事例の詳細データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象企業属性 | 教育・研修サービス業(売上高30億〜50億円規模) |
| 取引対象 | 関連者間ローン(グループ内資金貸借) |
| 貸付元本総額 | 約200万元(日本円換算で約5,000万円) |
| 借手企業の属性 | 所在国:香港 |
| 当局の指摘内容 | 「クレジットリスクプライシングレポート」に基づき、借手の信用格付を「CCC」と判定。対応する独立企業間金利(7.68%) と適用金利(1.5%) との乖離を指摘。 |
| 当初設定の根拠 | 過去に親会社が金融機関から円建て借入を行った際に適用された金利 |
| 対応策と処方 | 2022年改正内容の把握、第三者信用格付機関提供のデータベースを活用した借手の信用リスク(信用格付)の評価、当該信用格付に対応するマーケット金利を参照したグループ内貸付金利設定方針への変更。 |
| 最終結果 | 指摘を全面的に受け入れ、1,000万円超(本税のみ)の修正申告を実施。 |
本事例から読み解く、実務への示唆
新移転価格税制で必須となる「借手の信用格付」評価
関連者間ローンの金利設定において、新移転価格事務運営要領は、借手の信用格付を評価し、当該信用格付に対応したマーケット金利を参照することを求めています。そのため、特段借手の信用格付を評価することなく、根拠の乏しい金利を適用している場合、税務調査で厳しい指摘を受ける可能性が高まっています。
改正前の移転価格事務運営要領は、貸手である親会社の信用格付を考慮した金利、または、国債の金利を参照して関連者間ローンの適用金利を決定することも許容していましたが、新移転価格事務運営要領は、そのような簡易的な金利設定は認めていないため、納税者が受ける影響は非常に大きなものとなっています。
当局が「クレジットリスクプライシングレポート」等の信用格付評価・金利算定データベースを導入のうえ、客観的な情報をもとに移転価格税制の観点から妥当な金利を算定したうえで調査に臨んでいる現状に鑑みると、納税者側も事前に客観的な情報に基づき借手の信用格付を評価し、マーケット金利を参照のうえで適用金利を決定しておくことが、唯一の防御策となります。
制度改正の把握遅れが招く二重課税リスクと事前の防衛
本件は、移転価格事務運営要領の改正内容の把握が遅れたことが否認を招きました。
調査官の指摘に応じて修正申告を行った場合、加算税や延滞税等が課されるのみならず、当該修正申告金額は、日本と海外の両国で課税される(二重課税)状態となるため、納税者が受ける金額的影響は大きくなるケースが多く見られます。
無用な修正申告を回避するためには、専門家等を活用しつつ、事前に対応を行っておくことが重要となってきます。