シンガポール進出の支援からクロスボーダーM&Aのサポートまで、海外事業のヘッドクォーターの成長を支え続けてきた10年間の歩み
国際サービス事例 | MUGINOHO GLOBAL PTE. LTD.

概要
シュークリーム専門店「ビアードパパ」を世界に展開するMUGINOHO GLOBAL PTE. LTD.(国内本社:株式会社DAY TO LIFE)は、2014年にシンガポールで設立された。社員2人からのスタートだったが、現在では、グループ全体の海外における生産拠点および管轄拠点として、月500万個のシュークリームを製造、10以上の国・地域に輸出し、グループの売上利益の半分以上を海外が占めている。シンガポール進出からクロスボーダーM&Aまで、10年以上にわたって同社の国際展開のパートナーとして伴走支援してきたのが、AGSの国際事業部だった。
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石川享太郎 氏
MUGINOHO GLOBAL PTE. LTD.
Director
F&B・食品製造業を中心に海外事業に20年以上携わり、シンガポール法人では立ち上げ期から管理・製造部門を担当。上海では総経理として経営改善に尽力。現在はアジア市場での事業拡大に取り組み、台湾子会社化や洋菓子ブランドの導入にも携わる。
シンガポール進出のパートナーを探していた
石川氏:当社は2010年ごろの時点で、すでに海外拠点が複数国にありました。ただ、海外におけるフランチャイズ展開が、どっちかというと受け身なところがあった。そこで、「もっと我々から近づいていこう」という方針のもと、アジアのヘッドクォーターとして、製造だけでなくフランチャイズの監督や新規事業も手掛ける、新たな進出先を検討したのです。その結果、外資企業に対する政府の援助が手厚く、インフラも整備されていて、関税も安かったシンガポールに決めました。
AGS八鍬:当時のシンガポールは原材料の輸入関税も安かったし、中国やアメリカに輸出した際の関税もゼロでした。加えて、シンガポールの製品は品質がよいというブランドイメージもありました。
石川氏:私を含めて実質2名でプロジェクトを進めることになったんですが、なにぶん税務・会計の知識が何もなくて。そこで、様々な会計事務所さんにお話を聞いた中に、AGSさんがいました。
AGS八鍬:弊社の社長の廣渡と、シンガポール進出時の責任者であった上席の方が、もともと個人的な繋がりがあったと伺っています。そこから国際事業部に話がきたんですよ。
石川氏:その時に八鍬さんとも初めてお会いして、八鍬さんたちが非常に柔らかく丁寧に丁寧に、説明してくださったことを覚えています。知識がない私に対してもわかりやすく話をして寄り添ってくれた。信頼できる人たちだな、と思いまして、その場で「お願いします」と申し上げました。
AGS八鍬:ビアードパパといえば、子供の頃に地元にオープンして、行列に並んでやっと食べたシュークリームの味が、今でも記憶に残っています。「あの思い出のビアードパパ(の運営会社)をサポートできる機会をいただけるのか」と、私も非常に嬉しかったです。
タイトなスケジュールで挑んだ工場建設プロジェクト
石川氏:法人の登記だけは2014年の4月に済ませていましたが、同年の9月からわれわれが現地入りして、12月には新しい工場を竣工しなければならない。しかも稼働後、可及的速やかに採算ラインに乗せなくてはならない、というハードなスケジュールでした。当時はプロジェクトメンバーが数名しかいない中で、税務・会計だけでなく、製造をどうするのか、工場の立ち上げをどうするのか、ローカルスタッフの採用をどうするか、ビアードパパのフランチャイズをどう管理していくのかなど、すべての問題が一気に押し寄せてきて…。最初は本当に毎日深夜まで働いていて、パンクしそうになっていました。八鍬さんたちに助けていただけることになったのは、そういうタイミングでした。
AGS八鍬:立ち上げのために2人でシンガポールにいらっしゃって、こちらで製造工場を建てるという計画だったんですが、圧倒的にリソースが足りない。そこでお声かけいただいて、まずは会計事務所なので、記帳代行をしっかりやらせていただきました。
石川氏:数字面でいえば、施工管理も助けていただきました。シンガポールで事業を立ち上げるまでのリードタイムを早めないといけなかった中で、八鍬さんたちに「P/Lは今こういう数字で、B/Sはこうなっています」という整理した情報をいただき、日本本社との取締役会に進捗状況を説明していました。本当にスケジュールがタイトだったので、経営管理の面でのサポートをいただいて、非常に助かりました。
AGS八鍬:原価計算も一緒にやりましたよね。製造拠点の立ち上げに際して、シンガポールの方で独自に原価計算をやらないといけなかったのですが、もともと用意してあったエクセルが複雑すぎて…。
石川氏:セルもずれていたりしてね。会計的に正しいやり方で計算シートを作り上げる作業を、八鍬さんと膝を突き合わせて、2人で議論しながらずっとやっていましたね。
海外進出を成功に導いた人事採用
AGS八鍬:最初にご依頼を受けた際に、税務・会計を内製化したいというご要望をいただいていました。こちらとしても、早いタイミングで内製化することを踏まえ、移行しやすい形で支援をスタートさせていただきました。
石川氏:それで、実際に内製化するにあたって、経理担当者を自社で雇わないといけないという話になりました。ただ、シンガポールでの採用のやり方が右も左も分からず、どんな人を採ればいいのかも分からない。そこでまた、八鍬さんたちに相談に乗っていただきました。
AGS八鍬:私たち自身が会計事務所としてシンガポールに拠点を構え、実際に現地で従業員を雇っていた経験があったので、ノウハウをお伝えしたんです。検討した結果、経理や会計のスキルをフルセットで持っていて、3年以上の実務経験のある人にターゲットを絞ろうという話になりました。
石川氏:非常にありがたかったのは、面接も同席していただけたことです。専門家の視点から「あの人はいいんじゃないですか」とアドバイスしていただいて、我々のほうで人柄とか、そういった面を評価して、採用できたのがスキルをフルセットで持っている経験30年のベテラン。会計ができる人が最初に入ってくれたことで、だいぶ楽になりました。
AGS八鍬:その後も、優秀なサポート役が必要だということで、アシスタントを採用しました。さらに数年後には、最初に入ってくれたベテランの方が体力の問題で辞めることになり、後を継ぐファイナンスマネージャーも採用しました。その方は今でもマネージャーとして活躍してくれています。AGSとして採用に関わらせていただいたのは、その3人ですね。
石川氏:3人とも長く働いてくれて、本当によい採用ができたと思います。
現地の洋菓子チェーン店をクロスボーダーM&A
石川氏:シンガポールに、リヴ・ゴーシュという洋菓子チェーンがあります。古くからあって、地元の人たちにとっては親しみのある町のケーキ屋さんなのですが、そこを2022年にM&Aした際にも、八鍬さんたちには大変お世話になりました。
AGS八鍬:AGSは、財務デューデリジェンスを担当させていただきました。現地の会社に対するクロスボーダーM&Aでは、デューデリジェンスにあたっても日本語が使えず、完全に英語で現地の会社に対応する必要があります。当たり前といえば当たり前ですけど、海外企業が対象でも会計の専門的な部分まで対応できるのは我々の強みだと思います。
石川氏:日本の本社にもご足労いただいて、現在どういう状況か、どういうスキームでM&Aを進めているかを、第三者目線で経営陣に説明していただきました。それに、リヴ・ゴーシュへのM&Aでいえば、途中でとんでもない法務リスクに突き当たったことがありました。
AGS八鍬:当初想定していた進め方だと、シンガポールの法制度に抵触してしまうことが分かったんですよね。
石川氏:本当に、事業継続が困難になるようなクリティカルな問題だったんですが、そこでAGSさんのローカルスタッフの方が…。
AGS八鍬:制度の細かいところまで調査・検討したら、なんとかやり方次第で法制度をクリアできそうだということが分かったんです。但し書きみたいな細かい一文を適用すれば「いけるぞ」って。結果的に問題をクリアして、事業を継続できることになりました。
石川氏:本当に、その節はお世話になりました。
現地法人がイニシアチブをとって迅速に事業展開
AGS八鍬:最初は2人からスタートされたシンガポール事業も、現在では約130人にまで成長されました。今では海外事業のヘッドクォーターとして、製造だけでなくフランチャイズ管理、新事業展開までを担う拠点になっています。今後の展望はいかがですか。
石川氏:ビアードパパの店舗数は、2025年3月時点では世界約500です。これを3000店舗まで増やすというビジョンのもと、そのために、どういう風に海外を積極的に攻めるかということを考えて動いています。近年の動きだと、台湾のフランチャイズパートナーをM&Aで直営化して、すごく伸びていたりとか…。インドネシアでも、稼ぎ頭だったフランチャイズパートナーをあえて変更して、2年で店舗数を倍増させました。
AGS八鍬:サポートしてきてすごいと思うのは、意思決定を本社にコントロールされないというか、現地法人が決定力を持って物事を進めているところです。海外進出がうまくいかない企業の共通点として、本社がすべてをコントロールして、現地責任者は3年交代で…というケースがあります。それだと、なかなか成長を実現するのは難しい。シンガポールに意思決定権者がいらっしゃって、シンガポール発案のプロジェクトを立てて、ちゃんと責任を取って進めていく、なんならシンガポールが全社を引っ張っていくという気概がある。そうすれば事業展開もスピーディーに進みますし、それが成功の秘訣だと思います。
石川氏:M&Aであったり、フランチャイズパートナーの変更であったり、そういう意思決定を、本社から言われたからではなく、常にこちら側で進めて、イニシアチブを取っていくという思いはあります。
AGS八鍬:当然、多くのチャレンジをされる中では、失敗もあるでしょうし、ご苦労はあると思うのですが、そういったところも含めて、現地で責任を取られながらやっているところが、力強さの源泉ではないでしょうか。
これまでの10年も、この先の10年も、パートナーとして
AGS八鍬:関わらせていただくことになってから、10年以上にわたってお付き合いさせていただいていますが、AGSに対する評価はいかがですか。
石川氏:いつもフレキシブルに対応していただいて感謝しています。監査法人対応でも寄り添っていただけるし、なんでも相談できるし、何だったらオフィス内の人間関係の仲裁までしていただいて…。それに3ヵ月に1度、レビューに来ていただいているのも大きいです。壁打ち相手になっていただいて、ただの雑談から、事業を今後どうしていくかという話まで、いろんな会話をします。これがすごくありがたいですね。AGSさんに10年間変わらずお願いしているということは、つまりそれだけ評価が高いということです。
AGS八鍬:ありがとうございます。AGSの理念には、お客様との信頼関係を築いて、いい仕事をして適切な報酬をいただくという考え方があるのですが、まさにそれを地で行く関係性を築かせていただけているのかな、と思っています。
石川氏:今後、さらに様々な事業にトライしていくにあたって、AGSさんには変わらず専門性の高いサポートをお願いできればと思います。また、AGSさんが持つ国際的なネットワーク(ASTHOM)も頼りにさせていただきたいですね。
AGS八鍬:こちらこそ、ビアードパパの展開をはじめ、MUGINOHO GLORBAL様のさらなるチャレンジを支援させていただければと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
AGSグループ担当者からのメッセージ
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ASTHOM事業部長
八鍬信幸
初めて食べたビアードパパのシュークリームの味は今でも鮮明に覚えています。当時中学生だった私は、地元にできた話題のシュークリーム店で母が長い行列に並んでようやくゲットしたシュークリームを何の気なしに口にしました。バターの甘い風味を感じながら一口食べると外はサクサク、中からは濃厚な味わいのクリームが飛び出してきて、今まで食べてきた普通のシュークリームとは全くの別物で中学生ながらに衝撃を受けました。2014年に初めてシンガポールのオフィスにお越しいただいた際に、そんな個人的にも思い出深いビアードパパさんのシンガポール進出に自分自身が携われるということに、またそこでも感激したことを今でも鮮明に覚えております。初めてお会いしてから10年以上お付き合いをいただいておりますが、会計事務所として様々な局面でお手伝いさせていただく中で、一緒になって会社の成長を実感することが出来ました。 海外事業は苦労の連続ではありますが、今後も一緒に伴走して更なる会社の成長を共に実現していきたいと思って考えております。
お客様プロフィール
MUGINOHO GLOBAL PTE. LTD.
創業: 2014年4月30日
事業概要
・飲食店の経営・飲食店のフランチャイズチェーン店の加盟店募集及び加盟店の指導業務
・菓子の製造、販売
記事の内容は掲載当時のものです。