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経営

Interview


優れた技術やアイディアでイノベーションを興すスタートアップ企業を支援する、
みずほフィナンシャルグループ。その最前線となる、みずほ銀行イノベーション企業支援部長の
大櫃直人氏に、AGSコンサルティングの廣渡嘉秀が話を伺った。
原点となった、スタートアップ 勃興期の空気
廣渡 今日は1時間ほどお時間いただき、昨今のスタートアップ談義や、それにまつわるみずほ銀行の取り組みなどについてお話を伺いたいなと考えています。まぁ20年来のお付き合いですし、ざっくばらんに何でも話せればと思うのですが。
大櫃 出会いはたしか、とある不動産投資会社のパーティーでご紹介いただいたんですよね。
池袋支店で課長代理をやっていた時代、1999年だったと思います。
廣渡 そうでした。でも、大櫃さんの話題は、そのずいぶん前からいたるところで耳にしていましたけど。(笑)
大櫃 いろいろありましたよね。(笑)
改めて思い出してみると、当時の経営者は今よりもカリスマ性が強く、個性的だった。あの時代で会社を興そうなんて考える人は、ある意味で「変人」といえますから。別の言い方をすると、経営者の「顔」があったんです。
廣渡 なるほど、今は「顔」よりも、組織としての存在を問われるようになったのかも知れません。
あれから20年が過ぎ、スマートなスタートアップ経営者がずいぶん増えました。
大櫃 当時はベンチャーやスタートアップではなく、「新興企業」と呼んでいました。
まだ「メンター」という言葉も出てきていない時代だったと思いますが、経営者たちのメンターは昔から存在していて、彼らのキャラクターやメンタリティも今とは大きく異なっていました。経営者にとっての環境も、大きく様変わりしたといえます。
廣渡 2006年にライブドアショック、08年にリーマンショックと続き、市場は急激に冷え込みましたが、その間も面白いスタートアップは生まれ続けていた。難しい時代だったこともあってか、この頃の経営者は打たれ強いと感じます。
大櫃さんはスタートアップ企業を得意とされていますが、こうした勃興期の空気を吸っていたことが原点になっているのかも知れません。
大櫃 そうですね。これは、みずほキャピタルの大町社長によく言っていただくんですが、「大櫃さんは何が好きとか得意とかではなくて、ミッションコンプリートに集中している。与えられたミッションがどうすれば一番うまくいくか、徹底的に考え抜くんですよね。」と。別に、特別好きでスタートアップを手掛けていた訳ではないということなんですよ。(笑)嬉しそうに飛び回っているものですから、そのあたりをよく誤解されます。
廣渡 私も、大櫃さんが水を得た魚のように活躍されていた当時をよく覚えています。もちろん今もなんですけど。
そういえば、スタートアップの前はM&Aばかり手掛けてらっしゃった。
大櫃 その前は不動産ばかり。
廣渡 そのあたりが不動産投資会社のパーティーにつながったんですね。
大櫃 M&Aばかり手掛けるようになったのは、やはりミッションコンプリートの発想がありました。07年に総合ソリューション戦略チームに異動して、大企業にアプローチすることが求められたんです。大企業の社長にお会いするにはどうすればよいか。
廣渡 それがM&Aだった。
大櫃 そうです。やっぱりM&Aしかないと思ったので、プライベートエクイティファンドに行ってM&Aを勉強し始めた。並行して、北海道から九州まで徹底的に大企業を回りました。
桁外れの成長に見いだした、スタートアップの可能性
廣渡 そこからスタートアップを手掛けるようになったのは、渋谷中央支店の頃だったと記憶しています。
大櫃 大企業を担当している渋谷地区の支店長だったんですが、たまたま、ある超大口顧客との取引を縮小せざるを得ない状況に陥ってしまった。支店の数字を維持するためにはどうすればよいかと考えていた時に、ふと思い付いたのがスタートアップ企業でした。
廣渡 たとえばもし日本橋支店にいたとすれば、違ったかも知れませんね。
大櫃 事業承継ばかり手掛けるようになっていたかも知れません。
廣渡 ただ、当時は大企業を担当されていた訳ですから、スタートアップを手掛けるということについて、簡単に認めてもらえなかったんじゃないですか?
大櫃 そのとおりですが、支店の数字を読んでいくと、このままでは現状維持さえ覚束ないことが分かってしまった。そこで、担当常務に掛け合い、一定の条件のもと認めてもらったんです。
廣渡 ちょうどそのあたりから、スタートアップでも資金調達しやすい環境が整い始めていましたから。昔なら3千万円でも大変だったのが、3億や5億でも珍しくなくなってきた時代です。スタートアップ市場の地殻変動に乗じることができたということでしょう。
大櫃 それまで銀行であまり手掛けていなかったゾーンのお客様でもありました。当時の銀行の戦略に逆行したアプローチでもありましたから、行内でも議論が分かれましたね。
私としては、ただただ使命感で動いていましたが。
廣渡 それほどスタートアップに将来性を見いだした、ということでしょうか。
大櫃 スタートアップの経営者たちは、話せば話すほど優秀だと感じるんです。そして、彼らの決算書をみると、驚くべきスピードで成長している。「数千万、数億、数十億」という、見たこともないような成長推移が実際に起きてしまう。
廣渡 まさに「桁外れ」ですね。
大櫃 あるいは、たとえば現時点で売上はゼロだけれども将来的な数字のビジョンとビジネスモデルを持ったスタートアップもある。当初は半信半疑でしたが、彼らの優秀さやビジョン、人柄に触れていくにつれ、共鳴していったんです。
廣渡 そうしたスタートアップの経営者を、何度かご紹介いただいたこともありました。
資金調達の観点からいうと、昔とちがって経営者のバックグラウンドやマネジメントチーム、会社の雰囲気などをみれば、企業としてのレベル感が相当理解できます。あとはKPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)を適切に公開してもらえることが大きい。
いずれにせよ、そういう経営相談のできるバンカーは貴重なのかも知れません。
成熟の世界、成長の世界
大櫃 東京証券取引所の市場再編案が分かりやすいんですが、日本の経済構造は、「成熟の世界」と「成長の世界」に大別できるようになってきたと思います。
もちろん、今までの銀行は、圧倒的に成熟企業をメインターゲットとしてきました。
大櫃 日本の経済成長とともに、良い形で成熟してきた訳ですからね。
大櫃 そういう企業の設備投資や融資、海外進出などの成長ニーズに対して、私たち銀行はサポートさせていただいてきました。
ところが、経済成長の鈍化や人口減少に伴って、リスクを避け、成長を望まない企業が出てきた。現状の利益率を守りながら、組織規模を縮小していくような企業が現実に現れ始めたんです。
廣渡 そうすると、銀行のサポートが必要なくなってしまうということになるでしょうか。
大櫃 おっしゃるとおりです。そういう企業に対して銀行ができることは、極論すると事業承継のサポートしかない。「会社をどのように承継していくか」に知恵を絞るビジネスとして、特化していくことになると思っています。
一方で、成長企業はリスクを取って成長する意欲が旺盛です。
廣渡 ただ、彼らの多くは、その時点での売上は低いし、資産も持っていないですよね。
大櫃 今までの銀行のロジックだと、売上や資産の規模に応じて企業をセグメンテーションしていくことになる。それだと、成長企業をサポートしていくことは難しいんです。これを変えていかなければならない。
廣渡 もちろん、老舗であっても成長を目指す企業はたくさんあるかと思いますが、構造として考えると、おっしゃるとおり変化を感じます。
大櫃 成熟企業を全体としてみると、経営者のマインドもどちらかに寄ってきている印象です。成長を目指している老舗は、むしろ成長企業に交わっていくケースが多い。
その意味で、銀行として必要とされるサービスは、両者で大きく異なってきています。
廣渡 私たちのように、事業承継もスタートアップ支援も手掛ける総合型のコンサルティングファームにとって、求められるハードルが高くなっているのは事実です。それぞれの専門性を増していかない限り、お客様のニーズには応えられなくなってきている。
大櫃 事業承継のプロでもあり、なおかつスタートアップのプロでもあるということは、たまたま両方を経験させてもらった立場からいうと、現実的じゃないと考えています。
成熟企業に対する事業承継の知識は、法務であり、税務、会計です。
一方で、成長企業にサービスを提供するために必要な知識は、ITリテラシーだと思うんです。もちろん、自分でプログラムを組む必要はありませんが、プログラムを組むとはどういうことかを理解している必要がある。
廣渡 これも銀行に限ったことではありませんが、企業の幹部層の多くは、法学部や経済学部、商学部の卒業生ですから。
大櫃 つまり、そもそもプログラム言語なんて学んでいないし、日ごろ接してもいないということなんです。ところが、伸びている世界ではIT用語が飛び交っている。分からないから食わず嫌いになっているということは、とても危険だと思います。
廣渡 「モノづくりが大事」という考え方から「情報技術が大事」という考え方に変わりつつあるということでしょうね。
大企業を巻き込んだ、オープンイノベーション
廣渡 そうした構造の変化に伴い、みずほ銀行としては、2016年にイノベーション企業支援部を立ち上げ、スタートアップの支援に大きく舵を切りました。どのようなビジョンを掲げてらっしゃるのでしょうか。
大櫃 みずほ銀行には、創業来「企業の成長を後押ししながら、産業を育てていく」というDNAが息づいています。
構造の変革期にある現代は、むしろ戦後に近い状況にあるのかも知れません。先ほど廣渡さんがおっしゃったように、戦後の銀行はモノづくりの企業が育っていくのを支えてきた。結果として、いつの間にか日本は経済大国になったものの、先行きの不透明感というか、手詰まり感が出てきているのは確かです。
新しい産業を創造していかないと、日本の将来は危うい。私たちは真剣にそう考えています。その打ち手として、このイノベーション企業支援部を立ち上げた。
廣渡 みずほ銀行さんは、もともと大企業との関係性が強いですから、スタートアップばかりでなく、引き続き成長を志向している大企業をどのようにサポートしていくかも重要だと感じます。
大櫃 まさに日本の大企業の約7割が、みずほ銀行とお取引きいただいています。彼ら大企業経営者と会話していると、スタートアップとの協業やオープンイノベーションが大きなテーマになっていることがわかる。メガバンクとして、そうした有用な情報をいかに提供できるか。このあたりは今のところ大企業がターゲットとなっていますが、いずれ中堅企業にも裾野は広がっていくでしょう。オープンイノベーションを盛り上げていくことも、私たちの大事な役割だと考えています。
廣渡 スタートアップ支援と、主に大企業に向けたオープンイノベーションのサポートが、現在の大きなミッションと考えて良さそうですね。
大櫃 おっしゃるとおりで、前者が7~8割、残りが後者といった配分です。
特に、オープンイノベーションについては、M’s Salonというスタートアップ企業の成長を支援する会員サービスを展開しているんですが、みずほ銀行がメイン先でないような大企業様にもサポートカンパニーとしてご登録いただくなど、これまでにない差別化戦略になってきている。
廣渡 それはすごい。
大櫃 部を立ち上げる際、現みずほフィナンシャルグループ会長の佐藤から、単なるスタートアップ支援という視点ではなく、「スタートアップといえば、みずほ」と言ってもらえるようなブランドを目指して取り組んで欲しい、と言われたんです。
本当にちょっとずつですが、手ごたえを感じ始めました。
廣渡 銀行として、そうした意思決定ができたということには、大きな意味があると思います。
大櫃 あの言葉があったからこそ、大企業とスタートアップのビジネスマッチングのような取り組みにもつながった。直近では、20年2月に、2日間で1030件以上のマッチングを行う商談会を開催したんですが、あそこまで大企業を巻き込んでいくということは、本来なかなか難しい決断ですから。
廣渡 組織としてオーソライズされない限り、とても実現できるようなことではないでしょうね。しかも、それを短期間に推し進めることができた。
イノベーション実現のカギはインテグレーションにある
廣渡 今後は、どんな展開を考えていらっしゃるんですか?
大櫃 2020年3月に「オープンイノベーションプラットフォーム」というサイトを立ち上げる予定です。特にテック企業に関する情報ニーズが高まってきているなかで、多種多様な分野にまたがるM&Aニーズを効率的かつ効果的に支援することが目的。テック企業の売却情報にアクセスしてもらえるようなプラットフォームを整備していきます。もちろん、会社名は非開示ですが。そこから第二弾として、海外のスタートアップの情報も追加していく予定です。
廣渡 大企業を考えると、必ずしも国内のスタートアップだけがコラボレーションの対象ではないですもんね
大櫃 さらに第三弾として、日本の大学が持つ技術シーズの情報を追加したいと考えています。日本の産業振興という観点からは、日本の大学による基礎研究は大変重要ですから。
「テック」というキーワードを切り口に、このサイトを仕上げていきたいと考えています。
廣渡 みずほ銀行のもつ情報量は莫大ですし、インフラも巨大ですから、夢が広がりますね。従来の銀行とは一線を画すようなスピード感を期待したいと思います。
大櫃 これをどこまでワークさせるか、ですけどね。
もちろん、銀行単独でできることには限界があります。たとえば、スタートアップが大企業とのM&Aに対峙したときに、銀行として情報提供はできますが、双方のフィナンシャルアドバイザーを務めることはできませんから、呼吸を合わせてもらえるパートナーが必要です。AGSさんには、そのあたりも是非お手伝いいただきたい。
廣渡 ありがとうございます。
先ほど大櫃さんが力説されていたように、イノベーションを起こす企業を日本に作っていかなくてはならないのは間違いありません。そのためには、スタートアップを育てたり、大企業とのコラボレーションやM&Aを促進したりすることが必要となる。一口にスタートアップといっても、ステージによって経営課題は大きく異なりますから、私たちとしても、お手伝いできることが確実に増えていきます。
大櫃 イノベーション企業支援部では、シード・アーリー期に向けたサービスが充実してきました。それに加えて、ミドル・レイター期に向けたサービスについても、高いニーズがあることがわかってきたので、19年6月にシニフィアンと「The Fund」を立ち上げた。組織再編やM&A、オープンイノベーションなどのサービスを提供していきたいと考えています。ただ、IPOしたばかりの若い企業の多くは人材が不足していて、組織体制も不十分という声をよく聞く。そうしたサービスを受け入れるための社内リソースも足りていないというのが現状でしょう。
廣渡 外部のコンサルタントを活用する意義は、まさにそうした局面にあると思います。
大櫃 逆に、大企業がテック企業を買収する場合でいうと、同業を買収する場合とはノウハウが異なるので、そういう場合でも外部のコンサルタントを活用したほうが良いかも知れません。
廣渡 まさにおっしゃるとおりで、ここのところ大企業は、これまで自前で取り組んでいたPMI(Post Merger Integration/ M&A後の統合効果を最大化するための統合プロセス)を外部に委託するようになりました。これは大きな流れになっていくと感じています。成功させるためには、優れた戦略だけでなく、実務に裏打ちされた経験が必要となりますから。
大櫃 コンサルタントがきれいな戦略を描いても、日々の業務に落とし込めるインテグレーターがいないと実現しない。AGSはいっしょに汗をかいてくれるので安心できますし、そういうコンサルタントと組んでいきたいと考えています。
廣渡 いずれにせよ、日本の企業が世界に伍していくためにイノベーションが重要である、ということを改めて感じました。みずほ銀行さんにはどんどん推し進めていただきたいですね。
大櫃 そうですね、いろいろコラボレーションできればと考えていますので、引き続きよろしくお願いします。
廣渡 本日はどうも、ありがとうございました。
大櫃 直人 (おおひつなおと)
株式会社みずほ銀行 執行役員 イノベーション企業支援部長
1964年生まれ。88年に関西学院大学卒業後、入行。複数の営業店を経て、本部にてM&A業務や法人新規取引獲得を推進する。2016年、イノベーション企業支援部設立に伴い部長に就任。18年より執行役員に就任し、現在に至る。これまでに約2,500社のスタートアップ成長企業を訪問し、有望なスタートアップの成長支援を実践している。
interviewer
廣渡 嘉秀 (ひろわたりよしひで)
株式会社AGSコンサルティング 代表取締役社長
1967年、福岡県生まれ。90年に早稲田大学商学部を卒業後、センチュリー監査法人(現 新日本監査法人)入所。国際部(ピートマーウィック)に所属し、主に上場会社や外資系企業の監査業務に携わる。 94年、公認会計士登録するとともにAGSコンサルティングに入社。2008年より社長就任。09年のAGS税理士法人設立に伴い同法人代表社員も兼務し、現在に至る。
制作:AGSmedia制作委員会