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企業における財務会計と税務会計の違い

企業における財務会計と税務会計の違い

企業における財務会計と税務会計の違いについて解説しています。目的やルール、開示先の比較・違いや、決算書(損益計算書)で間違いやすい場所についても紹介しています。財務会計と税務会計の違いを調べている方は参考にしてください。

主な違いの比較

財務会計税務会計
目的財産・利益の計算税金の計算
ルール会計基準法人税法
開示先企業の利害関係者税務署や地方自治体

上記のとおり目的が違うため、遵守するルールと会計を開示する(利用する)相手方も異なります。

 

<財務会計>

株主や投資家及び銀行など債権者等の利害関係者が企業の財産や利益をみて意思決定するために用います。

 

企業としては利益を大きく見せたいという心理が働きますが、利害関係者としては不当に計算された企業の財産や利益を開示されてしまうと正しい意思決定ができません。

 

従って、企業は一般に公正妥当と認められた会計処理の基準により財務会計を計算しなくてはなりません。

 

<税務会計>

税金を計算するために用います。

 

企業としては税金を多く払わないように、利益を小さく見せたいという心理が働きますが、税務署としては不当に計算された税金計算では課税の公平が保てず、正しい税金徴収ができません。

 

従って、企業は法人税法の規程により税金を計算しなくてはなりません。

 

決算書と別表の繋がり

財務会計と税務会計では上記の違いがあるため、同じ会計でもズレが生じることがあります。

 

このズレをどう認識するのかを、設立1期目の法人の決算書と法人税申告書の一部を見ながら説明します。

 

財務会計において損益計算書(PL)は「企業の会計期間中にいくら儲けたか」を表し、貸借対照表(BS)は「会計期間末日にいくら資産や債務があったか」を表します。法人税申告書の別表四と呼ばれるシートは税務会計におけるPLのようなもので、別表五(一)と呼ばれるシートは税務会計におけるBSのようなものと理解して下さい。

 

財務会計では会社の儲けをPLで「収益-費用=利益」と計算し、税務会計では会社の儲けを別表四で「益金-損金=所得」と計算します。
税務会計のルールは財務会計に準ずるのが基本ですが、前述のように一部ルールが異なります。

 

異なるルールの取引がなければ、利益=所得となるため、法人税等の税率が30%だと仮定すると、「税引前当期純利益(1,100)×30%=330」と計算し、今期決算に基づく法人税等は330になります。しかし、実際は法人税等が450と計算されています。

 

損益計算書(PL)
自2020年4月1日 至2021年3月31日

売上10,000
売上原価2,500
売上総利益7,500
一般管理費
及び
販売費
給料・賞与4,800
賞与引当金繰入400
その他1,000
販売費及び一般管理費 計6,200
営業利益1,300
営業外損益△100
経常利益1,200
特別損益△100
税引前当期純利益1,100
法人税等450
税引後当期純利益650

 

別表4

当期利益又は当期欠損の額650
加算損金経理した法人税等450
賞与引当金繰入額否認400
小計850
減算0
小計0
所得金額1,500

 

PLの「賞与引当金繰入」に注目しましょう。

 

財務会計では翌期に払う予定の賞与のうち、当期に帰属する金額は当期の費用として早めに計上することが求められます。一方で、税務会計では実際に支払った賞与のみ損金として計上することが求められます。すなわち、費用に計上するタイミングと損金に計上するタイミングにズレが生じます。

 

税務会計では賞与引当金繰入(400)が損金として認められないため、所得は「税引前当期純利益(1,100)+賞与引当金繰入(400)=1,500」と計算され、法人税等は「所得(1,500)×30%=450」と計算されます。

 

このズレの調整をし、税務上の所得を計算しているのが別表四です。実際は税引後の利益からスタートしますが、加算欄で賞与引当金繰入(400)を足していることを確認できます。

 

次にBSの「賞与引当金」に注目します。

 

BSに計上されている賞与引当金(400)は税務上認められていない費用により発生した負債ですので、別表五(一)Ⅰに当期の増(400)として計上します。税務上は負債ではないので+400と表し、BSの負債400(=△400)とのズレを表現しています。

 

貸借対照表(BS)
2021年3月31日 現在

資産の部負債の部
科目金額科目金額
現金預金2,000未払法人税等450
売掛金800賞与引当金400
棚卸資産1,000借入金1,000
前払費用200負債の部合計1,850
純資産の部
資本金1,500
繰越利益剰余金650
純資産の部合計2,150
資産の部合計4,000負債及び純資産合計4,000

 

別表五(一)
Ⅰ利益積立金額の計算に関する明細書

区分期首現在
利益積立金額
当期の増減差引翌期首現在
利益積立金額
①-②+③
賞与引当金400400
繰越損益金650650
納税充当金450450
未納法人税等△ 450△ 450
差引合計額1,0501,050

 

細かい部分は省略していますが、税務会計では別表四でPLとのズレを、別表五(一)でBSとのズレを調整し税金を計算しています。

 

ここまでの話を理解してから法人税の申告書を見ると気づきがあるかもしれません。

 

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