概要
主に不織布や不織布を原料とする製品の製造・販売を手掛けるタピルス株式会社は、企業のシステム刷新が必要となる時期と技術要員の枯渇が重なる「2025年の崖」を前に、情報システムの再構築に舵を切りました。AGSコンサルティングは、2022年から支援を開始しており、今回システムコンサルティングサービスをご利用いただいた感想や効果を伺いました。
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杉村信治 氏
タピルス株式会社
社長付 特命担当
求めたのは“経営に寄与する”情報システム
貴社の事業内容と、システムコンサルティングサービスを利用することになった背景を教えてください
弊社は1987年にメルトブロー不織布の専業メーカーとして創業し、独自技術による高品質な製品を提供してきました。不織布は、ポリプロピレンやポリエステルなどあらゆる素材の繊維を折らずに絡み合わせたシート状のもので、衣類や衛生用品、産業資材などとして私たちの生活を支えています。繊維の直径や分布を調整することで、少量からでもお客様の要望にあわせて製品をカスタマイズできることと、製品ラインアップの豊富さが弊社の強みです。
一方、社内の状況として、現行システムには、以下の問題がありました。
- 導入から10年以上が経ち、老朽化している
- 手作業は自動化できたが、経営に十分寄与していない
- マニュアルがないため、業務が属人化している
- 保守期限が切れている(延命的なハードウェアの更改は実施)
経済産業省が警鐘を鳴らしている「2025年の崖」が迫る中、変化の激しい経営環境での競争力を強化するためには、DX推進が必要でした。2022年4月に経営者が変わったこともあり、情報システムの再構築を進めることになりました。
社内にはシステムに詳しい人材が少なく、システム再構築における要求事項の整理やベンダーからの提案内容について、価格以外の比較検討が難しく、正しい判断ができるか不安がありました。検討メンバーからは「現行システムの開発・保守ベンダーに依頼した方が早いのではないか」という意見もありましたが、今回は現行システムを前提とせず、“あるべき姿”(理想とする姿)を描くことを重視していたため、ベンダー選定の経験豊富なシステムコンサルティング会社に相談することにしました。
また、客観的な目線でアドバイスをいただきたいと考え、第三者による公平中立な立場から、ゼロベースでシステム刷新を相談できる会社に依頼したいと考えました。
現行システムについて、経営層や現場で特に問題(不便)だと感じていた点があれば教えてください。
経営層としては、分析などのために必要なデータが欲しいときにすぐに見られないこと、データを見られたとしても、数字のみでは情報を把握しづらいことに、不便さを感じていました。
“いつでも、欲しい情報をすぐに把握できる状態”が理想でした。
一方、現場としては、レスポンスの遅さや操作性の悪さ、法改正にタイムリーに対応できないことに不便さを感じていました。また、機能の改変に伴うマニュアル作成が追いつかずに業務が属人化していたことで業務負担の偏りが生じやすく、担当者の不在時に業務が滞ってしまうことがありました。
プロジェクト推進のイメージが湧く提案とそれを具現化するAGSメソッド
明確にプロジェクトの目的や狙いを定めていましたが、どのようなメンバーで検討・決定したか、教えていただけますか?
経営層と特命担当である私の4人で検討を始めました。
これまでの経験から、コンサルティング会社へ丸投げすると、余計な時間とコストが生じることが多く、目的や狙いを明確にする必要があると考えていました。
そのため、まず経営層に“経営者のやりたいことが明確でないとプロジェクトがうまくいかない”ことを理解してもらい、本プロジェクトの主目的を、攻めの「ビジネスモデルの変革(DX)」までとするか、守りの「現場業務の効率化」とするか、4人で検討しました。
その結果、将来を見据え、経営環境の激しい変化に対応するため、「ビジネスモデルの変革(DX)」まで行うことに決定しました。
決定までには、3カ月程度かかりました。
2022年4月頃から検討を開始し、6月頃にはコンサルティング会社を選定する提案依頼の原案を作成して提示しました。
なぜ複数社の中から、AGSコンサルティングを選んでいただいたのでしょうか?
ご提案いただいた時に、AGSコンサルティング独自の確立された“システムコンサルティング・メソッド”(通称“AGSメソッド”)があったことが大きかったですね。
システム企画の進め方が体系立っていて、次に何をすればよいのか、将来的に何をやっていくべきかがわかりやすく、安心感がありました。
全社をあげた一大プロジェクトだったので、経験と実績に裏打ちされたメソッドは本当にありがたかったです。
成果物例で示していただいた「業務フロー図」が一番汎用的で、弊社が求めているイメージに近かったことも決め手の一つです。
一方で、メソッドに沿いながらも、弊社の要望や状況に合わせた柔軟な提案をいただきました。弊社から“弊社側の工数見積”という少し難しい要望を出した際、断る会社様も多い中、過去の経験を基に概算の数値を示していただけました。もちろん実際に行ってみないとわかりませんが、おおよその工数を示すことで社内のコンセンサスを得ることができました。
また、伴走していただくコンサルティング会社には弊社のことをよく理解してほしいと思っていたので、十分な時間(他の会社に比べて2倍の時間)をかけた現状業務の分析をご提案いただいた点もよかったです。
加えて、本プロジェクトは“経営に寄与する”ことが強く求められていたため、経営視点の改善ノウハウが豊富なAGSコンサルティングの“経営コンサルティング力”もポイントになりました。
各工程に対する具体的できめ細やかなサポートと先を見据えたプロジェクトリード
AGSコンサルティングにはどのような支援を依頼しましたか?
依頼した内容は、現状の業務フローとシステムに備わっている機能・帳票、各種課題を整理した上で、将来を見据えた新システムでの要求事項を提案依頼書(RFP)としてまとめ、ベンダーの選定を支援していただくことです
特に印象に残っているエピソードはありますか?
業務ヒアリングでのやり取りが一番印象に残っています。
業務範囲が部署間でオーバラップしているので、業務や責任の所在が不明確になる可能性があるため、ヒアリングには全ての関連部署の実行メンバーを集めた方がよいとアドバイスいただきました。
今回のプロジェクトでは元々、AGSコンサルティングからご提案いただいた手法を採用し、実行メンバーを課長以上としていました。
現場では、現行システムを長い間使っているので、現状維持の意向が強く、どうしても変えたくないという意見がありました。また、システムを“仕事を楽にしてくれるもの”と思いがちで、“経営に寄与するもの”という認識が浸透していないようでした。そのため、全社のデジタルリテラシー向上の意味も含め、課長以上をプロジェクトに入れて進めていきたいと考えました。ただ、日々の業務を行いながらなので、業務負荷を懸念した反発がありました。「俺たちは関係ないだろう!」と言われ、「全社のシステムです!」と答えたりして …(笑)
ヒアリングの際にも全ての関連部署の実行メンバーを集めたので反発はありましたが、AGSコンサルティングのプロジェクトマネージャーから、“なぜ全ての関連部署を集める必要があるのか”を丁寧に説明していただきました。
現場との交渉が必要な根気のいる作業でしたが、最後まで伴走してくれてとても心強かったです。ヒアリングは社内調整の段階から苦労していたのですが、終始弊社の立場に立って進めていただけたので助かりました。
結果的には、反発があっても全ての関連部署でプロジェクトを進めたことがよかったと思います。メンバーそれぞれに“自分たちの問題なんだ”と捉えてもらうことができました。それぞれ個別にヒアリングしていたら、製造からはそれは営業の問題だ、営業からはそれは製造の問題だという意見が出ていたと思います。一緒に話し合うことで、お互いの問題点を認識しあったり、相手(他の部署)の立場に立ったシステム作りを考えたりすることができました。最初に粘り強く向き合ってよかったと思います。
AGSコンサルティングは、目先の効率性を優先するのではなく、目的の達成に向け、よりよいアプローチを選択してくれました。
AGSコンサルティングの評価はいかがですか?
期待以上です。
今回の支援では、プロジェクト工程の全体的なサポートはもちろん、現状分析や提案依頼書(RFP)作成時など、各工程においても具体的で細かいサポートをしていただきました。AGSコンサルティングではメソッドが確立されているため、それにそって見通しを立てて進めることができ、とてもよかったです。
また、弊社がメソッドと異なる方法を求めた時は、メソッドの有効性を損なわない範囲で、弊社の要望に応じていただきました。その際も、メソッドがなぜそうなっているのかを丁寧に説明いただけたので、理解し納得することができました。
我々が問題と感じていない点、気付いていない点などを含め指導いただいたことは、非常に有益でした。
システム再構築の必要性を社内のメンバーが理解し、納得して進めていくことも非常に重要と考えていましたが、その点についてもしっかりサポートしていただき、社内協力体制を構築できたと感じています。
社内の皆さんからはどのような声があがっていましたか?
現場からは「AGSコンサルティングのプロジェクトマネージャーは、うちの会社のことを本当によく知ってくれているよね」という声が多くありました。例えば、ヒアリングで別業務の用語が出てきた際、「○○業務だったらAさんを呼んでもらえますか?」と言ってもらう場面が何度もありました。名前を覚えてもらえているというのは、すごく嬉しいみたいです。
プロジェクトマネージャーが、表面的ではなく、各個人に向き合い、中身をわかってコンサルティングしてくれているなと実感できました。
ずばり、AGSコンサルティングのここがいい!
独自にシステムコンサルティングの標準プロセスがあり、それぞれについてメソッドが確立されていること。それでいて、クライアントの要望に応じて、柔軟に対応することができる点です。
また、コンサルティングしていただいてわかったことですが、担当のプロジェクトマネージャーを支えるバックアップ体制がとてもしっかりしていました。ドキュメント作成においても、メソッドに沿って、プロジェクト統括責任者やプロジェクトとは独立した第三者のチェックを受けて進めていただいていることがわかり、安心感がありました。プロジェクトマネージャーが判断に迷ったときは、プロジェクト統括責任者が瞬時に判断してくれるのもよかったです。
そのほか、経営に関する相談(採算管理、CVP分析)ができた点や、ベンダーや製品に対して公平中立である点、費用が適正な点は、AGSコンサルティングならではだと感じました。
「経営に寄与する情報システム」の実現をAGSコンサルティングと共に
現状分析、システム企画の支援をコンサルティング会社に依頼する価値はありましたか? どのような会社におすすめでしょうか?
依頼する価値はありました。
情報システムの導入は、企業経営に与える影響が多いため、慎重に行う必要があります。また、専門的なスキル・知見が必要となるため、「客観的に現状業務を認識し、自分たちでは気づけない問題の抽出や課題の整理を行いたい」「ベンダーの提案内容の妥当性が判断できない」会社は、外部委託をしたほうがいいと思いますね。
そして、その分野での強みや実績、信頼のあるコンサルティング会社に依頼しないと効果も期待しにくいと感じています。
AGSコンサルティングは、現行システムに対して経営層が満足しておらず、根本的な業務の見直しを行いたい、経営に寄与するシステムを導入したい会社には、特におすすめです。システムの現状をユーザーの視点で整理し、経営層の視点で提案してくれるので、高い成果につながると思います。
新システムを活用して、これから注力されていく取組みについて教えてください。
不織布産業では、中国をはじめとするアジア諸国の台頭による世界的な競争が激化しています。急速に進展する経済のグローバル化の中で、競合相手の一歩先を行く積極果敢なものづくりや経営姿勢が求められています。
今後は、グローバル市場において十分な競争力を発揮し、利益を最大化することができるよう、新システムに蓄積したデータを基に、コスト管理や採算管理を行っていきたいと考えています。システム再構築の目的である「経営に寄与する情報システム」の実現ですね。
具体的に検討しているのは、無駄な費用や作業を減らす経費削減と、儲かる製品への投資や儲からない製品からの撤退など収益性向上への貢献です。
実はすでに本プロジェクトと平行して、AGSコンサルティングにお手伝いいただきながらCVP分析を行いました。まだ試算の段階ですが、CVP分析を行うことで、自社のコスト構造がどうなっているか、利益を上げるために何が必要なのかが見えてきました。これらの情報は、事業戦略を検討する際にも有用だと考えています。
今後、このCVP分析を仕組み化し、コスト管理や採算管理を継続的に自社で行えるよう、AGSコンサルティングに相談して進めていきたいと考えています。
今後AGSコンサルティングへ期待することをお願いします。
DX推進においては、現在の業務を自動化・効率化するだけでなく、デジタル技術を活用してビジネスそのものを変革していくことが必要になると考えています。
その際に「業務の視点」「システムの視点」に加え、「経営の視点」があるAGSコンサルティングは頼りになる存在だと思っています。そういった面でも、知恵をお貸しいただければ幸いです。
単なるシステム導入ではなく「経営に寄与する情報システム」の実現に向けて、弊社の状況を弊社のメンバーよりも知っていただいている(笑)、AGSコンサルティングと一緒に取り組んでいきたいと考えています。
ぜひ引き続きお力添えください。
AGSグループ担当者からのメッセージ
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システムコンサルティング事業部長
藤村 潤
システム刷新の検討だけでなく、タピルス様の「業務のありたい姿」や「経営ビジョン」から一緒に考えさせていただく、大変貴重な機会となりました。 今後は、システムに蓄積された情報を「どう経営に活かすのか?」をテーマに、微力ながらご支援させていただきたいと思います。
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システムコンサルティング事業部
酒井 俊幸
およそ1年間にわたり、ご支援させていただきました。 本社および伊勢原工場の皆様と活発な議論を行うことにより、網羅的かつ精緻なシステムへの機能要求をとりまとめることができたことは、貴重な経験になりました。
お客様プロフィール
タピルス株式会社
設立: 1987年7月31日
事業概要
不織布及び不織布を原料とする製品の製造・販売・メルトブロー不織布の製造・販売
・メルトブロー不織布のカレンダー加工製品の製造・販売
・メルトブロー不織布のスリット加工製品の製造・販売
・メルトブロー不織布と他製法の不織布等との複合品の製造・販売
※記事の内容は、掲載当時のものです。