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「社団法人・財団法人」と「公益法人・一般法人」の違いと意味|運営、会計、税務側面から解説

「社団法人・財団法人」と「公益法人・一般法人」の違いと意味|運営、会計、税務側面から解説

株式会社などの営利を目的とする会社と異なり、営利を目的としない法人を「非営利法人」と呼びます。非営利法人にも、さまざまな種類があるのです。今回は、一般法人や公益法人といった非営利法人の違いや公益法人の運営、会計、税務について解説します。

社団法人と財団法人の違い

社団法人と財団法人の違い

社団法人と財団法人の組織は似ていますが、主に以下の5つの点で違いがあります。

 

  1. 機関設計
  2. 成り立ち
  3. 財源
  4. 設立時の拠出金
  5. 資金調達制度(基金制度)

 

一般社団・財団法人とは、一般法に基づいて設立された法人です。

 

行政庁の認可を必要とせず容易に設立でき、事業内容も特段制限がありません。

 

社団法人

人(社員)の集まりに、法人格を与えたものです。社員総会が最高意思決定機関となり、社員からの会費が主な財源となります。

 

設立にあたって財産の拠出は要請されていませんが、活動の原資となる資金の調達手段として「基金制度」が設けられています。

 

「基金」とは、一般社団法人に拠出された金銭とそのほかの財産で、拠出者に対して返還義務を追うものです。

 

財団法人

財産の集まりに、法人格を与えたものです。基本的には、当該財産の運用益が主な財源と考えられます。設立にあたっては、300万円以上の財産を拠出しなければなりません。

 

設立後も一定規模の財産の保持義務が課されるため、2期連続で純資産が300万円を下回る場合には、解散しなければなりません。 それぞれの違いは、以下のとおりです。

 

社団法人財団法人
機関設計・社員総会(2名以上)

→最高意思決定機関

・理事会(3名以上)

→理事会を設置しないことも可能

・監事(1名以上)

・会計監査人

→条件を満たす場合には設置が必須
(認定法第5条12項)

・評議員会(3名以上)

→理事会を監督する機関

・理事会(3名以上)

・理事(1名以上)

・会計監査人

→条件を満たす場合には設置が必須
(認定法第5条12項)

成り立ち「人」の集まり「財産」の集まり
財源

(主なもの)

・会費収入

・運用益等

・事業収益

・運用益等

・事業収益

設立時の拠出金定めなし300万円以上
資金調達制度「基金制度」あり

(設置は任意)

定めなし

 

 

一般社団法人と公益社団法人の違い、一般財団法人と公益財団法人の違い

一般社団法人と公益社団法人の違い、一般財団法人と公益財団法人の違い

一般法人

「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」(以下、一般法)に基づいて設立された法人のことです。

 

一般法人は登記のみでの設立が可能なため、容易に設立できます。公益的な事業はもちろん、共益的なものや収益事業のみを行うことも何ら妨げられません。

 

共益的な事業とは、町内会や同窓会、サークルのように構成員に共通する利益を図ることを目的とするものです。

 

公益法人

「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(以下、認定法)に基づいて設置される法人です。 公益法人は2階建ての制度といわれており、1階が一般法人、2階が公益法人を指します。一般法人を前提としているため、公益法人をいきなり設立できません。 公益法人となるためには、一般法人の設立後に公益認定の申請を行い、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)の認定を受ける必要があります。

 

公益法人は、公益性の高い法人として税制上の優遇措置を受けられますが、将来にわたって公益認定の基準を満たす必要があります。公益認定の基準を満たせなくなると認定を取り消されるリスクもあるので、留意が必要です。

 

NPO法人

Non-Profit Organizationの略称です。さまざまな社会貢献活動を行い、構成員に対して収益の分配を目的としない団体の総称です(内閣府HPより)。 「特定非営利活動法人(NPO法人)」は、特定非営利活動促進法に基づき法人格を取得した法人になります。

 

NPO法人を設立するためには、都道府県または政令指定都市の所轄庁に申請をして設立の「認証」を受けることが必要です。認証後、登記をすると法人として成立するので、ほかと成り立ちが異なります。

 

また、どちらも公益性を目的としていますが、NPO法人は20種類の分野に該当する活動が対象です。公益法人は23種類の事業を対象としているため、NPO法人とは異なります。

 

公務員

国や地方自治体の機関、国際機関などで働いている人のことです。

 

共通するのは、公益性を重視する点です。「公務員」が所属する組織は国や地方自治体が運営していますが、「公益法人」は民間の組織である点が異なります。

 

「公益」の意味

「公益」の意味

 

認定法上における「公益」は、以下の要件を満たす必要があります。

 

  1. 学術、技芸、慈善、そのほかの公益に関する別表に掲げる種類の事業であるもの
  2. 不特定かつ多数の者の、利益の増進に寄与するもの

 

公的に関する事業とは

「公益に関する事業」かどうかは、認定法別表に列挙されている23の事業に該当している必要があります。

 

  1. 学術及び科学技術の振興を目的とする事業
  2. 文化及び芸術の振興を目的とする事業
  3. 障害者若しくは生活困窮者又は事故、災害若しくは犯罪による被害者の支援を目的とする事業
  4. 高齢者の福祉の増進を目的とする事業
  5. 勤労意欲のある者に対する就労の支援を目的とする事業
  6. 公衆衛生の向上を目的とする事業
  7. 児童又は青少年の健全な育成を目的とする事業
  8. 勤労者の福祉の向上を目的とする事業
  9. 教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性を涵養することを目的とする事業
  10. 犯罪の防止又は治安の維持を目的とする事業
  11. 事故又は災害の防止を目的とする事業
  12. 人種、性別その他の事由による不当な差別又は偏見の防止及び根絶を目的とする事業
  13. 思想及び良心の自由、信教の自由又は表現の自由の尊重又は擁護を目的とする事業
  14. 男女共同参画社会の形成その他のより良い社会の形成の推進を目的とする事業
  15. 国際相互理解の促進及び開発途上にある海外の地域に対する経済協力を目的とする事業
  16. 地球環境の保全又は自然環境の保護及び整備を目的とする事業
  17. 国土の利用、整備又は保全を目的とする事業
  18. 国政の健全な運営の確保に資することを目的とする事業
  19. 地域社会の健全な発展を目的とする事業
  20. 公正かつ自由な経済活動の機会の確保及び促進並びにその活性化による国民生活の安定向上を目的とする事業
  21. 国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保を目的とする事業
  22. 一般消費者の利益の擁護又は増進を目的とする事業
  23. 前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの

 

引用:認定法別表第二条関係

 

不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するとは

寄与しているか否かの判定については、内閣府公益認定等委員会が公表している「公益認定等ガイドライン」に記載されています。

 

公益法人が行う事業の中から典型的な17事業について、それぞれ具体的に掲げられています。

 

共通して求められる主なポイントは、以下の2つです。

 

  • 事業の目的として、不特定多数でない者の利益の増進への寄与を主たる目的に掲げていないか。
  • 事業の内容や手段が事業目的を実現するように適切なものになっているか。

 

不特定多数性の条件として、「社会全体に対して利益が開かれている」と「受益の機会が一般に開かれている」の2つを満たす必要があります。

 

公益認定の基準

公益認定の申請を行うためには、認定法第5条で定められた下記の要件(18項目)を満たす必要があります。

 

また、公益法人は認定を受けた後も、毎期認定基準の遵守が必要です。

 

  1. 公益目的事業を行うことを主たる目的とするものであること
  2. 公益目的事業を行うのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有するものであること
  3. 法人の関係者に対し、特別の利益を与えないものであること
  4. 営利事業者、共益的団体に対し、特別の利益を与えないこと
  5. 社会的信用または公序良俗を害するおそれのある事業を行わないこと
  6. 公益目的事業について、収支相償していること
  7. 収益事業等を行うことによって、公益目的事業の実施に支障を及ぼすおそれがないこと
  8. 公益目的事業比率が50%以上であること
  9. 遊休財産額が公益目的事業費の年額を超えないこと
  10. 理事・監事のうち、同族役員の割合が3分の1以下であること
  11. 理事・監事のうち、ほかの同一の団体の役員・使用人等の割合が3分の1以下であること
  12. 一定の大規模法人は会計監査人を置くこと
  13. 理事、監事及び評議員に対する報酬などについて、不当に高額とならない支給基準を定めること
  14. 社団法人における、社員資格の得喪要件や理事会設置要件などに従っていること
  15. ほかの団体の意思決定に関与できる株式などを保有していないこと
  16. 公益目的事業に不可欠な特定の財産があるときは、その旨並びにその維持及び処分の制限について、必要な事項を定款で定めていること
  17. 公益認定の取消しの処分を受けた場合、公益目的事業財産の残額に相当する財産を1カ月以内に、ほかの公益団体や国、地方公共団体に贈与する旨を定款で定めていること
  18. 清算をする場合、残余財産を類似の事業を目的とするほかの公益法人または国もしくは地方公共団体に帰属させる旨を定款で定めていること

 

公益法人の運営

公益法人の運営

社団法人と財団法人は類似した組織であり、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」という法律の中で規定されています。

 

共通する部分については、財団法人は社団法人の条文を準用します。

 

そのため、公益法人の運営・会計・税務については、社団法人と財団法人に共通する事項として、説明します。

 

公益法人が行う事業

公益法人は公益目的事業を行うことを主たる目的とする法人ですが、公益目的事業以外の収益事業等を行えます。

 

公益目的事業

公益目的事業は認定法において「学術、技芸、慈善その他の公益に関する事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する」事業と定められています(認定法2①四)。

 

利益をあげるための収益事業等

公益目的事業以外の事業をいいます。利益をあげるための収益事業と、共益のためのその他の事業に区分されます。

 

収益事業は、一般的に利益をあげることを性格とする事業です。その他の事業は、一事業として取り上げる程度の事業規模や継続性がないものや、法人の構成員を対象として行う相互扶助などです。 収益事業などには公益目的事業のようなチェックポイントの要件はありません。

 

一方で、「収益事業等を行うことによって公益目的事業の実施に支障を及ぼすおそれのないものであること」(認定法5七)という要件があります。収益事業などで大幅な赤字といったものが生じることによって、公益目的事業の実施に支障が出ないように留意する必要があります。

 

公益法人の会計と税務

公益法人の会計と税務

適用される会計基準等

公益法人会計基準

非営利法人は、公益法人会計基準が適用され、認定法で定める認定基準を満たす必要があります。

 

その中でも特に重要となるのが、財務3基準(収支相償・公益目的事業比率・遊休財産額の保有制限)と呼ばれる財務基準です。

 

公益法人の決算書

公益法人が作成しなければならない財務諸表等は、以下のとおりです。

 

  • 貸借対照表
  • 貸借対照表内訳表→条件を満たす場合には作成が必要
  • 正味財産増減計算書(損益計算書)
  • 正味財産増減計算書内訳表→条件を満たす場合には作成を省略できる
  • キャッシュ・フロー計算書→会計監査人設置会社は必須
  • 財務諸表に関する注記
  • 附属明細書
  • 財産目録

 

財務3基準とは

 

  • 収支相償→公益目的事業会計いおける収益から費用を差し引いた差額(経常損益)が、ゼロまたはマイナスになること
  • 公益目的事業比率→公益目的事業会計における費用の合計額は、法人全体の費用の合計額の50%以上でなければならない
  • 遊休財産の保有制限→法人が各事業年度末において保有する遊休財産額が、その年度の公益目的事業会計における経常費用額を超えてはならない基準のこと

 

公益法人会計特有の会計処理

基本財産と特定資産

基本財産とは、法人の基本となる財産です。法人の定款において、基本財産として定められた資産のことをいいます。

 

特定財産とは、特定の目的のために使途、保有又は運用上の制約が課されている資産です。

 

一般正味財産と指定正味財産

指定正味財産とは、寄付によって受け入れた資産のことです。寄付者などの意思により、当該財産の使途について制約が課されています。

 

一般正味財産とは、法人の財産的基礎を示す正味財産のうち基金および指定正味財産を除いた部分です。

 

法人設立以後の事業運営により発生したすべての収益・費用などを加減算した、累積金額となります。

 

法人税法における公益法人等について

認定法上の公益法人と法人税法上の公益法人等は似ている用語ですが、意味は異なります。

 

法人税法上の公益法人等は、法人税法別表第二に掲げる法人を意味しています。非営利型の一般法人なども含まれるため、認定法上の公益法人に比べて範囲が広いです。

 

非営利型法人とは

非営利型法人には、「非営利性が徹底された法人」と「共益的活動を目的とする法人」の2つの類型があります。 「非営利性が徹底された法人」は、非営利徹底型です。事業により利益を得ること、その利益の分配を目的としない、運営するための組織が適正である一般法人をいいます。

 

「共益的活動を目的とする法人共益型」は共益型です。会員の会費により共通する利益を図る法人で、事業を運営する組織が適正である一般法人をいいます。

 

法人税法上の収益事業

法人税法上の収益事業とは、「販売業、製造業その他の政令で定める事業で、継続して事業場を設けて行われるもの」をいいます(法人税法2十三)。

 

「販売業、製造業その他の政令で定める事業」は、法人税法施行令第5条第1項において34の事業が定められています。

 

法人税法施行令
34事業に該当する34事業に該当しない
認定法公益目的事業仮に34事業に該当する場合であっても、認定法上の公益目的事業は、収益事業の範囲から除かれます課税所得の範囲に含まれません
収益事業等法人税法上の収益事業仮に認定法上の収益事業等であっても、法人税法上の収益事業ではありません

 

認定法上の収益事業等と法人税法上の収益事業は、定義がまったく異なります。

 

認定法上の収益事業等が課税所得の範囲になるとは限らないため、留意が必要です。

 

まとめ

一般法人は登記のみで設立でき、公益事業以外の収益事業も自由に行えます。

 

しかし公益法人になるためには公益認定の申請を行い、認定を受ける必要があります。設立後も、さまざまな認定基準をクリアする必要があるのです。

 

公益法人を目指す方は、まずは一般法人を設立し、公益認定を受けられるように組織や事業内容を整備していくとよいでしょう。

 

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