間

追徴課税の対象となる期間

税務調査が入り追徴課税される場合、対象となる期間は過去3年分とされることが多いです。国税通則法第70条1項には、過去5年分まで遡れるとされており、同様の誤りが過去にもありそうだと判断された場合は、5年前まで追徴課税の対象となることがあります。

 

また、脱税や不正還付といった虚偽が疑われる場合、最長7年分まで対象となる可能性があります。

 

出典:e-GOV「国税通則法」
出典:財務省公式サイト「更正・決定の除斥期間、更正の請求期間」

 

追徴課税の注意点

追徴課税の注意点

追徴課税の対象となった場合、追徴課税の納付方法をはじめとしていくつか注意点があります。

 

期限内に納付ができない場合、さらに深刻な事態になり得ますので、誠意ある対応を心がけましょう。

 

原則として一括納付が必要

追徴課税は、原則として一括で納付する必要があります。期日までに正しく納めるべきだった納税が遅れている状態であり、早急な納付が求められるためです。

 

追徴課税分を期限までに納められなかった場合、最悪のケースでは財産の差し押さえを受ける場合があります。ただし、税務署に申請書を提出し要件を満たしていると換価の猶予が認められる場合があります。

 

猶予制度には、納税の猶予もあるものの、一般的に災害や病気などによって納付が困難な場合に利用する制度であるため、通常は換価の猶予を申請することになります。

 

申請書と一緒に、財産収支状況書、担保の提供に関する書類などを提出する必要があります。猶予を受けようとする金額によっては、担保や保証人の提供を求められるケースもあります。申請書を提出した場合、税務署が納税者の財産状況などを調査し、猶予を認めるか否かを決定します。

 

換価の猶予が認められる可能性があるのは、以下の要件すべてに該当した場合です。

 

  • 国税を一時に納付することにより事業継続または生活の維持が困難になるおそれがあると認められること
  • 納税について誠実な意思を有すると認められること
  • 換価の猶予を受けようとする国税以外の国税に滞納がないこと
  • 納付すべき国税の納期限から6ヵ月以内に申請書が提出されていること
  • 原則として担保の提供があること(金額、猶予期間などによっては不要な場合あり)

 

猶予期間は原則1年の範囲内とされ、1年以内に完納できないやむを得ない事情がある場合は、最長2年以内の範囲で猶予期間の延長が認められます。

 

なお、猶予を受けた場合、原則として猶予期間中の各月に分割して納付する必要があります。

 

猶予を受けた場合でも、支払うまでの期間に延滞税が発生します。ただし、換価の猶予が認められた場合、期間中の延滞税の一部が免除されます。

 

出典:国税庁公式サイト「No.9206 国税を期限内に納付できないとき」
出典:国税庁公式サイト「No.9205 延滞税について」

 

追徴課税は1ヵ月以内に納付する

追徴課税が決定されると通知が届きます。通知が届いた日の翌日から1ヵ月以内に追徴課税を納付する必要があります。

 

納付期限までに納税されない場合、督促状が送付されます。督促を受けても納付されない場合は、銀行口座や車などの財産を差し押さえる滞納処分を受けることになります。

 

追徴課税の支払いについては、金融機関からの融資は受けづらいのが現状です。無申告などの場合には、融資を受けるために提出する申告書類などがなく、納税証明書も発行してもらえません。

 

支払えない場合、自己破産を考える人もいるかもしれませんが、租税債務は非免責債務に該当するため自己破産をしても追徴課税の免責はされません。そのため、期限内の追徴課税納付ができない場合、猶予申請をするのが通常となります。

 

損金算入できない

追徴課税は申告漏れや無申告などに対するペナルティのため、税務申告の際に追徴課税を損金に算入することはできません。ただし、「利子税」については、損金算入することが可能です。

 

利子税は税務署に税務申告の延長を申し出た場合や、延納をした場合等に、延長日数に応じて課される税金になります。利子税はペナルティではないため、延滞税よりも税率が低く、租税公課として損金算入できます。

 

支払えない場合は財産差し押さえの可能性も

追徴課税を期限までに支払わない場合、督促状が届きます。督促状に記載された期日までに追徴課税を納付しない場合、財産差し押さえが進められる可能性があります。

 

差し押さえとなる対象は、現金や預金口座、有価証券、不動産、車や債券などです。差し押さえは税金の支払いに代えて行われるため、金銭的な価値が認められるものが対象となります。追徴課税を支払えない本人の財産が対象となり、家族が保有している財産は差し押さえの対象にはなりません。

 

個人の税務調査では、所得税や消費税といった国税以外にも、住民税や国民健康保険といった追加の負担が生じる場合があります。

 

住民税や国民健康保険などについても、国税と同様に市役所や県税事務所と交渉を行っていくことになります。

 

一般的に、国税の交渉が終わった後に市区町村や県税との交渉を行うことになりますが、市区町村によっては早めに差し押さえに動く場合もあるため、注意が必要です。

 

まとめ

追徴課税とは?加算税の計算方法や税率、対象期間や注意点を解説

追徴課税には「延滞税」と「加算税」といった附帯税があります。追徴課税は通常3年、虚偽があった場合は7年前まで遡って納付することになるため、納付額が大きくなります。

 

追徴課税の納付に対しては、金融機関から融資を受けることは難しく、納付しない場合は最悪財産差し押さえになる可能性があります。追徴課税の納付ができない場合は、換価猶予の申請を行いましょう。

 

追徴課税のペナルティはとても重いため、対象とならないよう正しい申告を心がけることが一番の対策です。

  • 水戸部 達也

    監修者

    水戸部 達也

    株式会社AGSコンサルティング
    東海エリア名古屋副支社長・税理士