概要
2024年に創業100年を迎える株式会社船昌は、「食を通じて人に健康と幸福を提供する」をモットーに、首都圏を中心に青果物の仲卸や販売、配送などを手掛ける。2022年3月期の売上高は約230億円に上り、年間約1万4700トンの野菜と1万7120トンの果物を約1000の量販店で取引している。この10年間で売上高を2倍に伸ばすなど成長を遂げる同社を、AGSが約10年間にわたり支えている。
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関野裕氏
株式会社船昌 代表取締役社長CEO
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濱竹龍宏氏
株式会社船昌 経理部経理課マネージャー
ー世代交代を機に税理士を切り替え
〈2011年、関野氏は36歳で4代目社長に就任。AGSとの出会いは就任4年目の2014年だった。〉
関野氏:税務面は個人の税理士の先生にお願いしていましたが、2013年に青果物加工商品の商品開発やパッケージングを行う完全子会社「株式会社ファームステーション」を設立したときに、個人の方ではなかなか対応が難しいと感じました。今後やっていきたい方針とかみ合わない部分もあり、会社自体が変わったタイミングで、会社を見てもらう方たちにも新しい形で見てもらいたいと思いました。
AGS髙木:2014年、AGSのホームページからのお問い合わせを受けて初めて訪問させていただきました。世代交代をしたとき、現状でいいのかと不安を感じる経営者の方は少なくありません。状況のヒアリングをした上で、個人の税理士の先生と並行する形でセカンドオピニオン契約をしていただくことになり、約半年後の決算の時に税務顧問契約を結んでいただきました。毎月、大田市場(東京・大田)に足を運び、月次で会計レビューを行っていくという関係から始まりました。
関野氏:AGSの方に最初にお会いした時に、若くてパワーがあると感じ、任せて安心という印象だったのが切り替えの決め手でした。
AGS髙木:翌年には、こちらから提案させていただく形で税務顧問以外の業務も行いました。在庫管理に不安要素があり、在庫の管理状況のフローの適正さなどについて確認する機会をいただきました。
ー事業承継税制の特例措置を利用し、円滑な事業承継を実現
〈関野氏が社長に就いてから、前社長が多く持つ株式の承継が課題となっていた。解決に向けて潮目が変わったのは2019年だった。〉
AGS髙木:会社の株価が高くなっていたので、このまま前社長の相続が発生してしまった場合、関野社長に多額の相続税がかかることは、従来から分かっていました。2016年か17年頃に一度、社長と課題感について共有しましたが、当時の社長の反応は「今じゃない」。しばらく空白期間がありましたが2019年、次世代への株式承継時に相続税・贈与税が猶予される「事業承継税制」の特例措置が始まりました。
AGS土屋:特例措置が創設されたとき、船昌様に適用ができるのではとすぐに頭に浮かびました。すでに3年以上役員に就いていなければならないなど、適用の条件は厳しかったですが、船昌様は当てはまっていましたので、翌年の2020年には社長に「やりましょう」と提案させていただきました。
関野氏:関係会社との株のやり取りなどは複雑な部分もあり、こちらから話を進めることは至難でした。特例措置の件は、AGSさんからの提案がなければ知りうることができない情報だったので、本当に助かりました。スムーズにいったことでストレスなく、仕事にも影響なく済んだのでありがたかったです。
AGS髙木:事業承継はセンシティブなものです。家族間の話し合いに土足で入っていくような緊張感がありますので、順序だてた話し合いを意識しました。今後も何十年と歴史が続いていく会社を安定させる承継になったと思いますし、特例措置を活用できて、こちらとしても貴重な仕事をさせていただきました。
ー配送、外食 新規事業の展開も支援
〈2017年には配送事業を手掛ける完全子会社「株式会社船昌GLOBAL CARGO」を、2022年には外食事業を手掛ける完全子会社「株式会社f.dining」を設立するなど、次々と事業を広げていった。〉
関野氏:配送事業は「新鮮な青果を自分たちで届けたい」と、外食事業は「消費者により青果物を身近に感じてほしい」との思いから始めました。いずれも設立の際にAGSさんからいろいろとアドバイスいただきましたね。
AGS髙木:資本金については助言させていただきました。税金が重荷にならないようにという点と、社長は借り入れを好まないので、その後必要な資金を試算しながら、できるだけ資本を入れようといった点もご相談しました。最初に配送会社を作るといわれたときは反対しました(笑)。配送業者を買いませんか?と提案もしましたが、「ドライバーはうちの商品をお届けする最後の営業マンなんです」という言葉に胸を打たれ、会社を一から作るためのサポートに注力しました。
ー経理業務の改善に向けたプロジェクトを実施中
〈2022年にEC事業を発足し、ECでの販売にカード決済を導入したり、新たに子会社ができたりしたことにより、2022年度の決算業務でひずみが生じた。〉
濱竹氏:子会社が増えたり、決済手段が増えたりしたことで、これまで対応していなかったような経理業務がどんどん増えていきました。
AGS髙木:船昌様の経理部体制とスキルは十分なはずなのですが、例年と比べ決算作業に滞りがあると感じました。決算に時間がかかると、AGSが数字にきちんと向き合う時間も減ってしまいます。そこで、経理業務の健康診断をしませんか?と提案させていただき、2023年夏から経理の業務改善を目的としたプロジェクトが始まりました。
濱竹氏:自分の業務を終わらせるだけで手いっぱいになってしまっていました。そういった中で改善のための提案をいただけて非常に助かりました。
関野氏:経験のない業務が発生するなかで、不慣れな部分も出ていたと思います。業務改善は進めていくべきだと思うので、対応をしっかり検証するとともに、今後の教育もしっかり行いたいと考え、AGSさんにお願いしました。
AGS土屋:プロジェクトが始まってからは、経理課の従業員の方とそれぞれ面談を行いました。ヒアリングを重ねると、他の業界にはあまりない独特の経理業務が出てくるので、一般的な課題の解決法が当てはまりません。独自に方法を考えていますが、従業員のみなさんが「もっと仕事を任せてほしい」と前向きでいらっしゃり、業務改善に向けてさまざまなアプローチができそうなので助かります。税務顧問とは違った視点から船昌様を知ることができている実感もあります。
ーAGSとの関係も10年目を迎えた
〈2024年は、株式会社船昌の創業100周年と、AGSの関与開始から10周年の節目だ。〉
関野氏:いつも何かあれば髙木さんにすぐに電話しています。「こういうことをやろうと思っているのですが、どう思いますか?」などと直接聞いてしまっていますね。ITの導入が進んでいないなど、古い慣習が残る青果物の業界で、経験と実績をもとにAGSさんがいろいろとアドバイスをしてくださっているので助かっています。今までは数字を見てもらうことが多かったですが、今後の会社経営のなかで様々な提案をしてくれることを楽しみにしています。新しい事業に対する夢を叶えてくれたらありがたいです。
AGS髙木:直接ご相談いただけるのは非常にうれしく思っています。多くのことに挑戦してくださる社長がいるからこそ、提案のしがいもあります。今後ともよろしくお願いいたします。
今後も、決算の早期化や経理の業務改善を目指し、船昌様とAGSの二人三脚は続く。
AGSグループ担当者からのメッセージ
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非上場ですと革新を求める企業様はそう多くありませんが、AGSが関与してから子会社を2つ増やし、年商も倍に引き上げた社長のチャレンジ精神には脱帽しています。私たちを社内のコミュニケーションを豊かにする潤滑油のようにうまく使ってもらうことで、会社がよくなることもあると思います。今後も船昌様をもっといい会社にするためにさまざまな提案をしていきたいです。
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MS1部門OS1事業部 事業部長(公認会計士・税理士)
髙木康行
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MS1部門OS1事業部(税理士)
土屋和樹
お客様プロフィール
記事の内容は掲載当時のものです。