デジタル技術の飛躍的な進展に伴い、多くの産業で競争のルールも変化しています。企業では生き残るためにも、DXを進めていかなければなりません。今回は、DXについて基本的なことを知りたい方のために、言葉の定義やビジネスモデルを紹介します。DX導入の参考にしていただければ幸いです。
目次
- DXとは?意味や定義を確認
- デジタルトランスフォーメーションの略
- DXが求められる理由
- 既存のシステムの老朽化
- 「2025年の崖」に向けての対策
- 市場における競争力の強化
- 消費者ニーズの変化に対応
- DX実現のために必要なこと
- 経営トップの認識
- ロードマップの策定
- DX推進体制の整備
- 人材の確保
- DXの推進プロセス
- 1.タスク・スケジュールのロードマップへの落とし込み
- 2.ベンダーとのビジョンの共有
- 3.要求事項の整理
- 4.DX推進体制の構築
- DX化が進む領域とモデルに関して
- オンライン・マーケットプレイス
- シェアリング・エコノミー
- サブスクリプションサービス
- P2Pサービス
- 通信教育サービス
- まとめ
DXとは?意味や定義を確認
「DX」という言葉は、近年になってよく見聞きするようになりました。
DX関連のビジネス書籍も増えており、関心を持っている方も多いのではないでしょうか。まずはDXについて、意味や定義を確認しておきます。
デジタルトランスフォーメーションの略
DXは、英語の「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」を略した用語です。英語圏では「trans」を「X」と略すことが多いため、DTではなくDXとされています。
DXは、日本語に訳すと「デジタル技術を用いた変革」となります。DXは、もともと欧米で生まれた概念ですが、2010年頃から徐々に日本でも知られるようになりました。
デジタル技術とデータを活用
デジタル技術とは、コンピュータで処理できる技術です。現代において、デジタル技術の種類は無数にあります。クラウド、スマートフォン、IoT、AI、5G、VR/ARなどは、我々の生活を大きく変える技術です。
DXで行う変革とは、こうしたデジタル技術とデータの活用によって、「従来とは違った新たな価値を生み出す」ことです。従って、最先端技術を用いた経営改革に限らず、ITを最大限活用して身近な業務を改善する取り組みも、DXで行う変革に含まれます。
デジタル技術を活用して競争力を強化
DXの取り組みを進めれば、今までにない種類のビジネスモデルの構築も可能です。顧客が利用しやすいサービスを展開し、新しい製品やサービスを生み出せる可能性があります。デジタル社会の中で企業の競争力を強化するためには、DXの取り組みが欠かせません。
DXが求められる理由
近年、企業におけるDX実現が叫ばれるようになりました。今なぜDXが求められているのか、その理由について説明します。
既存のシステムの老朽化
現在、大多数の日本企業が利用しているシステムは老朽化した「レガシーシステム」となっています。
レガシーシステムを保有することは、企業にとってリスクになります。DXによるシステムの刷新は、多くの企業にとって共通の課題です。
レガシーシステムの問題点
レガシーシステムは従来の業務を効率化するために開発されたもので、今の時代にマッチしたデータを取得できる仕組みになっていません。
企業でデータを保有することになっても、システム自体が古ければ連携が難しくなってしまいます。多くの企業で保有しているデータを、十分に活用しきれていない現状があります。
システムのブラックボックス化も生じる
システムが古くなると、ブラックボックス化を招くことがあります。ブラックボックス化とは、業務変更の都度システム変更を繰り返した結果、内部の動作原理や構造がわからなくなってしまうことです。
ブラックボックス化により、特定の業務については特定の担当者にしかわからない属人化が起こることもあります。ブラックボックス化・属人化は企業の生産性を落とすだけでなく、業務遂行に重大な支障をきたしてしまいます。
「2025年の崖」に向けての対策
DXの遅れは企業単位でのみ問題になるものではありません。国はレガシーシステムの問題を懸念しており、経済産業省が中心となってDX推進を呼びかけています。
2018年のDXレポートでは、「2025年の崖」としてレガシーシステムの問題が警告されています。各企業においては、国の方針にしたがってDX対応策をとらなければなりません。
「2025年の崖」とは
DXレポートでは既存のシステムを放置した場合、2025年以降年間最大で12兆円の経済損失が生じると試算しています。複雑化・老朽化・ブラックボックス化したレガシーシステムが残存すればシステムトラブルのリスクが高まり、高額の維持管理費がかかってしまうのです。
データ消失が起これば、莫大な損害も予想されます。日本経済は既に崖に転落しつつあり、これを何とか食い止める必要があるのです。AGSでは、システムの刷新が必要となる時期と技術要員の枯渇が重なる「2025年の崖」問題に対し、どのように対応すべきかを分析したレポート を発行しています。ご興味がある方はご覧ください。
市場における競争力の強化
DXを進めることにより新たなビジネスモデルを創出し、これまでにない製品やサービスを展開できます。既に多くの企業がDX対応を進めており、顧客に対し新たな価値を提供しています。
企業が生き残るためには、デジタル技術を活用した変革を起こさなければなりません。DXが実現すれば顧客獲得につながり、グローバル市場で勝ち抜けるでしょう。
消費者ニーズの変化に対応
時代の流れとともに、消費者の消費行動も変わってきました。現代の消費者はモノの所有に対する関心が薄れ、利用することに重点を置くようになっています。高いお金を払ってモノを購入するよりも、リーズナブルな値段で楽しみだけを享受したいと考える人も多くなっています。
また、誰もがスマホを活用して情報にアクセスし、購買行動を起こすようになりました。変化した消費者ニーズにマッチした製品・サービスを企業が展開していくためには、DXが欠かせません。
DX実現のために必要なこと
DXは企業にとって大きな取り組みであるため、実現には時間やコストがかかります。利益向上のためのDXですが、失敗すると逆に損失になりかねません。DXの成功に必要なことを知っておき、失敗のないように進めましょう。
経営トップの認識
DXは業務プロセスの一部を変えるものではなく、企業文化・風土など会社全体の改革を行うものです。企業でDXを進めるときには、トップダウン方式で行う必要があります。
経営者や役員がDXの必要性を強く認識し、主導権を握って改革を進めなければなりません。経営トップは従業員に対し、会社が目指す方向性を積極的に発信することが大切です。従業員全員の意識を高めることで、DXを成功に導けます。
ロードマップの策定
DXに着手したものの、どこに向かっているかわからないようでは失敗してしまいます。DXを進めると決定したら、最初に目標を決めることが大切です。ロードマップを作り、それにしたがって進めるようにしましょう。
ロードマップの策定にあたっては、どの分野でどのような価値を生み出すか、そのためにどのようなビジネスモデルを構築するかを明確にしておきます。目標を達成するためのステップを着実にこなしながら、段階的に進めていきましょう。
DX推進体制の整備
経営トップは各事業部門に対し、デジタル技術を用いた新しい種類のビジネスモデルの構築を促さなければなりません。新しい挑戦ができる環境を整備しておく必要があります。
また、各事業部門における取り組みを推進・サポートするDX推進部門も設置した方がよいでしょう。社内のDX推進体制を整えておくことが重要です。
人材の確保
DX実現のために必要な人材を、育成・確保しなければなりません。DX推進部門においては、デジタル技術やデータ活用に精通した人材が必要です。各事業部門においては、業務内容とデジタル技術の可能性を理解した人材が、取り組みをリードしていかなければなりません。
社内に適切な人材がいない場合は、外部との連携が必要になります。自社だけでDXを進めていくのが不安な場合、専門機関のサポートを受けるとよいでしょう。
DXの推進プロセス
企業がDXを実現するためには、信頼できるITベンダーと手を組み、システム改善を行うことが欠かせません。DXを実現するまでの手順を改めて整理します。
1.タスク・スケジュールのロードマップへの落とし込み
システム改善の時期(ゴール)を決めたうえで、必要なタスクを明確にし、スケジュールを組みます。
2.ベンダーとのビジョンの共有
経営戦略と整合するデジタル戦略を明らかにし、ITベンダーとの間で共有できるよう、ビジョンを整理します。
3.要求事項の整理
ITベンダーにシステム開発を委託する前に、要求事項を整理します。
4.DX推進体制の構築
経営層、現場部門、情報システム部門など関係者を巻き込んだ体制を構築し、共通理解を深めます。
DX化が進む領域とモデルに関して
DXは、デジタル技術を用いたビジネスの変革です。ここではDXについて具体的にイメージできるよう、ビジネスモデルを種類別に紹介します。
オンライン・マーケットプレイス
Amazonに代表されるような、インターネット上で売り手と買い手をつなげる仕組みです。オンライン・マーケットプレイスでは、複数の売り手が集まって商品販売を行いながら、共通の決済手段を提供しています。同様のビジネスモデルは、多くのサービスで活用されています。
売り手にとっては、自社の製品・サービスに興味を持って直接訪れる顧客以外にもアプローチできるチャンスがあり、取引の拡大につながるのです。買い手にとっては、お気に入りリストや人気ランキングを活用して商品を選べる点が大きなメリットです。
シェアリング・エコノミー
個人が所有している資産のうち、使っていないものを個人間で貸し借りできるシステムです。 カーシェアリングアプリのUberや、民泊のAirbnbなど、近年幅広く活用されています。従来からあったレンタルのシステムでは、貸すためのモノを持っておかなければなりません。
一方、シェアリング・エコノミーを利用すれば、自分のモノを使わない時間だけ人に貸すことが可能になります。インターネット上のプラットフォームを利用することで、需要と供給をマッチさせるシェアリング・エコノミーのシステムは、さまざまな形で応用できます。
サブスクリプションサービス
定期的に料金を払うことで、製品やサービスを利用できるビジネスモデルです。新聞や雑誌の定期購読は昔からありますが、インターネットを活用したサブスクリプションは従来型のサービスに代わる新たなビジネスモデルとして注目されています。
たとえば、会員制で映画やドラマの配信が受けられるNetflixやAmazon Prime Videoなどは、利用者の多い人気のサブスクリプションサービスです。そのほかにも、さまざまな種類の製品・サービスで、サブスクリプションが活用されています。
P2Pサービス
P2Pとは「Peer to Peer」の略で、複数の端末間で直接データ共有できる通信技術やソフトウェアのことです。P2Pを活用すれば、個人間のコミュニケーションやマッチングを高速かつリーズナブルに行えます。
マーケットプレイスなども含め、多くの種類のサービスで活用されている技術です。メルカリ、ヤフオクなどがP2Pサービスのビジネスモデルに該当します。
通信教育サービス
DXにより成功しているビジネスモデルが多いのが、通信教育サービスです。教育の場面でインターネットを活用すれば、できることが大きく広がります。家庭教師のトライは、オンラインによる映像授業の配信を初めて行いました。
トライの映像授業では、視聴中に生徒から質問できるシステムも設けられています。教師と生徒が対面せずに学習指導ができるという、新たな価値をもたらしたモデルです。
まとめ
デジタル技術を活用すれば、顧客に価値を提供する方法を変えたり、新たな価値を創造したりすることが可能になります。これまでとは違う種類のビジネスモデルを構築すれば新たな顧客層を獲得し、競争力を強化できます。主なビジネスモデルを参考にして自社の強みも活かしながら、DX実現を目指しましょう。
AGSのシステムコンサルティングは、ベンダとは独立した第三者的立場であることを活かし、業務要件やシステム要件の明確化を通して、お客様のニーズに合ったシステム化を支援(システムコンサルティング) しています。